不動産売買契約を解除する・解除されたときの流れを確認!【違約金など売却成功のための注意点とは】
この記事でわかること
- 不動産売買締結後に契約解除をする場合のメリット、デメリットがわかる
- 不動産売買契約を解除する場合にとる手続きがわかる
- 不動産売買契約を解除する場合に注意すべきポイントがわかる
一度不動産売買契約を締結してしまうと契約は解除できないのでしょうか。
契約を締結した後になって、事情が変わった、物件が思っていた内容と違っていた、気が変わったなどの事情によって、契約を解除する場合もあります。
この記事では、不動産売買契約の概要から、解除する場合にとる手続き、解除する場合に注意すべきポイントまで解説します。
目次
不動産売買契約は売主・買主のどちらからも解除可能
不動産売買契約とは何かという前提から、義務が発生するタイミング、解除の手続きを含めて簡単に解説します。
不動産売買契約とは
まずは、不動産売買契約とはいったいどのような契約なのかを考えます。
でしょうか。
そもそも売買契約は、売主が不動産を売りたいと思い、買主がその不動産を買いたいと思い、当事者同士の条件や意思表示が合致することで成立します。
その意味では、売主も買主も当事者の一方であるという意味では平等の立場です。
売主が不動産業者である場合は、宅建業法という法律による縛りがあるのですが、基本的には売主と買主は平等な立場であることが大前提です。
契約の締結と義務が発生するタイミングについて
それでは、不動産売買契約はいつ成立して、いつ消滅するのでしょうか。
法律上は、不動産売買契約は「売主と買主の両者の意思の合致」があったときに成立するとありますが、これは非常に抽象的で分かりにくい表現です。
これを実際の場面に当てはめると、売主と買主が不動産売買契約書に署名をした時点で、不動産売買契約が成立すると言えます。
そのため、例えば申込書を書いた時点や、宅建士から重要事項説明書の説明を受けた時点では、まだ不動産売買契約が締結されているとは言えません。
不動産売買契約が締結された後は、買主は代金を支払う義務が発生します。
一方、売主には不動産を引き渡す義務が発生します。
そして、この義務を果たさない場合は原則として債務不履行になってしまい、損害を賠償しなければなりません。
契約成立する前に義務が発生するか
例外的なケースですが、契約書を取り交わす前でも損害を賠償しなければならないケースもあります。
これは契約が成立する前の準備段階で、一方が信頼に基づいて費用を掛けてしまった場合です。
過去の判例では、歯医者さんがマンションで開業しようと契約して、売主に相談したところ売主は歯医者が入居する専用に契約前に電気工事をしてしまったが、最終的には契約が成立しなかったという事例です。
これは非常にまれなケースですが、契約する前だからと言って、一切費用を払わなくても良いというわけではありませんので注意しましょう。
重要事項説明書と混同しないこと
不動産売買契約書の署名と非常に似たような行為で、宅建士による重要事項説明書の説明に関する署名というのがあります。
宅建業法では、不動産業者に対して契約前に宅建士による重要事項説明書の説明を義務付けています。
この重要事項説明書には、土地や建物に関する制限や、法令上の制限、違約金や損害賠償の予定額などの不動産売買契約に関する重要な内容が含まれています。
解除は売主・買主のどちらからも可能
それでは、不動産売買契約の解除は誰からできるのでしょうか。
常識的には、買主から買いたいと申し込んだのだから、買主からしか解除できないようにも思えます。
しかし、前に説明した通り、契約を結ぶか結ばないかは買主と売主の自由であり、売主も買主も当事者の一方であるという原則から、買主からだけではなく、売主からも不動産売買契約の解除を申し出ることができるのです。
売主側が契約解除を申し出る事例
実際の現場では、不動産売買契約を締結した後に、事情が変わり売主から契約解除を申し出るケースもいくつも存在します。
ここでは具体的な事例を挙げながらご紹介していきます。
手付金倍返しによる売主からの解除とは
実際の不動産売買実務でもたまにあるのが、手付金倍返しによる解除です。
