ポスティングされる不動産売却のチラシは信用していいの?
「不動産売却を勧誘するチラシが投函されていたけれど、これは信用できる?」
不動産売却を勧誘するチラシが郵便受けにポスティングされていることがあります。
中には、気になるチラシを目にして、「このチラシは本当に信用できるのだろうか」と考えたことがある方もいるでしょう。
気になる物件が記載されたチラシがもしも信用できるのであれば売買をしてもいいと考える方もいるかもしれませんが、一方で、ポスティングされるチラシは疑わしく信用できないのではないかと考えている方もいることかと思われます。
この記事では、ポスティングされる不動産売却のチラシが信用できるかどうかなどについて解説しています。
この記事を読むことで、不動産売却のチラシが信用できるか適切に判断したりよりよい査定依頼ができたりするようになります。
目次
不動産のチラシに対する規制とは
不動産に関するチラシには、主に買主向けのチラシと売主向けのチラシの2種類があります。
実は、この2つのチラシに対する規制の内容は異なっており、不動産のチラシが信用できるかはそのことを踏まえて判断する必要があります。
買主向けの広告チラシに対する規制:厳しい
買主向けの広告チラシに対しては、厳しい法的規制があります。
これは、不動産を購入する買主にとっては非常に高額な買い物であって不適切な広告に欺かれると被害が大きく、そのようなことがないようにする必要性が特に高いことがひとつの理由です。
買主向けの広告チラシに対する規制は、主に次の2つの法律に定められています。
- ・宅地建物取引業法
- ・景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)
これらの法律に基づく規制ルールでは、広告の記載方法や用語の使用制限などが定められており、誇大広告がしづらいようになっています。
このことから、買主向けの広告は規制ルールを守って作成されている限り、基本的には信用しやすいものであるといえます。
売主向けの広告チラシに対する規制:緩やか
売主向けの広告チラシ(募集広告)とは、不動産を売りたい人に向けて売却物件を募集し売却を勧誘するチラシのことです。
買主向けの広告チラシに対し、売主向けの広告チラシには基本的には法律上の規制がありません。
これは、不適切な広告に基づいて不動産を購入することで不利益を受ける買主に比べれば売主の側はそこまで大きな不利益を受けるとは限らず、保護する必要性が低いと考えられたことなどが理由です。
法律により規制ルールが設けられていないことからすれば、売主向けの広告チラシはどれだけ本当のことが書いてあるか分からず、買主向けの広告チラシよりも信用しづらいと考えることもできます。
本当に信用できる?注意するべき不動産売却のチラシの特徴
不動産売却を勧誘するチラシ(売主向けの広告チラシ)には、信用できるものと信用しづらいものとの両方があります。
売主向けの広告チラシだから全て信用できないというわけではないため、そのチラシが信用できるかは個別のチラシごとに判断する必要があります。
チラシが信用できるかどうかを判断するのは難しいところもありますが、注意したほうがいい不動産売却のチラシにはいくつかの特徴があります。
注意したほうがいい不動産売却のチラシの特徴を押さえておくことで、信用できないチラシにだまされてしまうリスクを減らすことができます。
ここからは、注意したほうがいい不動産売却のチラシの特徴についてご説明します。
「査定価格」が高いことを全面に打ち出している
チラシの中には「査定価格」が高いことを大きく打ち出しているものがあります。
査定価格が高ければ、それだけ高い価格で不動産を売却することもできるのではないかと思ってしまうのではないでしょうか。
しかし、実際には、査定価格が高いことには基本的にはあまり意味がありません。
単に査定価格が高くても、実際にその価格で売却できるとは限りません。
また、不動産会社には査定価格のとおりに成約させなければならないという義務はありません。
それなのに査定価格が高いことを全面に打ち出しているのは、チラシを見た者に対して「ここなら高く売却できるかもしれない」と過度の期待をもたせようとするものであり、場合によってはチラシを見る者を欺いてしまうような記載のしかただといえます。
このような記載をするチラシは、あえて高い査定価格が出ることを打ち出してその価格で売却できるかのように思わせ、自社で物件を取り扱えるように誘導する意図があるとも考えられます。
実際に高い価格で売却できるとは限らないのに高い価格で売却できるような印象を与えるものであり、注意してもよいものといえるでしょう。
相場より高い額を買取価格として示している
