【徹底解説】不動産売買の決済の流れ|決済後にすべきことやトラブル対処法も
この記事でわかること
- 不動産売買の決済に必要な書類が何かわかる
- 不動産売買の決済日当日の流れ、やることがわかる
- 不動産売買の決済でよくあるトラブルとその対処方法がわかる
不動産売買契約を締結したあとは、決済と引き渡しの手続きを行います。
大きな金額のお金が動き、多数の関係者が参加する決済は、手続きが複雑です。
そこで、決済に必要な書類やスケジュールを把握しておけば、スムーズに決済を進めることができます。
ここでは、売主と買主が決済までに準備するものに加え、決済日当日の流れやトラブル対処法を解説します。
不動産売買の決済とは
不動産売買の決済とは、残代金の支払いと所有権移転の手続きのことを指します。
売買契約をすると、売主と買主にはそれぞれ決済までの間に別々の義務が発生します。
買主の義務は、決済時に残代金を支払うことです。
例えば、4,000万円の不動産に対して、400万円の手付金を支払っているとすると、決済時には残りの3,600万円を支払う必要があるということです。
一方、売主の義務は、決済時に引き渡すこと、つまり所有権移転の手続きに協力することです。
つまり、決済時には残代金の支払いと所有権移転手続きが同時に行われるということになります。
不動産売買契約から決済までの期間
通常の不動産売買の場合、契約から決済までの期間は大体1ヶ月程度です。
そして、決済は法務局と金融機関が営業している平日に行われるため、双方の都合も考えて決済日の2週間ほど前に決まるケースが一般的です。
不動産の決済が行われる場所
場所については明確な決まりはありませんが、不動産業者や金融機関の担当者、司法書士、売主、買主などの大人数が集まりやすい場所であること、送金が確認しやすい場所であるという理由から、金融機関の応接室などを借りて決済をすることが多いです。
金融機関が住宅ローン分の融資を実行したらお互いにすぐにお金の到着が確認しやすいという理由もあります。
また銀行の応接室であれば静かで間違いも生じにくいことも理由の一つです。
不動産の決済が行われる時間帯・集まる人
一般的な決済日は銀行と法務局が営業している平日に行われます。
売主、買主の希望によっては大安などの六曜にこだわる方もいますが、逆に銀行や法務局が混み合うため避けるケースもあります。
通常は何かトラブルがあっても当日中になんとかできるように平日の午前を決済日に選定することが多いです。
売主側は不動産業者と金融機関担当者、買主側にも不動産業者、金融機関担当者、そして間には司法書士の7人程度で行われるケースが多く、不動産売買において全員集まる可能性があるのはこの決済日だけです。
決済日当日の流れ
不動産売買契約の決済は、多額のお金が動き、複数の関係者が一同に集まって、重要な書類のやりとりがたくさん発生する手続きです。
ここでは、決済日当日の流れを手続きごとに分けて解説し、それぞれの手続きの意味、やりとりする書類の中身と、一般的にかかる時間の目安を解説していきます。
司法書士による本人確認と必要書類への記入をする
それぞれの自己紹介が終わると、司法書士は本人確認と意思確認を行います。
まず、司法書士は運転免許証などの身分証明書で本人に間違いないかどうか、生年月日、住所などをヒアリングして意思能力、行為能力に問題がないか、所有権を移転する気持ちに間違いがないかどうかを確認します。
その上で、売主と買主は所有権移転に必要な登記申請書、登記原因証明情報、委任状に署名と押印をします。
売主は実印の押印も必要になるので、司法書士は押印された印影と印鑑証明書の印影を照らし合わせて、実印に間違いないことを確認します。
この手続きは、5〜10分程度かかります。
買主が金融機関から決済に必要なお金を借りる手続きをする
次に、買主が決済に必要なお金を金融機関から借りる手続きをします。
住宅ローンの審査が通っている場合は、この書類はすでに記入済みであることも多く、最後に署名と押印を形式的にするだけになっている場合がほとんどです。
この書類は金銭消費貸借契約書と呼ばれています。
買主側の金融機関担当者は記入すべき箇所に付箋を貼っていて、買主はそれに従って署名をしていくという流れになっています。
この手続きは、5分程度かかります。
金融機関から買主の銀行口座にお金が振り込まれる
買主が買主側の金融機関担当者に対して、金銭消費貸借契約書を記入して渡すと、買主の銀行口座にお金が振り込まれます。