通常不動産売買契約が成立すると、契約成立の証拠として一定の金額を買主から売主に渡します。
これを手付金と言います。
そして、残代金支払いの段階になってその手付金が代金に充当されて、残りの金額を支払うというのが多くの不動産売買契約の流れになっています。
この手付金の相場は売買金額によって変動はありますが、売主が不動産業者で買主が一般の方の場合の上限は売買金額の20%です。
手付金倍返しによる契約解除の場合は、売主が受け取った手付金をそのまま買主に返還すると同時に、更に同額を買主に支払うということです。
但し、この手付金倍返し解除ができるのは相手が履行に着手する前までなので注意が必要です。
手付金倍返しをした具体例
売主から契約解除を申し出るケースの大半は、契約締結後にもっと高い値段で買ってくれる買主が見つかってしまった、というケースがあります。
例えば、第一の買主と3,500万円で契約をして手付金350万円を受け取ったが、その後第二の買主から同じ不動産を5000万円で購入したいという話が持ちかけられた場合です。
損得勘定だけで計算すると、売主は第一の買主には受け取った350万円を返還して更に350万円を支払ったとしても、第二の買主と契約した方が売却価格が1500万円なので、差し引きしても350万円プラスになっています。
最終的には買主は解除した方トータルの計算ではプラスになっているというわけです。
契約違反による売主からの解除とは
不動産売買契約が成立すれば、売主には不動産を買主に引き渡す義務が生じます。
不動産売買の場合は、現実に引き渡すだけではなく、不動産登記の所有権を売主から買主に移転してはじめて売主の義務を履行したと言えます。
ところが、売主が契約の履行の準備をして相手に通知したにもかかわらず、買主が非協力で売主の義務を実行できない場合は、催告をした上で、売主から契約を解除することができます。
この場合は契約違反を理由に解除と同時に損害賠償を請求できるのが民法の原則ですが、後述の通り、実務上は違約金として損害賠償の予定額を支払うという条項が契約書に含まれていることがほとんどです。
契約違反による解除の具体例
売主から契約違反による解除の具体例は、売主が所有権移転の準備をしているにもかかわらず買主がそれに応じないというケースです。
例えば、代金と引き換えなのに代金の支払いに応じてくれない場合や、どれだけ催促しても所有権移転に必要な書類を準備してくれないなどのケースがあります。
消費者契約法に基づく売主からの取り消しとは
不動産売買契約の売主が一般の人で買主が不動産業者のケースは、消費者保護の観点から、消費者契約によって一般の人が保護されます。
この保護の内容の一つに、一般の人である売主から、契約の取り消しができると取り決められています。
消費者契約法では、不実の告知や断定的判断の提供、故意による不利益事実の不告知によって消費者が誤認した場合、もしくは不退去、退去妨害または監禁によって消費者が困惑した場合に、消費者から契約を取り消すことができると定められています。
消費者契約法に基づく解除
消費者契約法に基づく売主からの解除の事例は余りありませんが、以下のような具体例が考えられます。
例えば、不動産業者から土地を売って欲しいと言われた際に、事実ではないにもかかわらず「まだ公開されていないが、この周辺の土地は産業廃棄物によって土壌が汚染されているのでほとんど値段のつかない土地になる。
一年後には報道されて値崩れするのでいますぐ当社に売った方がいい」と勧誘され、不動産売買契約をさせられたようなケースが該当します。
当事者双方の合意による解除とは
他の解除事例は買主の同意を得ずに一方的に解除するケースですが、契約締結と同様、買主と売主に意思の合致によって契約をなかったことにする場合も存在します。
これを当事者双方の合意による解除と呼びます。
売主側が契約解除するときの手続きの流れ
それでは売主から契約を解除したいと考えたときにはどのような手続きを取れば良いのでしょうか。
その後のトラブルに発展しないように、解除すると決めたら実行までの流れを具体的に説明します。
