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成年後見人が被後見人に代わって住宅を売却する方法|注意点もあわせて解説

「必要が生じたため、成年後見人として被後見人の住宅を売却しようと思っている。何か気をつけなければならないことはあるのかな?」

例えば、被後見人の方が施設に入ることになってそのためのお金を捻出する必要があるなどの事情で、被後見人の住宅(居住用不動産)を売却したいということがあります。

このような場合には、通常の不動産の売却のケースとは売却の流れが少し異なるため、注意が必要です。

特に、被後見人の親族の方など専門職以外の方が成年後見人になっているようなケースでは、被後見人の居住用不動産を売却するにはどうすればいいのか分からないということもあるでしょう。

適切に手続きを行わなければ、売買契約が無効になってしまうこともあるので、特に注意しなければなりません。

この記事では、成年後見人が被後見人の居住用不動産の売却をする際の基本的な知識のほか、知っておきたい注意点などについて解説しています。

この記事を読むことで、成年後見人が被後見人の居住用不動産の売却を成功させる方法が分かります。

成年後見人の役割と権限

「成年後見人」とは、成年被後見人に代わって法律行為を行う役割の人です。

「成年被後見人」(被後見人)とは、認知症や知的障害、精神障害などさまざまな原因により自分だけで法律行為を行うための適切な判断をする能力が低下したために、裁判所による後見開始の審判を受けて成年後見人がつくこととなった人のことをいいます。

成年後見人は、成年被後見人のために活動するものであり、次の役割・権限を有しています。

  • ・財産管理
  • ・身上監護

「財産管理」とは、被後見人本人に代わって本人の財産を管理することです。

成年後見人は、財産管理として、次のようなことなどを行います。

  • ・現金や預貯金の管理
  • ・不動産の管理・処分
  • ・年金等の申請・受け取り
  • ・保険金等の受け取り
  • ・税の申告・納税
  • ・遺産分割協議への参加・同意
  • ・各種契約の締結・取消し
  • ・訴訟の提起・対応

「身上監護」とは、被後見人本人の生活や健康を守るため、必要な医療・介護のサービスに関する契約締結・利用料金支払などを行うものです。

なお、身上監護の中には、実際に食事や入浴の介護を自分で行うことなどは含まれておらず、実際の介護活動は基本的には成年後見人の役割ではありません。

成年後見人は、全くの単独で職務を行うわけではなく、定期的に行った職務内容について家庭裁判所に報告するなどして、家庭裁判所または成年後見監督人の監督を受けます。

成年後見人が被後見人の居住用不動産を売却するために必要なこと

成年後見人は被後見人の財産を管理する権限を有しているため、居住用の不動産であっても自由に売却することができるように思えます。

しかし、実際には成年後見人単独の判断で自由に被後見人の居住用不動産を売却することはできません。

成年後見人が被後見人の居住用不動産を売却するにあたっては、あらかじめ家庭裁判所の許可を得なければなりません(民法859条の3)。

このように家庭裁判所の許可が必要とされているのは、居住用不動産は被後見人にとって特に大切な財産であり、生活の拠点となるものであるため、居住用不動産の売却については特に慎重に判断する必要があるからです。成年後見人単独の判断で居住用不動産の売却を認めると、不適切な判断により売却されてしまったときに被後見人本人への影響が大きいため、裁判所が事前に居住用不動産を売却してよいかどうかの判断に関わることとしているのです。

居住用不動産に該当する不動産とは?

居住用不動産の売却について家庭裁判所の許可が必要だといっても、どのような不動産であれば「居住用不動産」に該当するのかという判断が難しいことがあります。

住民票があり、実際にも現在被後見人本人が居住しているというような不動産であれば、居住用不動産に該当するということの判断は難しくないでしょう。

そのような不動産以外でも、居住用不動産に該当することはあります。

具体的には、次のような不動産であれば居住用不動産に該当するものと考えられます。

  • ・現在、被後見人本人が生活の拠点として居住している建物とその敷地
  • ・現在居住していないものの過去に生活の拠点として居住していた建物とその敷地
  • ・現在居住していないが将来生活の拠点として居住する予定がある建物とその敷地

