不動産査定とは?流れや方法、気をつけたいポイントを完全解説
所有している家、土地などの不動産を売りたい時、多くの人が不動産の査定を依頼します。
しかし、「不動産の売却は初めてだから、何から始めていいか分からない」といった悩みや、「不動産査定はどうやるのか?金額や期間は?」といった疑問もあるでしょう。
この記事では、不動産査定の方法や、準備すること、注意事項をわかりやすく解説していきます。
目次
不動産査定とは
不動産査定とは、保有物件が「いくらで売れるのか」を明確にすることです。
家や土地の価値は、様々な条件で変動します。
そのため、不動産査定によって「今の時点での不動産の価値」を計ることが重要なのです。
また、不動産の価格を測る方法は複数あり、「一物五価」と呼ばれる基準から、売却に適した額を算出します。
査定を行う不動産会社によって、同じ不動産でも査定結果が異なる場合もあるため、覚えておきましょう。
不動産査定の必要性
不動産を売却する時に査定は必須ではありません。
ただし、不動産の価格を知っておくのはとても重要です。
売りに出す時に、相場とかけ離れた値段設定にしてしまうと、買い手がつきません。
また減額交渉をされた際も、価格の根拠や適正額が分かっていないと交渉に応じるのが難しくなります。
この様に自分が損をしないためにも、不動産価格を査定で知っておくことは有用なのです。
不動産査定の方法
査定の方法には、大きく分けて「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。
それぞれの特徴は下記のようになっています。
査定方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
机上査定 | ・査定結果がすぐ出る ・一度に複数の査定依頼が出せる | ・訪問査定に比べ精度が低い |
訪問査定 | ・机上査定より精度の高い結果が出る ・不動産会社の担当者と直接会えるため仲介先を決めるのに役立つ | ・数日〜1週間と時間がかかる ・訪問日の調整など手間がかかる |
それぞれの査定方法について解説していきます。
机上査定
「机上査定」は、簡易査定とも呼ばれ、実際の物件や土地を見ずに行われる方法です。
電話やインターネット、メールなどで、面積、立地、築年数などの情報を不動産会社に提供し、その情報を元に概算の価格が出されます。
申し込みも簡単に行うことができ、結果も早く出るため、概算でいいからすぐに価格を知りたい、という場合に便利です。
実物を見ずに行われるため、精度が必ずしも高くないのがデメリットです。
訪問査定
「訪問査定」は、不動産会社が実際に家などに訪問し、査定を行う方法です。
「机上査定」では気づきにくい、景観や騒音などの条件を発見しやすいため、より精度の高い査定結果が出せる方法になります。
訪問予定の調整が必要で合ったり、価格の算定が複雑になったりすることから、「机上査定」よりも時間がかかることがほとんどです。
不動産会社の価格査定はどうやって算出する?
不動産会社が行う査定には、決まったルールはありません。
査定方法は主に3種類あり、各不動産会社で複数の方法を組み合わせ、不動産価格を算出します。
取引事例比較法
「この不動産を売りに出したらいくらで売れるのか」を、近隣の条件の似ている物件の過去の取引事例と比較し、算出する方法です。
複数の事例の平均坪単価を計算し、対象物件の坪数を掛け合わせたものを基準とし、築年数や間取り、駅からの距離などを考慮して、価格を決定します。
原価法
「同じ建物を一から作り直したらいくらかかるか」という費用の面から金額を決める方法です。
その金額から、経年劣化分を差し引いた金額が、査定価格になります。
主に、一戸建ての建物の査定に使われる方法です。
収益還元法
「その不動産がどれくらいの利益を生むか」その収益力で、不動産価格を決定する方法です。
賃貸用物件として貸し出されることの多い、アパートなどで使用される方法です。
収益還元法には、直接還元法とDCF法の2つの種類があります。
DCF法は、将来その不動産を保有している期間の収益と売却益を、現在の価値に戻して算出する方法です。
計算式が複雑になるため、多くの不動産会社では直接還元法を使っています。
直接還元法は、一定期間の収益と、近隣のアパートの情報などから出した還元利回りから、不動産の価格を出す方法です。
不動産査定の費用
気になる査定の費用ですが、不動産会社に依頼した場合は基本的に無料です。
不動産会社は、売却時の仲介手数料を収益としているため、売主から媒介契約をもらうため査定はサービスとして無料にしているところが多いようです。
