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アメリカの不動産を売却するときにかかる費用はいくら?税金や売却手順も解説

「アメリカの不動産を売却したい。費用や税金はいくらかかるんだろう?」

アメリカで不動産を売却するのは日本とはやり方もしくみも違うために、慣れていないと分からないことが多く出てきます。特に、かかる費用や税金がどのようになるのかということは気になるところでありつつ、理解するのが難しいところでしょう。

アメリカの不動産を売却するにあたっては、不動産エージェントに支払う手数料や不動産の譲渡益に対してかかる税金などの支払いが必要になります。これらのほかにもかかる費用などはあります。

アメリカで不動産を売却する際には、基本的に日本でも確定申告を行わなければならないということにも注意が必要です。アメリカだけでなく日本でも二重に課税されますが、適切に手続きをすることで二重課税を回避することができます。

この記事では、アメリカの不動産を売却するときにかかる費用や税金、売却の手順などについて解説しています。

この記事を読むことで、アメリカの不動産を売却するときにかかる費用や税金がどれくらいかをイメージすることができるようになり、お金の計算がしやすくなります。

アメリカで不動産を売却するときの基本的なお金の流れ

アメリカで不動産を売却するときには、どのようにお金が流れるのかを把握しておくと、かかる費用の内容や位置付けを把握しやすくなります。

アメリカで不動産を売却するときの基本的なお金の流れと不動産売却の際に登場するものについてご説明します。

アメリカの不動産取引では一般的に売主と買主に加えて「仲介者」が登場する

不動産を売却するときには、必ず「お金を支払う人=買主」と「お金を受け取る人=売主」という2つの立場の人が登場します。

しかし、アメリカで不動産を売却する場合、基本的には売主と買主が直接やり取りをして買主から売主に直接お金が支払われるわけではありません。

アメリカで不動産を売却するときには、通常、買主と売主の間に立って手続きを行う「仲介者」がいます。また、仲介者のほかにもさまざまな役割を担って不動産取引に関わる立場のものが存在します。

仲介者や取引関係者としてどのようなものが間に入るのかは、ケースごとに異なります。仲介者などになるものとして、主に次のようなものがあります。

  • エスクロー会社
  • 不動産エージェント
  • 不動産弁護士
  • タイトルカンパニー

これらの具体的な意味については、この後にご説明します。

仲介者が間に入ると、買主から仲介者にお金が支払われ、仲介者によってさまざまな費用が差し引かれます。その後、残った部分が売主に支払われます。

アメリカでは、「不動産売却の際に必ず仲介者を間に入れなければならない」という法律はありません。このことは日本と同様です。

しかし、実際には仲介者を間に入れることのほうが多いです。

不動産の売却にはさまざまな専門的知識や売却手続きにかかる時間が必要になります。このため、仲介者を間に入れずに不動産の売却手続きを進めようと思っても、多くの場合には挫折してしまうのです。

アメリカでは、仲介者を間に入れずに売主が自分自身で直接不動産を販売する方法のことを、「FSBO (For Sales By Owner)」といいます。

ある調査によれば、不動産の所有者の36%がFSBOによる売却を試みるものの、大多数は最後までFSBOによる売却手続きを進めることができずにあきらめてしまいます。最終的にFSBOによって売却完了まで至るのは、全取引の約10%前後です。

このようなことから、仲介者が間に入って不動産を売却するのが原則であり、仲介者や取引関係者がいる場合にどれだけの費用がかかるのかをしっかりと押さえておくことが必要です。

アメリカの不動産取引で登場する仲介者や取引関係者の具体例

具体的にどのようなものがアメリカの不動産取引で登場する仲介者や取引関係者になるのかは、ケースによって異なります。ここからご説明するように、仲介者や取引関係者として不動産取引に関わる可能性があるものはさまざまです。

エスクロー

「エスクロー」とは、売主と買主の間に入って、代金の決済や不動産の登記移転などの手続きを代行し、取引が確実に完了するように取り計らう役割の仲介サービスのことをいいます。

