旗竿地は売れない?高く売却できる土地の特徴や売却時のポイントを紹介
この記事でわかること
- 旗竿地とはなにかがわかる
- 旗竿地が売れないといわれる理由がわかる
- 売れる旗竿地と売れない旗竿地の違いがわかる
- 旗竿地を売却するときのポイント・注意点がわかる
土地を売却するとき「旗竿地は高く売れない」と聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
土地は整形であるほど高値になっていきます。
旗竿地は特殊な形をしているため、一般的には売りづらくなってしまいます。
しかし、すべての旗竿地が売りづらくなるわけではありません。
本記事では旗竿地とはどのような土地なのか、売れないと言われる理由、売れる旗竿地の特徴などについて解説します。
旗竿地とは
旗竿地とは、文字通り旗竿の形をした土地です。
旗竿地は旗の部分と竿の部分から成り立っています。
竿の部分は通路のようになっており、一般的に建物を建築できる幅はありません。
建物は、竿部分の奥にある旗部分に建築します。
旗竿地は大きな土地を切り売りしてできるため、分譲地や建売住宅の販売によって発生します。
本来であれば不動産会社は高値で売却できる整形地に切り分けて販売したいと考えますが、土地の形によってはどうしても整形地だけに切り分けられません。
そのため、旗竿地にせざるを得なくなり、旗竿地が増えていってしまうわけです。
旗竿地が売れないといわれる理由
旗竿地が売れないといわれる理由はいくつかあります。
ほとんどの理由は、旗竿という特殊な形状が売れない理由につながっています。
旗竿地がなかなか売れない理由は、次のとおりです。
- 建築費が高くなる
- 再建築不可物件の可能性がある
- 有効宅地面積が少ない
- 建築制限を受けやすい
- 縦列駐車しかできない可能性がある
本章では、旗竿地がなかなか売れない理由について解説します。
建築費が高くなる
一般的に、旗竿地は整形地よりも建築費が高くなってしまいます。
旗竿地は隣地と接している部分が整形地より多く、ブロック塀やフェンスなどの設置距離が長くなりがちです。
また、旗部分が隣地に囲まれているケースも多く、全方位に対してフェンスなどを設置しなければいけません。
ブロック塀やフェンスなどの外構費用は設置物の長さにより大きく変わるため、旗竿地の外構費用は整形地より高くなります。
また、竿部分の幅が狭く、建築材料運搬車が旗部分に乗り入れできない場合も建築費用が上がってしまいます。
このような場合、道路から旗部分まで建築資材を手作業や小さな重機を利用して運びますが、余計な手間がかかってしまうため、建築費用は上がってしまいがちです。
旗竿地の売買価格が整形地より低くても、建築費用と旗竿地売買代金を合わせるとかなりの金額になるケースがあります。
そのため、買い手から敬遠されてしまい、売却がなかなか進めなくなってしまいます。
再建築不可物件の可能性がある
旗竿地の中には再建築不可物件があり、再建築不可物件だとなかなか売れません。
再建築不可物件とは、土地上に現存している建物を取り壊した場合、建物を再度建築できなくなる土地です。
建築基準法により建物を建てられる条件が定められており、道路幅員4mかつ間口2m以上ない土地には建物を建築できません。
つまり、旗竿地の竿部分の間口が2m未満の場合、再建築不可物件となるわけです。
建物を建築するための基準は1950年に決まったため、1950年よりも前に区割りされた旗竿地は間口が2m未満の土地が多くあります。
なお、たとえ間口が2m以上あったとしても竿部分がくびれており、くびれの部分の幅が2m未満だと再建築不可物件となります。
旗竿地を売却するときには間口2m以上あったとしても、竿部分に2m未満の場所がないか確認しましょう。
再建築不可物件となると土地を購入して建物が建築できなくなるため、買い手の需要が極端に減ります。
そのため、再建築不可物件の旗竿地の売却価格はかなり低額になってしまいます。
有効宅地面積が少ない
旗竿地は整形地に比べ有効宅地面積が少なく、売買金額が低くなります。
有効宅地面積とは、建物が建築できる面積です。
旗竿地の場合、竿部分は有効宅地ではないということです。
たとえば、旗竿地の全体面積が100㎡あったとしても、竿部分の面積が30㎡だったとしたら
100㎡ – 30㎡ = 70㎡(有効宅地面積)
このように70㎡しか有効的に土地が使えないということになってしまいます。
そして、この土地の相場が㎡単価30万円だとすると整形地の価格は以下の計算になります。
100㎡ × 30万円/㎡ = 3,000万円
しかし、旗竿地の土地価格は以下のようになります。
(100㎡ – 30㎡)× 30万円/㎡ = 2,100万円