他には、不動産鑑定士に依頼する方法もあります。
不動産査定のために必須の資格ではないのですが、不動産鑑定の国家資格で、価格査定のほか土地の有効利用などのコンサルティングを行っている人もいます。
専門知識を元に不動産の経済的な価値を出してくれるため、より精度の高い結果が得られます。
ただし、10万円〜20万円の費用がかかるでしょう。
売却の場合には、査定を依頼した不動産会社にそのまま売却の仲介を依頼するケースほとんどなので、査定費用は無料だと思って良いでしょう。
不動産査定の流れ
不動産査定の流れは以下の通りです。
- ①査定前の準備をする
- ②査定依頼
- ③訪問日時決定
- ④現地調査
- ⑤査定結果報告
それぞれのステップごとに解説していきます。
①査定前の準備をする
スムーズに不動産査定を行うためには、事前の準備が必須です。
事前準備していないと、不動産会社も正確な情報を得ることができず、適切な物件価格を提示できないこともあります。
具体的には、以下の様な準備ができていると良いでしょう。
準備項目 | 概要 |
---|---|
必要書類の準備 | 参考となる書類を事前に準備しておくと、スムーズな査定が可能となる。 【準備書類の例】 ・物件の登記済権利書 ・固定資産税納税通知書 ・間取り図など間取り・面積が分かる資料 ・管理規約、修繕計画表(マンション、アパートの場合) |
修繕履歴や瑕疵(故障や不具合、汚れなど)の確認 | 売主には瑕疵担保責任があり、物件を引き渡した後に見つかった瑕疵について修繕を行う義務があるため、事前に共有する必要がある。 |
土地の場合は隣との境界線を明確にする | 取得から年月が経っている場合、境界が曖昧になってしまい、売却時のトラブルになる可能性があるため、事前共有が必要。 |
周辺の似た物件の相場価格を調べておく | 査定結果を理解するのに役立つ。 |
事前に準備をしておくことで、より正確でスムーズな査定が可能となります。
②査定依頼
不動産会社に査定の依頼を出します。
前述した通り、複数の会社に依頼を出すようにしましょう。
同時に依頼ができるWebサイトのサービスもありますので活用するのもおすすめです。
③訪問日時決定
不動産会社から連絡がきたら、家や土地を実際に見てもらう訪問日時を決めます。
空家の場合も、所有者の立ち会いが必要な場合がありますので、立ち会いが可能な日時にしましょう。
事前に準備しておくことも、合わせて確認しておきましょう。
④現地調査
対象の家、土地を見てもらい、調査を行っていきます。
調査員が見て判断するだけではなく、所有者に対して対象物件について質問をする場合もあります。
査定結果に影響することもありますので、正直に回答しましょう。
現地を見るほかに、役所や法務局に法規制やインフラについて確認を行う場合もあります。
⑤査定結果報告
算定が終わったら、不動産会社から結果が報告されます。
査定で重視したポイントや、根拠などを確認しましょう。
自社の成約実績も参考に価格を出していますので、仲介を依頼する不動産会社を決める参考にしましょう。
不動産査定にかかる時間
机上査定の場合は結果が出るのが早く、30分〜1時間程度で価格が分かります。
訪問査定を依頼した場合は、現地調査に数十分かかる他に、役所への確認を行うこと、複数の算出方法を使って査定することからより多くの時間がかかります。
現地調査から、数日〜1週間程度を見ておきましょう。
不動産査定で見られるポイント
不動産査定で見られる主なポイントは以下の6点です。
- 1.築年数
- 2.面積
- 3.立地・周辺環境
- 4.耐震基準への準拠
- 5.日照・眺望
- 6.管理状況
査定を依頼した不動産会社が、物件のどこを見て査定額を決めるのか知っていると、査定結果を見る時の参考にもなるので、事前に把握しておきましょう。
築年数
家・建物の査定で重要視されるポイントです。
建物は基本的に建った瞬間から、年数が経つにつれ価値が落ちていきます。
(文化財などは除く)新しい建物であればあるほど、査定額は高くなります。
建築から約10年で、価値はおよそ半分くらいになると言われています。
長く住んでいた場合は、外壁やキッチン、お風呂などのリフォームを行っていることもあるかと思います。
設備が新しい場合、査定額が上がることもありますので、忘れず伝えましょう。
面積
不動産の基本的な項目の一つです。
土地にも建物にも、坪当たりの単価があるため、基本的に面積が広いほど査定額は高くなります。
家・建物、アパートの場合は、部屋の内側の床部分の面積が基準になることが多いため、間取り図などを用意しておくとスムーズに査定が進みます。
