【アパート経営に必要な基礎知識のすべて】税金・メリット・収入リスクの対処法や失敗例
この記事でわかること
- アパート経営とほかの投資方法との違いがわかる
- アパート経営の収入計算シミュレーションがわかる
- アパート経営のメリットやリスクがわかる
- アパート経営に関する税金についてわかる
アパート経営は不動産投資のなかでも人気のある投資手法です。
新築・中古で一棟アパートを購入して収益を上げる、更地にアパートを建築して収益力の向上を狙うとともに相続税評価の引き下げを図るなど、さまざまな目的でアパート投資がなされます。
しかし、初めての不動産投資にアパート投資は向いているのか、空室リスクなどは大丈夫かなど多くの不安や心配を感じる方も多いと思います。
今回は、アパート投資について、他の投資との違い、収支計算の方法、メリットとリスクなどその基本的な知識を紹介します。
アパート投資を始める方にとっての必須となる知識をすべて網羅していますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
アパート経営の特徴について
アパート経営は、一棟のアパート(土地・建物)を取得、もしくは自己所有土地にアパートを建築し、賃貸収入を得ることで収益を得る投資手法です。
小さなものでも数千万円以上の投資になりますので、収益力が大きい反面、相当の投資リスクもあります。
他の代表的な投資手法と比べてみると以下のような違いがあります。
アパート経営とマンション経営の違い
マンション経営とアパート経営は、いずれも実物不動産を所有し、賃料収入を賃貸人から直接受け取ることを収益の源泉にしているということは同様です。
両者の大きな違いは、投資規模にあらわれます。
マンション経営は、数百万円のワンルームマンションから数十億円の一棟マンションまで規模の範囲が広いという特徴があります。
一方アパート投資は、小さいもので3千万円程度から、大きいものでも3億円程度のものが多いようです。
更地にマンションやアパートを建築する場合には、土地の面積や、建ぺい率・容積率が大きく影響してきます。
比較的小規模の土地や建ぺい率・容積率が小さな場合についてはアパート建築による投資手法でないと採算が合わないことがあります。
アパート経営と株式投資の違い
アパート経営と株式投資には収益を得る方法が大きく違っています。
投資によって収益を得る方法は大きく分けて二つあります。
一つはインカムゲイン、もう一つはキャピタルゲインです。
インカムゲインは定期的に得られる収益のことで、アパート経営における賃料、株式投資における配当金がこれにあたります。
キャピタルゲイン売却時の値上がり益をいいます。
株式投資の場合には、銘柄によって価格のボラティリティ(変動幅)が大きいために、どちらかといえばキャピタルゲイン重視の投資になります。
一方アパート経営については、不動産市場は株式市場ほど急激な値動きはなく、特にアパートは取得価額から、1.5倍、2倍の値上がりをみせるということはほとんどないために、インカムゲイン中心の投資になります。
したがって両者の投資は、自ずとリスクの回避手法や売却のタイミングなどについても変わってきます。
また、金融機関からの借入れを利用できるかということも大きな違いです。
株式投資は基本的には金融機関からの借入れを利用することはできませんので、投資額相当の自己資金を用意する必要があります。
しかしアパート経営の場合には、土地・建物を担保に金融機関から借入れをして投資をすることができるため、より規模の大きいダイナミックな投資が可能になります。
アパート経営に向いている人の特徴
アパート経営は不動産投資の中でも特に人気のある手法であり、それなりの資金があれば投資初心者でもチャレンジすることは可能です。
中でも、アパート経営に向いている人とは、住宅地など立地の良い土地を、活用せずに放っておいているような人です。
このような人はアパート経営することによる税制上のメリット、経済的なメリットが非常に大きく、一度アパート経営を検討してみる価値はありそうです。
アパート経営の大きなメリットとは
アパート経営は、専門の不動産会社に管理を依頼することによって、それほど時間や手間をかけずに行うことができるため、誰でも気軽に始めることができます。
特にアパート経営が人気なのは、以下のような大きなメリットがあるからです。
