共有持分とは?共有不動産を所有し続けることのリスクと売却方法を紹介
この記事でわかること
- 共有持分とは何かわかる
- 共有持分の不動産を所有し続けるリスクがわかる
- 共有持分の不動産の売却方法がわかる
目次
共有持分とは?
共有持分とは、1つの不動産を複数の人が共同で所有しているときに、それぞれの所有者が不動産について持っている所有権の割合のことです。
例えば、300㎡の土地をAとBが1/2ずつ所有している場合、AとBがそれぞれが持っている所有権の割合である1/2が共有持分となります。
この時注意しなければならないのは、共有持分とは概念的なものであって、土地の上に150㎡ずつ分割するような線が引かれているという意味ではありません。
共有持分が発生する経緯
1つの不動産について共有持分が発生するのは、以下のようなケースです。
- (1)夫婦や親子、兄弟でお金を出し合って不動産を購入する場合
- (2)相続財産を2人以上の相続人が共同して相続する場合
特に、夫婦の場合はマイホームを共同で購入しているケースが多く、相続の場合はアパートなどの賃貸物件が多いのが特徴です。
共有持分の決め方
1つの不動産が共有になっている場合、その共有持分の割合を自由に決めてもいいわけではありません。
その経緯に応じて、共有持分が定められます。
共同して不動産を購入した場合
1つの物件を複数の人で共同して購入した場合、その持分は負担割合に応じて決められます。
事例共同して不動産を購入した場合
夫婦で土地2,500万円、建物1,500万円、合計4,000万円のマイホームを購入した場合で考えてみましょう。
この物件を購入する際に、夫が3,000万円、妻が1,000万円を負担したとすると、夫の共有持分は3/4、妻の共有持分は1/4となるのです。
ただ、土地と建物はそれぞれ別に登記を行うため、実際に購入した際には土地・建物の別に、それぞれがいくら支払ったのかを決めておく必要があります。
不動産を相続した場合
不動産を相続した場合には、遺言書の記載内容や遺産分割協議の内容に応じてその持分が決められます。
もちろん、1つの物件を単独で相続することもできます。
2人以上の相続人で持分が均等になるように相続する場合もありますし、法定相続割合に応じてその持分を決める場合もあります。
事例不動産を相続した場合
法定相続割合により共有持分を定める場合に配偶者がいると、配偶者の持分は他の相続人と異なります。
例えば配偶者と子供3人が法定相続人となる場合、配偶者は1/2、子供はそれぞれ1/6となります。
それぞれの所有者がどれだけの共有持分を有するのかは、不動産の登記事項証明書を見れば確認することができます。
不動産の共有持分を所有し続けるリスク
不動産を共有のまま保有し続けることには、リスクが伴います。
不動産を売却したり他の使い方ができなくなる
共有の不動産は、その共有者が全員で不動産の利用方法を決めなければなりません。
たとえば売却したいという人がいても、共有者の中に1人でも反対する人がいると、その不動産を売却することはできません。
共有者がどんどん増え続ける
不動産の共有者が亡くなると、その不動産は相続財産になります。
しかし、共有している不動産の存在を認識していないこともあり、相続登記などが行われないことがあります。
この場合、亡くなった人の持ち分はすべての相続人により共有されていることとなるため、さらに持ち分が細分化されて共有者が増えることとなるのです。
すべての共有者に税金などの負担が発生する
不動産を活用できていない場合でも、保有しているだけで固定資産税が発生するほか、修繕費や管理費などの負担もあります。
このような負担を、すべての相続人で按分するのは、それぞれの人にとって大きな負担となる可能性があります。
共有不動産のリスクについて詳しくは、以下の記事を参照してください。
共有不動産の所有者ができること
共有不動産は単独所有の不動産と違い、できることが限られています。
単独所有なら簡単にできることも、共有不動産だと所有者全員の合意が必要になるケースもあります。
下記では共有不動産の所有者ができること・できないことを紹介します。
項目 | できること |
---|---|
単独で可能 | 保存、使用 |
過半数の同意が必要 | 利用、改良 |
全員の同意が必要 | 処分 |
不動産の売却、抵当権の設定など大きな手続きは、必ず全員の同意が必要です。
「保存・使用」は単独でもできる
共有不動産の所有者は単独であっても、保存・使用が認められています。
保存 | 不動産を現状維持するために修繕したり、不動占拠者を追い出したりすること |
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使用 | 共有不動産を住居として利用すること |
ちなみに不動産の使用に関して「自分の持分に応じた不動産割合しか住めない」というルールがありません。
例えば自分が家屋付きの不動産を1/5しか所有してない場合でも、不動産全体を占有して住めます。
「利用・改良」は過半数の同意が必要
共有不動産の所有者から、過半数の同意が得られると、不動産の利用・改良ができます。