このシミュレーションの場合、整形地と旗竿地の売却価格差は900万円になります。
旗竿地と整形地では面積が同じでも大きな価格差がでるため、売却相場を自分で調べるときには注意しましょう。
高く売れると思い込んでいると買い手がなかなかつかず、資金計画に狂いが出てしまいます。
建築制限を受けやすい
旗竿地は周りを建物に囲まれているケースが多く、建築する建物に制限を受けやすくなります。
四方を住宅に囲まれていると、隣からの目線が入らないように窓の位置を工夫して建築しなければいけません。
そのほかにも洗濯物干しの場所を調整しなければいけない、隣地との境界線から建物を離して建築しなければいけないなど建築に制限が出てきます。
建築制限を多く受けることで自分の理想の住まいが建築できなくなってしまうため、買主は旗竿地の購入を見送ってしまうケースが出てきます。
縦列駐車しかできない可能性がある
旗竿地の竿部分の幅によっては、車を縦列駐車で駐車しなければいけなくなります。
車を多く利用する人は、車を出し入れし車の位置を変えなければいけません。
旗竿地で車の出し入れを毎日しなければいけないと、生活にストレスを感じてしまいます。
また、竿部分の幅が狭いほど隣地のブロック塀やフェンスが近く、出庫時に道路の往来を確認しにくくなるというデメリットもあります。
前面道路の交通量が激しい、子どもの通学路になっていると、出庫に神経を使わなければいけません。
売れる旗竿地と売れない旗竿地の違い
ここまでは旗竿地が売れない理由を解説してきました。
しかし、旗竿地によっては売れる旗竿地もあります。
売れない旗竿地と売れる旗竿地ではどのような違いがあるのでしょうか。
本章では売れない旗竿地と売れる旗竿地との違いについて解説します。
売れない旗竿地
ここまで述べてきたように、売れない旗竿地の特徴は次のとおりです。
- 再建築不可物件
- 竿部分の幅が狭く重機が旗部分まで到達できない
- 旗部分が狭く隣地が近い
- 前面道路の交通量が多い
上記のような特徴がある旗竿地は、買主にとって購入するリスクが高い旗竿地です。
土地を購入しても自由に建築できない、建築する費用が高い、プライバシーが守りにくいなどの理由があるからです。
特に再建築不可物件は、売却価格を相場よりかなり安くしなければいけません。
建築ができない土地を購入する人はほとんどおらず、買い手はなかなか現れないでしょう。
売れる旗竿地
売れる旗竿地は、売れない旗竿地の特徴に当てはまらない土地です。
たとえば、次のような条件の旗竿地は売れる旗竿地です。
- 竿部分が広く並列駐車できる
- 竿部分が広く重機が旗部分まで到達できる
- 旗部分が大きく隣地と距離がある
上記のような旗竿地の場合、整形地に近い感覚で建物が建築できます。
整形地と同じような建築条件であれば、買い手の需要も高まり、旗竿地でも売却できます。
旗竿地という形状上、売却相場より少し低めの価格で売り出す必要はあるものの、買主としてはお手頃で整形地に近い建築条件の土地が購入できるため、早期売却できるケースもあります。
そのため、旗竿地だからといって売れないわけではなく、旗竿地の形状によって売りやすさが変わってきます。
旗竿地を売却するためのポイント
旗竿地を売却するためのポイントは多くありますが、売却するためのポイントは旗竿地の形状ごとで異なります。
具体的には、次のような条件によってポイントが変わってきます。
- 竿部分の幅が2mの旗竿地
- 竿部分の幅が2.5m以上ある旗竿地
- 竿部分の隣接地が売りに出ている旗竿地
本章では旗竿地を売却するためのポイントを、旗竿地の形状ごとに解説していきます。
竿部分の幅が2mの旗竿地
旗竿部分が2mの旗竿地には、旗部分まで4トントラックが入れません。
4トントラックは幅が約2.3mあり、建築資材を旗部分まで運搬できません。
そのため、建築費が整形地よりも高額になってしまいます。
また、軽自動車が駐車場に必要な幅は、約2.1mといわれています。
これは軽自動車幅約1.5mとドアを開けたときの幅0.6mを足した数字です。
竿部分にフェンスやブロック塀を設置する場合、2mでは軽自動車の乗り降りも厳しくなってしまいます。
このように竿部分が2mの場合、建物を建築するのも生活するのにも支障が出てきてしまいます。
買い手にとっては厳しい条件が揃ってしまうため、竿部分が2mの場合は不動産買取で売却するのがおすすめです。
不動産買取であれば売却金額の調整だけで、旗竿地の売却が終わります。
一般の買い手を探すと売却できないということも考えられます。
売却が長期間に渡ると売れ残り物件のレッテルを貼られ、相場を下回るような値段交渉されてしまうケースもあるため注意しましょう。
竿部分の幅が2.5m以上ある旗竿地
竿部分の幅が2.5m以上ある旗竿地は、売れる可能性が高い旗竿地です。
