長期優良住宅の固定資産税はいくら?減額措置や節税効果シミュレーション
この記事でわかること
- 長期優良住宅とは何かがわかる
- 長期優良住宅の固定資産税減額措置とは何かがわかる
- 長期優良住宅の固定資産税減税措置の適用要件がわかる
- 長期優良住宅の固定資産税節税効果がわかる
現在、高い居住性能を有し、住みよい状態を長く保つことができる住宅の普及が求められています。
この長期にわたって高い居住性がある住宅のうちの1つが長期優良住宅です。
このような住宅は国が普及を図るため、税金を安くする措置を講じています。
長期優良住宅には、固定資産税や登録免許税、不動産取得税などの税金が一般住宅に比べ課税額が低くなります。
そのため、長期優良住宅を取得するときには、どのような税金がどのくらい節税できるのかを知っておく必要があります。
本記事では、長期優良住宅の固定資産税に絞って解説します。
最後まで読み進めて頂ければ、長期優良住宅とは何か、長期優良住宅の固定資産税減税措置、減税措置の適用要件、節税効果を理解することができます。
目次
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、国土交通省が定めた長期優良住宅認定制度の基準を超えた住宅です。
長期優良住宅認定制度で定められている条件は、次のとおりです。
- 長期で住宅を利用できる構造や設備を有していること
- 居住環境などへの配慮を行っていること
- 一定の建築面積以上を有している住宅であること
- 維持保全の期間や維持保全の方法を定めていること
- 自然災害への配慮をしていること
ここでは条件を大まかに記載しましたが、実際には各条件について、細かな内容が決められています。
たとえば、耐劣化性や耐震性、省エネルギー性など条件は多岐にわたります。
長期優良住宅の固定資産税減額措置とは
現在の日本の住宅はスクラップ&ビルドが続いており、この状態を解消するべく、長年利用することができる長期優良住宅を増やす政策が取られています。
長期優良住宅を増やす政策の一環として、固定資産税の減税措置が実施されています。
長期優良住宅の固定資産税減税措置の具体的な内容は、次の表のとおりです。
ただし、建物固定資産税の減税措置を受けることができるのは、令和6年3月31日までに新築住宅を建築・購入をすることが条件です。
固定資産税 | 都市計画税 | |||
---|---|---|---|---|
新築一般住宅 | 新築長期優良住宅 | |||
標準税率 | 1.4%※1 | 0.3%※1 | ||
減額される割合 | 1/2 ※2 | 減額制度なし | ||
減額される期間 | 戸建て住宅 | 3年 | 5年 | |
マンションなど※3 | 5年 | 7年 |
- ※1 固定資産税・都市計画税ともに自治体が税率を決定します。そのため、自治体によっては標準税率を採用していない自治体もあることには注意してください
- ※2 1戸あたり120㎡までの部分のみ減額
- ※3 3階建て以上の耐火・準耐火建築物
新築長期優良住宅は新築一般住宅に比べ、2年間長く固定資産税の減税を受けることができます。
築6年以降(3階建ての耐火建築物・準耐火建築物の場合は築8年以降)には固定資産税や都市計画税の減税措置はありません。
なお、減税期間中の住宅を購入した場合は、減税される残存期間を引き継ぐことになります。
減税期間中に対象の住宅を購入しても、減税期間が延長されることはありません。
例えば、築3年の一戸建ての長期優良住宅を購入したとします。
一戸建ての長期優良住宅の固定資産税減額期間は5年ですが、その5年の期間のうち3年が経過しています。
そのため、固定資産税の減額期間は残り2年です。
長期優良住宅の固定資産税減税措置の適用要件
長期優良住宅の固定資産税減税措置を受けるには、一定の条件があります。
長期優良住宅の固定資産税減税措置を受けるための条件は、次のとおりです。
【適用条件】
- 令和6年3月31日までに建築・購入すること
- 住宅の延床面積が50㎡以上280㎡以下であること
- 長期優良住宅認定通知書を取得していること
この条件を満たした上で、固定資産税を課税する自治体に申請する必要があります。
具体的には、以下の方法で行います。
【申請方法】
- ①認定長期優良住宅に係る固定資産税の減額適用申告書に必要事項を記入
- ②長期優良住宅認定通知書の写しを添付
- ③新築された翌年の1月31日までに自治体に申請
なお、長期優良住宅認定通知書は、建物を建築した地域を管轄する自治体から取得できます。
取得には建築会社に発行手数料として1万円~5万円程度支払い、建築会社が代行して長期優良住宅認定通知書の発行を行います。
申請後、おおよそ1週間程度で長期優良住宅認定通知書が発行されます。
長期優良住宅の固定資産税の計算方法
新築の長期優良住宅を建築・購入すると、建物の固定資産税減税措置を受けることができます。
