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不動産売買契約締結後の入金タイミングや注意点について解説

「不動産の売買契約を締結できそうだが、契約締結後にはいつ入金されるのだろう?」

不動産の売却代金の使い道が決まっている場合などには、いつ売却代金が入金されるのかそのタイミングが気になりますよね。

また、場合によってはできるだけ早く入金してほしいということもあるでしょう。

不動産の売却代金が入金されるタイミングは、基本的には2回あります。

この記事では、不動産の売却代金が入金されるタイミングや入金されるお金に関する注意点を解説しています。

この記事を読むことで、不動産の売却代金がいつ入金されるのかを知ることができ、計画的に資金繰りを考えることができるようになります。

不動産売買の入金タイミングは2回

不動産売買では1回でまとめて入金されるのではなく、原則2回の入金タイミングに分けてお金が入ります。

このことについてご説明します。

1回目:売買契約締結時

1回目の入金タイミングは、売買契約締結時です。

売買契約締結時には、買主が売主に対し「手付金」を支払います。
これが1回目の入金タイミングで支払われるお金です。

「手付金」とは、日本の不動産取引の慣行として不動産売買の時に買主が売主に対して支払うお金で、売買契約が成立した証などの意味合いで支払われるもののことです。

手付金は、それ自体は売却代金の一部とは区別されるお金ですが、売買が順調に進めば売却代金の一部として取り扱われることになります。

また、手付金は、売買の当事者が手付金を放棄し(買主)、または倍にして返すことで(売主)、売買契約を解除することができるという機能も有しています。

解除のためという手付金の側面を指して特に「解約手付」といいます。

具体的に手付金をいくらにするかは契約によって自由に決めることができますが、手付金の相場はおおむね売却代金の5〜10%程度です。

例えば、売却価格が5,000万円の不動産の手付金であれば、250万〜500万円程度になることが多いです。

手付金はあくまでも契約によって定めるものなので、当事者が合意するのであれば手付金を支払わないで売買手続を進めても構いません。
逆に相場以上の額を手付金と定めることにも制約はありません。

契約の内容に応じて手付金が設定されない場合には、1回目の入金タイミングには入金がないことになります。

2回目:決済・引渡時

2回目の入金タイミングは、決済・引渡時です。

決済の場では、売却代金からすでに支払済みの手付金を差し引いた残額が一括で支払われます。

この時に支払われる残代金は金額も大きいため基本的には銀行振込により支払われることが多いですが、場合によっては現金で支払われることもあります。

決済・引渡しの時の入金により、売却代金の全てを受け取ることができます。

不動産売買契約の締結から決済・引渡しまでの期間

不動産売買契約の締結に至るのは、物件の販売活動を開始してから3〜6か月ほど後となるのがひとつの目安ですが、なかなか売却できない場合には1年以上かかることもあります。

また、不動産売買契約を締結して手付金を受け取ってから決済・引渡しまでの期間は、おおむね1〜2か月程度となるのがひとつの目安です。

この間には、買主のローン審査が進められたり決済の日程調整がなされたりします。

決済では登記手続や金融機関での振込手続・着金確認を行う必要があることから、決済の日時は平日日中に設定されます。

また、決済の場には、売主、買主のほか、売主側・買主側の不動産仲介業者、売主側・買主側の銀行融資担当者、司法書士が立ち会います(ケースによって一部の者がいないことはあります)。
このように複数の人が決済に立ち会うため、日程調整にも時間がかかることがあります。

入金されるお金に関する注意点

入金されるお金に関して、いくつかの注意点があります。

注意点1:手付金は引渡完了まで使わずに取っておく

手付金は、決済・引渡しが完了するまでは使わずに取っておくことが望ましいです。

手付金が交付された場合において、売主がなんらかの事情により契約を解除したい場合には、受け取った手付金の2倍の額を買主に対して返還することで債務不履行の有無を問わず契約を解除できます。
このような手付金による契約解除のことを「手付解除」といい、特に売主側が手付解除の際に手付金の倍額を返還することを「手付倍返し」ともいいます。

手付解除は、手付倍返し等をすることで自由に行うことができ、相手方に債務不履行があったり解除の理由として何かしっかりしたものが必要だったりするということはありません。
売主は、「手付金を受け取った買主よりもずっと高い価格で不動産を購入してくれる別の買主が見つかった」というような理由でも手付解除をすることができます。

例えば、手付金として200万円を受け取っていた場合に売主の側から手付倍返しにより手付解除したいと考えた場合には、売主が買主に対して400万円を支払うことで基本的には自由に手付解除をすることができます。

もし手付金を引渡完了の前に使ってしまうと、なんらかの事情で手付解除をしたいと考えたとしても手元に手付倍返しのためのお金がなく、手付解除ができないという事態に陥ってしまうことがあります。
もし今の買主よりずっと高い価格で不動産を購入する意向を示してくれた新しい買主が現れても手付解除ができないこととなり、結果的に損をしてしまうことにもつながります。