チラシによっては、「相場より高い額で買取できる」などとして市場で売却する場合の相場より高い額を買取価格として示していることがあります。
しかし、不動産会社が直接買取をする場合に、市場で売却する場合の相場より高い額で買い取ることは通常は考えられません。
なぜなら、不動産会社による直接買取は、その後に物件をリフォーム等で整えてから市場に転売して利益を得ることを目的としているものだからです。
もし相場より高い額で買い取ってしまうと、不動産会社は転売による利益を出すことができません。
不動産会社にとっては、市場で売却する場合の相場より高い額で不動産買取を行う理由がないのです。
チラシの中で相場より高い額を買取価格として提示していても、必ずそのとおりの額で買い取らなければならない義務が発生するわけではありません。
チラシを見て連絡しても、何らかの理由を示されてそのとおりの額では買い取られない可能性も十分にあります。
このため、このような記載があるチラシも、信用できるかは十分に注意して判断するべきです。
具体的な金額を示して購入希望者がいると記載している
「〇〇万円で物件の購入を希望している方がいます」など、具体的な金額を示して購入希望者がいると記載しているチラシは、本当にそのような購入希望者がいるのかは分からず、信用できるとは限りません。
通常、買主が不動産を購入する際には、購入する候補の物件をそれぞれ精査して詳しく比較したうえで、どの不動産を購入するか判断するはずです。
それなのに、物件の比較や精査も終わっていない段階の最初のチラシでいきなり具体的な金額を示すことは不自然です。
チラシにはそう書いてあったとしても、必ずしも本当にそのような購入希望者がいるとは限らず、もしかすると本当はそのような購入希望者はいないかもしれません。
具体的な金額を示して購入希望者がいるとうたっているチラシが信用できるかは、慎重に判断するべきです。
会社の情報が詳しく記載されていない
会社の情報が詳しく記載されておらず携帯電話番号などの連絡先や担当者の名字だけが少し記載されている程度のチラシは、基本的には信用できません。
しっかりとした会社であれば、会社の情報を詳しく書けるはずです。
あまりにも素性が分からないような情報しか載せていないチラシは、信用できるかを特に慎重に判断したほうがよいでしょう。
不動産会社がチラシをポスティングする理由
不動産会社がチラシをポスティングするのはなぜか、その理由を把握しておけばチラシが信用できるかを判断するひとつの助けになります。
「このチラシはなぜポスティングされているのだろう」という観点から不動産会社のチラシが信用できるのかを考えてみるのもよいでしょう。
会社の存在を認知してもらいたいため
不動産会社が不動産売却のチラシをポスティングする理由として大きなものに、「会社の存在を認知してもらいたい」というものがあります。
不動産売却の募集という形を取りつつ、同時に自分の会社があるということを知ってもらいたくて広告をポスティングしているということです。
不動産会社は、取り扱う物件の数があまりにも少ないと商売として成り立ちません。
いつでも売却する不動産を仕入れることができるように、不動産を売却したいと考えている人に常に自社の存在を知っておいてもらう必要があるのです。
不動産会社にとっては、チラシをまいてすぐに不動産売却につながればもちろん望ましいことなのですが、必ずしもそのことだけを狙っているのではありません。
いずれ機会があった際には自社のことを思い出してほしいという思いもあって不動産売却のチラシをポスティングしているという側面もあります。
不動産売却のチラシそのものが、不動産会社の広告のチラシとしての側面を持っているということです。
不動産会社の広告としてチラシをポスティングするのであれば、そのチラシに記載されている売却募集の情報はそれほど重要ではなく、むしろ自分の会社の名前や存在を印象に残して覚えてもらいたいという意図が大きいため、チラシの掲載情報もそのような意図を反映させたものとなっているかもしれません。
地域密着型の営業を行っているため
不動産会社の中には「地域密着型の営業を行なっている」ことを理由としてそのエリア内にチラシをポスティングすることがあります。
全国展開している不動産会社がチラシをポスティングしても広く薄い効果しか期待できないかもしれませんが、例えば東京23区の特定の区に限定して強みを持っている不動産会社であればその区内にチラシをポスティングすることには十分に意味があります。
チラシを受け取った人から見ても、自分の居住するエリアに強みがあるという不動産会社には興味を持つ可能性が高いです。
