不動産の売買契約書の収入印紙を貼らないとどうなる?不要なケースとは?
この記事でわかること
- 不動産の売買契約書で収入印紙が必要なケース・不要なケースがわかる
- 収入印紙を貼らないとどのようなペナルティがあるのかがわかる
目次
不動産売買契約書に印紙を貼らないとどうなる?
印紙税は作成された文書の種類に応じて、その文書に貼付しなければなりません。
不動産売買契約書も、収入印紙の貼付が必要な種類の文書として定められています。
収入印紙が貼られていない契約書でも、契約自体が無効になることはありません。
ただ、印紙税が正しく納められていない場合は過怠税が発生し、「本来の収入印紙の金額+2倍の金額」を納めなければなりません。
例えば5,000円の収入印紙を貼っていない場合、15,000円の過怠税が発生します。
印紙を貼り忘れたらペナルティがある
収入印紙を貼り忘れた場合、過怠税として本来の金額の3倍もの金額を納税しなくてはいけません。
たいていは税務調査で収入印紙を貼るべき書類に貼っていないことが発覚し、過怠税を課せられる場合が多いです。
税務調査を受ける前に自主的に貼り忘れを申告した場合は、過怠税は本来の金額の1.1倍軽減されます。
それでも納めるべき印紙税にプラスして1.1倍なので、合計2.1倍もの金額を納税しなくてはならず、かなりの負担になります。
消印し忘れにもペナルティがある
印紙税法は消印についてもペナルティがあります。
消印のし忘れや所定の方法で消印をしていなかった場合には、収入印紙の額面金額に相当する金額の過怠税を徴収されます。
貼り忘れて後から印紙を貼るのはOK?
収入印紙を貼り忘れた場合には、後からこっそり貼ってしまえばよいと思うかもしれません。
しかし、印紙税は契約書を作成したときに納付しなくてはならない税金のため、後からこっそり貼っても適切に納税したことにはなりません。
売買契約書で収入印紙が必要なケース
不動産の売買契約書を作成した場合、収入印紙を売買契約書に貼る必要があります。
これは不動産売買契約書が、印紙税法の定める第1号文書に該当するためです。
印紙税額は、売買契約書1通あたりの売買契約金額に応じて、定められています。
例えば、不動産売買契約の契約金額が2,000万円の場合は、「1千万円を超え5千万以下」に該当するため、印紙税額は2万円となります。
不動産売買契約の契約金額が6,000万円の場合は、「5千万円を超え1億円以下」に該当するため、印紙税額は6万円となります。
売買契約書で収入印紙が不要なケース
不動産売買契約書を作成すると、基本的に契約金額に応じた収入印紙を貼付しなければなりません。
しかし、中には売買契約書を作成しても、収入印紙は不要とされるケースがあります。
また、売買ではありませんが、契約書を作成しても収入印紙が必要ないものもあります。
ここでは、売買契約書で収入印紙が必要ないもの、そして契約書の中で収入印紙が不要なものを取り交ぜてご紹介します。
契約金額が1万円未満の契約書
不動産売買契約書でも、印紙税が非課税と定められているケースがあります。
それは、契約金額が1万円未満の契約書の場合です。
契約金額が1万円未満の場合は、印紙税が非課税と定められているため、収入印紙を貼付する必要はありません。
不動産売買契約書で、契約金額が1万円未満になるケースはあまりないと思われますが、覚えておくといいでしょう。
電子契約(PDF・FAX・メールなど)
収入印紙が必要とされるのは、契約書を書面で作成した場合です。
電子契約を行った場合は、そもそも収入印紙を貼ることができないため、収入印紙は必要ありません。
印紙税が必要とされる「文書の作成」に、PDFファイルの作成やFAX、メールの送信は該当しません。
また、PDFデータを紙に出力することも「文書の作成」にはならないため、やはり収入印紙は不要とされます。
動産のリース契約や建物の賃貸借契約
不動産の売買契約書は、印紙税法の定める課税文書のうち第1号文書に該当するため、収入印紙を貼る必要があります。