安定した収益が得られる
アパート経営は株式や投資信託における配当金とは異なり、月々まとまった金額の賃料を受け取ることができます。
通常は一棟のアパートに8戸から16戸程度の住戸があるために、少々空室があっても一定の収益を得ることができます。
老後の年金対策のために自己所有土地にアパートを建築する方が多いのは、安定した収益を狙っているからです。
相続税・固定資産税が軽減される
更地上にアパート建築する、もしくは持っている貯金をアパート経営に投資することによって、相続税の評価減を適用することができます。
建物については貸家の評価減、土地については貸家建付地の評価減、小規模宅地の評価減など色々な評価減が適用できます。
また、土地上に貸家を建築したときには、土地の固定資産税が軽減されます。
このような税制のメリットを享受することを目的としてアパート経営を行っている方も多いです。
金融機関からの借入れによるレバレッジ投資が可能となる
株式や債券投資信託などの証券投資だけではなく、実物不動産への投資も行なっている方が多い理由として、不動産を担保に金融機関からの借入れによるレバレッジ投資が可能となるからと答える方も多いと思います。
「レバレッジ投資」とは、自己資金だけではなく他人資産(借入れ)を利用することによって、より大規模な投資対象に投資することです。
「レバレッジ」とは「てこの原理」を意味しています。
不動産から上がってくる収益に比べて月々の元利払いの方が小さければ、現金のみで投資したときよりも収益アップを見込むことができます。
アパート経営の収益計算シミュレーション
アパート経営には大きなメリットがありますが、投資をするときにはきちんとした事業計画を立てる必要があります。
アパート経営を提案してくる不動産業者は独自の投資事業計画を作成して説明してくれますが、中にはずさんな投資計画を作成する不動産業者もいます。
質の悪い事業計画を見抜いて指摘できるようにするためにも、収支計算の基本を押さえておきましょう。
アパート経営における収入
アパート経営における収入は、入居者からの賃料(プラス管理費)です。
チェックするポイントとしては、賃料相場は適正か、空室リスクは加味してあるかという点になります。
賃料相場については、築年数や広さに応じた賃料になっているか、また築年数が古くなるにつれて賃料の下落が加味されているかといった点を確認します。
賃貸借契約は多くの場合に2年ごとに更新があり、そのたびに一定数の入居者が入れ替わります。
入居者が入れ替わるときにはクリーニングや入居者の募集があるために一か月程度空室が発生するのが通常です。
そのように空室がでるのが避けられないということは、初めから考慮しておいた方が良いと思います。
中には「サブリース」といって、管理会社がアパートを一棟借りし、入居者の賃料から15%程度の管理料・保証料を差し引いた額の一定賃料を支払うという形式もあります。
空室リスクがないために安心ではありますが、賃料の金額まで保証したものではありません。
契約条項によっては2年ごとの更新のときに賃料改定の交渉をすることができるために、どんどん賃料は下落していき、採算が合わないものになってしまう可能性もあります。
その点についても不動産業者の担当者にどれぐらいのリスクがあるのかを確認しておくべきでしょう。
アパート経営における支出
アパート経営には、物件取得時、そして運用期間中に以下のような費用がかかります。
- (取得時)
- ・物件購入費・建設費
- ・固定資産税・都市計画税精算金
- ・不動産売買にかかる仲介手数料
- ・所有権移転登記費用
- ・ローン事務手数料・抵当権設定費用
- ・印紙税
- ・不動産取得税
- ・火災保険料
- (アパート購入後)
- ・月々の管理料・修繕積立金(修繕費)
- ・設備更新費用(給湯器、キッチン、ユニットバス、照明、エアコンなど)
- ・固定資産税・都市計画税
- ・借入金の元利払い
この中で特に注意しなければいけないのは、設備更新費用と借入金の元利払いです。
特に中古のアパートを購入する場合には、どの部屋のどの設備がいつ交換されたのかについて詳細にチェックする必要があります。
給湯器は概ね10年から15年の間に1回、ユニットバスやキッチンは20年に1回の周期で交換時期が来ます。
