空き家問題とは?原因や空き家が問題となってしまう理由・対策を詳しく解説
この記事でわかること
- 空き家の社会問題について理解できる
- 空き家対策が自分でできる
- 空き家問題の深刻さがわかる
2015年の5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。
法律が施行された背景には、少子高齢化や地方における人口減少などの理由による、空き家数の増加という社会問題がありました。
また政府は現在、所有者不明土地の問題を解消するために、相続登記の義務化を審議しています。
空き家数の増加により、所有者不明で管理が行われていない家屋や土地が増加していることが背景となっています。
政府や各自治体が、空き家問題に積極的に取り組んでいるのは、問題が今後ますます深刻化していく傾向にあるからです。
空き家問題は地方だけの問題ではありません。
大都市でも古い家屋やマンションの空き家が増加しています。
あなたが現在空き家を所有されているなら、空き家の管理や処分が、今後深刻な課題となります。
あなたのご両親がご自宅を所有されているなら、将来、あなたに空き家問題が降りかかってくるかもしれません。
少子高齢化でますます深刻化する「空き家問題」について、詳しく解説いたします。
目次
空き家問題とは
空き家とは、居住やその他の使用がなされていないことが常態している家屋とその敷地と定義されています。(空家等対策の推進に関する特別措置法2条より抜粋)
所有者が亡くなりそのまま放置されている家屋や、介護施設等に入所して誰も使わなくなった家屋などが空き家に当たります。
総務省統計局の住宅・土地統計調査によると、平成30年10月1日現在、居住世帯のない住宅のうち空き家は846万戸で,前回調査の平成25年と比べると26万戸も増加しています。
日本全国の総住宅数の約13.6%に当たる家屋が空き家で、過去最高の割合となりました。
空き家は、「賃貸用」「売却用」「二次的住宅」「その他の住宅」と4つの種類に分類されています。
二次的住宅とは別荘やセカンドハウスのことで、今問題となっている空き家は「その他の住宅」に当たります。
「その他の住宅」は、前記3つ以外の、人が住んでいない住宅のことです。
今回の調査で現在347万戸となり、前回調査から29万戸も増加しています。
この数はますます加速してくと予想されています。
空き家問題とは具体的には、
- ・倒壊の危険
- ・雑草・悪臭・害虫などの衛生悪化
- ・景観の悪化
- ・不法侵入者などによる治安の悪化
- ・放火被害のおそれ
- ・不動産価値の下落
などが挙げられ、どれも深刻な問題として社会問題になっています。
空き家が発生してしまう主な原因
平成26年空家実態調査によると、空き家が発生してしまう主な原因として、高齢者の転居と、所有者の死亡の2つが挙げられています。
参考:平成26年空家実態調査(国土交通省)
高齢者の転居による空き家の発生
空き家が発生してしまう原因で1番多いのは、高齢者の転居です。
別の住宅へ転居した場合が28%、老人ホーム等の施設への入所による場合が14%となっています。
国立社会保障・人口問題研究所の日本の世帯数の将来推計によると、世帯主が75歳以上の世帯の中で、2000年以降「単独」「夫婦のみ」の世帯が急増しています。
1990年は「単独」「夫婦のみ」の世帯は128.9万世帯でしたが、2020年には723.7万世帯と約6倍近くになっています。
ピークを迎える2040年には875.7万世帯になるという予想もしており、高齢者の核家族化が、空き家問題の1番の原因の背景となっています。
参考:日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計:国立社会保障・人口問題研究所
参考:日本の世帯数の将来推計(全国推計)2013(平成 25)年 1 月推計:国立社会保障・人口問題研究所
内閣府の最新の高齢社会白書によると、65歳以上の主世帯主の8割以上が持ち家に住んでいます。
65歳以上の単身世帯でも、66.2%が持ち家に住んでいます。
内閣府平成27年度高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結結果でも、60歳以上の男女(施設入所者を除く)で一戸建ての持ち家に住む人は79.5%と賃貸住宅の10.3%に比べるとはるかに多いのがわかります。