エスクローは、不動産取引における信頼できる中立的立場の第三者であり、日本の不動産取引における司法書士や信託会社と同じような立場のものです。

アメリカでは、このエスクロー会社が仲介者になるのが最も一般的です。

不動産エージェント

「不動産エージェント」とは、個人事業主として働く不動産の営業担当者のことです。

アメリカでは、不動産エージェントは「バイヤーズエージェント」(買主側のエージェント)と「セラーズエージェント」(売主側のエージェント)に分かれます。

1つの不動産エージェントが売主・買主の双方につくことは基本的にはありません。このことは、日本の不動産仲介会社が売主・買主双方をつなぐことと異なります。

不動産エージェントは個人で働きますが、基本的には不動産ブローカーとの間で契約を結んでいます。不動産ブローカーは会社組織であり、日本でいうところの不動産会社と似たような立場の存在です。アメリカでは、不動産エージェントが物件探しや不動産売買に関するアドバイスをしてくれるのであり、不動産会社に依頼するのではなくエージェントという個人に頼る形になるのが一般的です。

不動産弁護士

「不動産弁護士」とは、契約書の確認や不動産取引における交渉を行ってくれるアメリカの弁護士です。

不動産弁護士が使われるのは、主に東海岸の州です。一部の州では、不動産取引の中で不動産弁護士を使うことが必須とされていることもあります。

タイトルカンパニー

「タイトルカンパニー」とは、不動産取引において所有権移転登記や抵当権登記など登記関係の手続きを行ったり権利関係の調査を行ったりする会社のことです。

「タイトル」とは主に「不動産の所有権」のことを指します。

アメリカの不動産を売却するときにかかる費用と税金

アメリカの不動産を売却する際にかかる費用や税金は、日本で不動産を売却する場合とは異なるところが大きくあります。これは、アメリカと日本での不動産売却の流れや仲介者等の違いによるところが大きいです。

アメリカと日本の不動産売却の流れや登場する仲介者等の役割を意識することで、かかる費用などの位置付けが分かりやすくなります。

アメリカの不動産を売却するときには、次のような費用と税金がかかります。

エージェントフィー(不動産エージェント手数料)

通常は、売主側のエージェントと買主側のエージェントがどちらも存在し、この両方に対してエージェントフィー(不動産エージェント手数料)が支払われます。

アメリカの不動産取引では、売主が両方のエージェントへの手数料を負担します。

エージェントフィーの額は決まっており、基本的には不動産売却価格の6%です。

売却価格の6%のエージェントフィーを売主側と買主側のエージェントがそれぞれ3%ずつ受け取ります。

まれにエージェントが1人で双方のエージェントを務めることがありますが(このケースを「デュアルエージェンシー」といいます)、この場合のエージェントフィーは売却価格の5%です。

例えば、不動産の売却価格が20万ドルの場合、売主が負担するエージェントフィーはその6%なので、1万2千ドルになります。

クロージングコスト(Closing Cost)

不動産の本体価格以外にかかるさまざまな経費のことをまとめて「クロージングコスト」といいます。

売主が負担するクロージングコストは、不動産売却価格の約1.5%前後になることが多いです。変動したとしても、おおよそ不動産売却価格の1%~3%となるのが一般的です。

もっとも、クロージングコストを売主と買主のどちらがどのように負担するかは契約交渉の際に自由に決めることができ、また不動産取引が行われるエリアによっても異なります。交渉の結果によっては、売主の負担するクロージングコストは高くなることも低くなることもあります。

売主が負担するクロージングコストには、主に次のようなものなどがあります。

  • タイトル会社への手数料
  • 不動産弁護士への手数料(売主が依頼した弁護士について)
  • 不動産売却に際してかかる税金(Transfer tax)

これらは基本的に売主側が負担するクロージングコストです。

実際には、交渉の結果として売主が買主側のクロージングコストの一部を負担することもあります。

買主側のクロージングコストは、売主側よりも高くなる傾向にあり、住宅ローンを組む場合ではおおむね不動産売却価格の3%~4%となります。住宅ローンを組まずに現金一括払いで購入する場合には、住宅ローンに関するコストを負担する必要がなくなるため、おおむね不動産売却価格の1.5%~2%となります。

買主が負担するクロージングコストには、主に次のようなものがあります。

  • エスクロー手数料(Escrow Fee)
  • 不動産調査費用(Inspection Fee)
  • 不動産権原調査費用(Title Search)
  • 不動産権原保険(Title Insurance)
  • 住宅ローン手数料(Origination Fee)その他の住宅ローン関連費用

例えば、不動産の売却価格が20万ドルであって売主が負担するクロージングコストが不動産売却価格の1.5%であったとすると、売主が支払うクロージングコストは3千ドルになります。

固定資産税(Property Tax)

