不動産売買の仲介手数料の相場を紹介【売主・買主別に支払うタイミングも解説】
この記事でわかること
- 不動産売買における仲介手数料とは何かがわかる
- 不動産売買における仲介手数料の相場がわかる
- 仲介手数料を支払うタイミングと仲介手数料を支払うための資金の調達方法がわかる
- 仲介手数料の割引についてどのように考えたらよいかがわかる
不動産売買を行うときにはさまざまな諸費用が発生します。
買主側の例でいうと、所有権移転の登記費用、住宅ローンを利用するのであればローン事務手数料、抵当権設定費用などです。
中でも金額が大きいのは、不動産売買の仲介手数料(媒介手数料)です。
今回は、不動産売買における仲介手数料について、その概要と計算方法、仲介手数料を支払うタイミングなどについて詳しく説明します。
不動産の仲介手数料は、不動産会社によってさまざまな金額が設定されており、中には仲介手数料を無料と表示している業者もあります。
このような業者に本当に頼んでもいいものか、不動産協会の内情についても紹介します。
不動産の仲介手数料について理解を深めることで、仲介会社を決めるときの参考にしてください。
不動産売買の仲介手数料とは
不動産売買における仲介手数料とは、不動産売買の仲介業務を行うことに対する報酬として支払う金銭です。
具体的には、以下のような業務を行うことに対する報酬として理解されています。
- ・物件情報の公開、広告戦略等によって、不動産の売主もしくは買主を見つけること
- ・契約交渉の媒介人として売買当事者双方が納得する契約条件をまとめること
- ・契約に関する書類を作成すること
- ・契約手続きから引渡し・代金決済までを確実に実行すること
不動産売買の仲介を依頼するときは、依頼先の不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類がありますがどの契約を締結しても仲介手数料に違いはありません。
不動産仲介会社を探すには
売主が不動産仲介会社を探す場合、売却対象物件がある地域の不動産会社を訪問して、売却したい旨を相談するのが一般的です。
そして、売却対象物件の訪問査定を依頼し売却価格の目処をつけてもらいます。
最近では一括査定サービスを提供するインターネット上のサービスがありますので、そちらの利用を検討してみるのもよいでしょう。
買主が不動産仲介会社を探す場合、不動産を買いたい地域の不動産会社を訪問する方が多いでしょう。
もっとも、現在ではインターネット上に不動産情報サイトがたくさんありますので、購入したい不動産をインターネット上で検索し、目星をつけてからその不動産を取り扱っている不動産仲介会社に仲介を依頼する方法もあります。
仲介手数料の相場
不動産売買の仲介手数料は、不動産業者が適正な仲介手数料を超えて暴利を得ることを防止するため、宅地建物取引業法によってその上限が定められています。
不動産会社は、その名目を問わず、実質的に仲介手数料として受取る金額の総額について、法定の上限を越えることはできません。
以前は、売主側・買主側とも、仲介手数料の上限は同じでしたが、2020年の宅地建物取引業法の改正によって仲介手数料の上限が異なることになりました。
売主の仲介手数料
売主側の仲介手数料の上限は以下のように定められています。
物件価格(消費税抜)が400万円以下の場合 | 18万円(プラス消費税) |
---|---|
物件価格(消費税抜)が400万円以上の場合 | 物件価格(消費税抜)×3%+6万円(プラス消費税) |
以前は、400万円以下の物件価格の場合については、売主側の仲介手数料について低廉な手数料率が定められていました。
400万円以下の物件価格の売買はそれほど多くなかったため、問題となることは少なかったのですが、近年では木造住宅の空き家問題が発生し、400万円以下の物件も売買されるケースが増えてきました。
しかし、仲介手数料が少なすぎて広告活動や営業活動に十分な時間と労力を割くことができず、築古の木造住宅の不動産市場での流通が妨げられていたのです。
このような状況を打破するために、宅建業法が改正され、400万円以下の物件価格の不動産売買については仲介手数料の上限を一律18万円(消費税抜)に設定されました。
買主の仲介手数料
買主側の仲介手数料の上限は以下のように定められています。
物件価格(消費税抜)が200万円以下の場合 | 物件価格(消費税抜)×5%(プラス消費税) |
---|---|
物件価格(消費税抜)が400万円以下の場合 | 物件価格(消費税抜)×4%+2万円(プラス消費税) |
物件価格(消費税抜)が400万円以上の場合 | 物件価格(消費税抜)×3%+6万円(プラス消費税) |
買主側の仲介手数料については、2020年の宅建業法の改正後も以前と変更はありません。