一方、車や複合機などのリースを行う際に取り交わす賃貸借契約書は、印紙税法の定める課税文書に該当しないため、収入印紙を貼る必要はありません。
また、アパートや事務所、店舗を借りる際に取り交わす賃貸借契約書も、収入印紙は必要ありません。
一方、土地の賃貸借契約書は第1号文書として、収入印紙が必要な文書と定められているので、注意しましょう。
雇用契約や準委任契約
会社が従業員を雇った場合に作成する雇用契約書、あるいは人材派遣会社と取り交わす労働者派遣契約書も、印紙税法の定める課税文書に該当しないため、収入印紙は不要です。
また、一定時間のみ事務処理を委託する場合に作成する委任・準委任契約書も、同じく課税文書には該当しないため、収入印紙は不要です。
なお、委任・準委任契約と混同しやすい請負契約については、印紙税の課税文書に該当し、収入印紙を貼らなければなりません。
国や地方公共団体などが作成した課税文書
会社や個人が、国や地方公共団体などと契約を取り交わすことがあります。
この場合、国や地方公共団体が作成した文書については、本来は課税文書となるはずのものも、非課税になるものとされています。
しかし、個人や会社が作成した文書については、印紙税は非課税にはなりません。
そのため、個人や会社が作成した契約書は国や地方公共団体に保管されるため、収入印紙が必要となります。
一方で、個人や会社の手元に残る契約書については、収入印紙がないものとなります。
不動産売買契約書に必要な印紙税の金額
必要な印紙税の金額は不動産の売却価格によって異なります。
売却価格 | 印紙税の金額 |
---|---|
10万~50万円 | 400円 |
50万~100万円 | 1,000円 |
100万~500万円 | 2,000円 |
500万~1,000万円 | 1万円 |
1,000万~5,000万円 | 2万円 |
5,000万~1億円 | 6万円 |
1億~5億円 | 10万円 |
5億~10億円 | 20万円 |
10億~50億円 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
収入印紙は契約書の部数分が必要です。
不動産売買の場合、「正本」「副本」「写し」などのようにまったく同じ内容の契約書を複数部作成します。
買い手と売り手の双方と不動産会社などの売買に関わった者が、同じ内容の契約書をお互いに持ち合うのです。
たとえば売買価格1,500万円の不動産売買契約書を「正本」「副本」「写し」の3部作成した場合には、2万円分の収入印紙が3組必要です。
印紙税を納める義務を持つのは契約書作成者全員
印紙税は契約書の作成者全員が連帯して納める義務があります。
不動産売買契約の場合、契約書は通常売り手側が作成します。
しかし、契約書は売り手と買い手の両方が署名押印して初めて効力を持ちます。
そのため、買い手も作成者のひとりであり、売り手と連帯して印紙税を納めなければなりません。
不動産売買契約書の収入印紙の貼り方
収入印紙は裏面にのりがついているので、切手と同じように貼ることができます。
たいていは契約書の表紙または1枚目の左上に貼付しますが、空いている場所ならどこでもかまいません。
収入印紙を貼ったら、消印をします。
消印は郵便物の消印と同じく収入印紙の再利用を防ぐためのもので、契約書と収入印紙の両方にかかるように印鑑や署名(サイン)をします。
消印に使う印鑑は契約時に使った印鑑でなくてもかまいません。
まとめ
印紙税は、文書に書かれている内容に基づいて課税されるかどうかが判断されます。
仮に、契約書の表題に「売買契約書」という文言を使っていなくても、その内容が売買契約を定めるものであれば、課税文書として印紙税が必要となります。
収入印紙を貼らずにいて、税務署に見られる直前に貼ればいいという人もいるかもしれませんが、収入印紙のデザインなどが定期的に変更されており、不正はすぐに見つかってしまいます。
不動産売買契約書を作成した時は、必ず金額に応じた収入印紙を貼付するようにしましょう。