解除しようと考えたら最初にすること
売主側には通常不動産会社が媒介としてついていることが多いため、まずは不動産会社の担当者にすぐに相談しましょう。
主な相談内容はなぜ契約を解除したいのかを明確にすることです。
なぜなら、この際の契約を解除したい理由によって、すでに受け取った手付金をどうするか、買主に損害賠償を請求するかが決まるからです。
どの手段で解除するにしても迅速が第一であること
契約を締結したあとは買主も契約から発生する義務を履行する準備をしているのが通常です。
つまり、お互いに不動産売買契約後は決済に向けて動いているのですから、ゆっくりしているとどんどん損害が拡大していってしまいます。
そのため、方針として解除することが決まれば素早く動くことを第一に考えましょう。
トラブルを避けるために必ず書面で伝える
では、売主から買主に対して不動産売買契約の解除を伝えるときには、どのような手段を用いるべきでしょうか。
迅速さを優先するなら電話か直接会って、という選択肢もありますが、やはり将来のトラブルが生じないように、電話と書面などのように複数の手段を確保して伝えるようにしましょう。
電話などの口頭だけでは後に残るものがなくトラブルに発展する可能性もあります。
書面に残すというのは外せないポイントです。
内容証明郵便か書留で郵送する
不動産売買契約後の解除の場合は、契約前と違って、双方がそれなりにこの契約締結までに時間とお金を掛けていることがほとんどです。
つまり、それだけ手間を掛けているので、不動産売買契約が解除となったらかなりの高確率で金銭的なトラブルに発展することが多いのです。
特に、解除の意思表示をした時点は後々裁判の争点になることも多いので、必ず内容証明郵便か書留で確実に相手に届いた証明を残すことをお勧めします。
いつ解除の効力が発生するのか
売主から不動産売買契約を解除する場合、解除の理由によってその後の費用負担、手付金、違約金の支払いなどが変わってきます。
解除の意思表示が到達した後に、手付金倍返しであれば実際に手付金を交付した時点で、違約金を支払っての解除であれば支払い時点で、白紙解除であれば意思表示が到達した時点で契約解除の効力が発生します。
買主側が契約解除を申し出る事例
続いて、逆に買主から契約解除を申し出るケースをいくつかご紹介していきます。
売主からの解除に比べて、買主からの解除はいくつかの細かい場合分けがあるため、そのまま事例をご紹介していきます。
ローン特約解除の具体例
不動産売買契約は通常高額なので現金一括で買うことは少なく、大抵の場合は銀行で住宅ローンを組んで購入します。
しかし、売主の属性によっては、もしくはその他の事情で銀行から住宅ローンが否決されてしまう場合も中にはあります。
買主が故意に過去の個人信用に関わるトラブルを隠している場合は別ですが、景気の状況や銀行の融資に対する考え方で住宅ローンが組めない場合にも、既に渡した手付金を没収するというのは買主にとって余りにもリスクが高すぎます。
そこで、一般的な不動産売買契約書には、売主は手付金をそのまま返却するといういわゆる白紙解除の条項を入れます。
実務上買主から解除をするケースで一番多いのがローン特約による解除です。
契約違反による解除の具体例
売主からの解除で説明した通り、不動産売買契約が成立すれば、売主には不動産を買主に引き渡す義務が生じます。
買主は残代金を準備して相手に通知したにもかかわらず、売主が非協力で所有権移転を実行できない場合は、催告をした上で、買主から契約を解除することができます。
この場合も買主からの解除同様に、契約違反を理由に解除と同時に損害賠償を請求できるのが民法の原則ですが、実務上は違約金として手付金と同額を支払うという条項が契約書に含まれていることがほとんどです。
消費者契約法に基づく解除の具体例
不動産業者が売主で、一般の人が買主のケースは、消費者保護の観点から消費者契約によって一般の人が保護されます。
売主からの解除と同様に、この保護の内容の一つに、一般の人である買主から契約の取り消しができると取り決められています。
例えばそのような計画がないのに、新しい路線が開設されるなどと不実の告知を間に受けて買主が不動産売買契約した場合は、買主から契約を取り消すことができます。