もしポスティングされたチラシがあなたの居住エリアに限定して地域密着型の営業を行っている不動産会社のものであれば、そのチラシは比較的信用できるものかもしれません。
チラシの記載内容や会社情報を確認して、地域密着型の営業を行っているものかどうかを確認してみるようにしましょう。
売り急いでいる売却希望者を探しているため
不動産会社は、売り急いでいる売却希望者を探す目的でチラシをポスティングしているのかもしれません。
売却物件を売り急いでいる売却希望者は、そうではない者に比べ、少しでも売却のきっかけをつかむためにポスティングされたチラシにもしっかりと目を通してくれる可能性が高いです。
チラシをポスティングして「チラシ経由でもいいから売れるならとにかくすぐに売りたい」と思っている売却希望者に届けば、不動産会社はそのような売却希望者の物件を取り扱える可能性があります。
売り急いでいる売却希望者は売却条件にこだわりがあまりなく、売却価格がある程度低くてもいいという人も多いため、早期に売却が完了する可能性が十分にあります。
早く売れれば売れるほど不動産会社はすぐに利益を上げることができることから、このような売却希望者の物件は不動産会社にとって取り扱う意味がある物件だといえます。
両手取引を狙っているため
「両手取引」(両手仲介)とは、不動産の売主と買主を両方自社で取り扱って仲介し、売買を成立させることです。
通常、不動産の売買では売主と買主がそれぞれ不動産仲介会社を見つけて仲介をしてもらい、それぞれが仲介手数料を支払います。
両手取引であれば、不動産会社にとっては売主と買主の両方から仲介手数料を受け取れるため、その分利益が高くなります。
両手取引を成立させるためには、自社で取り扱っている物件がたくさんあることが前提となります。
自社で多くの物件を取り扱いつつ、買主も探して売買を成立させることで、両手取引が可能となります。
このようなことから、不動産会社は自社で取り扱っている物件を少しでも増やしたいという目的でチラシをポスティングするのです。
チラシの不動産会社に依頼するメリット
ポスティングされたチラシだからといって、全てのチラシが信用できないということにはなりません。
中には、依頼するメリットがあるチラシも存在します。
ポスティングされたチラシの不動産会社に依頼するメリットについてご説明します。
地域密着型の良心的な不動産会社であれば売却に強い
チラシをポスティングしているのが地域密着型で長年事業を展開している良心的な不動産会社であれば、そのエリアの不動産売却には強みを持っていることが一般的です。
このような地域密着型の不動産会社につながれることが、チラシの不動産会社に依頼するメリットのひとつです。
また、長年事業を展開しており特定のエリアに特化して強みを持つ不動産会社であれば、チラシの内容にも誇大広告の要素があまりないことが期待できます。
長年事業を展開している地域密着型の不動産会社は、チラシも有力な営業ツールとして用いていることがあるため、チラシから存在を知るということも比較的よくあります。
このため、チラシの内容や不動産会社名から地域密着型の不動産会社であると判断できる場合には、そのチラシの不動産会社に依頼することにもメリットがあるといえるでしょう。
実際に購入希望者がいれば早く売却できる
不動産の売却を勧誘するチラシの記載のとおりに実際に購入希望者がいれば、早く不動産を売却できます。
購入希望者の中には、あらかじめ特定のエリアや物件に狙いを定めており、「このエリアで売却物件があれば優先的に購入を検討したい」と不動産会社に希望を出していることもあります。
特に、地域密着型で長年事業を展開している不動産会社はそのような購入希望者とのつながりがあることも多いです。
実際に購入希望者がいれば早くに不動産を売却できる可能性が高まるので、この場合にはチラシの不動産会社に依頼するメリットがあるといえます。
チラシの不動産会社に依頼するデメリット
チラシの不動産会社に依頼することにはデメリットもあります。
場合によっては、チラシの不動産会社を信用して依頼してしまうと、想定していなかった不利益を受けてしまうこともあり得ます。
このことについてご説明します。
チラシの記載内容が誇大広告である可能性がある
チラシの記載内容が誇大広告である可能性は常にあります。
ウェブサイトと異なり、チラシは特定のエリアにしかポスティングされずその分目にする人が少ないため、外部からのチェックが働きにくい傾向があります。このため、誇大広告をしても指摘が入りにくい可能性が高いです。
チラシの記載内容が誇大広告であれば、それを信じて連絡してもそのとおりに話が進むことはほとんどありません。