アメリカでも日本と同様に不動産を所有している人に対して固定資産税が課せられます。

アメリカの固定資産税の税率は、おおむね不動産の評価額の約1%前後ですが、州や地区によって大きく異なるため個別に確認する必要があります。

アメリカでは固定資産税の課税対象期間は1年間であり、課税対象期間の始まりが何月何日であるかは州によって異なります。固定資産税は、通常、年2回に分けて支払います。

課税対象期間の途中で不動産を売却した場合には、クロージングの日を基準にしてクロージングの日までは売主が固定資産税を負担し、それ以降は買主が固定資産税を負担します。

この場合、日割計算で固定資産税を計算し、必要に応じて精算を行います。

不動産譲渡税(Transfer Tax)

不動産譲渡税は、不動産を売却したときに州や市が徴収する税金です。不動産譲渡税が課税されるかどうかは州によって異なり、課税されない州もあります。

例えば、カリフォルニア州では、2024年現在の不動産譲渡税は1,000ドルあたり1.1ドルであり、税率は0.11%です。

カリフォルニア州において不動産を20万ドルで売却したとすると、支払う不動産譲渡税は220ドルとなります。

米国源泉税

日本の居住者(アメリカの非居住者)がアメリカの不動産を売却する際には、FIRPTA(Foreign Investment in Real Property Tax Act、ファプタ)という法律に基づいて、不動産を売却したお金から米国所得税として源泉徴収がなされるのが原則です。このように源泉徴収されるお金のことを米国源泉税ともいいます。

FIRPTAは、「外国人不動産投資税法」と訳すことができ、アメリカの非居住者が不動産取引をする際などに適用される法律です。

米国源泉税は、アメリカの非居住者が不動産を売却して利益を得たのにアメリカで所得税の申告・納付をせず、本来納められるべき税を徴収し損ねてしまうことを防ぐ目的で、アメリカの非居住者による不動産売却代金からの源泉徴収を定めています。

FIRPTAに基づく源泉徴収税率は、不動産売却価格の15%です。

また、州によってはこれとは別に、州の税について源泉徴収義務があるところもあります。

源泉徴収は、不動産の売却益ではなく売却価格を基準としてなされます。このため、不動産を売却して手元に残るお金はその分少なくなってしまうことに注意が必要です。また、売却損が出る見込みであっても、基本的には源泉徴収がなされます。

源泉徴収は事前に概算された所得税を納めるものであり、アメリカにおいて所得税の確定申告をすることで、実際に納めなければならない税との差額が精算され還付されます。

明らかに売却損が出る見込みである場合など一定の場合であって要件を満たす場合には、Form8828-BをあらかじめIRS(米国歳入庁)に提出して源泉税免除申請を行い、源泉証明(Withholding Certificate)の発行を受けることで、源泉税額の減額・免除を受けることができます。

Form8828-Bの申請は、エスクローが開設されてから行います。源泉証明の発行が完了するまでには最大90日程度の時間がかかるので、できるだけ早めに手続きを行うようにしましょう。

米国個人所得税(譲渡所得税)

日本の居住者である売主がアメリカで不動産を売却したことによって譲渡所得が発生した場合には、譲渡所得に対する税金を納めなければなりません。このことは、日本で譲渡所得にかかる税金が課せられるのと同様です。

譲渡所得は、不動産の売却代金から不動産を取得するために要した費用や売却のために要した費用を差し引いて計算します。

アメリカにおいて譲渡所得にかかる税率は、不動産を所有していた期間に応じてその幅が変わります。所有期間が1年以下の短期間であれば、より高い税率が課せられます。

具体的には、2024年現在、不動産の所有期間が1年を超える長期間(Long-term)の場合には、譲渡所得にかかる税率は0%~20%です。

また、不動産の所有期間が1年以下の短期間(Short-term)の場合には、譲渡所得にかかる税率は10%~37%です。

1年を超える長期間不動産を所有していた場合(Long-term)の譲渡所得の税率は0%~20%ですが、具体的には年収と結婚などのステータスに応じて0%、15%、20%のいずれかに決まります。

譲渡所得税は、アメリカで確定申告をしたうえで納付します。

確定申告の期限は原則として翌年4月15日ですが、日本在住者などアメリカの非居住者については2か月延長されて翌年6月15日が期限です。

確定申告をすることで、不動産売却手続時に源泉徴収された源泉税と実際に納付しなければならない税額との差額が精算されます。

日本個人所得税(譲渡所得税)