居住用不動産に該当するかどうかの判断は、後見人本人の生活実態を基に判断されます。

仮に、被後見人が施設に入居していたり病院に入院していたりして売却時点で不動産に居住していなかったとしても、過去に生活の拠点として居住していた不動産であれば、将来いつかその不動産に戻って暮らすことがあるかもしれません。将来その不動産に戻る可能性があるのであれば、裁判所の関与の下で売却してよいかを判断する必要があるとされるのです。

裁判所の許可が必要なのは現時点で実際に居住している不動産だけに限られないということに注意しましょう。

居住用不動産の売却を許可する際の考慮要素

裁判所が居住用不動産の売却を許可するかどうかは、さまざまな要素を考慮して判断されます。

裁判所が居住用不動産の売却を許可する際の考慮要素についてご説明します。

1.売却の必要性

なぜ居住用不動産を売却するのか、本当に居住用不動産の売却が必要なのかどうかという点が考慮されます。

実際に居住用不動産を売却する理由は、多くの場合、被後見人の療養・介護に必要な費用を用意するためです。

被後見人が病気で入院したり介護を受けるために施設に入居したりする際には、多額のお金が必要になります。居住用不動産を売却し、不動産の売却代金を療養・介護のためのお金に充てようとするのです。

居住用不動産を売却するにあたって、そもそもこのような最低限の理由すらないのであれば、許可がされない方向に働きます。

2.被後見人本人の財産状況

療養・介護のためなど居住用不動産を売却する理由があったとしても、被後見人の財産状況に照らして売却する必要がないと判断されれば、許可がされない方向に働きます。

具体的には、被後見人が非常に多くの預貯金を有しており、それを使えば十分療養・介護などのためのお金を用意できるというケースでは、あえて居住用不動産を売却する必要がないと判断されやすいです。

また、居住用不動産以外にも使っていない不動産をいくつか所有しており、先にそれらの不動産を売却することでお金を用意できるのではないかという事情がある場合には、居住用不動産の売却が許可されない方向に働きます。

逆に、居住用不動産がほとんど唯一の財産であり、居住用不動産を売却しなければ施設に入居するためのお金を用意できないという事情があれば、その事情は居住用不動産の売却が許可される方向に働きます。

3.売却後に本人が住む場所の有無

居住用不動産売却後に被後見人本人が住む場所があるかどうかという点も考慮要素になります。

例えば、本人が施設に入居してずっと施設で暮らす見込みであるという場合には、本人が住む場所が確保されていると判断されやすいです。また、病院に入院するがいつかは退院する見込みである場合などで、本人の子どもが本人を受け入れて一緒に住む予定であるという場合などには、本人が住む場所が確保されていると判断される可能性があります。

居住用不動産の売却に裁判所の許可が必要であるのは、本人の生活の拠点が脅かされることがないように特に慎重に判断するという趣旨が大きいため、本人の生活の拠点が脅かされることがないかどうかという点が実質的に判断されます。