このような理由から、手付金は決済・引渡しが完了して不動産の売却が完全に終了するまでは使わずに取っておくことが望ましいといえます。

注意点2:2回目の入金までは時間がかかることがある

2回目の入金は決済・引渡時ですが、売買契約締結から決済・引渡しまでには通常よりも時間がかかることがあります。

例えば、買主が住宅ローンなどの融資を利用する場合、場合によっては、金融機関が融資を行うかどうかの判断をするための審査に時間がかかってしまうことがあります。
特に、買主の信用情報に問題があったり収入証明のための書類などに不備があったりする場合には、審査が長引いてしまうことにもなりかねません。

また、決済・引渡しの当日には、売主や買主を初めとして多くの当事者・立会人が集まらなければなりません。もし決済当日に立ち会う必要がある人が何らかの事情でなかなか立会いのための日程を確保できなければ、決済・引渡しの日が通常よりも先延ばしになってしまうことがあります。

例えば、売主・買主が突発的な病気やけがで入院してしまうなど健康上の問題が生じてしまった場合などには、決済が遅れることなどもあり得ます。

2回目の入金の時である決済・引渡しは、必ずしも通常の期間である売買契約締結時から1〜2か月後に行われるとは限らないことから、不測の事態により2回目の入金が遅れることも想定して資金繰りの計画を立てておくのが最も望ましいといえます。

売主が不動産売買で支払うお金とタイミング

不動産売買では、売主としてお金を受け取るだけではなく、お金を支払わなければならないこともあります。

不動産売買で支払う主なお金とそのタイミングについてご説明します。

仲介手数料:2回に分けて支払う

仲介手数料とは、不動産売買の仲介をしてくれた不動産会社に対して支払う報酬金です。

仲介手数料は、一般的には2回に分けて支払われます。

仲介手数料を支払うタイミングは、次のとおりです。

  • ・1回目:売買契約締結時
  • ・2回目:決済・引渡時

通常は、1回目の支払いでは仲介手数料の総額の50%、2回目では残りの50%を支払うといったように、それぞれの支払タイミングで仲介手数料の総額を半分ずつに分けて支払います。

「仲介手数料は一括で支払ってしまったほうが分かりやすいのでは?」と思われるかもしれませんが、仲介手数料を2回に分けて支払うことには、売主・買主や不動産仲介業者のいずれにとってもメリットがあることです。

まず、売主・買主にとっては仲介手数料を2回に分けて支払うことで一度にまとまった出費が必要にならないことから、経済的な負担が軽減されるというメリットがあります。

また、仲介業者にとっては契約時と決済時の2回に分けて仲介手数料を受け取ることで、仲介サービスの成果や進み具合に応じて報酬を受け取ることとなります。
これにより、提供するサービスと受け取る報酬とのつりあいを取ることができ、一度に仲介手数料を受け取るよりも望ましいです。

売買契約締結時は、手付金を除けばまだ不動産の売却代金を受け取っていない段階です。
このため、この段階で仲介手数料を自ら負担しなければならないことには注意が必要です。
仲介手数料の支払いに対応できるように、適切に資金繰りを計画しておくことが大切です。

売却益にかかる税金:売買完了後に確定申告して納税

不動産を売却して利益が出た場合には、その売却益(譲渡所得)にかかる税金(所得税・住民税)を支払わなければなりません。

譲渡所得にかかる税金は、売買が完了した翌年の確定申告期間に確定申告をしたうえで納めます。

確定申告期間は、暦の都合によっても多少前後しますが、例年2月16日頃から3月15日頃とされることが多いです。その都度正確な期間を確認するようにしましょう。

確定申告では、自分自身で不動産の売買によって生じた税の計算を行ったうえでその内容を申告し、納税します。

譲渡所得にかかる税金の率は、売却する不動産の所有期間に応じて異なります。
具体的には、次のとおりの税率となります。

  • ・所有期間が5年以下のケース(短期譲渡所得):39.63%(所得税30.63%、住民税9%)
  • ・所有期間が5年超のケース(長期譲渡所得):20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

譲渡所得にかかる税金を納めるのは不動産売却の翌年となります。
このため、決済時に受け取る売却代金は全て使ってしまわずに、納税のためのお金をしっかりと取り分けておくことが必要です。

譲渡所得にかかる税金に関する確定申告をしなかった場合には、無申告加算税や延滞税などのペナルティとしての税金が課せられることもあります。
これを避けるためにも、確定申告期間にしっかりと確定申告を済ませて納税するようにしましょう。

入金されるお金に関してよくある質問

不動産売買の際に入金されるお金に関して、よくある質問についてご紹介します。

入金のタイミングを早めることはできる?