参考:内閣府 平成27年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果
高齢者が配偶者と死別し単身になり、子供や親戚の住む家や地域、または高齢者施設などに転居した結果、空き家が多く発生しています。
所有者の死亡による空き家の発生
2番目に空き家が発生してしまう原因が多かったのは、所有者の死亡です。
親が死亡すると相続が発生し、誰も住まなくなった実家が相続財産となり、子供が相続することになります。
しかし、子供もすでに家を購入して都市部に住んでいることが多いので、地方の実家に住むことは想定していません。
誰かに貸すにしても、貸すためにはある程度のリフォーム費用がかかります。
売るにしても、家屋が古く立地が悪い場合には、買い手はなかなか見つかりません。
結局どうにもすることができず、そのまま放置することになっています。
問題は地方だけには限りません。
都市部でも、空き家は年々増加しています。
1950年代からの高度経済成長時代には、中間層によるマイホーム取得が日本の経済成長の一端を担いました。
しかし、かつての新築大量供給は、現在の空き家問題へと姿を変えてしまいました。
高齢者が所有していた戸建てやマンションは、築40年以上経過した古い家屋である場合が多く、設備も古く資産価値も低いために、相続したまま放置している場合が多いのです。
このように不要な土地や空き家を相続してしまい、空き家が発生してしまっています。
空き家が問題となってしまう理由
では一体、空き家は何が問題となるのでしょうか。
建物の老朽化
人が住んでいない空き家は、住んでいる家に比べて劣化が早まると言われています。
空き家は、人が入れないように窓やドアを締め切ります。
締め切った室内は、梅雨時期などには湿気が家の中にこもりやすく、カビが繁殖しやすくなります。
カビや湿気は、木造住宅の木を腐らせてしまう一番の原因で、劣化が早くなると言われています。
空き家の掃除や修繕も怠ると、劣化が早まります。
家屋の損傷による雨風の侵入は、劣化速度を急激に加速させます。
場合によっては、家屋を倒壊してしまう危険性もあります。
景観の悪化
手入れをせず雑草が伸び放題になっている空き家や、窓ガラスが割れたままの空き家は、見た目にも景観が良いとは言えません。
防犯上の不安
ホームレスや不審者が空き家に住み着き、または、犯罪者や不良グループの溜まり場になるなど、治安悪化の原因となることもあり得ます。
防災上の不安
老朽化した空き家を放置していると、倒壊する危険性だけではなく、台風や地震により瓦や塀・壁が崩れ、近隣の住民や通行人対して、危害が及びます。
家屋の倒壊により通行人が怪我をしてしまったとか、台風で瓦が飛んで隣の家に被害が生じた場合には、家屋の所有者が責任(損害賠償責任や原状回復の義務等々)を負います。
また、放火のおそれもあり、近隣住民が多大な迷惑を被るおそれもあります。
自治体の深刻な財政危機
空き家が多いということは、その自治体の人口が減少しているという表れでもあります。
人口が減少すれば、道路や鉄道、水道・電気・ガスなどのインフラの維持も難しくなります。
病院や銀行、スーパーやコンビニなどが撤退する可能性もあるでしょう。
他の都市からの人口の流入が見込めなくなり、地域活性化の妨げになります。
そうなると、税収が減り自治体が破綻するという、最悪のシナリオが待っています。
空き家問題への対策方法
問題解決に向けて、政府や自治体は以下の対策を取っています。
空家等対策の推進に関する特別措置法では、空き家を「特定空家」に指定することで、行政による「助言・指導・勧告・命令」が可能となりました。
特定空家とは、そのまま放置していれば以下の状態となる空き家のことを言います。
- ・倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- ・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- ・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- ・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
行政から「特定家屋」に指定された場合、そのまま放置や命令違反をすれば、どんな罰則があるのでしょうか。