土地の場合は、前述した通り隣との境界線が明確になっていることが大切です。
面積に影響してくるので、登記簿などの情報と実際の境界線(塀など)に相違がないか、確認しておきましょう。
立地・周辺環境
建物、土地どちらも注目されるポイントです。
メディアなどで取り上げられるような人気エリアはプラスになりますし、駅からのアクセスが良いこと、病院・スーパーなどが近くにあることなども査定額に影響します。
立地や周辺環境で重視される主なポイントは以下の通りです。
- 人気エリアか
- 駅からのアクセスは良いか
- 病院・スーパーなどが近くにあるか
- 騒音や振動が気にならないか
- 繁華街から近いかどうか
- 人気の学区かどうか
- 物件がある土地の用途地域の区分
これらの要素をひとつずつ確認し、査定していきます。
耐震基準への準拠
家・建物の査定で、地震の多い日本では必ず確認されるポイントです。
2000年以降に建てられた建物であれば、新耐震基準を満たしているため、査定額がプラスになります。
2000年以前に建てられた建物であっても、耐震適合証明書で新耐震基準を満たしていることが証明できれば、評点が上がることがあります。
証明書は、指定の検査機関などへの申請が必要になります。
日照・眺望
南向きなど、日当たりの良い土地・建物は価値が高くなります。
周辺に日光を遮るような大きな建物がないか、などもポイントになります。
マンション・アパートの高層階の場合は、富士山が見える、などの眺望の良さも査定額に反映されることもあります。
訪問査定を依頼する場合は、日光が入りやすい時間帯に設定すると良い印象を持ってもらえるかもしれません。
管理状況
築年数が多い建物の場合は特に注意して見られる項目です。
水道・電気などの生活に大きく影響のある設備に故障や不具合がないかなど、確認が行われます。
シロアリによる被害などもマイナスになる要因の一つですので、負担ができる場合は駆除や修繕を行っておくのが良いでしょう。
査定時に気をつけたい3つのポイント
不動産査定を受ける場合に気をつけたい3つのポイントは以下の通りです。
- 1.複数の不動産会社に査定を依頼する
- 2.必ずしも査定価格で売れるわけではない
- 3.高い査定額は注意が必要な場合がある
それぞれを解説していきます。
複数の不動産会社に査定を依頼する
査定を行う不動産会社によって、査定方法や参考価格は異なります同じ物件でも査定価格が異なることもあるため、複数の会社に依頼をすることをおすすめします。
複数の不動産会社にまとめて依頼ができる、一括査定サービスなどを使うと依頼の手間が省けるでしょう。
必ずしも査定価格で売れるわけではない
査定価格を出した不動産会社に仲介を依頼したとしても、その値段で売れる保証がされているわけではありません。
あくまで参考価格ですので、時間が経っても買い手がつかないこともありますし、減額の交渉をされることもあります。
逆に、不動産会社や担当者の営業によっては、査定額よりも高く売れることもあります。
査定時には想定していなかった、不動産があるエリアの人気の高まりや、引越しの多い時期(年度末など)の売り出しで、売却額が上がることもあるでしょう。
高い査定額は注意が必要な場合も
基本的に査定を依頼した不動産会社の一つに、売却の仲介の依頼をするケースがほとんどです。
そのため、中には媒介契約を締結してるために、高めの査定額を出す会社もあるようです。
複数の会社の査定額を見ると、つい高い金額を出してくれたところに依頼をしたくなりますが、前述した通り、査定額で必ず売れるわけではありません。
査定結果を見る際は、金額の理由もきちんと確認し、他の会社との比較して極端に高い・低い金額である場合は注意しましょう。
似た物件の取引事例と比較して査定を行っていることもあるため、過去の取引実績を見せてもらうのも一つの手です。
まとめ
不動産の取引は、人生で数回行うかどうか、という人が大半だと思います。
取引額も大きいですし、分からないことが多いと心配になりますが、事前に情報収集や準備を行って臨みましょう。
査定についての不明点は、小さなことでも不動産会社にしっかり確認し、不安材料を残さないことも大切です。
査定の依頼はWebサイトからできるところも多くなっています。
まずは、無料で机上査定を行い、概算の金額や査定のポイント知るところから始めてみましょう。
査定を依頼したからといって、必ずしもすぐに売らないといけないわけではありません。
自分の資産の、今の価値を把握することは、将来の資産計画を立てる上で大切です。
不動産査定サービスを上手に活用し、賢く資産運用しましょう。