何らかの事情で一刻も早く入金してほしいということもあるでしょう。

そのような場合には、買主との間で売却のためのスケジュールをできるだけ早められないか相談して調整することで、入金のタイミングを早められることがあります。

不動産売買での入金タイミングは先ほどご説明したとおり売買契約締結時と決済時の2回であり、例えば決済に先立って売却代金の残額を受け取ることは通常はできません。
あくまでも決済のタイミングを早めることで入金のタイミングも早めるというイメージです。

一刻も早く入金してほしいときには、そのことを事情とともに買主に相談し、決済までにかかる時間を短縮できないか調整してみましょう。

売却代金が分割で支払われることはある?

決済時に支払われる売却代金が分割で支払われることは、基本的にはありません。

これは、不動産の売却代金を一括で支払う資力がない買主は金融機関でローンを組んで売主に売却代金を支払い、その後に金融機関に対して分割してローンを返済していくというのが一般的な慣行だからです。

もちろん、親族や友人間など特別な関係にある間での売買などで、売却代金を分割で支払うことを契約の内容として定めるのは自由です。
しかし、通常は売却代金が分割で支払われることはないため、売主は決済時に一括して売却代金を受け取ることができます。

手付解除はいつでもできるの?

手付解除は、手付金の放棄または倍返しさえすれば理由を問わずにすることができますが、これに対して時期については「この時を過ぎるともう手付解除はできなくなる」という制限があります。
いつでも手付解除ができるわけではありません。

手付解除は、法律上、相手方が「契約の履行に着手」した後はできないものとされています。

「契約の履行に着手」したといえるためには、契約に基づく義務を履行するべき行為の一部を実行し、そのことが外部からも客観的に分かることが必要です。
外部から客観的に分からない単なる内部的な準備行為を行ったにとどまるときは、「契約の履行に着手」したということはできません。

例えば、買主側について履行の着手が認められる具体例には次のようなものがあります。

  • ・不動産の代金の一部として内金・中間金を支払ったこと(手付金の支払いは含まれません)
  • ・不動産の売買代金を準備したうえで、そのことを売主に通知し、物件の引渡し等を履行するように催促を行ったこと

買主側にこれらの事情があった時点より後には、売主は基本的には手付解除をすることができません。

なお、履行の着手が認められるかどうかは手付解除を認めてもよいかという観点も踏まえて、個別の事情を具体的に考慮して判断されます。
このため、「このケースに該当すれば必ず履行の着手が認められる」などと一律には判断できないことには注意が必要です。

どうしてもすぐに不動産を現金化したい場合にはどうすればいい?

仲介の形で市場で不動産を売却すると、どうしても買主を探したり売却手続を進めたりするために時間がかかってしまい、すぐには不動産を現金化することができません。

買主を探す時間も惜しく、一刻も早く不動産を現金化したいという事情がある方は、仲介ではなく「不動産買取」の形で不動産を売却するという方法もあります。

「不動産買取」とは、不動産業者が売主から直接不動産を買い取ることをいいます。
不動産買取の方法で不動産を売却すれば、仲介のように買主を探す必要がないため、その分だけ早く不動産の売却を完了することができます。

不動産買取には、迅速に不動産を売却できるというメリットがある一方、デメリットもあります。

不動産買取では、通常、仲介により不動産を売却する場合と比べると相場より低い価格でしか不動産を買い取ってもらえません。
これは、不動産業者が買取によって不動産を仕入れてその後市場で転売することによって利益を得る目的で、不動産買取を行っているからです。

売却価格がある程度低くなってもいいから一刻も早く不動産を売却して現金化したいという方は、不動産買取で不動産を売却することも視野に入れて検討してみるとよいでしょう。

これに対し、売却のためのスケジュールには余裕があり、相場どおりかそれ以上の価格で不動産を売却したいという方は、不動産買取ではなく仲介の形で不動産を売却するようにしましょう。

一刻も早く不動産を現金化したいのかそれとも相場並みの価格で不動産を売却したいのか、必要に応じて仲介か買取かを適切に選ぶことが大切です。

まとめ:不動産売買では契約時と引渡時の2回に分けて入金される

不動産売買では、契約時と引渡時の2回に分けて入金タイミングがあるのが基本です。

1回目の入金タイミングとして、契約時には手付金という形でお金を受け取ることができ、手付金は最終的には売却代金の一部に組み込まれます。

また、2回目の入金タイミングとして、決済・引渡しの時にはすでに支払われた分を除いた売却代金の全てが一括で支払われます。

不動産売買では、いつの時点でいくらぐらいの入金があるのかを知っておくことで、資金繰りの計画が立てやすくなります。

入金タイミングをしっかりと把握しておき、資金繰りに問題が生じないようにしましょう。

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