竿部分の幅が2.5m以上になると4トントラックが侵入でき、普通車を竿部分に止められるようになます。
そのため、買い手からの購入需要が見込め、旗竿地でも売却できる可能性が高くなります。
ただし、縦列駐車をしなくてはならず、アプローチが作れない幅のため、売れやすい旗竿地とは言い切れません。
早く売却するためにも不動産会社の協力を得て建築参考プランなどを作成してもらい、買い手に購入してもらいやすい状況にしてもらいましょう。
竿部分の隣接地が売りに出ている旗竿地
竿部分の隣接地が売りに出ている場合は、旗竿地と隣接地と同時に売却できないか検討しましょう。
旗竿地がなかなか売れない理由は、竿部分の存在です。
もし竿部分の隣接地とともに1人の買主が購入してくれれば、竿部分のデメリットが解消され、高く売却できる可能性もあります。
また、旗竿地が建築不可物件の場合は、売りに出ている隣接地を購入する手段もあります。
竿部分の隣接地が購入できれば、建築不可を解消可能です。
建築不可を解消できれば建築不可物件として安値売却する必要はなく、通常の相場の売却が可能になります。
もし隣接地を購入しから売却する場合、不動産会社に相談しましょう。
不動産は、購入するにも売却するにも費用がかかります。
隣接地を購入して売却した結果、赤字になっては何も意味がありません。
不動産会社に資金計画を立ててもらい、購入するメリットが大きければ隣接地購入を進めていきましょう。
旗竿地の評価額の計算方法
旗竿地の評価額の計算方法は、整形地の評価額計算方法とは異なります。
整形地の場合、次の計算式で計算した金額が評価額になります。
評価額 = 路線価 × 面積(㎡)
なお、路線価とは国税庁が公表している土地の評価を計算するための数字です。
ホームページで公開されており、誰でもインターネットで確認できます。
旗竿地の評価額の計算方法は整形地と違い、次の計算式で算出します。
評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 間口狭小補正率 × 面積(㎡)
奥行価格補正率は国税庁が公表している数字であり、道路よりも土地がどのくらいの奥行きにあるかで価格を調整するために使用します。
住宅地の奥行価格補正率は、次の表のとおりです。
奥行(m) | 普通商業・併用住宅地区 | 普通住宅地区 |
---|---|---|
4m未満 | 0.90 | 0.90 |
4m以上6m未満 | 0.92 | 0.92 |
6m以上8m未満 | 0.95 | 0.95 |
8m以上10m未満 | 0.97 | 0.97 |
10m以上12m未満 | 0.99 | 1.00 |
12m以上14m未満 | 1.00 | 1.00 |
14m以上16m未満 | 1.00 | 1.00 |
16m以上20m未満 | 1.00 | 1.00 |
20m以上24m未満 | 1.00 | 1.00 |
24m以上28m未満 | 1.00 | 0.97 |
住宅地の間口狭小補正率は、次の表のとおりです。
間口幅(m) | 普通商業・併用住宅地区 | 普通住宅地区 |
---|---|---|
4m未満 | 0.90 | 0.90 |
4m以上6m未満 | 0.97 | 0.94 |
6m以上8m未満 | 1.00 | 0.97 |
8m以上 | 1.00 | 1.00 |
旗竿地の売却時に注意すべきこと
旗竿地は整形地に比べて買い手が少ない傾向にあります。
そのため、旗竿地を売却するときには、いかに買い手を増やすかがカギになります。
買い手の数を増やすために、次の項目に注意しながら不動産会社に売却活動をしてもらいましょう。
- 中古戸建として売却する
- 買取を利用する
- 賃貸にできないか検討する
- 土地売買に強い不動産会社を探す
本章では、旗竿地の売却時に注意すべきことについて解説します。
中古戸建として売却する
売却する旗竿地に一戸建てがある場合、中古戸建として売却しましょう。
旗竿地を購入検討してくれる買い手は、整形地より少なくなります。
しかし、中古戸建として売り出すことで、中古戸建を探している買い手にも検討してもらえるようにします。
また、中古戸建として売り出すと、長期間売れなくても土地の固定資産税・都市計画税の負担が減るのでおすすめです。
固定資産税・都市計画税は土地上に住宅がある場合、一定面積分まで減税を受けられます。
そのため、土地として売り出して長期間売却できないと、土地の固定資産税・都市計画税の負担が大きくなってしまいます。
なお、土地上に建物がある場合の土地の固定資産税・都市計画税減税幅は、次の表のとおりです。
住宅の敷地面積 | 固定資産税評価額の軽減率 | 都市計画税評価額の軽減率 |
---|---|---|
