アパートの相続にかかる税金は?節税方法や注意点を解説
不動産を相続する人の中には、「土地を更地で相続するよりもアパートを建てた方が、相続税が安くなる」と聞いたことのある人がいるかもしれません。
はたして本当にそうなのでしょうか。
また、更地の場合とアパートを建てた場合とで、相続財産の評価方法はどのように違うのでしょうか。
本記事では、アパートの相続に関係する税金について解説します。
相続財産の中にマンションが含まれている場合の分割方法や賢い節税方法もあわせて確認しましょう。
目次
アパートを相続する際に必要な行動とは
アパートを相続する際には、まず相続放棄する人がいないか確認する必要があります。
相続放棄する人がいると、法定相続分の比率が変わるほか、相続順位が変動する可能性があります。
また、相続税の支払いが必要な場合は、10カ月以内に申告及び支払いをしなければなりません。
被相続人に一定の収入があり、確定申告を行っていた場合には、4カ月以内に準確定申告を行う必要もあります。
さらに、アパートの名義を変更するためには不動産登記が必要です。
アパートの相続で発生する税金とは
アパートを相続する場合には、さまざまな税金が発生します。
ここでは、相続の際発生する主な税金を紹介します。
相続税
アパートを相続する場合、まず考慮しなければならないのが相続税の支払いです。
相続税対策のひとつとして生前贈与を行うケースもありますが、その場合には贈与税を納めなければなりません。
生前贈与した場合でも、相続時精算課税制度を利用すると贈与された額は贈与税の対象とならず、相続財産の中に含まれます。
ただし、相続時精算課税制度を用いた場合は、それ以降その相手との間で贈与が行われたとき、年間110万円の基礎控除が使えなくなる点は注意が必要です。
亡くなった後にアパートを相続するときには、評価額をもとに相続税が課せられます。
しかし、賃貸アパートの場合は借地権割合、借家権割合、賃貸割合に応じて相続税は減額されます。
固定資産税・都市計画税
アパートを相続した場合、その後は不動産の所有者として固定資産税を支払わなければなりません。
また、市街化区域内にある場合には都市計画税の納付も必要です。
どちらも固定資産税評価額を基準に税額が計算され、固定資産税はその1.4%、都市計画税は0.3%です。
住宅用地であれば軽減措置もあります。
納税義務者はその年の1月1日時点で所有していた人であり、所有者が亡くなった年はその亡くなった人が納税義務者となります。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得した際にかかる税金です。
売買や贈与などの場合に課せられるものですが、相続の場合には課せられません。
税率は固定資産税評価額の3%で、不動産の価格によってはかなりの高額となるケースもあります。
住宅用地であれば土地建物ともに軽減措置もありますが、それでも納税額が数百万円に及ぶこともあります。
相続税対策として生前贈与を検討する場合には、この不動産取得税がどれだけかかるかも考慮しましょう。
所得税
相続によって賃貸アパートの所有者となったとき、家賃収入の利益額に応じて所得税の支払義務が発生します。
所得税は、収入があった年の翌年2月16日~3月15日までに確定申告を行い納付しなければなりません。
所得税は、所得が多いほど税率が上がる累進課税制度が取られています。
最大の税率は45%となるため、収入が多い場合には法人化も検討してみましょう。
住民税
賃貸アパート経営で得た利益は住民税の課税対象にもなります。
住民税の税率は一律10%で、確定申告を行うと自動で計算されるため、特別な申告は必要ありません。
所得税や住民税の支払は負担の大きなものです。
また、収入があった時期と支払時期が異なるため、収入があったタイミングで納税のための資金を用意しておくことが大切です。
法人税
法人名義で所有しているアパートを法人から相続した場合には、法人税を支払う必要があります。
法人税の税率は20%台後半~30%台前半あたりです。
所得税と比較して、収入が高額になるほど法人化した方が有利になります。
アパート相続で発生する税金の計算方法
アパートで相続が発生したとき、実際にどれくらい税金が必要になるのでしょうか。
ここで詳しく説明します。
基礎控除
相続税額を計算する際に、遺産総額から引くことのできる控除額のことを基礎控除といいます。
遺産総額が基礎控除以下だった場合、相続税はかかりません。
基礎控除の具体的な計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で表されます。
法定相続人は配偶者のほか、子や孫などの直系卑属、親や祖父母などの直系尊属、兄弟姉妹のうち、特定の人が該当します。
法定相続人が2人の場合は、基礎控除は3,000万円+600万円×2=4,200万円、遺産総額が6,000万円のときは6,000万円-4,200万円=1,800万円が課税対象額です。
