市街化区域の農地転用届出方法・必要書類について
この記事でわかること
- 市街化区域内の農地の種類がわかる
- 市街化区域内の農地転用の仕方が理解できる
- 生産緑地の売却方法や活用方法がわかる
目次
市街化区域にある農地の種類
市街化区域内にある農地は、一般的な農地と生産緑地の2種類に分かれます。
ここでは、この2種類の農地について紹介していきます。
一般的な農地とは
市街化区域内にある農地で生産緑地法上の農地でない場合を、一般的な農地と呼びます。
市街化区域内にある一般的な農地は、農耕をする目的だけの土地で農地法上の制限がかかります。
農地ではあるもの市街化区域内にある農地は、一般的に固定資産税評価額が宅地並みに評価されています。
そのため、農地ですが固定資産税は宅地並みに課税されます。
生産緑地とは
市街化区域内にある農地で生産緑地法上の農地の場合、生産緑地と呼びます。
生産緑地は、都市計画制度上で農林業や漁業との調和を図るため、地域地区の1つとして設けられた農地や森林のことです。
生産緑地に指定されると、固定資産税評価額が農地並みの課税額になり、固定資産税額が低くなることや贈与税の猶予、相続税の猶予など税金面で優遇を受けることができます。
なお、生産緑地に指定されるためには、次のような条件が必要です。
- 良好な生活環境の確保の効果があって、公共施設の敷地に向いている
- 農地の面積が近隣を含め500㎡以上の面積がある(各市町村の条例によっては300㎡以上)
- 農業をしており、継続的に農業ができる土地
市街化区域の農地転用届出方法・必要書類
市街化区域内にある農地が一般的な農地である場合は、農地法上の手続きをすることで農地以外の用途に転用できます。
これを農地法第4条届出、農地法第5条届出といい、簡単に農地転用届ということもあります。
この農地転用の方法や必要書類について詳しく解説していきます。
なお、農地法第4条届出は、所有者が農地を引き続き所有し続け、農地を農地以外に転用する届出のことで、農地法第5条届出は、所有者が農地を売却もしくは賃貸し、買主もしくは借主が農地を農地以外の用途にする場合のことをいいます。
どちらの農地転用も行う手続きや必要書類は同じです。
農業委員会への書類提出準備
農地転用の届出は、農地転用をする農地がある土地を管轄する農業委員会へ提出をします。
農業委員会へ提出する必須書類は、次のとおりです。
- 農地転用届出書(正本・副本):農地転用をする土地を管轄する市町村などのホームページからダウンロード可能です(一部市町村は除く)
- 土地登記簿謄本(全部事項証明書):法務局で入手し、発行から何か月以内と有効期間を設定する市町村もあります
- 公図:法務局で取得します
- 土地の位置を示す地図:住宅地図やGoogleマップなど
場合によっては、次の書類も必要になる場合があります。
- 仮換地証明書:区画整理地内の農地転用をする場合に必要
- 住民票や戸籍:全部事項証明書の所有者の住所や氏名が現在の住所や氏名と異なる場合
- 求積図(測量図):土地の一部を農地転用する場合
- その他:小作権解除証明書や遺産分割協議書などが必要な場合があります
農業委員会へ書類を提出
前述した書類を準備し、農地転用をする土地を管轄する農業委員会へ書類を持参します。
農業委員会へ書類を持参し、内容に不備がない場合には大体1週間から2週間以内に農業委員会から農地転用受理証という書類が発行されます。
農地転用は届出だけでよいため、この農地転用の受理証があれば農地転用届に記載した工事を開始することができます。
農地転用は基本的に受理されるものであり、受理されない場合は次のような事項に該当するときだけです。
- 農地転用届を提出した農地が市街化区域にない場合
- 届出者が農地転用届を出す農地について農地転用をする権利がない場合
- 添付しなければならない書類に不備がある場合
生産緑地を手放す・活用する方法
生産緑地は、生産緑地法により解除する手続きが非常に大変な上に、相続税猶予などを受けている場合は、解除と同時に猶予された税金がさかのぼって課税されてしまいます。