ここからは、新築の長期優良住宅を建築・購入したときの固定資産税の計算方法を紹介していきます。
長期優良住住宅の固定資産税計算方法は、次のとおりです。
建物の固定資産税減税措置は、120㎡までの部分しか適用されません。
120㎡を超える部分については、通常の固定資産税が課税されます。
なお、固定資産税課税標準額とは、固定資産税課税標準額は固定資産税評価額を調整した数字で、固定資産税を計算するもとになる数字です。
そのため、固定資産税課税標準額は、固定資産税評価と同じ金額にならない可能性があることには注意が必要です。
固定資産税課税標準額は、以下の書類で確認することができます。
- 自治体からの郵送されてくる固定資産税納税通知書
- 自治体で取得できる固定資産税評価証明書
- 自治体で取得できる固定資産税公課証明書
長期優良住宅の固定資産税節税効果をシミュレーション
新築の長期優良住宅を建築・購入した場合、新築一般住宅を取得するよりも多く減税されます。
ここからは、シミュレーションをしながら長期優良住宅の減税がどれくらい節税になるのか紹介していきます。
条件
- 取得する一戸建ての面積:110㎡
- 建物購入価格:2,500万円
- 建物評価額:1,250万円(評価率50%)
- 税率:固定資産税1.4% 都市計画税0.3%
- 固定資産税の評価替えは取得後3年目と仮定
- 計算は取得から5年間
シミュレーション【1~3年目までの固定資産税計算】
新築長期優良住宅・新築一般住宅共通
1,250万円 × 1.4% × 1/2 = 87,500円(固定資産税)
【1~3年目までの都市計画税計算】
新築長期優良住宅・新築一般住宅共通
1,250万円 × 0.3% = 37,500円(都市計画税)
【1~3年目までの固定資産税と都市計画税の合計】
新築長期優良住宅・新築一般住宅共通
87,500円 + 37,500円 = 125,000円(固定資産税と都市計画税の合計金額)
125,000円 × 3年 = 375,000円(取得から3年間の固定資産税・都市計画税合計金額)
【評価替えの計算】
1,250万円 × 0.68 ÷ 0.8 = 約1,062万円(評価替え後の固定資産税評価額)
※評価額計算は、経年減点補正率(1~3年目)0.8、経年減点補正率(4年目)0.68で計算
【4、5年目までの固定資産税計算】
新築長期優良住宅
1,062万円 × 1.4% × 1/2 = 74,340円(固定資産税)
新築一般住宅
1,062万円 × 1.4% = 148,680円(固定資産税)
【4、5年目までの都市計画税計算】
新築長期優良住宅・新築一般住宅共通
1,062万円 × 0.3% = 31,860円(都市計画税)
【4、5年目までの固定資産税と都市計画税の合計】
新築長期優良住宅
74,340円 + 31,860円 = 106,200円(固定資産税と都市計画税の合計金額)
106,200円 × 2年 = 212,400円(4、5年目の2年間の固定資産税・都市計画税合計金額)
新築一般住宅
148,680円 + 31,860円 = 180,500円(固定資産税と都市計画税の合計金額)
※固定資産税と都市計画税の合計金額の100円未満は切り捨て
180,500円 × 2年 = 361,000円(4、5年目の2年間の固定資産税・都市計画税合計金額)
【全期間合計】
新築長期優良住宅
375,000円 + 212,400円 = 587,400円(5年間の固定資産税・都市計画税合計金額)
新築一般住宅
375,000円 + 361,000円 = 736,000円(5年間の固定資産税・都市計画税合計金額)
【5年間の新築長期優良住宅と新築一戸建てとの差額】
736,000円 – 587,400円 = 148,600円(5年間の差額)
このシミュレーションの場合、新築長期優良住宅は新築一般住宅に比べて148,600円安くなるという結果になりました。
新築一般住宅よりも新築長期優良住宅のほうが、固定資産税を節税することができます。
そのため、同じ評価額の中古一戸建て(築6年以降)と比べると、より多くの節税効果があることがわかります。
まとめ
長期優良住宅には様々な税金の減税措置が設けられています。
その減税措置を設けている税金の1つが固定資産税です。
固定資産税は、新築の長期優良住宅を取得した場合、5年間、固定資産税額が半額になります。
普通の新築一戸建ても固定資産税額が半額になりますが、半額になる期間は3年間です。
この2年間の差は大きく、10万円単位での節税効果を生みます。
このように取得する不動産により、税金の課税額が大きく変わるため、どのような不動産を購入したときにどの税金の減税措置を受けることができるのかを把握しておかなければなりません。
不動産は購入するために多くのお金を使うため、節税できるものは節税をし、快適でゆとりのある生活を送ることが大切です。