チラシの不動産会社への依頼を検討するにあたっては、チラシの記載内容が誇大広告でないかを常に慎重に考えて、信用してよいチラシなのかを適切に判断することが大切です。
相場より安い不動産買取に誘導される可能性がある
チラシには売却希望者にとって都合がいいことばかりを書いておき、連絡を取らせるように誘導して、連絡があれば不動産買取に誘導するという手法が取られることがあります。
不動産買取は、不動産会社が自ら買い取ってその後に転売して利益を得ることを目的としたものであり、一刻も早く売却したい人にとってはメリットのあるしくみである一方、時間に余裕があり少しでも高く売却したい人にとってはメリットが少ない売却方法です。
不動産会社によってはチラシを通して不動産買取に誘導して利益を上げようと考えてチラシをポスティングしているものもあることから、そのようなチラシではないかを適切に判断する必要があります。
もしチラシの不動産会社に依頼して実際には相場より安い不動産買取に誘導されるようなことがあれば、そのことはチラシの不動産会社に依頼するデメリットであるといえます。
不動産売却を成功させるためのポイント
チラシを通じて不動産を売却するにしても、それ以外の方法により売却するにしても、ポイントを押さえて売却することが不動産売却を成功させるためには欠かせません。
不動産売却を成功させるために押さえておきたいポイントについてご説明します。
査定を複数の会社に依頼する
不動産がいくらで売れるのかを知るための査定は、できるだけ複数の会社に依頼するようにしましょう。
一社だけに査定を出してもらっても、その査定が適正なものであるのかどうか判断がつきません。
もしかしたら、その一社の査定は適正な範囲から大きく外れており信用できないものかもしれません。
複数の会社に査定を依頼していれば、外れ値を除外して判断することができます。
このように、不動産売却の査定結果は複数のものを比べることで初めてどの程度の範囲が適正なのかを把握することができます。
査定は、できるだけ複数の不動産会社に依頼してたくさん出してもらうようにしましょう。
少なくとも2〜3社以上に査定を依頼するのがおすすめです。
相場を調べて確認しておく
不動産がいくらで売れるのかという相場は自分で調べて確認しておくことが大切です。自分で相場を調べて把握しておくことで、不動産会社の査定結果がどの程度信用できるのかをおおむね把握できます。
不動産売却の相場を調べる方法のひとつに、ウェブ上の売却物件情報を比較するというものがあります。
ウェブ上にご自身の売却物件と似たエリア・築年数・広さなどの条件である売却物件情報があれば、それを参考としておおまかな相場を把握することができます。
インターネットで検索すると売却されている不動産の情報がたくさん出てくるので、まずはご自身で検索してみて似た条件の売り物件がないかを調べてみるとよいでしょう。
不動産会社は自分で探す
不動産会社は自分で探すということも大切です。
「不動産会社を自分で探す」ということは、自分で主体的に情報を集めてどの不動産会社に依頼するかを判断するということです。
例えば、チラシがポスティングされたからとりあえずなんとなくその不動産会社に依頼するというのは自分で探していることにはなりません。
自分で不動産会社を積極的に探して吟味するという意識がなければ、もしその不動産会社があまりよくない会社だったとしても、見抜くことができません。
不動産会社は自分で選ぶのだという意識を持つようにすることが大切です。
もし不動産会社は自分で選ぶという意識があれば、チラシがポスティングされたからといってそれを全面的に信用することなく、慎重にチラシが信用できるかを判断することができます。
また、自分で積極的に不動産会社を選ぶ姿勢があれば、チラシだけでなくインターネットなどからも不動産会社を探して比較検討することができます。
より幅広く多くの不動産会社を比較検討すれば、よりよい不動産会社に依頼できる可能性が高まります。
まとめ:不動産売却のチラシが信用できるかはよく注意して判断する
不動産売却のチラシがポスティングされていたからといってとりあえずそれを信用するということは全くおすすめできません。
ポスティングされたチラシが信用できるかはケースバイケースであり、特に慎重に判断することが望ましいです。
チラシを信用できるかを判断するにあたっては、複数の査定を取るなどして複数の不動産会社を比較検討することが大切です。
自分からインターネットで探すなどもして、できるだけ複数の査定を取ってから不動産会社を比較検討するようにしましょう。
不動産売却を成功させるためには、安易にポスティングされたチラシを信用するだけでなく、ご自身で主体的に不動産会社を選ぶという気持ちを持って複数の不動産会社を比較検討することが大切です。