給湯器は20万円から30万円、ユニットバスキッチンは一戸当たり50万円から100万円程の出費になりますので、そのような費用を加味しても収支が大丈夫かは確認しておくべきです。
また、借入金の元利払いについて、利息は経費で落ちますが元金については経費で落とすことができません。
したがって元金は、税引き後の手残り金額で支払うことになりますので、そのあたりについても収支上きちんと考慮されているかをチェックする必要があります。
減価償却費と税金に注意する
アパート経営において、収入と支出のキャッシュフローについては、上記で説明したような項目をチェックしておけば概ね大丈夫ですが、個人経営、法人経営どちらの場合においても、税金については細心の注意を払うべきです。
特に、税金を計算する際の所得について、キャッシュフローの計算と異なるところは、減価償却費です。
減価償却費とは、建物と建物付属設備(配管、水回りの設備など)について税務上認められる必要経費で、建物の構造によって計上できる金額が異なってきます。
特に中古の木造アパートの場合には、計上できる金額が大きくなってくるために、投資した当初は、所得税があまりかからないということもよくあります。
しかし、建物や建物付属設備の減価償却が終了すると、必要経費が急激に減少するために、個人における不動産所得、また法人における課税所得が急に増加するタイミングがあります。
このタイミングから所得税が上がりますので、それを考慮しても元利払いが支払えるだけのキャッシュフローがあるかどうかは慎重に見極める必要があります。
実際の収益シミュレーション
では、以下の例をもとにアパート経営の収益シミューレションしてみましょう。
- ・場所:東京都市部
- ・初期投資価額:125,000千円
- ・自己資金:37,500千円
- ・借入額:87,500千円
- ・借入利率:2.0%
- ・借入年数:30年
- ・室数:10室
- ・1室あたりの平米数:28㎡
- ・賃料:82千円
- ・更新料:1か月分(82千円)
- ・敷金:1か月分(82千円)
- ・礼金:1か月分(82千円)
- ・管理費・修繕費・固定資産税などの経常費用:満室時賃料の15%
- ・空室率:20%
収益シミュレーション 単位(千円)
初期投資額 | 125000 |
---|---|
自己資金 | 37500 |
年間収入 | 7872 |
年間経費 | 1476 |
借入返済 | 3881 |
年間CF | 2515 |
自己資金額に対する投資利回り(NOI・%) | 6.71 |
この例では、空室率を20%に設定していますので、保守的なシミュレーションであるといえるでしょう。
空室率を改善することでさらなる利回りアップが期待できます。
一方で借入年数を30年に設定しています。
築古の木造アパートではなかなか長期の借入年数を組むことが難しくなります。
借入年数を長くするとキャッシュフローに余裕が生まれますので、金融機関の担当者に相談してみるとよいでしょう。
最近では、質の高い木造アパートについては長期のローンに応じてくれる金融機関もあるようです。
アパート経営の収入リスクと対処方法
アパート経営は投資の一種である以上、一定の投資リスクがあります。
しかしアパート経営の場合にはリスクを回避するために積極的にさまざまな対策を打つことは可能です。
ここでは、アパート経営特有のリスクやそのコントロールの方法について紹介します。
重要なことは、リスクを怖がるのではなく、リスクの程度(頻度やリスクが現実化した場合の損失額)についてしっかりと把握しておくことです。
空室リスク
アパート経営の収入源は入居者からの賃料であるために、空室リスクは月々の収入に直結するリスクです。
契約更新時や引っ越しシーズンには入居者の入れ替わりが発生するために、最低限の空室リスクは事業計画に織り込んでおくべきです。
空室が長引く場合には、どのような対策方法があるのか、広告費はどのぐらいかかるのか、賃料を下げれば空室は埋まるのか、管理会社の担当者に聞いてみると良いと思います。
賃料下落リスク
築年数が古くなるにつれて、賃料における周辺物件との競争力は弱まってきます。
一定程度の賃料下落は避けられないリスクです。
周辺の似たような物件について、どのぐらいの賃料で募集しているのかを定期的にチェックしておきましょう。