仲介手数料の計算方法の例
それでは、いくつかの売買事例について、仲介手数料の上限について計算シミュレーションをしてみましょう。
(例1)
物件価格 | 土地 | 200万円 |
建物 | 50万円(消費税抜) |
売主側の手数料:18万円(消費税抜)
買主側の手数料:250万円×4%+2万円=12万円(消費税抜)
(例2)
物件価格 | 土地 | 1,000万円 |
建物 | 2,000万円(消費税抜) |
売主側の手数料:3,000万円×3%+6万円=96万円(消費税抜)
買主側の手数料:3,000万円×3%+6万円=96万円(消費税抜)
ひとつの不動産会社が、売主側と買主側双方の仲介に入った場合には、上記の仲介手数料を双方から受け取ることになります。
別々の不動産会社が売主側、買主側それぞれに仲介に入った場合には、それぞれの不動産会社が売買の当事者の一方から仲介手数料を受け取ることになります。
土地建物の価格割合がはっきりしない場合についての処理方法
今まで見てきた通り、不動産の仲介手数料は、土地建物の消費税抜の価格を元に算出されます。
個人間の居住用住宅の売買の場合については、通常消費税がかからないためにあまり問題になりませんが、特に投資用物件を購入する場合には、建物に消費税がかかってきます。
しかし、売買対象物件の物件概要において、土地建物の価格が合計金額しか表示されていないこともよくあることです。
その場合、土地・建物の価格割合をどのように考えるか、そして建物の税抜価額をどのように設定するかについては大きな問題となります。
土地建物の価格割合についてどのように決定するかは、定まったルールがあるわけではありません。
売買当事者双方が協議した上で決定します。
一般的には、固定資産税評価額の評価額の割合をもとに売買価格を按分したり、土地の実勢価格を先に算出し、売買価格から土地の実勢価格を差し引いた金額を建物価額にしたりする方法がとられています。
仲介手数料を支払うタイミング【売主・買主別】
仲介手数料は諸費用の中で大きな割合を占めるために、仲介手数料を支払うタイミングを知ることは、不動産売買における資金繰り計画を立てるときにぜひ確認しておきたい事項です。
このとき、売主と買主とで仲介手数料を支払うタイミングについてはそれほど変わりありませんが、資金調達の方法については大きく異なる点があります。
売主が仲介手数料を支払うタイミングと資金
仲介手数料を支払うタイミングは、売買契約成立時、及び引渡し時です。
売買契約成立までに、インターネットに物件を掲載したり、現地内覧会を開催したり、買主と契約条件の交渉をしたりとさまざまな業務が発生しますが、あくまで、仲介手数料の請求権が発生するのは売買契約時となっています。
仲介手数料の支払い方法については、契約成立時に50%、引渡し時に残額を支払うことが一般的ですが、契約成立と引渡しの間の日時が短い場合には引渡し時に一括して支払うこともよくあります。
この点については、媒介契約時に不動産仲介会社に確認しておくことをおすすめします。
売主は、仲介手数料の支払いに買主からの支払い代金を充てることができるので、通常の場合、媒介手数料分について手元資金として用意しておく必要はありません。
売主は買主から、売買契約時に契約金(手付金・内金)として、物件価格の10%から20%、引き渡しに残金を受け取ることが多いため、仲介手数料の支払金額を、買主から受け取る売買代金で賄うことができます。
実務においては、契約金や残代金の受領について、あらかじめ銀行の担当者に連絡を取り、口座の入金を確認してもらうよう手配するとともに、仲介手数料の支払いについて事前に振込票などを作成しておくことで、スムーズに出金をすることができます。
その他にも、ローンがある場合にはローンの繰上弁済手数料や抵当権の抹消手続きなどがあるために、銀行の担当者とは密に連絡を取っておきましょう。
買主が仲介手数料を支払うタイミングと資金
買主が、不動産会社に仲介手数料を支払うタイミングは、売り主と同様に、売買契約成立時、及び引渡し時です。
仲介手数料の支払い方法についても、契約成立時に50%、引渡し時に残額の支払い、もしくは引渡し時に一括払いという方法がある点も、売主と変わるところはありません。
しかし売主と大きく違うのは、買主は売買代金を支払う側であるために、仲介手数料は手元資金として別に用立てする必要がある点です。
自己資金で賄えるならばそれに越したことはありませんが、自己資金が心もとない、あるいは手元に残しておきたいというような場合には、借入をすることも視野に入れて検討する必要があります。
住宅金融支援機構が提供するフラット35の場合、借入できる資金の項目の中に、仲介手数料が含まれています。