4.本人の意向

被後見人本人が全く意向を表明できない状態でない限り、本人の意向も尊重されます。被後見人になったからといって、一切意向が尊重されなくなるわけではありません。

被後見人本人が居住用不動産を売却してもよいという意向を表明しているのであれば、許可がなされやすいといえます。

逆に、被後見人本人が居住用不動産の売却について反対する意向を表明しているのであれば、そのことは許可がなされにくい方向に働きます。

5.本人の親族の意向

被後見人本人の親族の意向も考慮されます。

本人の親族が居住用不動産の売却について賛成しているのであれば、許可がされやすいといえます。

6.不動産の売却価格

居住用不動産を売却するにあたっては、不動産の売却価格が相当なものであることが必要です。

もし居住用不動産を相場より極端に低い価格で売却しようとしているのであれば、許可がなされない可能性が高まります。

相場どおりの価格で売却しようとしているのであれば、許可はなされやすいといえます。

7.売却代金の保管方法

売却代金がどのように保管されるのかということも考慮されます。

特に事情がないのに本人の口座以外の場所に売却代金を保管しようとすると、売却代金がほかのことに使われるのではないかと怪しまれ、許可がなされない可能性があります。

成年後見人が被後見人の居住用不動産を売却する手続きの流れ

成年後見人が被後見人の居住用不動産を売却する手続きの流れについてご説明します。

基本的には通常の不動産売却と流れはあまり変わりませんが、裁判所の許可を得る必要があるため、その部分の流れやスケジュールが通常の不動産売却と異なってきます。

媒介契約を締結して販売活動を行う

不動産会社に売却を依頼し、媒介契約を締結して不動産の販売活動を開始します。

このことは、通常の不動産売却の場合と同じです。

もっとも、不動産会社に売却を依頼するにあたっては、「成年後見人が被後見人の居住用不動産を売却する」という事情をはっきりと伝えておくようにしましょう。

成年後見人が被後見人の居住用不動産を売却する場合には、通常の場合と売却の流れやスケジュールが少し変わるので、初めにしっかりと不動産会社に伝えておかなければ不動産会社も対応に困ってしまいます。

不動産会社によっては、成年後見人が被後見人の居住用不動産を売却するケースには対応していないということもあります。このケースにも対応してくれる不動産会社を見つけて依頼するようにしましょう。

居住用不動産売却についての裁判所の許可を得る

ここまでにご説明しているとおり、被後見人の居住用不動産を売却するためには家庭裁判所の許可が必要となります。

裁判所の許可を得るためには、管轄のある家庭裁判所に対して「居住用不動産処分の許可の申立て」を行います。

申立書を提出する裁判所は、後見等開始の審判をし、またはその事件が係属している家庭裁判所です。

売買契約を締結する

無事裁判所の許可が下りたら、成年後見人が買主との間で売買契約を締結します。

なお、裁判所の許可が下りる前であっても、「裁判所の許可が下りた場合に初めて売買契約の効力が発生すること」という条件を付けて売買契約を締結することもあります。

残金決済、不動産の引渡しを行う

残金決済・不動産引渡しについては、通常の不動産売却のときと同じです。

代金を決済し、鍵を引き渡したり所有権移転登記を実行したりします。これらが全て完了すれば、売却は完了です。

居住用不動産処分の許可の申立てに必要なもの

許可の申立てには、必要書類を準備しなければなりません。

必要書類は、次のとおりです。

  • ・申立書
  • ・収入印紙800円分
  • ・郵便切手84円分(審判所謄本を郵送で交付してもらう場合)
  • ・不動産の全部事項証明書
  • ・不動産売買契約書の案(買主の氏名・住所を正確に記載したもの)
  • ・売却する不動産の評価証明書
  • ・不動産業者が作成した査定書

必要書類は基本的にはこのとおりですが、実際にどこまでの書類が必要かは家庭裁判所や個別のケースによって異なることがあります。

必ず申立書を提出する家庭裁判所の窓口に相談して、どのような書類を提出する必要があるかを確認するようにしましょう。

被後見人の居住用不動産売却に関する注意点

被後見人の居住用不動産売却に関する注意点についてご説明します。

注意点1:非居住用不動産の売却には裁判所の許可は不要

被後見人の居住用不動産売却には裁判所の許可が必要ですが、非居住用不動産の売却には裁判所の許可は不要です。

非居住用不動産には、具体的には次のようなものがあります。

  • ・被後見人が相続などにより取得したが過去に一度も居住したことがない建物・土地
  • ・被後見人が投資用として所有しているアパート・マンションや土地

これらのように、明らかに居住用不動産に該当しない不動産であれば、成年後見人は裁判所の許可を得ないで売却できます。

これらに対し、非居住用不動産なのか居住用不動産なのかどちらか判断がつかないという不動産は、安易に非居住用不動産だと断定してしまわないようにすることが大切です。

まずは弁護士などの専門家に相談してみるようにしましょう。

注意点2:成年後見監督人が選任されている場合はその同意も必要

成年後見監督人が選任されている場合には、その同意も必要になります。

成年後見監督人は、成年後見人の職務を監督する役割のもので、必ず選任されるわけではありませんが、選任された場合には成年後見人はその監督に服します。

成年後見人は親族などが務めることもありますが、成年後見監督人は弁護士などの専門家が務めることが一般的です。

成年後見監督人の同意は、家庭裁判所の許可を得る前の段階で必要になります。成年後見人として被後見人の居住用不動産を売却しようということになれば、まずは成年後見監督人にそのことを伝えて同意を得るようにしましょう。

