オーナーチェンジ物件の売却成功のコツ|注意点も併せて解説
「オーナーチェンジ物件を売却しようと考えているが、売却を成功させるためのコツを知りたい」
主に投資用物件を借主が入居したままの状態で売却することを、「オーナーチェンジ」といいます。
オーナーチェンジ物件の売却は、居住用物件の売却とは異なる点がいくつかあり、コツをうまく押さえて売却の手続きを進めることで売却を成功させやすくなります。
また、オーナーチェンジ物件売却の注意点を押さえておくことで、売却失敗のリスクを減らせます。
この記事では、オーナーチェンジ物件の売却成功のコツと注意点について解説しています。
この記事を読むことで、オーナーチェンジ物件の売却を成功させる可能性をより高めることができます。
目次
オーナーチェンジとは?
オーナーチェンジとは主に投資用物件の売却形式の一つで、物件を売却する時点ですでに入居している賃借人(物件の借主)との賃貸借契約を維持したまま物件を売却することをいいます。
オーナーチェンジの形式で物件を売却すると、次のオーナーとなる物件の買主は、売却時点で締結されている既存の賃貸借契約を引き継ぐこととなります。
これにより、物件の買主は、賃貸人たる地位や賃料を受け取る権利などを前のオーナーである売主から引き継ぎます。
物件の借主にとっては大家が変わるだけであり、物件の利用に関して大きな変更はありません。
オーナーチェンジは物件の借主が入居している状態で物件を売却することを指すため、売却前に物件の借主との間の賃貸借契約を全て解約して物件の借主が入居していない状態で物件を売却する場合には、通常はオーナーチェンジとは言いません。
オーナーチェンジ物件を売却するメリット
物件を売却する際にオーナーチェンジとして売却することには、いくつかのメリットがあります。
一つ目のメリットは、「早期に大きな収益を得られる」ことです。
投資用不動産を所有して賃料収入を得ようとすると、毎月少しずつしか収益を上げることができません。
中には、収益が見込みよりも少なくてその物件を手放したいということもあります。
オーナーチェンジ物件として不動産を売りに出し、投資用不動産を探している他の投資家にすぐに売却できれば、いったん借主を退去させて売却するよりも早くに売却を完了できるため、早期に大きな収益を得られる可能性が高まります。
また、もう一つのメリットとして、「投資用不動産としての実績を示せる」ということがあります。
すでに入居者がいて賃料が支払われている状態であれば、オーナーチェンジをするにあたってその物件の利回りなどを把握しやすく、借主がいない状態と比べて投資用物件としてどの程度優れているのかを判断しやすいため、買主は安心して物件を購入することができます。
このように、物件をオーナーチェンジの形で売却することには、借主をいったん全て退去させてから売却する場合にはないメリットがあります。
オーナーチェンジ物件の売却を成功させるコツ
オーナーチェンジ物件の売却を成功させるためには、押さえておきたいコツがあります。
コツをしっかりと押さえることで、オーナーチェンジ物件の売却を成功させやすくなります。
オーナーチェンジ物件売却のコツについてご説明します。
その1:入居者をできるだけ確保する
オーナーチェンジ物件は投資用不動産であり、物件の買主も投資用不動産であることを前提に購入するため、その物件がいかに投資用不動産として優れているかによって売却の成功可能性が変わります。
投資用不動産である以上、賃料収入がどれだけあるのかは重要な要素であり、賃料収入を上げるためには入居者をできるだけ確保して空室率を下げることが重要です。
オーナーチェンジ物件を売却する前に、まずは入居者をできるだけ確保できるように工夫してみましょう。
売却しようとしている物件が複数戸であってその一部に空室があるのであれば、その空室を埋めることで収益が改善し、売却しやすくなります。
また、物件にすでに十分に借主がいる場合でも、借主が簡単に退去してしまわないようにすることが重要です。
売却する予定の物件であるからといってあまり借主への対応をおろそかにしてしまうことがないように心がけましょう。
場合によっては、借主にとって有利となるように契約条件を見直しておくことも検討してよいでしょう。
例えば、更新の時期が近ければ更新料を値下げしたり無料にしたりすることも考えられます。
賃料が相場より高くなっており、そのことが原因で借主が退去するリスクが高いと判断できるのであれば、賃料を適正な額に下げることも効果があるかもしれません。
このように、借主にとって有利に契約条件を見直すことは空室率を下げることにつながります。
もっとも、あまり条件を切り下げすぎると利回りが悪化してオーナーチェンジの際に投資用不動産としての魅力が減ってしまうことにもつながりかねません。
契約条件を見直す際には、うまくバランスをとるように十分に注意する必要があります。
その2:売却理由や投資経営に関する情報をはっきりと伝える
オーナーチェンジ物件を購入しようとしている買い手は、なぜその物件が売りに出されたのかということを気にします。