契約不適合責任に基づく責任追及とは
契約不適合責任とはどのような仕組みでしょうか。
実は、契約不適合責任とは2020年4月1日から施行された改正民法において新しくできた呼び方で、これまでは瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)と呼ばれていた責任のことです。
簡単に説明すると、買主が契約をした目的を達することができない場合には、買主は契約不適合責任に基づいて補修を請求したり、代金を減額したり、損害賠償をしたり、不動産売買契約を解除することができるというものです。
契約不適合責任に基づく補修の具体例
買主が売主に対し、引き渡しをした不動産が契約の目的を達成するために不備がある場合は、買主は売主に対して補修を求めることができます。
例えば、居住するためにマンションを購入したのに玄関のドアが壊れて住むことができない場合は、買主は売主に対して契約不適合責任に基づいて修理をするように請求することができます。
契約不適合責任に基づく代金減額請求の具体例
契約不適合責任に基づいて買主から売主に対して代金減額請求をすることも可能です。
例えば、100坪の土地として契約したにもかかわらず、実測してみると90坪しかないケースは、契約不適合責任に基づいて、買主から売主に減額を請求できます。
ただし、特約がある場合は特約が優先するので注意しましょう。
契約不適合責任に基づく契約解除の具体例
契約不適合責任に基づく解除をするためには、買主が契約をした目的が達成できない場合を指します。
例えば「3階建ての建物を建てる目的で土地を購入したのに、その土地には建築制限があり3階建ての建物が建てられない土地だった」というようなケースです。
このようなケースだと、買主は土地を購入した目的を達成することができないので、契約不適合責任に基づいて買主は契約を解除することができます。
クーリングオフによる解除の具体例
非常に場面は限定されますが、一定の条件を満たすと買主が一度締結した不動産売買契約を一方的に解除することもできます。
この場合の解除のことを、「クーリングオフ」と呼びます。
このクーリングオフ制度が使えるためには
- (1)売主が不動産業者であること
- (2)売買契約が事務所・自宅以外の冷静に判断できない場所で締結されたこと
の2つの条件を満たす必要があります、
しかし、売主の不動産業者からするとこのクーリングオフを使って解除されると非常に困るので、実際の不動産業者は(2)の条件が満たされないようにほぼ必ず事務所などで契約締結を行います。
その結果、このクーリングオフ制度はほとんど利用されないのです。
手付放棄解除の具体例
今まで説明した解除の内容に該当しない場合でも、買主から解除をすることは可能です。
それは、買主が契約締結時に支払った手付金を放棄して解除する方法です。
ただし、売主からの解除でも説明した通り、手付金放棄や倍返しで解除できるのは、契約の相手方に契約履行の着手をするまでの間です。
そのため、相手方が契約の履行に着手してしまったあとは手付放棄で解除できなくなってしまうため注意が必要です。
どういった行為が「契約の履行の着手」に該当するかは、不動産売買契約内容によって変わりますが、一般的には心の中だけではなく客観的な行為に現れていること、契約の決済に必要不可欠な前提行為、が履行の着手に当たるとされています。
一例としては、売主が所有権移転登記の申請を行ったことなどが挙げられるでしょう。
合意解除の具体例
売主からの解除同様、買主と売主に意思の合致によって契約をなかったことにする場合も存在します。
これを合意による解除と呼びます。
この方法による解除が最もトラブルが少なくて済む解除方法と言えるでしょう。
他の買主からの解除方法と異なり、合意解除は買主からの一方的な意思ではありませんので、単に解除をしたいという意思を売主に伝えるだけでは解除をすることはできません。
一般的には、どういった条件でお互いに解除に応じるか、今まで支払ったお金はどうするか、などを合意書面にした上で、買主・売主が署名をして解除します。