ほとんどの金融機関ではすでに送金の準備を終えていることが多いので、この手続きは数分で終わります。
この待ち時間の間に、火災保険の契約手続きや、団体信用生命保険の手続きを一緒に行うことも多いです。
買主の銀行口座から売主の銀行口座に残代金が送金される
次に、買主の銀行口座から売主の銀行口座に売買代金が支払われます。
振り込む金額は、売買代金から手付金額を引いた金額です。
例えば、5,000万円の不動産に対して、500万円の手付金を支払っているとすると、決済時に送金しなければならない金額は残りの4,500万円です。
送金手続きのことを「着金(ちゃっきん)」と呼びますが、状況によっては時間がかかることがあります。
例えば、買主・売主が同じ金融機関、同じ支店であれば数分で実行されますが、銀行と信用金庫だったり、メガバンクと地方銀行だったりする場合、また月末や年度末のような他の手続きが集中する場合は、1時間以上かかることもあります。
売主側の金融機関から、売主側の金融機関担当者に着金確認の電話がくれば着金完了です。
買主と売主の金融機関が同じ場合は、通帳を記帳することで着金確認をするケースもあります。
残ローンがあれば売主の口座から銀行に残ローンが返済される
対象不動産に抵当権が登記されていて、今回の売買金額で返済する場合は、売主の銀行口座から金融機関に対して残ローンの返済手続きが必要です。
通常のケースだと、繰上げ返済に関する書類は事前に記入済みのことが多いので、売主の口座に売買代金が振り込まれたら、ローンの返済も同時に行われます。
金融機関から所有権抹消に必要な書類が売主に手渡される
売主から抵当権者である売主側の金融機関にローンが返済されたら、売主側の金融機関担当者から売主に対して抹消書類と委任状が渡されます。
そして、これらの書類を売主から司法書士に渡した後に、司法書士は法務局で抵当権を抹消する登記手続きの申請を行うことになります。
金融機関への返済は数分で終わることが多いため、この手続きは売主口座への着金とほぼ同時に行われます。
そのため、長くても10分程度で済むことが多いでしょう。
売主・買主から司法書士に登録免許税と必要な書類を手渡される
抵当権抹消書類が揃ったら、続いて所有権の移転に必要な書類を、売主・買主双方から司法書士に手渡します。
そして、司法書士には所有権移転登記と同時に登録免許税と司法書士報酬も一緒に手渡します。
通常は、司法書士報酬はそのまま司法書士に渡して領収証をもらいます。
一方、登録免許税は司法書士に預けて法務局に納税してもらうことになるので、納税証明書は後日登記が完了した時点で、新しい登記識別情報と一緒に送付されます。
一般的な契約では、所有権移転に関する司法書士報酬は買主が負担し、抵当権抹消に関する司法書士報酬は売主が負担することが多いです。
これらの手続きも事前に不動産業者が段取りをしていれば、全ての手続きまで10分程度で終わるでしょう。
売主・買主から不動産業者に仲介手数料が支払われる
最後に、売主と買主からそれぞれ担当した不動産業者に仲介手数料が支払われます。
決済は金融機関の応接室などで行われることが多いため、不動産業者は事前に領収証を用意して決済場所に来ています。
そのため仲介手数料も振り込みで済ませることが多く、事前に準備した領収証を渡すだけで形式的な支払いで終わることがほとんどです。
この手続きもほとんど時間がかからず、場合によっては着金までの待ち時間で済ませてしまう場合もあります。
不動産売買の決済完了後にやっておくこと
不動産売買の決済が終われば、不動産の所有権は売主から買主に移転します。
しかし、売主には所有権移転後もやるべきことが残っています。
それは、物理的に引き渡しをすること、売主・買主間で金銭の精算をすること、そして納税をすることです。
ここでは、時系列に沿って、売主がしなければならないことを簡単に解説していきます。
その他の書類、鍵の引き渡し
売主は、決済完了後、買主に対して所有権移転に関する書類以外の書類を引き渡します。
具体的には、新築時の竣工図面一式や販売時のパンフレット、建築確認通知書、マンション管理組合の規約などの決済には影響しないような書類を引き渡します。
これらの書類は契約時にすでに引き渡していることも多いので、必ずしも決済後とは限りません。
また建物の場合は決済後のタイミングで、玄関の鍵も引き渡しをすることがほとんどです。
この手続きによって、売主は買主に対して、法律上も、物理的にも不動産の引き渡しを完了したことになります。
