実家を処分する流れ・行うべき準備とは?費用相場や注意点も解説
この記事でわかること
- 実家を売却するときの流れがわかる
- 実家を処分する前に行うときに何を準備すればよいのかわかる
- 実家の処分にかかる費用の内訳や相場がわかる
- 実家を処分するときの注意点がわかる
「実家を使わなくなり処分することに決めた」
実家を処分するのは大きな決断であり、人生の中でそう起きることではありません。
しかし、もし実家を処分する判断をしなければならなくなったときには、様々な手続きが待っています。
もしものときのために手続き内容を知っておくことは、いざという時に役立ちます。
本記事では、実家を処分する流れや行うべき準備、処分に必要な費用相場など解説しますので、実家を処分するときの知識として参考としてください。
実家を処分するときの流れ
実家を処分するときには、様々な手続きが必要になります。
具体的な流れは、次のとおりです。
(1)査定を受ける
(2)媒介契約を締結する
(3)売却活動が開始される
(4)売買契約を締結する
(5)実家を引き渡す
本章では、実家を処分するときの流れについて解説します。
(1)査定を受ける
実家を売却するときには、準備を整えてから不動産会社の査定を受けます。
不動産会社から実家の査定金額を聞き、査定金額を基準に売り出し価格を検討します。
また、査定金額とともに売却にかかる諸経費もあわせて確認しましょう。
手元に残る金額を把握し、手続きを進めていくことが大切です。
なお、査定前に必要な準備については、次章で解説します。
(2)媒介契約を締結する
査定額を基に売り出し価格を決めたら、不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約には、次のような3種類の契約書式があります。
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
契約書式にはそれぞれの特徴があるため、不動産会社から契約内容をよく聞き、媒介契約を締結するようにしましょう。
(3)売却活動が開始される
不動産会社と媒介契約を締結すると、不動産会社は実家の売却活動を開始します。
売却活動を行っていると実家の購入検討者が見つかり、購入検討者は実家を内覧します。
購入検討者は内覧した結果、購入を決断して購入申込書を提出してくるため、条件交渉をして前向きに進めていきましょう。
(4)売買契約を締結する
交渉がまとまったら、買主と売買契約を締結します。
売買契約では売買代金や実家を引き渡す時期、解約条件、違約事項など様々な契約項目を取り決めします。
売買契約で取り決めする事項は大切な内容ばかりですから、内容に納得できるまで不動産会社に質問しておきましょう。
(5)実家を引き渡す
売買契約締結後、引き渡し期日までに実家を引き渡します。
どのような条件で引き渡すかは、売買契約時に決めます。
売買契約書記載のとおりに実家を引き渡ししましょう。
実家を処分する前に行う準備
実家を処分するときの流れは、一般的な不動産売却とあまり変わりません。
しかし、売却する前の準備は、一般的な不動産売却の準備と大きく異なります。
実家を処分する前に行う準備は、次のようになっています。
- 遺言書があるか確認する
- 遺産分割手続きをする(納得できない遺族がいれば遺産分割協議を行う)
- 相続登記し名義変更を行う
- 遺品整理を行う
- 仏壇の引越しをする
- 土地境界の確認をする
- 税金対策になる書類を探す
本章では、実家を処分する前に行う準備について解説します。
遺言書があるか確認する
実家の所有者が亡くなった場合は、まず遺言書があるか確認しましょう。
遺言書は法定相続よりも優先されるため、遺言書が見つかれば遺産分割手続きが簡略化できます。
なお、遺言書には種類があり、自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかったときには家庭裁判所で開封・検認してもらいましょう。
公正証書遺言を作成されているのであれば、公証役場で公正証書遺言があるか確認できます。
遺産分割手続きをする
遺言書が見つかったら遺言書どおりに遺産分割手続きをし、遺言書がなければ法定相続に従って遺産分割手続きをしましょう。
遺産分割手続きとは、遺産を相続人で分ける作業です。
もし遺言書の内容に不服がある場合や法定相続で遺産分割する場合には、遺産分割協議をしなければいけません。
協議をして遺産配分が決定したら、遺産分割協議書を作成します。
相続登記し名義変更を行う
遺言書どおり進めて遺産分割協議が整ったら、相続登記をして不動産の名義変更を行います。
不動産の名義変更を行えばようやく実家を売却できるようになります。
相続登記が完了したら、不動産会社へ査定を依頼してもよいでしょう。
遺品整理を行う
不動産売却するときには原則、不動産内の物をすべて撤去しなければいけません。
そのため、室内に残っている遺品を整理し、必要に応じて処分する必要があります。
遺品整理はできる限り、相続人全員で行うようにしましょう。