課税遺産総額
相続税の計算は、課税遺産総額をもとにして行われます。
課税遺産総額を求める計算式は次のとおりです。
課税遺産総額
課税遺産総額=遺産総額-基礎控除額-その他に控除される額
遺産総額を計算するとき、アパートは土地と建物で評価方法が違います。
土地は路線価方式を使用し、路線価で評価できない場合は倍率方式を用います。
建物を評価する際に使用するのは固定資産税評価額です。
また、相続税が減額される特例を用いる場合には、ここで計算に反映させます。
相続税の計算手順
相続税を計算する際、実際にどう分割するかに関わらず、まずは各相続人の仮の相続税額を計算します。
各相続人の仮の相続税額の計算式は「課税遺産総額×法定相続分×税率-控除額」で表されます。
計算されたそれぞれの値を合計したものが、相続税の総額です。
各相続人の実際の相続税額は、相続税の総額に対し、遺産総額から実際に相続で取得する額の割合を案分して計算します。
計算式は「相続税の総額×(各相続人の取得する遺産の課税価格÷課税遺産総額)」です。
ここから各種の控除額を差し引いて、相続人ごとの最終的な納付税額が計算されます。
相続税の計算式は「(相続財産の相続税評価額-基礎控除)×税率-控除額」で表されます。
アパートを含んだ相続の分割方法
相続人が複数いる場合、遺産分割協議などによって遺産の分割方法を決めることが多くあります。
相続財産にアパートが含まれるとき、その分割方法として、現物分割・代償分割・換価分割の3種類があります。
現物分割は、現物のままアパートを相続する方法です。
代償分割は、相続人のうち1人がアパートを相続し、他の相続人に代わりとなる現金などを渡す仕組みになっています。
換価分割は、アパートを売却して現金化し、その現金を相続人で分割します。
アパート相続で有効な節税方法とは
アパートを相続する際、有効な節税方法はあるのでしょうか。
ここでその具体例を確認しておきましょう。
賃貸割合をアップさせる
賃貸割合が増えると、賃貸物件の評価額はその分下がります。
賃貸割合とは、該当する物件に実際にどれだけの人が住んでいるかの割合を示すものです。
賃貸割合が多いと、所有者が自由に扱える割合が少なくなるため、評価額は低くなります。
特例を活用する
アパートを相続した際に備えて、まず「小規模宅地等の特例」について知識を得ておくことが大切です。
小規模宅地等の特例とは、アパートの建つ土地の面積うち、200平方メートルまでの範囲で50%減額が受けられる制度です。
ただし、この特例は賃貸事業に供している土地について適用させます。
そのため、空室があった場合にはその部分については除外されることに注意が必要です。
他にも、貸家建付地や借地権割合などを活用する方法があります。
古いアパートは相続する前に建て替えを検討する
古いアパートを所持している場合、相続する前に建て替えを検討するのもおすすめです。
アパートを建て替える際に借入金が発生した場合にも、その借入金は債務控除されて相続税額も軽減されるからです。
また、アパートを建て替えても大きなマイナスになると分かっている場合には、相続しない方が得になるケースもあります。
アパートの相続手続きをチェックしよう
アパートの相続手続きについて、一通り説明してきました。
ここで、相続手続きについてもう一度チェックしてみましょう。
一般的な手順
一般的な手順として、まずアパートを含めた相続財産の把握から始めます。
相続財産は、預金やアパート以外の不動産など、全てを把握しなければなりません。
相続財産を把握したあとは、遺産分割協議を進めていきます。
遺産を分割するためには、基本的に相続人全ての同意が必要です。
分割方法が定まったら、法務局に登記申請を行うのが一般的なアパートの相続的続きです。
専門家の選び方
相続手続きを行う際は、専門家に依頼する方法もあります。
手続きを依頼できる専門家は、税理士・弁護士・司法書士です。
相続に強い事務所を選んだり、報酬やサービスの内容を比較したりすると、最適な選択ができるでしょう。
アパート相続で気を付けたいポイント
アパート相続の際には気をつけなければいけないポイントがあります。
ここからそのポイントを詳しく紹介していきます。
経営リスクがある
相続をした後はアパート経営をしていく必要がありますが、経営が順調になるとは限りません。
トラブルの対応等、状況に応じて運営していく必要があります。
アパート経営を成功させるためには、管理会社と相談しながらうまく経営する意識を持つことが大切です。
親族でもめないように事前対策が必用
相続時は意思の疎通が難しく、もめやすい傾向があります。
そこで、事前に遺言書を作成しておくと安心です。
もし相続でもめてしまった場合には、自身で解決しようとするよりも、専門家に相談した方が適切に解決しやすくなります。
土地だけを相続した場合はアパートを建設すべき?