契約締結時から決済までの諸費用の支払い
不動産売買契約の締結から引き渡しまでの間にかかった費用などは決済日に精算します。
例えば、固定資産税、測量費用、住所変更登記費用などの諸費用などがあります。
通常の不動産売買の場合は、契約締結時に買主と売主のどちらが費用を負担するかを取り決めるため、取り決めにしたがって精算します。
この諸費用だけを支払うのは非常に手間なので、実務的には精算書という形で売買代金から差し引きし、差額分を一気に支払う方法で精算します。
確定申告
売主は、不動産売買をした年の翌年の3月までに確定申告をする必要があります。
特に不動産を売却して譲渡利益が出ている場合は、納税手続きもしなければなりません。
また、「居住用財産の3,000万円の特別控除」などの控除も確定申告をしなければ利用することができません。
仮に赤字であったとしても、一定の要件を満たせば損益通算や繰越控除もできるので、面倒だと感じたとしても必ず確定申告を行いましょう。
不動産売買の決済中にトラブルが起きたときの対処法
ここでは決済において、たまに起こるトラブルの説明とその対処方法をご紹介します。
当日になって持ち物が足りないと判明した場合
一生で一番高い買い物と言われる不動産売買なので買主も売主もお互いに緊張しています。
そのため、普段ならやらないような大きなミスをしがちです。
例えば、事前に何度も見直したのに用意しなければならない持ち物を忘れてしまったケースなどです。
不動産売買の決済の場合、万が一持ち物を忘れてしまったとしても、なんとかなるものとどうにもならないものの二つに分かれます。
売主が実印を忘れた場合
決済日当日の流れで説明した通り、売主は決済日当日に登記申請書、登記原因照明情報、委任状などに署名と実印で押印をすることになっています。
それでは、この時に売主が実印を忘れてしまった場合はどうなるでしょうか。
結論としては、実印の押印がないと法務局で所有権を移転することができないため、決済を続けることはできません。
そのため、売主のご家族に実印を持ってきてもらうか、実印を取りに帰る必要があります。
これは残念ながら、家が遠くても例外はありません。
こういったケースに備えて、経験豊富な不動産業者は決済日を選ぶときに、平日であってもなるべく午前中を選ぶ傾向があります。
仮に忘れ物があっても、取りに帰ってなんとかその日のうちに解決することができるからです。
印鑑証明書がない場合
売主が決済時に印鑑証明書を取得し忘れてしまった場合、自宅に忘れてしまった場合、3ヶ月以上前の印鑑証明書を持参してきた場合はどうでしょうか。
この場合は、印鑑証明書を再度取得してもらう必要があります。
印鑑証明書も実印同様に省略をすることができる書類ではありません。
そのため、ベテランの不動産業者は当日の持ち物のなかに、印鑑登録証(印鑑登録カード)を売主に持ってきてもらうよう依頼することもあります。
そして、万が一忘れてしまった場合は、すぐに役所・出張所などで取得できるように手配しておくのです。
登記識別情報を忘れてしまった場合
売主が決済日に登記識別情報を持参することを忘れてしまった場合はどうでしょうか。
この場合も取りに帰ってもらうか、同居の家族がいれば持ってきてもらうことになる場合が多いです。
なぜなら、登記識別情報は売主が所有権を移転するために必要な書類という意味だけではなく、所有権を移転することに同意をしているという意味も含んでいるからです。
また、金融機関としても登記識別情報があるから抵当権を設定できる、という前提で融資をすることになっているため、忘れたからといって省略できる性質の書類ではありません。
契約時以降に対象不動産に他人の権利が登記されていた場合
決済日当日、司法書士か不動産業者は朝早く売買対象となる不動産の登記事項証明書を取得し、契約時点と権利関係の変動がないかを調べます。
この時点で万が一、契約時点にはなかった他人の権利が登記されていた場合はどうすれば良いでしょうか。
この場合は、結論としては決済が延期になります。
不動産登記の場合は先着順になるので、他人の登記が優先してしまうからです。
まとめ
ここまで、不動産売買の決済の流れと引き渡しの手続きを説明してきました。
大きな金額のお金が動く不動産売買の決済は手続きとしては複雑ですが、売主・買主がきちんとやるべきこととスケジュールを把握しておけば、スムーズに決済を進めることができます。
やることを事前にしっかりと把握して、トラブルのない決済を進めてください。