【不動産売却を検討中の方必見】売却後に返還される3種類のお金
「不動産を売却した後に返還されるお金があると聞いたけれど、どのようなお金?」
不動産を売却したら、売却代金が得られるだけでなく、「返還されるお金」も受け取れます。
不動産の売却後に返還されるお金には3種類あり、具体的な事情によってはこれらを受け取れます。
この記事では、不動産の売却後に返還される3種類のお金について詳しく解説しています。
この記事を読むことで、不動産の売却後に返還されるお金を忘れることなく受け取ることができます。
目次
その1:固定資産税、都市計画税
「固定資産税」とは、土地・建物といった不動産などの固定資産を所有していることを理由として固定資産の価格を基に毎年所有者に対して課せられる税金であって、都・市町村に納める地方税の一種です。
「都市計画税」とは、都市計画事業や土地区画整理事業のためのお金として、都市計画区域のうち原則として市街化区域内にある土地・建物の所有者に対して課せられる税金です。
固定資産税は、不動産を所有している人であれば、免税になる事情がない限り、必ず納めている税金です。
これに対して、都市計画税は対象区域内の不動産を所有している人に限って納めている税金です。
都市計画税は、固定資産税とあわせて納めることとされています。
固定資産税・都市計画税の納税義務者は、毎年1月1日時点における不動産等の所有者として固定資産課税台帳に登録されている人です。
1年分の固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産の所有者に対して課税されます。
このことは、年の途中で不動産を売却するなどして所有者に変動があったとしても変わりません。
例えば、ある年の3月31日に不動産を売却したとしても、4月1日以降の固定資産税を新所有者が役所に納めるわけではなく、あくまでもその年の1月1日時点の所有者が1年分を支払います。
しかし、不動産を売却してもう所有者ではないのに依然として旧所有者が4月1日から12月31日までの間の分まで固定資産税・都市計画税を支払わなければならないということは、納税する期間が不動産の所有期間に対応しておらず、あまり適切ではないように思えます。
このため、不動産を売却した日以降の固定資産税については日割りで精算することとして、その精算金を売却代金とあわせて買主が売主に対して支払うようにするという不動産の取引慣行があります。
このような固定資産税の日割りによる精算金のことを、「固定資産税精算金」といいます。
都市計画税の納税義務がある場合には、固定資産税と同様にそれが日割りで精算されます。
固定資産税精算金の支払いは、法律で定められた義務ではなく、あくまでも不動産の取引慣行として契約などに基づき支払われるものです。
固定資産税精算金は、売却代金とあわせて支払われるため、買主から支払いを受ける代金の明細を確認して、固定資産税精算金が間違いなく計算されて支払われているかを確認するようにしましょう。
その2:火災保険料、地震保険料
住宅ローンで購入した不動産を売却する場合、まだ住宅ローンを返済中であれば、ほとんどのケースでは火災保険に加入しています。
また、火災保険とあわせて地震保険にも加入していることもあります。
火災保険・地震保険への加入時には火災保険料・地震保険料を支払っていますが、この保険料は不動産を売却した後には残りの期間分について返還されます。
この返還されるお金のことを「解約返戻金」といいます。
例えば、35年で返済する住宅ローンを組んで火災保険に加入し、25年後に不動産を売却して火災保険を解約した場合には、残りの10年分の火災保険加入期間に相当する火災保険料が返還されます。
火災保険等の保険料は、自分で保険会社に連絡して返還請求の手続きをしなければ返還されません。
保険会社のほうから連絡してくれるということはないので、注意しましょう。
自分がどのような火災保険・地震保険に加入しているのかを確認し、これらの保険に関する書類を準備して、不動産を売却した後に忘れずに保険料の返還に向けた手続きを進めることが大切です。
なお、火災保険料等のうち、銀行が負担してくれる保険料が返還されることはありません。
あくまでも自分自身で支払った保険料に限って返還の対象となります。
加入している火災保険を扱っている会社に電話などで連絡し、解約を希望する日付を伝えましょう。
その上で、保険会社から解約のための書類が送られてきたら、それに記入・署名などをして書類を返送します。
なお、契約期間が長期間にわたる火災保険は、2015年10月までは最長36年、2022年10月までは最長10年の契約期間を設定して契約することができましたが、2022年10月以降は最長5年までの契約期間でしか契約できなくなりました。
2022年10月以降に住宅ローンを組んで火災保険を契約した場合には、最長5年の契約期間が満了すれば更新するか別の保険会社に乗り換えて火災保険を契約することになります。
支払う火災保険料の額は、マンションか一戸建てか、何年契約の火災保険か、地震保険付きか、補償内容をどれだけ充実させるか、どの保険会社を選ぶかなどによっても大きく異なります。
過去に35年契約の火災保険に加入しているケースや、5年契約の火災保険に加入していても加入してすぐのケース、補償内容を充実させており支払った保険料額が大きいケースなどでは、返還される解約返戻金の額は大きくなります。
自分で解約の手続きを進めなければならず、保険会社から何かするように言ってくれるということは基本的にないので、忘れずに火災保険を解約して解約返戻金の支払いを受けるための手続きを行うようにしましょう。
その3:住宅ローンの保証料
住宅ローンを組んで不動産を購入した場合、売却時に住宅ローンの残りがあれば、まとめて返済します。
住宅ローンの利用中は、保証会社を利用していることが一般的です。
保証会社を利用することは、多くの場合、住宅ローンを組む条件として定められています。
保証会社を利用することで、万が一将来病気や失業などの事情で住宅ローンが返せなくなっても、保証会社が金融機関に対して一括で住宅ローンを返済してくれます。
その後は、保証会社に返済の肩代わりをしてもらった分につき、保証会社に対して分割で支払っていくことになります。
保証会社を利用する場合には、住宅ローンの保証料として保証会社にお金を支払っています。