行政から改善を求められながら、空き家を放置したり命令違反をしたりすれば、行政処分が下り、最大50万円以下の罰金を課せられることになります。
最悪の場合50万円以下の罰金以外に、行政が所有者に代わって「行政代執行」をすれば、その費用は全て所有者に請求されます。
「特定空家」になると税金の優遇もなくなります。
不動産は所有していると、固定資産税と地域によっては都市計画税が課税されます。
しかし、現在は「住宅用地の特例」が適用されているので、固定資産税は最大1/6、都市計画税は最大1/3まで減税されています。
これが「特定空家」に指定されると、この適用から除外されます。
固定資産税が最大6倍、都市計画税が最大3倍になる可能性があるのです。
空き家をすでに所有されている方や、相続で空き家を取得する可能性のある方は、最悪の場合になる前に、専門家等に対策を相談されることをお勧めいたします。
現に空き家を所有している場合
現に空き家を所有されている方は、何かしらの対策をされていますか。
前述しましたが、空き家は年々増加しています。
放置しておくことで所有者にはデメリットが増えていきますので、早めに対策をする必要があります。
では、実際の空き家問題の対策にはどんなものがあるのでしょうか。
- ・空き家バンクの利用
自治体では、増加する空き家の有効活用を実現するために、空き家バンクというシステムを開設しています。
空き家の所有者と利用者をマッチングするシステムで、空き家の売買や賃貸の取引がスムーズにいくように支援しています。
空き家バンクは営利目的ではないので、自治体は契約や仲介に関与しません。
そのため、自分で直接相手と交渉する必要があります。
- ・空き家の売却
空き家バンクを利用せず自分で売却しない場合は、不動産会社を通して売却することになります。
空き家が遠方にある場合など、不動産会社を選ぶにも一苦労です。
不動産は、基本的に現地を見て査定しますので、遠方の物件だと査定にも影響します。
空き家を得意とする不動産会社もあります。
空き家所有者向けセミナーや個別相談などにも積極的に参加して、空き家売却のプロに相談し、空き家問題の対策を立てましょう。
- ・更地にして売却または有効活用
家屋が古いため家屋に査定がつかず、売却しにくい場合があります。
日本では新築信仰があり、中古戸建は人気が低いのが現状です。
家屋を解体して更地にすることで、その土地の売却をスムーズにし、または有効活用することができます。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」には、助成金などをもらえるメリットがあります。
助成金制度の概要は自治体によって異なりますが、おおむね以下の通りです。
- ・空き家の解体工事や撤去処分にかかる費用の一部負担
- ・空き家の改修にかかるリフォーム費用の一部負担
- ・耐震補強にかかる費用負担、更に税金の控除や減額措置
助成金などをうまく活用し、空き家問題の対策を早めにとるようにしましょう。
相続で空き家を所有する可能性がある場合
相続で空き家を所有する可能性がある方は、何かしらの対策を考えていますか?
空き家の増加の原因の1つに、親が住んでいた自宅がそのまま空き家になってしまうケースが多いとお話ししました。
中には、遺産分割協議で相続人同士の争いとなり、長いあいだ空き家になっているケースも多くあります。
兄弟間で共有した場合、共有者全員の合意がなければ、売ることも貸すことも解体することもできません。
相続が発生すると、思ってもいなかった問題が発生する場合もあります。
相続問題がこじれると、解決には、余計な手間や費用、時間がかかります。
そうならないためにも、前もって相続対策を考えておくことが重要です。
すでに相続問題が起こっている場合、早く解決することが空き家問題への対策となります。
どんな対策が必要か、相続する前から、専門家等に早めに相談されて対策を講じることが、空き家問題に発展しない1番の解決策になります。
まとめ
本記事では空き家問題の原因や理由・対策について詳しく解説してきました。
空き家は放置しておけばしておくほど問題となり、思わぬ出費と余計な手間がかかってしまいます。
それだけに、早期の対策が重要となっています。
相続が絡んでくるため不動産会社だけでなく相続関係に詳しい士業等に相談することもおすすめです。