利用 | 賃貸用の物件として貸し出したり、賃貸契約を解除したりすること |
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改良 | 不動産をリフォーム・リノベーションすること |
「処分」は全員の同意が必須
不動産の売却・抵当権の設定などは、全員の同意が必要になります。
借地借家法の適用がある賃貸借契約を締結しても、不動産の処分になるため、全員の同意を取らなければいけません。
口約束で「同意する」と言われても、実際に手続きすると反対される危険性もあります。
共有不動産を処分するときは、必ず書面に残しておきましょう。
共有名義人である委任者が、代表者である委任者に委任状を作成して渡す形になります。
不動産の共有持分を売却する4つの方法
自分の共有持分だけを売却するのは、単独で所有している不動産を売却するより不利になることはありますが、売却すること自体には何の制約もありません。
例えば、自分の持分のみ売却する場合、他の共有者が同意していなくても売却することができますし、反対する共有者がいても売却をとめることはできません。
共有持分の不動産の売却は、売却先などに応じて4つの方法が考えられます。
- 共有者全員の合意を得て売却する
- 自分の持分を他の共有者に売却する
- 自分の持分を第三者に売却する
- 共有不動産を分割して、自分の持分だけ売却する
それぞれの内容を確認していきましょう。
共有者全員で売却する場合
1つ目は、共有の不動産を売却する方法としては最も一般的なその不動産を所有している共有者全員で売却する方法です。
この売却方法の特徴は、購入者がその土地を丸ごと購入して普通に使える状態になるため、売却価格が相場どおりになることです。
他の売却方法より1人あたりの売却価格が高くなることは、所有者にとって大きなメリットです。
一方、共有者全員で不動産を売却するためには、共有者全員の合意が必要なのでひとりでも不動産売却に反対している共有者がいれば、売却はできません。
共有者が多いほど、合意形成するためには労力がかかりますし、専門家による仲介を依頼しなければならない場合もあります。
共有者間で売却する
共有持分を他の共有者に売却することもできます。
他の共有者が持分を増やしたいと考えているのであれば、苦労して売却先を探さなくてもいいので非常に楽な方法で、売却までの時間も短く済むはずです。
また、まったくの第三者が新たに共有者に加わるのとは違って、共有持分が変動するだけですから、他の共有者の心理的抵抗も少ない方法です。
ただ、共有者は親族関係であることが多く、親族間で持分の売買交渉を行うことでかえって話が円滑に進まないこともあります。
また、売却価格はより低い金額となることが多いため、売主としてのメリットは少なくなることが多いでしょう。
単独で第三者に売却する
自分の共有持分を、共有者でない第三者に売却する方法です。
他に共有者がいる土地や建物の共有持分を購入する人がいるのかと疑問に思うかもしれませんが、購入した土地の売却益を目的に実際に共有持分を購入する人が現れることはあるのです。
この方法は売却前に特別な準備をする必要はなく、単独で所有している不動産を売却する時と同じように売買契約を買主と締結し、所有権の移転登記をするだけです。
しかし、実際に購入者を探すのは簡単なことではなく、また売却価格はかなり低い金額になることが予想されます。
また、第三者に売却することとなれば、他の共有者にとっては知らない人がある日突然共有者となるため、不安を抱えることとなるかもしれません。
分筆して売却する
分筆とは、1つの土地を複数の土地に分割して、それぞれの土地を従前の土地の共有者が単独で所有することです。
分筆すれば、共有の状態が解消されるため、売却がしやすくなるというメリットがありますが、分筆の手続きには費用がかかります。
共有持分の不動産を売却するときの必要書類
共有となっている不動産について、自身の持分だけを売却する場合、以下の書類を準備しなければなりません。
- 権利証(登記識別情報)
2005(平成17)年3月7日より前に登記された場合は権利証が、それ以後は登記識別情報が用いられます。 - 土地の測量図、境界の確認書
(隣地の所有者の立会いのもと作成された測量図や、境界の確認書によって、隣地の所有者とのトラブルがないことを確認します。 - 身分証明書(運転免許証など)
- 印鑑証明書(3か月以内に取得したもの)
- 住民票
- 実印
- 固定資産税評価証明書
登記を行う際に、発生する登録免許税の計算に必要となります。
また、司法書士に登記を依頼する場合には、委任状を作成しなければなりません。
まとめ
共有持分を売却することは、他の共有者の意思と関係なく行えます。
しかし、実際に売却してメリットが大きいのは、単独でその持分を売却するのではなく、すべての共有者が一緒に売却する方法を選択した場合です。
共有者全員で合意ができるのであれば、一緒に売却する方法を最優先に検討するようにしましょう。
また、相続により不動産の名義が共有となるケースがかなりあります。
共有にしてしまうとその後の売却が難しくなるため、できるだけ共有の状態を作り出さないような努力も必要です。