民間の金融機関の住宅ローンの場合でも、物件価格を超えるオーバーローンを提供している商品や、諸費用について別にローンが組める諸費用ローンを提供している場合があります。
フラット35や、民間の住宅ローンを利用する場合は、住宅ローンの借入期間や金利がそのまま適用されるために、一般のローンよりも有利な条件で借り入れをすることができます。
別に諸費用ローンを組む場合には、借入期間が若干短く、金利は若干高めに設定されていることが通常です。
いずれのローンを活用する場合においても、金融機関の担当者とよく相談して、仲介手数料を支払うタイミングにおいてローンの実行が可能かどうかを確認する必要があります。
仲介手数料の値引き交渉はおすすめできない
先に述べた仲介手数料の計算方法はあくまで上限であって、仲介手数料の値引きをすることや仲介手数料を受け取らないことについては法律で制限するものではありません。
したがってインターネットで検索してみると、「仲介手数料無料!」や「仲介手数料50%引き」などと宣伝をして、売買の仲介案件を受託しようとしている不動産会社がいます。
結論から言うと、不動産売買の仲介において、むやみに仲介手数料の値引きを交渉するのは、あまりおすすめめできません。
特に不動産売買のプロや、プロの不動産投資家が不動産の売買取引する場合には、仲介手数料の割引を交渉することはほとんどありません。
宅建業法では、適正な金額として不動産売買の仲介手数料を設定しており、不動産仲介会社は多くの営業努力と時間と手間をかけて契約成立に向けて業務を行うことからすれば、仲介手数料は決して高い金額とは言えません。
ここでは、仲介手数料を割引することができる業界のカラクリと、仲介手数料の割引を交渉しない方がいい理由について説明します。
不動産仲介手数料の商慣習とカラクリ
なぜ不動産会社は、不動産売買の仲介手数料を割引できたり無料にすることができたりするのでしょうか。
これは、不動産売買において当事者の一方からだけではなく、当事者の双方から売買手数料をもらうことができることが大きく関係しています。
仮に売主の仲介の場合、買主を自分で探すことができれば少なくても買主からは仲介手数料を受け取ることができます。
また、業界内では、複数の仲介会社が売買に関わった場合、仲介手数料を按分するということもよく行われています。
したがって、少々手数料額が小さくても案件を受託したいという不動産会社は、仲介手数料の割引や無料を宣伝して、多くの案件情報を収集しようとするのです。
しかし、仲介手数料額をディスカウントすることについては以下のようなデメリットがあります。
成約に向けての熱意が失われる
不動産会社には、多くの不動産売買の情報が収集され、多くの案件について売買契約を締結し、同時に売却活動を行っています。
担当者によっては、10件、20件の売買案件を同時にこなしていることもあるほどです。
このような場合に、仲介手数料が満額もらえる案件と、ディスカウントされた案件とでは、売却活動に対する熱意に差が生じても仕方ありません。
また、買主の探索のためには、様々なことを行う必要がありますが、仲介手数料がディスカウントされれば、十分な広告費をかけられない可能性もあります。
その結果、売却先が見つからないまま媒介契約の契約期限を迎えたり、売却先との契約条件の交渉について不利な点が現れたりすることにもなりかねません。
信用や実績・経験が充分でない可能性がある
インターネットで検索すると、仲介手数料の割引を宣伝している不動産会社へのアクセス件数が多く、検索リストの上位に表示されるために、仲介手数料の割引が一般的であるように思えます。
しかし、ほとんどの不動産会社では仲介手数料の割引は行っておりません。
物件価格が数億円になるような案件においては、端数の6万円については請求しない例も多く見られますが、通常の場合、法定の上限金額を請求する場合がほとんどです。
そうであるにもかかわらず、仲介手数料を割引してまで案件を受託したいという不動産会社は、信用や実績、経験が充分でないために物件の売買情報が集まってこないからではないかとの疑念を抱いてしまいます。
不動産の取引が豊富であれば、今まで取引した不動産業者や投資家、一般の顧客から、売買の相談を受けたり、不動産会社が集まる会合に出席して人脈を広げたりするなどして売買物件を受託しているものです。
あまり、仲介手数料をディスカウントして物件情報を集めるということはしていません。
いわゆる「囲い込み」をされる可能性がある
不動産仲介における「囲い込み」とは、主に専任媒介契約(依頼した不動産仲介会社以外の会社と同一物件の売買について媒介契約を締結できない媒介契約)を締結した場合において、自社が探索した買主以外の買主との交渉を拒否する行為をいいます。