中には、駅前の再開発や鉄道のダイヤ改正で急行停車駅に指定されるなどの環境変化で賃料相場が引き上げられたり、大学キャンパスの移転などによって賃料相場が下がったりすることもあります。
周辺の賃料相場は常に気に留めておきましょう。
流動性リスク
「流動性リスク」とは、売りたいときに現金化できないリスクをいいます。
日経平均に組み入れられている上場株式はいつでも株式市場で売ることができますので、流動性リスクの極めて低い投資です。
アパート投資も不動産市場が確立していることから、一般の投資よりも流動性リスクは低いといえます。
もっとも、同じ不動産投資の中でもワンルーム投資よりは投資家が限られているために、流動性リスクは高い、と評価されます。
突発的な生活の変化やアパート状況の不振が生じても、換金するまでに数か月の時間を要するために、日ごろから余裕資金を確保しておくなどの対策は必要になります。
アパート経営の失敗例を紹介
アパート経営の失敗の多くは、事前の投資事業計画をしっかりと立てていなかったことに起因するものです。
周辺の環境の変化や賃料相場に敏感になり、避けられるリスクは避けたいものです。
ここでは、代表的なアパート経営の失敗例を紹介します。
立地が悪いことから高リスクの投資になってしまった
特に、自己所有土地にアパートを建築したときに起こりやすい失敗です。
自己所有土地は、自宅から近いところにある場合が多く過大評価しがちですが、賃貸アパートを建築して成功する立地であるとは限りません。
土地についての追加投資がいらず、建物の建築費のみの投資であるために、利回りが高い、アパート建築会社が一括借り上げ(サブリース)してくれるなどの説明に乗せられてしまった結果、思うように入居者がつかずに失敗することはよくあります。
サブリースを依頼したからといって空室が多ければ、サブリース賃料を減額されてしまいます。
自己所有地の場合で立地が悪いケースでは、早めに売却をして、他の資産(ほかの投資用不動産、株式、債券など)に組み替えたほうが投資収益が高いことがありますので、さまざまな方法を検討してみたほうが良い結果を生みます。
管理会社の選定に失敗した
不動産管理会社には、きめ細かいサービスを提供しているところもあれば、管理費を徴収したままほったらかしのところもあります。
また、家賃の滞納があったりした場合にも、きちんと徴求するかどうかは管理会社次第です。
不動産の管理は非常の手間がかかるために、管理会社に委託することが賢明ですが、自分の物件は時折現地に出向いて、清掃や入居者管理がしっかり行われているかについて確認しましょう。
入居者とのトラブルが発生した
特に給湯器が壊れた、水回りの不具合によって水漏れが発生し階下の入居者に迷惑をかけた、などのトラブルが発生することがあります。
トラブルが発生したからといってすぐに投資が失敗、というわけではありませんが、その後の対処方法に失敗してしまうケースはよくあります。
トラブルの際には、大家さんとしての義務は果たさなければなりませんが、入居者との窓口業務や調整業務は管理会社の仕事です。
管理会社によっては、必要以上の負担を所有者に求めることもありますので、毅然とした対応が必要です。
日ごろから管理会社と密に連絡を取るようにして、コミュニケーションを図っておくことが重要になります。
必要となる税金について
アパート経営には、取得時の建物消費税、不動産取得税、登録免許税、運用中の固定資産税、不動産所得税のほか、個人がアパートを譲渡して利益が出た場合には、譲渡所得税が発生します。
建物は減価償却された簿価で評価をして譲渡所得を算出しますので、アパートの価値が上がった場合はもちろん、維持された場合にも多額の譲渡所得が発生する可能性があります。
アパート投資は運用中のインカムゲインも重要ですが、売却益と譲渡所得税まできちんと事業計画に織り込んで、しっかりと利益を確保できるようにしましょう。
まとめ
アパート経営は、不動産投資の初心者でも始められる投資です。
アパート管理を扱っている不動産管理会社も多く、地域密着でサービスを提供しているところもあります。
しかし、不動産投資のリスクをしっかりと理解して投資をしないと、思わぬトラブルや出費に見舞われて、失敗してしまいます。
アパート投資を行う際には、不動産業者の営業担当者に不明点や心配事を相談するとともに、不動産の専門家にセカンドオピニオンをもらうなどし、多面的な判断を行うように心がけましょう。