日本居住者がアメリカで不動産を売却して譲渡所得が生じた場合には、日本においても確定申告をしなければなりません。

税率は、長期譲渡所得と短期譲渡所得とで異なります。

5年を超えて不動産を所有していた場合には長期譲渡所得に該当し、5年以下であれば短期譲渡所得に該当します。

長期譲渡所得に対する税率は、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。これに対して、短期譲渡所得に対する税率は、39.63%(所得税30.63%、住民税9%)

なお、不動産の所有期間が5年を超えているかどうかは、売却した日ではなく売却した日が属する年の1月1日を基準日として判定します。

「アメリカと日本で二重に譲渡所得に対する税金を支払わなければならないのか」と思ってしまうかもしれません。しかし、アメリカですでに譲渡所得税を支払っている場合には、日本の確定申告において「外国税額控除」を適用することで、日本で二重に税金を支払わなくて済みます。必ず日本でも確定申告を行い、外国税額控除の適用を受けるようにしましょう。

アメリカの不動産を売却する手順

アメリカで不動産を売却する手順は、日本で不動産を売却する場合とは異なるところがいくつかあります。アメリカでの手順を把握しておき、日本との違いにとまどってしまうことのないようにしましょう。

アメリカの不動産を売却する手順についてご説明します。

手順1:不動産の売却手続きを依頼するエージェントを探す

まずは、不動産の売却手続きを依頼するエージェントを探します。

アメリカの不動産取引では、通常、1つのエージェントが売主・買主の双方を仲介するのではなく、売主側と買主側とにそれぞれエージェントがつきます。

エージェントに依頼する際には、売却しようとしている不動産の情報を正確に伝えることが大切です。不動産を購入した際に渡された書類を確認するなどして不動産の情報をしっかりと確認し、エージェントにうまく伝えられるように準備しておきましょう。

手順2:売り出し価格を決める

依頼するエージェントが決まったら、不動産の売り出し価格を決めます。売り出し価格とは最初に設定した希望売却価格のことです。

たしかに不動産はできるだけ高く売れればそれに越したことはありません。しかし、あまり売り出し価格を高く設定してしまうと、なかなか買い手がつかずに不動産が売却できないということにもつながります。

不動産のポータルサイトに不動産の情報を掲載して売り出し始めたものの、なかなか成約せずに時間が経ってしまうと、ポータルサイトを見ている人は「なかなか成約していないということは何か売れない理由があるのではないか」と思ってしまいます。こうなると、不動産を探している買い手からは避けられてしまう一因となります。

アメリカの不動産取引では、「売り出し価格」と「成約価格」を区別して把握することが重要です。他の不動産がどのような売り出し価格で売り出され、成約価格はどれくらいなのか、相場を把握するようにしましょう。そのうえで、相場を参考にして自分の売り出す不動産の売り出し価格を決めるようにしましょう。

手順3:売却活動を開始する

売却活動を開始すると、不動産の広告がポータルサイトに掲載されるなどして成約に向けた活動が行われます。

ポータルサイトに掲載する写真は、できるだけ見栄えが良いものを選ぶようにしましょう。また、写真はできるだけたくさん掲載したほうが買い手にとっては判断材料となり、よく検討してもらえます。

売却活動を開始したら、エージェントとしっかり情報を共有し、売却活動の進捗状況や買い手からの問い合わせなどについて把握しておくようにしましょう。

手順4:購入希望者からのオファーを受ける

アメリカの不動産売却において、「オファー」とは購入希望者からの申込みのことをいいます。

オファーは複数の購入希望者から受けることもあり、売主は最も条件の良いオファーを選ぶことができます。

オファーを検討するにあたっては、購入希望価格や住宅ローン利用の有無、希望引渡し時期などに着目しましょう。

購入希望価格は買主が希望する価格であり、交渉の前提となるものです。売り出し価格と比べて低い購入希望価格が提示されることも多いため、いくらで成約させたいか、その希望成約価格と比べて購入希望価格は低すぎないかなどといったことをよく検討します。

住宅ローン利用の有無については、住宅ローンを利用する買主であればローン審査に時間がかかってしまったりローン審査で否決されてしまったりするリスクなどがあることを念頭に置いておくことが大切です。より早く確実に不動産を売却したいのであれば、住宅ローンを利用する買主ではなく現金一括で購入する買主を優先するという考え方もあります。