土地だけを相続した場合、相続する土地にアパートを建設する節税方法は古くから行われてきました。
しかし、この方法はメリットだけでなく、デメリットもあります。
アパートの建設は、それぞれを把握したうえで行うことが必要です。
借入金は相続財産から控除される
アパートを建築する際には、ほとんどの人は金融機関から借り入れをすることになるでしょう。
相続が発生した時点での借入金の残高は、預金や不動産、有価証券などの相続財産の合計額から控除できます。
「アパートを建てるとその建物部分の相続財産が増えてしまうのではないか」と心配する人もいるでしょう。
しかし、建物の相続税評価額である固定資産税評価額は、建築価格のおよそ5~6割程度です。
また、貸家の場合は3割減額できるため、それほど大きな評価額にはなりません。
アパートを建ててからどれくらいの時間をおいて相続が発生するかにもよりますが、アパートの相続税評価額より借入金の残高の方が大きくなることもめずらしくありません。
土地の評価方法が変わる
不動産の中でも大きなウエイトを占めるのが土地です。
土地の相続税評価額を求めるにあたっては、その使用状況によって評価方法が異なるため注意しなければなりません。
更地のまま保有している場合は、その土地の相続税評価額は固定資産税評価額や路線価をもとに計算した金額となります。
しかし、アパートなどの貸家が建っている敷地は貸家建付地として評価するため、借地権割合と借家権割合(0.3)を乗じてその分を控除した金額となります。
たとえば借地権割合が70%の土地にアパートを建てれば、その敷地の相続税評価額は「更地としての評価額×(1-0.7×0.3)」となるため、更地として相続するより2割以上評価額の減額が可能です。
更地としての相続税評価額が5,000万円であれば1,000万円以上の減額となるため、その効果はとても大きなものになります。
アパートを建設した場合とそうでない場合の相続税額の違いは「目で見てわかる!相続の基本マニュアル29 知らないと損!持て余している土地を活用して節税と収益アップにつなげる方法とは」をご参照ください。
家賃収入があることによるメリット・デメリット
アパートを建てれば、家賃収入が毎月入ってきます。
相続対策としてアパートを建てた場合でも、家賃収入を相続人となる配偶者や子どもの所得にはできないため、結果的に家賃収入が入れば入るほど相続財産が増えることとなります。
ただ、この家賃収入は現金収入であるため、相続した人はそのまま相続税の納税資金として活用可能です。
また、現金が増えれば遺産分割の際に複数の相続人で分割する際にも分けやすくなるため、大きなメリットがあります。
一方で、どうしても現金で相続税を納税することができず、延納もできない場合には物納をすることとなります。
アパートやアパートが建っている敷地を物納することも不可能ではありません。
しかし、物納できる財産にはさまざまな制約があるため、他に財産があればそちらが優先されます。
また、物納できる場合でも、相続税評価額で納税したことになるため、アパートを建てると納税面では不利になります。
相続対策としてアパートを建てたのに、納税資金が足りなくてそのアパートを物納する、ということのないようにしましょう。
まとめ
アパートを相続する場合は、相続放棄する相続人の確認をしたり、準確定申告や不動産登記などを行ったりする必要があります。
発生する税金は相続税だけでなく、固定資産税・都市計画税や不動産取得税など、さまざまな種類の税金が関わってきます。
アパートの相続によほど慣れている人なければ、税金の計算をしたり、相続財産を適切に分割したりするのは難しいでしょう。
こうした場合は、不動産の専門家と税の専門家からサポートが受けられる不動産売却マップにご相談ください。
お客様に最適なアパートの相続の方法をご提案いたします。