買主側が契約解除するときの手続きの流れ
それでは、実際に買主から契約解除をしようと考えた場合には、どのような手続きをとることになるのでしょうか。
よくあるケースを想定しつつ、解除手続きの流れを説明していきます。
基本的には売主からの流れと同様
買主からの解除と言っても、基本的な流れは売主からの解除と大きく異なることはありません。
売主も買主も不動産売買契約の当事者の一人であるという立場自体は平等だからです。
そのため、基本的には時間が経過するとどんどん不利になってしまうため迅速に行うこと、解除の意思表示は必ず書面で行うこと、相手方に意思表示が到達したことを客観的に証明するため書留や内容証明郵便で通知することは、買主からの解除の場合でも共通です。
一番の違いはローン特約解除
売主からの解除との一番の違いは、買主の場合はローン特約解除ができるという点です。
この点は実務上、買主にとってかなり有利な条件といえます。
一般的な不動産売買契約書には、融資の申し込みをすることと、全額融資が通らなかった場合は解除できる旨の文言が盛り込まれています。
売主にとっては白紙解除されてしまうため手付金をもらうことができないから不利なのではないか、と一般的には思われていますが、実はそうではありません。
売主にとっても、残代金が支払うことができない契約にいつまでも縛られているよりは、この契約を解除してもらって解放されて、次の買主を探すほうが長い目でみれば有利なのです。
銀行のローンが通らないときに白紙解除できないケース
ただし、例外的にローン特約解除で白紙解除にできないケースもまれにあります。
それは買主が不動産売買契約を守らない結果、住宅ローンが否決されてしまうケースです。
例えば、銀行から融資の審査に求められた書類を買主が提出しない場合や、ローン特約に書かれた金融機関に申し込みをわざとしない場合などは、故意に住宅ローンを否決させたとみなされて白紙解除ができないケースもあるので注意が必要です。
買主から解除するときの流れ
買主から契約解除を申し出る場合は、売主からと同様に、どういった理由によって契約を解除するのか、によって手付金の返還の有無、もしくは損害賠償請求の可否が変わってきます。
解除は、一般の方からすると初めてであっても、ベテランの不動産業者であれば何度も経験しているものなので、まずは仲介業者にご相談ください。
不動産売買契約解除後の違約金の相場
仮に不動産売買契約が解除になったら、後のお金のやりとりはどうなるのでしょうか。
契約締結後、追加工事をしてしまったり、家具を買ってしまったりと、売主も買主も契約があることを前提にして行動しているはずです。
ここでは、トラブルにありがちな損害賠償金である違約金について解説します。
違約金とは
まず、契約書の中に違約金の取り決めがあるといっても、一般的には二つの意味があります。
一つは損害賠償の予定額の意味、もう一つは罰としての意味です。
不動産売買契約で違約金を取り決めた場合、「違約罰」であるという特約をしない限りは「違約金」は損害賠償の予定額を指します。
損害賠償の予定額とは
なぜわざわざ損害賠償の予定額を定めるかというと、賠償する範囲を定めがなければ、引っ越し予定だった家に設置するためのカーテンだったり、建物建築後に車を買う予定だったり、などと損害の範囲が無限に広がりすぎてしまうからです。
そのため、契約締結時にある一定の金額を損害賠償額の予定額として定め、仮にその金額以上に損害が発生したとしても予定額以上は賠償しないと取り決めることが、売主・買主双方にとってメリットがある方法なのです。
違約罰とは
違約罰とは、その名の通り契約を破ったことに対する罰としての金銭です。
実務では余りにも不利になりすぎるため目にすることは少ないですが、特約として違約罰を定めた場合、解除した当事者はもう一方の相手方に対して損害賠償をした上でさらに違約罰を支払うということになります。
違約金の相場と上限とは
不動産の価格や仲介業者によって様々ですが、一般的には損害賠償の予定額の相場は売買価格の10パーセント程度です。
そして、売主が不動産業者の場合は宅建業法という法律によって、上限は売買価格に20パーセントと定められてます。