相続人代表者が勝手に遺品整理や遺品処分を行ってしまうと、トラブルになるケースがあります。
もし全員が集まれないのであれば、代表者が勝手に処分してもよいと全員の署名がある書類を取得しておくとよいでしょう。
仏壇の引越しをする
仏壇の整理は相続人間でも揉めやすいため、仏壇の引っ越しをしておきましょう。
仏壇を引越するためには、菩提寺に魂抜きと魂入れの法要をしてもらいます。
そして、古い仏壇を使わないならお焚き上げしてもらい、処分します。
土地境界の確認をする
名義変更した実家を売却するときには、土地境界が確定しているか調べておきましょう。
確定測量図という図面があれば、土地境界が確定しています。
もし境界標がなくなっていても、確定測量図があれば復元可能です。
確定測量図がない場合は、実家の引き渡しまでに土地境界を確定させなければいけません。
確定が必要なときには、土地家屋調査士に依頼して境界確定を行ってもらいます。
税金対策になる書類を探す
不動産を売却して譲渡所得が発生すると、譲渡所得税が課税されます。
このとき、譲渡所得税は実家を購入したときの購入代金の領収証や購入時に払った費用の領収証、売却に必要な費用の領収証があれば税額を抑えられます。
実家購入時の領収証がなくても多少は譲渡所得税を抑えられますが、実家購入時の領収証のほうが効果は大きいはずです。
なお、実家購入時の領収証がない場合、次の計算式を用いて取得費を計算します。
取得費 = 売却金額 × 5%
この計算式で計算した取得費を譲渡所得から差し引けます。
実家の処分にかかる費用の内訳・相場
実家の処分をするには様々な費用がかかります。
多くの費用がかかるため、どのような費用があり、どのくらいのお金がかかるのか理解しておきましょう。
本章では、実家の処分にかかる費用の内訳・相場について解説します。
解体費用
実家を解体し、土地として売却する場合、建物解体費用がかかります。
建物解体費用は壊す建物の構造によって費用が異なります。
構造別の建物解体費用目安は、次の表のとおりです。
家の構造 | 坪単価 | 30坪の解体費目安 |
---|---|---|
木造 | 3万円~5万円/坪 | 90万円~150万円 |
鉄骨造 | 4万円~6万円/坪 | 120万円~180万円 |
RC造 | 6万円~8万円/坪 | 180万円~210万円 |
不用品処分費用
建物を解体する前に中にある不用品も処分しなければいけません。
不用品処分を業者に依頼すると、不用品処分費用がかかります。
遺産整理の不用品は多くなる傾向があり、遺産整理時の不用品処分費用はおおよそ10万円~40万円ほどかかると考えておきましょう。
相続登記(登録免許税)
実家の名義変更をするときには、相続登記をしなければいけません。
相続登記をする場合、登録免許税がかかります。
登録免許税とは、法務局へ登記申請をするときに課税される税金です。
相続登記をするときの登録免許税計算方法は、次のとおりです。
固定資産税評価 × 0.4% = 登録免許税
なお、固定資産税評価額は、毎年自治体から送られてくる固定資産税課税明細書を見れば確認できます。
固定資産税課税明細書を紛失していたとしても、自治体で取得できる固定資産税評価証明書や固定資産税公課証明書を取得すれば確認可能です。
確定測量費
実家を売却するときに隣地との境界が決まっていないときには、確定測量を実施しなければいけません。
確定測量は隣地との境界を確定させる作業で、土地家屋調査士に依頼して行います。
依頼する土地家屋調査士や土地によって異なりますが、費用はおおよそ40万円前後かかります。
仲介手数料
不動産仲介会社を利用して売却した場合、仲介手数料がかかります。
仲介手数料は売却する物件の売買金額によって変動します。
仲介手数料の計算方法は、次の表のとおりです。
計算式 | 計算式の利用条件 |
---|---|
仲介手数料 = 売買金額 × 3% + 6万円 | 売買金額が400万円を超える場合 |
仲介手数料 = 売買金額 × 4% + 2万円 | 売買金額が200万円を超え400万円以下の場合 |
仲介手数料 = 売買金額 × 5% | 売買金額が200万円以下の場合 |
なお、仲介手数料の支払い時期は、依頼する不動産仲介会社によって異なります。
契約時に50%・引き渡し時50%である場合や、引き渡し時に100%である場合があります。
譲渡所得税
不動産を売却したときに譲渡所得が発生すると、譲渡所得税が課税されます。
まず売却時に譲渡所得が発生したか調べるには、次の計算を行います。
譲渡所得 = 譲渡価格 – (取得費 + 譲渡費用)
譲渡所得の計算をしてプラスの数字が出たら、次の計算式を使って譲渡所得税を計算します。
譲渡所得税 = 譲渡益 × 税率
譲渡所得税の税率は次のように変動します。
長短区分 | 短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 |
---|---|---|
期間 | 5年以下 | 5年超 |