住宅ローンの保証料の支払方法には、「一括前払い型(外枠方式)」と「金利上乗せ型(内枠方式)」の2種類があります。
一括前払い型であれば最初の契約時に保証料を一括で支払っているため、住宅ローンを繰上げ返済したり一括返済した際には、すでに支払った保証料のうち一部が返金されます。
これに対して、金利上乗せ型であれば、毎回の金利に上乗せして少しずつ保証料を支払っています。
このため、住宅ローンを繰上げ返済・一括返済したとしても保証料が返金されることはありません。
保証料として支払う額は、利用者の年収や勤務先など個別の事情によっても異なりますが、一括前払い型であれば、借入金額の2%程度がひとつの目安です。
これに対し、金利上乗せ型であれば、0.2%程度が金利に上乗せされることが多いです。
例えば、一括前払い型で保証料を支払う場合、35年ローンで借入額が2,000万円、保証料が借入額の2%程度だとすれば、保証料は40万円程度になります。
35年ローンのうち、10年を経過してから住宅ローンを一括返済したとすれば、残りの25年分の保証料が返金されるのが目安です。
35年分の保証料が40万円程度だったとすれば、残りの25年分に対応する保証料は約28万円ということになります。
もっとも、残りの期間に対応する保証料がそのまま返金されるとは限りません。
具体的な返金額は、金融機関の規定に応じて変わることがあるほか、事務手数料や振込手数料の負担が必要となることもあります。
具体的にいくら返金されるのかは、金融機関に直接問い合わせて確認するようにしましょう。
また、金利上乗せ型で保証料を支払っている場合には、保証料が返金されるということはありません。
ご自身のケースではどちらの方法で保証料を支払っているのかをよく確認するようにしましょう。
不動産の売却後に返還されるお金に関する注意点
不動産の売却後に返還されるお金に関する注意点についてご説明します。
これらの注意点を正確に押さえておかないと、お金の返還をめぐってうまく手続きを進められないことがあるので、しっかりと確認しておきましょう。
注意点1:マンションの修繕積立金・管理費は管理組合からは返還されない
売却する不動産がマンションである場合には、通常はマンションを所有している最中に管理組合に対して修繕積立金や管理費を支払っています。
これらの修繕積立金・管理費は、すでに支払った分については月の途中にマンションを売却した場合でも管理組合からは返還されません。
もっとも、マンションの売買契約の内容として定めておけば、買主が売主に対して日割りで精算する形で売却日以降の修繕積立金・管理費に相当するお金を支払ってくれます。
例えば、ある年の6月10日にマンションを売却して引き渡したとすれば、その年の6月分の修繕積立金・管理費については、6月11日〜6月30日の分を日割りで計算して買主が売主に精算金として支払います。
このように日割りで精算することは法律で定められた義務ではなく、あくまでも契約に従ってなされることであるため、修繕積立金・管理費の日割り精算を希望する場合には、売買契約の内容をしっかりと確認しておくようにしましょう。
また、支払われた代金の中に、これらの精算金が正しく計算されて含まれているかも確認するようにしましょう。
注意点2:固定資産税・都市計画税は役所で税の還付を受けるわけではない
固定資産税・都市計画税は、地方税として都・市町村の役所に支払うものですが、不動産を売却した際の固定資産税等精算金はあくまでも買主との間で精算するものです。
役所で手続きをして税の還付を受ける訳ではありません。このため、役所に問い合わせても精算金について詳しく教えてくれることはありません。
役所で何か手続きをする必要はなく、代わりに売却代金と一緒に買主から精算金を受け取ることになるので、間違えないようにしましょう。
マイホームの売却で譲渡損失が出たら税の還付を受けられることも
住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が出た場合や、マイホームを住宅ローンを使って買い替えた際に譲渡損失が出た場合には、一定の要件を満たす限り、譲渡損失に相当する額等を損益通算することができます。
これらの制度は、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」、「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といいます。
2024年6月時点では、2025年12月31日までの売却についてこれらの特例の適用を受けることができます。
損益通算とは、不動産の売却によって生じた損失について、給与所得などの他の所得から控除し(差し引いて)、他の所得を圧縮して課税される額を減らすことをいいます。
これらの特例の適用を受け、損益通算をしたことで課税される税額が少なくなれば、すでに納めた税との差額の還付を受けられることもあります。
これらの特例の適用を受けるためには、不動産を売却した年の翌年2月16日〜3月15日頃の確定申告期間内に確定申告をしなければなりません。
特例の適用を受けて税の還付を受けられるかどうかは、税理士に相談してアドバイスしてもらうとよいでしょう。
また、税理士に依頼すれば、確定申告の手続きも代わりに行ってくれます。
まとめ:不動産売却後に返還される3種類のお金を忘れず受け取ろう
不動産売却後には、個別の事情に応じて、「固定資産税・都市計画税」「火災保険料・地震保険料」「住宅ローンの保証料」の3種類のお金が返還されます。
「固定資産税・都市計画税」は買主から日割り精算で受け取り、「火災保険料・地震保険料」はご自身で手続きを行って保険会社から受け取り、「住宅ローンの保証料」は保証会社から受け取ります。
また、場合によっては「マンションの修繕積立金・管理費」の日割り精算を買主から受け取ることができたり、譲渡損失が出た場合で一定の要件を満たせば税の特例の適用を受けて「税の還付」を受けられたりすることもあります。
不動産売却後に返還されるお金の中には、火災保険料の返戻金のように、ご自身で確認して手続きを行わなければ返ってこないものもあります。
不動産売却後に返還されるお金は、誰から何を受け取れるかをしっかりと確認し、忘れずに受け取るようにしましょう。