そのため、生産緑地をそのまま続けて農業を行うのか、税金をさかのぼって課税されるのを見越して生産緑地を解除した上で売却するのかを検討しなければなりません。
ここからは、生産緑地をどのように手放せばよいのか、活用すればよいのかなどを紹介していきます。
生産緑地を手放す方法
生産緑地を手放す=売却するためには、生産緑地を解除する必要があります。
生産緑地を解除しないと農地や農業関係にしか利用できないため、土地としての需要がほとんどなく売却ができないからです。
生産緑地を解除するためには、次のような条件のいずれかを満たす必要があります。
- 生産緑地指定された日付から30年経過すること
- 生産緑地で農業を主におこなっている人が農業をできないほどの障害や病気にかかること
- 生産緑地で農業を主に行っている人が死亡したとき
生産緑地が解除できるかは生産緑地を設定した市町村により異なるため、生産緑地解除を検討されている方はあらかじめ市町村へ確認しておきましょう。
その他に生産緑地を解除するには、上記の条件を満たした上で市町村に生産緑地の買取申請をします。
この買取申請をして市町村が生産緑地を買取らないという判断をすれば、生産緑地が解除されます。
また、生産緑地を解除する場合に税金猶予を受けていた場合、さかのぼって税金が課税されます。
さかのぼって課税される税金は人によって数百万円単位になるため、どのくらいの税金が課税されるのか税理士などの専門家に確認してから生産緑地の解除を進めてください。
生産緑地の解除後は農地転用が可能になるため、農地転用をした上で売りに出します。
ここまでの手続きができていれば、生産緑地を普通の宅地として売却することが可能になります。
生産緑地を継続して農地として活用する
生産緑地を解除する条件は厳しく、解除条件を満たしていても、税金がさかのぼって課税されることにより、金銭的に解除できないということがあります。
そのような場合は、生産緑地のまま営農を続けていくという選択肢があります。
生産緑地を続けていく限り固定資産税は農地としての課税になり、相続が発生しても相続税の猶予が受けられます。
ただし、注意したいのが生産緑地を長く続ければ続けるほど、さかのぼって課税される税金の額が膨らんでいき、解除したくても金銭的に解除ができなくなるということです。
そのため、ある程度の課税で済むときには売却してしまうことを検討してもよいかもしれません。
生産緑地法で認められた範囲で貸し出す
2018年の都市農地賃借法制定が施行されたことにより、それまで生産緑地では認められていなかった第三者による営農も可能になりました。
また、農地法では法定更新が適用され、一度貸してしまうと貸した相手が農業を辞めるまで貸し続けなければいけませんでしたが、特定生産緑地では法定更新をしなくてもよいとされたため安心して賃貸することが可能となりました。
なお、特定生産緑地とは特定生産緑地制度を利用し、市町村から特定生産緑地と指定された生産緑地です。
特定生産緑地制度は、生産緑地の所有者などが特定生産緑地にするという同意を基に特定生産緑地に指定したものです。
さらに買取申出ができる期限を10年延長でき、30年経過前と同様の税制優遇を引き続き受けることが可能な制度のことです。
まとめ
市街化区域内の農地は、生産緑地か生産緑地ではない農地に分かれます。
通常の農地であれば農地転用届を農業委員会へ提出することにより、宅地へ変更することができます。
農地転用は行政書士などに依頼をして数万円で代行してもらうことが一般的ですが、自らでも行えるような手続きです。
一方、生産緑地を宅地に変える場合は、変更する要件が厳しく、税金をさかのぼって課税される可能性があるため専門家の指導のもと、解除するかどうかを決めます。
安易に解除してしまうと相当な金額の税金が請求されてしまうことがあります。
生産緑地を解除しない場合は、引き続き自ら営農することや、第三者に営農してもらうことも可能です。
生産緑地は税制優遇を行けられるというメリットもあるため、うまく生産緑地制度を活用していきましょう。