希望引渡し時期については、売買契約締結時から引渡し時期が相当先であれば、何らかの事情で引き渡すことができないというときにトラブルになってしまうリスクがあります。あまり引渡し時期が先になってしまう買主であれば、そのリスクも含めて検討する必要があります。

手順5:売買契約書を作成・締結してエスクローを開設する

売却相手が決まったら、売買契約書を作成・締結し、エスクローを開設します。

エスクローを通したやり取りを開始することを「エスクローを開設する」といいます。

エスクローは、売主と買主の間に入って売却に伴う手続きを代行するものであり、契約書類やお金のやり取りはエスクローを通して行います。エスクローは、取引を確実に進められるように担保してくれる存在です。

エスクロー会社はさまざまなものがあり、どのエスクロー会社を利用するかはエージェントと相談しながら決めるとよいでしょう。

手順6:買主によるインスペクションなどが行われる

この段階で、買主側では、インスペクションの実施、手付金の支払い、ローン審査(ローンを利用する場合)などが行われます。

インスペクションとは、取引される不動産の検査・調査のことです。アメリカでは、買主側が不動産を取引時に検査・調査してその現状を把握することが行われ、修繕が必要な部分がどれだけあるのかが確認されます。

インスペクションの結果として修繕が必要な部分が見つかった場合には、修繕に要する費用を売主が負担するかどうかが交渉されます。

手順7:残金決済と所有権移転登記を行い、取引を完了する

インスペクションの完了後、残金決済と所有権移転登記が行われます。不動産代金の決済と物件の引渡しが終わり、不動産取引が完了することを「クロージング」といいます。

決済にあたっては、エスクローによりクロージングステートメントという明細書が発行されます。この明細書では、エスクロー費用などを含む売買の諸経費や固定資産税の日割計算など、決算の明細が示されています。

クロージングステートメントを確認して入金・決済が完了し、入金と合わせて所有権移転登記が行われることで、不動産の所有権が売主から買主に完全に移転し、取引が全て終了します。

手順8:申告・納税の手続きを行う

アメリカの不動産を無事売却し終えたら、最後に忘れずに確定申告を行って申告・納税の手続きを済ませることが大切です。

日本の居住者がアメリカの不動産を売却した場合には、アメリカで確定申告をする必要があることはもちろん、日本でも確定申告をしなければならないことに注意が必要です。

アメリカでの確定申告は一般的な日本の税理士が直接対応することは基本的にできませんが、日本にもアメリカでの確定申告への対応体制を整えているという税理士・会計事務所はあるので、探して相談してみるとよいでしょう。または、アメリカで確定申告をするには誰に対応を任せるべきかエージェントに相談するなどして、アメリカで確定申告を終えられるようにしましょう。

アメリカの不動産を売却するときのよくある質問

アメリカの不動産を売却するときのよくある質問についてご紹介します。

質問1:アメリカで税金を支払ったら日本では税金を支払わなくていい?

日本の居住者であれば、日本国内で生じた所得だけでなく、国外で生じた所得についても日本で課税されます。このため、日本の居住者がアメリカで不動産を売却したことによって譲渡益を得た場合には、これに対して日本でも課税されます。

もっとも、アメリカで税金を支払ったのに日本でも税金を支払うことになると、日本とアメリカで二重に課税されることになってしまい、納税者にとっては負担が大きくなって適切ではありません。

このような二重課税を調整して適切な納税額で済むように、外国で納税した分については一定額を所得税額から差し引いて納めなくて済むという制度があります。このような二重課税を調整する制度を「外国税額控除」といいます。

日本で外国税額控除を受けるためには、確定申告の際に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」や「外国所得税額を課されたことを証する書類」など一定の書類を添付しなければなりません。

具体的にどのような書類が必要になるのかは、日本での確定申告の際に税理士に相談してアドバイスしてもらうようにしましょう。

外国税額控除の適用を受けるための手続きを適切に行わなければ、原則どおりアメリカだけでなく日本でも二重に納税しなければならなくなるため、外国税額控除の適用が確実に受けられるように対応するようにしましょう。

質問2:アメリカで確定申告をしたら日本で確定申告をしなくてもいい?

日本の居住者であれば、アメリカで確定申告をしたとしても、日本でもあらためて確定申告をしなければなりません。

確定申告の際には、先ほどご説明したとおり、外国税額控除の適用を受けるための申請・書類添付が必要です。

アメリカで確定申告をしたという情報が自動的に日本の税務署に共有されるということはないので、ご自身でしっかりと日本での確定申告を行うことが大切です。

質問3:日本の所得税法上の「居住者」と認められるのはどのような場合?