注意点3:裁判所の許可を得ないで居住用不動産を売却すると無効になる

被後見人の居住用不動産を売却するには家庭裁判所の許可が必要ですが、万が一家庭裁判所の許可を得ないで被後見人の居住用不動産を売却してしまうと、その売買契約は無効になってしまいます。

無効な売買契約は、後から許可を得て有効にするなどのことはできません。

売買契約が無効になってしまうと、買主などに大きな影響を与えることになってしまうため、必ず裁判所の許可を事前に得て売買契約を締結するようにしましょう。

注意点4:居住用不動産売却以外にも許可が必要な行為はある

被後見人の居住用不動産については、「売却」以外の行為であっても、次のような行為については許可が必要です。

  • ・賃貸借契約の締結・解除
  • ・抵当権の設定
  • ・贈与
  • ・使用貸借契約の締結・解除
  • ・抵当権以外の担保権の設定
  • ・建物の解体・撤去

これらの行為も、被後見人の生活の拠点を脅かすおそれがあるという点では、売却の場合と変わりません。これらの行為についても裁判所の許可が必要なので、「売却ではないから裁判所の許可は必要ない」と勘違いしてしまうことのないようにしましょう。

被後見人の居住用不動産売却を相談できる専門家

成年後見人には被後見人の親族など専門職ではない方が就くこともあります。そのような非専門職の成年後見人の方にとっては、被後見人の居住用不動産を売却するにあたって必要な裁判所の許可を取ることは、簡単なことではないでしょう。

どの裁判所に申立書を提出したらいいのか、申立書にはどのように記載すればいいのか、申立書とあわせて提出する書類はどのように準備したらいいのか、そもそも売却しようとしている不動産が裁判所の許可が必要な不動産なのかなど、分からないことがたくさんあるかもしれません。

このような場合には、専門家に相談するのがおすすめです。

被後見人の居住用不動産売却を相談できる専門家は、主に弁護士です。

弁護士であれば、法律の専門家として裁判所に提出する書類を準備したり、そもそも裁判所の許可が必要なケースなのかを判断してくれたりします。

また、弁護士に依頼すれば、あなたの代理人として申立書等を作成・準備し、裁判所に代わりに提出することも行ってくれます。

提出書類の準備と裁判所への提出を代理してもらえば、成年後見人であるあなたの負担は大幅に減ります。

少しでも専門家に任せたいと思ったら、まずは弁護士に相談・依頼してみるようにするとよいでしょう。

なお、弁護士以外には司法書士も裁判所提出書類を作成する権限を有しており、提出書類についてアドバイスをしてくれたり代わりに提出書類を作成・準備してくれたりすることがあります。

まとめ:成年後見人が被後見人の居住用不動産を売却するには裁判所の許可が必要

成年後見人が被後見人の居住用不動産を売却するには、家庭裁判所の許可が必要です。

被後見人の居住用不動産は、被後見人が現に居住している建物・土地に限られず、過去に居住していた建物・土地や将来居住する可能性がある建物・土地も含まれます。

家庭裁判所による許可がなされるかどうかは、さまざまな考慮要素を勘案して判断されます。基本的には、居住用不動産を売却することが被後見人にとって不利であり、売却によって住む場所がなくなってしまうなど不安定な立場に置かれることがないかという点が考慮されます。

もしも家庭裁判所の許可を得ないまま被後見人の居住用不動産を売却してしまうと、その売買契約は無効になってしまいます。不動産の売買契約が無効になることは買主などへの影響が大きいため、絶対にそのようなことがないようにしなければなりません。

被後見人の居住用不動産の売却やそのための家庭裁判所の許可の取得に関して少しでも不安な点があれば、弁護士などの専門家に相談することがおすすめです。弁護士に依頼すれば、あなたの代わりに申立書などの提出書類を作成・準備してくれるほか、許可の取得に関して適切なアドバイスをしてくれます。

弁護士などの専門家に相談し、助けを借りながら、被後見人の居住用不動産の売却を成功させましょう。

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