税率 | 30.63% | 15.315% |
No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)(国税庁)
なお、税率は不動産を売却した年の1月1日現在、所有期間5年以下なら短期譲渡所得が適用され、所有期間5年を超えていれば長期譲渡所得が適用されます。
この所有期間は、相続前の所有期間を通算できます。
なお、譲渡所得が発生した場合、譲渡所得が発生した翌年に確定申告しなければいけません。
譲渡所得が発生したにも関わらず確定申告をしなかった場合、延滞税や無申告加算税などが課税されてしまいます。
印紙代
不動産売買契約書を作成するときには、印紙税が課税されます。
印紙税は印紙税課税文書を作成するときに課税され、売却のときに作成する課税文書は不動産売買契約書です。
印紙税は売却不動産の売買金額によって変動します。
印紙税額は、次の表のとおりです。
売買金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
※以下売買金額が上昇するごとにさらに印紙税額も増加します ※令和6年3月31日までに作成される売買契約書に適用される税額です |
お墓の改葬費用
実家の売却に伴い、お墓を改葬するときには費用が発生します。
墓石の撤去や区画の整理まで行うと10万円~50万円程度かかるケースがあり、新しくお墓を建てる費用も必要になります。
お墓の改葬はかなりの費用がかかり、不動産とは別のことと考えてしまいがちですが、実家を売却するときにはお墓の改葬まで考えておくようにしましょう。
実家を処分するときの注意点
実家を処分するときには、注意しておかなければいけないことも多くあります。
処分するときの注意点を守り、トラブルを回避していきましょう。
実家を処分するときの主な注意点は、次のとおりです。
- 共有名義の実家を処分する
- 更地にすると固定資産税が上がってしまう
- 空き家にするリスクを知っておく
本章では、実家を処分するときの注意点について解説します。
共有名義の実家を処分する
相続をした実家が共有名義だった場合、共有者との連絡はしっかりととっておきましょう。
共有名義の不動産を売却するときには、共有者全員の売却同意がないと売れません。
共有者1人でも売却に反対すると売却できなくなるため、共有名義の実家を売却するときには共有者の同意を取得しておきましょう。
なお、共有者からどうしても売却への同意が得られない場合、自分の共有持分だけ売却してしまう方法があります。
共有持分は自分だけの所有権であるため、売却に他の共有者の同意は必要ありません。
ただし、共有持分は一般の買い手は購入しないため、不動産会社に買い取ってもらうことになります。
不動産会社の買取であるため、共有持分は高くは売れないことには注意しましょう。
更地にすると固定資産税が上がってしまう
実家を売却することになり、売却前に解体してしまうと、土地の固定資産税が上がるため、解体時期に注意しましょう。
土地の固定資産税は住宅が敷地上にあると、次のような減税措置を受けられます。
住宅の敷地面積 | 固定資産税評価額の軽減率 |
---|---|
小規模用土地(200㎡以下) | 評価額 × 1/6 |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 評価額 × 1/3 |
表のとおり、固定資産税は土地に住宅があるだけで最大1/6になっています。
つまり、建物を解体してしまうと、土地の固定資産税が6倍近くになるケースがあり得るということです。
実家を売却するときには、建物を解体する時期を見極めて売却しましょう。
空き家にするリスクを知っておく
実家を相続した場合、遺産整理に時間をかけ、あるいはしばらく放置してしまう人も多くいますが、空き家のまま放置することにはリスクが伴うことを知っておかなければいけません。
空き家になった建物は、動物が侵入することや熱気・湿気がこもるなどして傷みの進行速度が上がります。
傷みが激しくなり危険な空き家になると、自治体より「特定空き家」に指定されることがあります。
特定空き家とは、近隣や通行に被害を与えるような危険な空き家のことです。
特定空き家に指定されたまま危険な状態を放置していると、土地の固定資産税軽減が解除されることや、50万円以下の罰金を受けることもあります。
軽減措置解除や罰金も無視していると行政代執行で特定空き家を強制的に撤去され、撤去費にかかった費用を自治体から請求されます。
まとめ
実家を処分するときには、様々な手続きを行う必要があります。
また、多くの費用もかかるため、費用の項目や金額を理解しておかなければいけません。
特に実家を共有で相続する場合、共有者と実家処分に必要な知識までを共有しなければ、処分自体できなくなるケースが多くあります。
実家を処分するときには関係者が多く、関係者にきちんと処分の話をできるようにしておくことが大切です。
実家処分に必要な知識を得て、処分をスムーズに進められるようにしておきましょう。