購入希望者から売却の理由について聞かれたら、その理由をはっきりと伝えるようにしましょう。
もしネガティブな材料があったとしても、そのことを隠さずに率直に伝えることが大切です。
買主にとってもそのほうが安心できますし、もし当初告げていなかったのに後から買主にとって不利益な事実が判明してしまえばトラブルにもなりかねません。
特に、物件に何らかの欠陥がある場合や、借主に賃料滞納や賃貸トラブルなど何らかの問題がある場合などには、そのことをはっきりと伝えましょう。
何らかの問題がある場合でもそれだけでオーナーチェンジができなくなるということはなく、売却価格の面で調整されて物件売却が成功することは十分にあり得ます。
買主であれば知りたいと思われる情報は、包み隠さずしっかりと伝えることが大切です。
その3:オーナーチェンジ物件売却に強い不動産会社を選ぶ
オーナーチェンジ物件を売却するにあたっては、オーナーチェンジ物件の売却に強い不動産会社を選ぶことも大切です。
不動産会社には、得意不得意があります。
オーナーチェンジ物件を普段あまり取り扱っていない不動産会社であれば、あまり上手に買主を見つけられないこともあり得ます。
オーナーチェンジ物件は、居住用の物件に比べて市場に買主が少なく、簡単には売却できないことも少なくありません。
そのようなオーナーチェンジであっても適切に対応してくれる不動産会社を選んで仲介を任せることが、オーナーチェンジ物件売却を成功させるためには欠かせません。
仲介を依頼しようとしている不動産会社がオーナーチェンジ物件の売却を得意としているかどうかは、他にオーナーチェンジ物件をどれだけ取り扱っているかを確認したり評判を調べたりすることである程度判断できます。
また、オーナーチェンジ物件の売却を得意としているかどうか、得意としているならば実績はどうなのか、得意と言える理由は何なのかといったことについて仲介の依頼を検討している不動産会社に対してストレートに確認してみてもよいでしょう。信頼できる不動産会社であれば、それぞれの質問に対してしっかりと理由とともに答えてくれるはずです。
オーナーチェンジ物件売却の際の注意点
オーナーチェンジ物件を売却する際の注意点についてご説明します。
居住用の物件よりも査定価格が低くなりやすい
オーナーチェンジの物件は、そうではない物件に比べると査定価格が低くなりやすい傾向にあります。
これは、オーナーチェンジ物件は通常の物件とは査定方法が異なるからです。
オーナーチェンジ物件は、「収益還元法」という方法を用いて査定が行われます。
収益還元法は、その物件が将来生み出す収益の見込みに基づいて物件の価値を算出する方法です。
これに対し、一般の物件で用いられる査定方法は、立地や築年数、間取りなどを基に過去の取引事例と比較して査定を行うものであり、「取引事例比較法」といいます。
収益還元法によれば、収益性の高さが重要な要素となるため、仮に空室が多かったり賃料が低すぎたりすると、高い査定価格とはなりません。
もし、収益性が十分に高くないために収益還元法によれば査定価格が低くなるようであれば、まずはできる限り収益性を改善するように努めることが大切です。
高い利回りや目立った特徴がなければ売却しにくい
オーナーチェンジ物件は、投資のために購入されるため、投資用不動産として目立った特徴があれば売却しやすく、そうでなければ売却しにくくなります。
利回りの高さは、投資用不動産として優れている特徴のひとつです。
もっとも、一見すると利回りが高くても賃貸管理が難しくなるような事情があれば、それは購入をためらわせる理由となるため、利回りが高いというだけで常にすぐ売却できるとは限りません。
売却しようとしている物件が駅近であったりリフォーム済みであったりするなど、空室リスクを下げるような特徴があることが望ましいです。
賃料を低く設定しすぎると売却価格が下がる
賃料を低く設定すると入居者が増えたり解約率が下がったりして入居率を高く維持できるために良いことのように思えますが、適正な範囲を超えて賃料を相場より低く設定しすぎると、オーナーチェンジ物件としては売却価格が下がってしまいます。
これは、先ほどご説明したように収益還元法により査定価格が算出されるため、賃料を低く設定しすぎることは利回りを下げることにつながるからです。
賃料を下げるなどして入居率を高い水準で維持することはオーナーチェンジ物件の売却を成功させるコツともいえますが、あまり下げすぎて利回りが低くなりすぎ失敗してしまわないように注意が必要です。
賃貸管理会社との解約トラブルは避ける
オーナーチェンジのために物件を手放すにあたっては、賃貸管理会社を解約することになります。
賃貸管理会社を解約するにあたっては、契約で定められた期限より前に解約の旨を告げることなど、解約に関する取り決めがあることが一般的です。
賃貸管理会社への解約通知を忘れてしまうなどして、解約をめぐるトラブルになってしまわないように注意しましょう。
オーナーチェンジ物件を売却する流れ
オーナーチェンジ物件を売却する流れは、次のとおりです。
- ・査定をしてもらい売却について相談する
- ・不動産会社と媒介契約を締結する
- ・売却に向けた活動を行う