小規模用土地(200㎡以下) | 評価額 × 1/6 | 評価額 × 1/3 |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 評価額 × 1/3 | 評価額 × 2/3 |
表のとおり、土地の固定資産税は最大で1/6に、土地の都市計画税は最大で1/3になります。
土地上に住宅があるだけで減税が受けられため、売却が長期間に及ぶと考えられるのであれば住宅は残したまま売却しましょう。
中古戸建として売却した結果、買い手から更地渡しにしてほしいといわれるケースもあります。
そのようなときに備え、住宅の解体見積もりを取得するなどの準備をするのも忘れないようにしておきましょう。
買取を利用する
旗竿地はなかなか売却できないケースが多いため、仲介だけでなく買取の利用を検討しましょう。
買取は仲介よりも売却価格が下がってしまうものの、仲介にはないメリットがあります。
たとえば、買取には次のようなメリットがあります。
- 売りにくい不動産でも売却できる
- すぐに現金化できる
- 仲介手数料を払わなくてもよい
- 契約不適合責任を負わなくてよいケースがある
このように、買取には多くのメリットがあります。
売却価格が下がるデメリットとメリットを比較して、メリットのほうが多いと感じた人は買取に向いているかもしれません。
また、買取のメリットに魅力は感じるものの、仲介にも魅力を感じてしまう人には「買取保証付仲介」をおすすめします。
買取保証付仲介とは、一定期間仲介として不動産を売り出し、期間経過後、不動産会社と取り決めした金額で買取してもらうサービスです。
買取保証付仲介を選択すれば、一定期間は仲介として売り出すため、高額売却を狙えます。
そして、仮に仲介でなかなか売れなかったとしても、一定期間が過ぎれば買取で必ず現金化できます。
ただし、買取保証付仲介をしている不動産会社は限られるため、依頼したいと考えている不動産会社が買取保証付仲介をしているか事前に確認しておきましょう。
賃貸にできないか検討する
旗竿地は売却に向いていなくても、賃貸に向いているときがあります。
もし繁華街に旗竿地がある場合、賃貸経営を検討するのも1つの方法です。
賃貸希望者は駅から近い、生活利便施設が近所にあるなどを重視して住まい探しをします。
そのため、多少にぎやかすぎる場所でも借り手は多くいます。
反面、購入希望者は静かで生活するのにストレスを感じない立地を好みます。
住まいを探す点でいえば共通ですが、希望する物件に大きな違いがあるのです。
旗竿地が賃貸希望者にある立地であれば、不動産会社に賃貸経営をしたときのシミュレーションを作ってもらいましょう。
賃貸でもやっていける土地であれば賃貸という選択肢が増えるため、長期間の売却になっても焦ることなく売却活動ができます。
土地売買に強い不動産会社を探す
旗竿地を売却するときには、土地売買に強い不動産会社に売却依頼しましょう。
旗竿地はなかなか売却できないため、売却できるコツを知っている不動産会社に売却を依頼しなければいけません。
コツを知らない不動産会社に売却を依頼すると、売却方法がわからず長期間売れないという事態になってしまいます。
土地売買に強い不動産会社かどうかは、次の事項で確認します。
- 査定時担当者に旗竿地の売却方法を尋ねる
- 査定依頼した不動産会社のホームページで売却実績を確認する
- 不動産会社の免許番号を確認する
もし土地売買に強い不動産会社であれば、旗竿地の売却方法も知っているはずです。
旗竿地売却について売却方法を具体的に話せる営業マンであれば、安心して旗竿地売却を任せられます。
また、不動産会社としての歴史が長い企業は、様々な不動産売却方法を知っています。
そのため、不動産会社の免許番号を確認し、創立から何年経過しているのか確認しましょう。
免許番号から営業年数は、免許番号の()の中の数字を確認すればわかります。
たとえば、東京都知事(3)第123456号という免許番号であれば、()内の数字である3を見ます。
この3という数字は3回免許を更新したという数字です。
不動産免許は5年に1度(1996年3月以前は3年に1度)更新しなければいけません。
つまり、この例で挙げた不動産会社は15年以上営業していることになります。
まとめ
旗竿地とは、旗と竿を合わせたような形の土地です。
特殊な形をしており、物件によってはなかなか売却できません。
とくに竿の部分の幅が2mしかない場合や、再建築不可物件のときは売却活動が長期間必要であると考えておかなければいけません。
ただ、売れないわけではないため、買取や中古戸建として売りに出すなど対策を考えておくことが大切です。
対策をしっかりとした上で信頼できる不動産会社に売却活動を依頼し、旗竿地をスムーズに売却していきましょう。