日本の所得税法上、日本の「居住者」(かつ非永住者以外のもの)に該当する場合には、国内外で生じた全ての所得が課税の対象となります。このため、アメリカの不動産を売却して得た利益についても、日本での確定申告・納税の義務が生じます。

逆に言えば、長期間アメリカに住んでいるなどして日本の居住者に該当しない場合(日本の非居住者に該当する場合)には、たとえ日本国籍の者であったとしても、日本国内で生じた所得(国内源泉所得)に限って課税されます。このため、このような者がアメリカの不動産を売却して得た利益に日本国内で課税されることはありません。

日本の所得税法上、「居住者」と認められるのは、次の条件のいずれかを満たす個人です。

  • 日本国内に住所があること
  • 日本国内に現在まで引き続いて1年以上居所があること

また、居住者は「非永住者以外の居住者」と「非永住者」に分かれます。

ほとんどの居住者は「非永住者以外の居住者」に該当しますが、居住者のうち、日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人については「非永住者」に該当します。「非永住者」に該当するのは、外国人であって過去に日本に住所・居所があった期間が少ないものというイメージです。

「非永住者以外の居住者」は、日本の国内外を問わず全ての所得に対して課税されます。これに対して「非永住者」は、所得税法で規定された国外で生じた所得(国外源泉所得)以外の所得と、国外源泉所得のうち日本国内で支払われ、または日本国内に送金されたものについて課税されます。

例えば、日本に住所がある日本人であれば、「居住者」に該当します。このため、アメリカの不動産を売却した際の利益を日本で申告・納税しなければなりません。

質問4:アメリカの不動産を売却したい場合には誰に相談すればいい?

アメリカの不動産を売却したい場合には、まずは不動産エージェントに相談するとよいでしょう。

不動産エージェントはアメリカのものですが、不動産エージェントの中には日本人が日本人向けにサービスを提供していることもあります。日本人向けの不動産エージェントであれば、日本語が通じることも多く、スムーズに手続きを進めることができます。

英語でのやり取りが不安であれば、日本語で対応してくれる日本人向けの不動産エージェントを探して相談・依頼してみるようにしましょう。

そもそもアメリカ現地にある日本人向けの不動産エージェントの探し方が分からないという場合には、まずは日本国内の税理士・弁護士や不動産会社であってアメリカでの不動産売却をサポートしてくれるものを探して相談してみるというのもよい方法です。

アメリカでの不動産売却をサポートしてくれる業者等であって日本語でサービスを展開しているものはいくつか存在しているので、インターネット検索をするなどして探してみましょう。

まとめ:アメリカの不動産を売却するときにはエージェントフィーやクロージングコスト、税金などがかかる

アメリカの不動産を売却するときには、さまざまな費用や税金がかかります。

例えば、エージェントフィー(不動産エージェント手数料)は売主が負担する慣行となっており、売却代金の6%と費用の中では最も割合が大きいものです。このほかにもクロージングコストとして一定の費用がかかります。

売却が成功したら、アメリカと日本の両方で確定申告をして税金を支払うことも忘れてはいけません。特に、アメリカで支払った税額については日本で適切に確定申告をすることで外国税額控除の適用を受けることができ、二重に課税されることを避けることができます。適切な手続きをしなければ外国税額控除の適用を受けることはできず、二重に税金を支払うことになるので、税理士に依頼するなどして対応することが必要です。

アメリカで不動産を売却するにあたっては、手続きを進めること自体も大切ですが、費用や税金がいくらかかるのかを把握することも欠かせません。

アメリカの不動産売却の進め方やそれに伴う確定申告・納税手続きで分からないことがあれば、税の専門家である税理士や不動産を取り扱う弁護士、アメリカの不動産売却を手掛ける不動産会社などに相談するようにしましょう。専門家に相談・依頼することで、アメリカの不動産売却を成功させることが可能になります。

この記事を読み、専門家に相談することで、アメリカの不動産を売却する際にはいくら費用や税金がかかるのかをしっかりと把握して、アメリカでの不動産売却を成功させましょう。

執筆者:弁護士 岡島 賢太

経歴: 東京大学文学部卒業(中国語・中国文化専攻)。出版社にて書籍編集者、新聞社にて校閲記者として勤務し、最高裁判所における司法修習を経て、弁護士(第二東京弁護士会所属)。

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