専任媒介契約を締結すると、不動産流通機構が運営する不動産情報ネットワークサービス(レインズ)に物件情報を登録する必要があります。
したがって、買主となりうる方の情報を有している多くの不動産業者から、物件情報の照会の連絡を受けることになります。
悪徳な不動産会社は、このような情報を受けたときに「検討客がいるので・・・」などと対応して拒否し、自社が独自に見つけた買主と契約交渉をしようとするのです。
買主を自分で見つければ、仲介手数料が2倍になります。
したがって、少々売主分の仲介手数料を割引しても、場合によっては受け取らなくても、一応は利益が出るのです。
しかし、「囲い込み」をされると、せっかく早期に契約できたケースでも売買を先延ばしされる可能性があります。
最悪の場合には、契約できずに終了する場合もあります。
囲い込みを行っている業者が、すべて仲介手数料の割引きを行っているわけではありませんが、悪徳業者に騙されやすくなることは否定できません。
このようなことを避けるためにも、仲介手数料については正規の手数料を支払って、信頼できる不動産会社に仲介を依頼したいものです。
それでも仲介手数料を安く抑えたいとき
それでも、諸般の事情によって仲介手数料を安く抑えたいという場合があるかもしれません。
その場合には、以下のようなことについて、不動産会社に相談してみるとよいと思います。
もっとも、仲介手数料の金額の交渉をするのではなく、仲介業務の内容(広告方法、現場立会い、契約条件の交渉内容など)について、手厚いサービスが受けられるように交渉するのが先決だと思います。
「理由」をはっきり伝え「時期」を考える
仲介手数料の割引を提案するためには、それなりの理由が必要です。
売主の場合には、売却額が希望価格に満たない、買主の場合には、提案された不動産が予算オーバーであった、購入時期が希望の時期と合わない、などです。
理由がはっきりしていれば、売買仲介の担当者も上司に仲介手数料の割引を提案しやすくなることが考えられます。
また、仲介手数料の割引を提案する時期については、できれば不動産媒介契約を締結する前のほうが良いと思います。
不動産媒介契約を締結すると、仲介会社は本格的な広告活動や他社への物件紹介、不動産情報サイトへの登録等などの売却活動を行うために、それなりの人件費と必要経費が発生します。
不動産会社に迷惑がかからないように、仲介手数料率や金額については媒介契約締結前に合意しておいた方が、その後のコミュニケーションもスムーズですし、気持ちの良い取引ができます。
売却額の交渉次第で仲介手数料の値引きを求める
不動産売買の売主側が、希望売却価格よりも安価な金額で契約条件がまとまりそうであれば、値引き分について、不動産仲介業者が受け取る仲介手数料を割引することで補填する、ということを交渉することがあります。
不動産売買では、売り出し価格そのままで売買価格が定まることは少なく、売買価格の交渉が行われます。
買主から売買価格の値下げを交渉されているときに、一定金額以下の場合には、手数料を減額してくれることを条件に売買金額の交渉に応じるというものです。
売買金額が数十億円規模になってくると、仲介手数料が数千万円から数億円になってくることから、このような強気の交渉をする場合があります。
数千万円規模の一般の住宅の売買の場合には、不動産業者に嫌がられることが多いために、あまりおすすめできません。
買取サービスを利用する
不動産売買における「買取」サービスとは、不動産業者が自ら物件の買主となって売買契約を締結するもので、この場合、そもそも不動産の仲介手数料はかかりません。
不動産買取は、スピーディーに売却手続きが進むこと、通常では買い手を見つけることが難しい案件についても買取してくれることがあるなど、さまざまなメリットがあるために、特に売却を急ぐ必要がある場合にはよく利用されるサービスです。
相続税の納税のため、離婚の際の財産分与のためなど、期限までに不動産を換金したい場合には、利用することも一考の余地があります。
しかし、買取価格は市場価格から1割から2割前後安くなるために、仲介手数料を支払いたくないがために買取サービスを活用するのは本末転倒です。
買取サービスを利用する場合には、安い価格で売却をするだけの理由があるかについて十分に検討しましょう。
まとめ
不動産の仲介手数料は、諸費用の中でも割合が大きく、負担に感じる人も多いでしょう。
しかし不動産の仲介担当者は不動産のプロであり、多くの労力を費やして不動産の売買活動を行うために、法定の手数料を支払うことは、決して高いというわけではありません。
仲介手数料について不動産会社に相談するときには、仲介手数料に見合ったサービスを提供してもらえるのかに重点を置いて、業務内容や実務の流れなどについて確認してみてください。