- ・レントロールを示して購入希望者と交渉する
- ・売買契約を締結し、決済・引渡しをする
- ・オーナーチェンジがあったことを借主に通知する
- ・確定申告・納税をする
オーナーチェンジ物件の売却に特徴的なものが、「レントロール」です。
「レントロール」とは、収益不動産の売買において作成される書類で、物件の賃貸借に関する条件を一覧表にしたもののことです。「家賃明細書」と呼ぶこともあります。
レントロールは、仲介を依頼した不動産会社が作成してくれることが多いです。
決まった書式があるわけではないので記載事項は場合によって異なりますが、主に、賃料・共益費、敷金・礼金、契約開始日、契約期間、間取りや面積など物件に関する情報、賃借人の属性に関する情報などが記載されます。
購入希望者はレントロールを見て収益不動産として購入するに値するのかどうかを判断するため、しっかりとしたレントロールを作成することが大切です。
また、オーナーチェンジ物件では、オーナーチェンジがあった旨を借主に通知することも必要です。
この通知は、多くの場合、物件の引渡しが完了した後に行われます。旧オーナーと新オーナーが連名で通知の書面を作成し、借主に対してオーナーチェンジがあった旨を通知します。
その他の手続きについては、一般的な不動産の売買と大きく異なるところはあまりありません。
売却しやすいオーナーチェンジ物件の条件
オーナーチェンジ物件には、売却しやすい条件があります。
売却しやすい条件とは、一言でいえば「借主が借りたいと思える条件が揃っていること」です。
具体的な売却しやすい条件には、次のようなものがあります。
- ・築年数ができるだけ浅いこと
- ・借主にとって望ましい設備が整っていること
- ・駅から近いなど立地がよいこと
例えば、築年数が10年以内など築浅の物件であれば、物件としても比較的新しいため入居者に選ばれやすく、空室となるリスクが比較的低いです。
また、賃貸マンションであれば、オートロックや宅配ボックス、独立洗面台などの充実した設備があることは借主に好まれる条件です。
居住者にとってはセキュリティができるだけ高いほうがうれしいこと、最近は通販での生活物資の購入が一般化しており不在でも荷物を受け取りたいことなどの事情があり、借主のニーズを捉えた設備が揃っていることは物件の魅力を高めます。
立地の点は、駅から徒歩10分以内がひとつの目安となるでしょう。もちろん、徒歩3分以内や5分以内などであればより望ましいです。
これらの売却しやすい条件が複数揃っている物件であれば、オーナーチェンジでも売却しやすい傾向にあります。
オーナーチェンジ物件がうまく売れないときの対処法
オーナーチェンジ物件は、「売れないときはなかなか売れない」ということも少なくありません。
オーナーチェンジ物件がうまく売れないときの対処法についてご説明します。
空室率を改善する
空室率を改善するために行えることがあるのであれば、できるだけ空室率を改善できるように努めるべきです。
空室率を改善すれば、その分収益性も上がり、魅力的な投資用不動産になります。
もし空室率を改善するためにできることが残っていれば、空室率改善に向けてできることをやってみましょう。
空室になるのを待って売却する
逆の発想となりますが、現在の借主が退去して空室になるのを待ってから売却するということも考えられます。
空室になるのを待てば、オーナーチェンジとしてではなく通常の物件として売却できます。
オーナーチェンジとしてではなかなか売却できない物件も、空室になってからオーナーチェンジとしてではない形で売却すれば売却しやすくなる可能性もあるため、オーナーチェンジでの売却が難しそうであれば視野に入れてもよい選択肢です。
オーナーチェンジに対応している不動産買取を利用する
オーナーチェンジに対応している不動産買取を利用して不動産会社に直接物件を買い取ってもらうという方法もあります。
不動産会社は、専門的な知見に基づいて利益を出すノウハウを持っているので、市場ではなかなか売れない物件であっても自社で買い取ってくれることがあります。
不動産買取を利用すると、通常は市場で売却するよりも低い価格でしか買い取ってもらえません。
しかし、早く確実に売却できるため、市場での売却をあきらめた場合や市場の相場より低い価格でいいから売却したい場合には、不動産買取を利用して物件を買い取ってもらうのもひとつの方法です。
まとめ:コツを押さえてオーナーチェンジ物件売却を成功させよう
オーナーチェンジ物件の売却は、通常の物件の売却とは異なるところがあります。
オーナーチェンジ物件の売却は収益不動産の売却であることから、その特性に見合った売却活動をすることが大切です。
特に、コツを押さえて売却活動を行うことで、オーナーチェンジ物件の売却を成功させやすくなります。
オーナーチェンジ物件売却のコツには、入居者をできるだけ確保してから売却することや、オーナーチェンジ物件の売却を得意とする不動産会社に仲介を依頼することなどがあります。
なかなか売却できなかったり思っていたよりも低い価格でしか売却できなかったりということがないように、コツを押さえてオーナーチェンジ物件の売却を成功させましょう。