つまり、5,000万円の不動産であれば、不動産業者売主なら損害賠償の予定額の上限は1,000万円、一般的な相場は500万円程度であるということになります。
手付金解除と違約金の関係とは
解除の場面でも記載したとおり、相手が契約履行に入る前であれば買主は手付金を放棄して、売主は手付金を倍返しして契約を解除することができます。
この手付金解除ができる段階であれば、違約金の話にはならないということになります。
買主からすると、契約締結後、早い段階であれば手付金放棄で済んでいたのに、時間が経って売主が契約の履行に着手してしまうともはや手付金放棄による解除ができなくなり、違約金の支払いの段階になってしまう、ということです。
契約解除も考慮した不動産売却の注意点
結局、不動産売買契約時に解除の可能性も見据えた上での契約を結ぶには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
ここでは、相手から解除される可能性を排除しつつ、自分が万が一のときには解除ができるようにリスクを踏まえた交渉方法を説明していきます。
契約前の注意点
契約前の時点においては、なぜこの不動産を売却するのか、もしくは購入するのかをきちんと相手に明示することです。
逆に相手に対しても、なぜ売るのか、買うのかを確認することが非常に重要です。
この購入の動機、もしくは売却の動機を明示することによって、契約後にそんなつもりではなかった、というようなトラブルを防ぐことができます。
また、あらかじめ費用がかかることが分かっていれば可能な限り事前に見積もりを取りましょう。
例えば、土地を購入後に建物を建てるために地盤改良工事をしたい、などは契約前であっても見積もりをとることによっておおよそかかる費用を概算することも可能です。
相手によりますが、契約前に買付申込書の条件として伝えることによって、契約書の内容とすることも可能となります。
契約書における注意点
契約書においては、自分が提示した条件、内容がきちんと反映されているかどうかをきちんとチェックすることです。
中でも、誰が、いつまでに、どうすれば解除できるか、その場合の費用はどうなるかという内容は契約上とても重要になります。
契約書は両者の合意なので、自分だけにとって有利な契約にすることは難しいのですが、少しでも自分の希望に沿う形で条件を作成するように交渉しましょう。
一般的なポイントしては、自分が売主の場合は、なるべく買主が契約を解除しにくいように、逆に買主の場合はぎりぎりまで解除で可能なように契約することがポイントです。
売主が不動産業者の場合は宅建業法で買主が守られる
売主が不動産業者の場合は、宅建業法によって一般の買主がかなり保護される内容になっています。
しかし、契約書特有の言い回しもあります。
一般の人に分かりにくい部分は仲介業者、もしくは宅建士に納得するまで必ず質問しましょう。
契約後における注意点
不動産売買契約締結後は、買主・売主の双方が残代金の決済に向けてお互いに動くことになります。
自分自身が売主の場合は、所有権移転の準備に早く着手し、契約履行の着手を進めましょう。
万が一、買主から契約解除を受けた場合は、速やかに解除できるような文言を組み入れ、次の買主を見つけられるような特約入れておくことも重要です。
逆に買主の場合は、住宅ローンの申し込み、審査を速やかに進め、早く融資の結果が出るように行動しましょう。
まとめ
不動産売買締結後に契約解除をする場合の手続きの分類と、それぞれのメリット・デメリットの説明、具体的な手続き流れを説明しました。
繰り返しになりますが、契約を一度締結すると当事者に対して拘束力が発生します。
この拘束力は強大で、解除によって断ち切ろうとすると費用が掛かったり、時間が掛かったりとかなりの労力が必要になります。
そのため、解除するかもしれないと事前に分かっている場合は、契約を締結するのを少し待って信頼できる不動産業者に相談しましょう。
そして、契約締結後にどうしても解除しなければならない事情が発生した場合は、速やかにトラブル防止のため書面で解除手続きを行うようにしましょう。