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不動産を相続後に売却するメリットとは

 

「近い将来の相続に備えて準備をしておきたい。相続財産の中には不動産もあるけれど、不動産は相続前に現金化しておくのと相続後に売却するのとどちらがいいのかな?」

相続への備えは重要です。特に、税金がかかることが見込まれる場合には、かかってしまう税金の額をいかに抑えるかがポイントになります。

遺産の中に不動産がある場合、不動産を売却するのが相続開始前と後とではかかる税額が変わってくる可能性があります。一般的に、相続開始後に不動産を売却したほうが相続税や譲渡所得税の額を低く抑えられることが多いです。

この記事では、不動産を相続後に売却するメリットについてご説明します。この記事を読むことで、相続財産の中に不動産がある場合でもより有利な選択をすることができるようになります。

不動産を相続前に売却するメリット

近い将来に相続が発生すると見込まれる方が不動産を所有している場合、相続が発生する前に不動産を売却しておくこともできます。

相続前に不動産を売却しておくことで、相続開始の時点で不動産を現金化しておけます。

不動産を現金化しておくことで、相続人にとっては遺産分割の手続きの際にその現金を分けやすくなるというメリットがあります。

不動産のまま遺産分割をする場合と比べて、現金を遺産分割するのであれば、協議で定めた割合に応じて現金をただ分けるだけで済みます。このことは、相続人の手間や負担を減らすことにつながります。

また、不動産という形で相続人に受け継がせるとその不動産をどのように処分・活用するかで相続人間でもめることもありますが、あらかじめ不動産を現金化しておけばそのようなトラブルが発生することもありません。

不動産を相続後に売却するメリット

「不動産を相続前に売却すれば相続人の手間や負担が減るのであれば、そのほうがいいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、不動産を相続後に売却することには、いくつかのメリットがあります。特に、相続税対策の観点から見れば、相続後の売却にはさまざまなメリットがあります。不動産の形で相続した場合には、税制上の優遇措置などがあり、現金の形で相続するよりも納める相続税の額を抑えることができます。

不動産を相続後に売却するメリットについてもしっかりと把握しておきましょう。

相続する土地は実勢価格より低く評価される

相続税を計算するにあたっては、相続財産の評価額を算出します。もし現金を相続したのであれば、現金の額面が評価額となります。

これに対して、相続した土地は実勢価格(実際に市場で取引される価格)よりも低く評価されます。具体的には、路線価地域の土地は、地価公示価格等を基にした時価の80%程度を目安として評価されます。

倍率地域にある土地は、それぞれの土地ごとに評価額の計算方法が異なるものの、同様に評価額が低くなるケースがあります。また、自宅などの建物であれば、評価額は「固定資産税評価額×1.0」という計算式で算出されます。

これらにより、現金の形で相続した場合と比べて不動産の形で相続した場合のほうが、相続税が少なくなる傾向にあります。

「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が使える

通常、不動産を売却したことによって利益(譲渡益)が出た場合には、譲渡益に対して譲渡所得税が課せられます。

しかし、相続によって得た土地・建物の場合には、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(取得費加算の特例)を活用することができます。

この特例を使えば、相続によって得た土地・建物を相続が発生してから3年10か月以内に譲渡(売却)すれば、納めた相続税のうち一定の金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。

これにより、支払う譲渡所得税の額を少なくすることができます。

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が使える

マイホーム(居住用財産)を売却したときには、譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる特例があります。

例えば、親と子が一つの建物に同居しており、親が亡くなって子がその建物を相続し、子が引っ越してその建物に住まなくなった場合、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにその建物を売却したときは、一定の要件を満たす限りこの特例の適用を受けることができます。

この特例の適用を受ければ、売却によって利益が出た場合でもその譲渡所得から最大3,000万円まで控除することができます。これにより、支払う譲渡所得税を少なくすることができます。

この特例の適用を受けるためには、建物の所有期間に制約はありません。所有期間の長短に関わらず特例の適用対象となります。

また、これは「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」と併用することもできます。

「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が使える

相続によって被相続人が居住していた家屋やその敷地を2016年4月1日から2027年12月31日までの間に売った場合、一定の要件にあてはまれば、譲渡所得の金額から最大3,000万円を控除することができます。

この控除を受けることにより、支払う譲渡所得税を少なくすることができます。

2014年1月1日以降に譲渡を行う場合で、売却する家屋・敷地を取得した相続人の数が3人以上であるときは、控除できる額は最大2,000万円までとなります。

この特例は、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」と併用することはできません。

不動産を相続後に売却するデメリット

不動産を相続後に売却する場合には、遺産分割協議によって相続人のうち誰が不動産を受け継ぐのか、不動産をどのように処分するのかなどについて決めなければなりません。

相続人同士の間で不動産を売却してその売却代金を分けるという合意ができれば特にトラブルにはなりません。しかし、相続人の中には不動産を売却することなく不動産に住み続けたり事業用に活用したりしたいという意向を強く持っている人がいるかもしれません。このように、相続人同士で不動産の売却について方針が分かれてしまうと、トラブルになって遺産分割協議がなかなか成立しない可能性もあります。

このようなトラブルを避けるためには、相続が開始するより前に、将来被相続人となる人が遺言を遺しておくというのも有効な方法です。遺言の中で不動産をどのようにしてほしいのか意思を明らかにしておくことで、相続開始後に相続人が不必要にもめてしまうリスクを軽減することができます。

遺言を遺すにあたっては、それぞれの相続人が納得できるような遺産の分け方にしておくことが望ましいといえます。また、各相続人の遺留分(一定の相続人に保障された最低限の取り分)を侵害しないようにすることも大切です。トラブルを避けるために遺言を遺したのに、その遺言の内容に不備があったためにかえってトラブルになってしまうということは避けたいところです。

遺言を作成するにあたっては、弁護士などの専門家に相談し、どのような内容の遺言を作成するべきかアドバイスを受けるようにするとよいでしょう。

不動産を相続後に売却する注意点

不動産を相続後に売却するにあたっては、いくつか注意しておきたい点があります。

不動産を売却するにはまず相続登記が必要

不動産を相続した相続人が売却するにあたっては、売却手続きの前にまず「相続登記」をしなければなりません。相続登記をして不動産の所有名義を売主名義のものとしておかなければ、売却手続きを進めることができないからです。

「相続登記」とは、不動産の元の所有名義人である被相続人から不動産を受け継いだ相続人へと不動産の名義変更(所有権移転登記)をすることです。

相続登記は、遺産分割協議が成立して誰が不動産を受け継ぐかが決まったらなるべく早く行うようにしましょう。相続登記が完了したら、不動産を売却することが可能となります。

なお、不動産をしばらく売却しないでおくように方針が変わった場合でも、しっかりと相続登記をしておく必要があります。

2024年4月1日からは相続登記が義務化され、相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。正当な理由がないのにこれに違反した場合、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)が課せられることがあります。

実際に過料の対象にならなかったとしても、相続登記をしないまま放置していると、そのうちに相続人の誰かが亡くなってさらに相続が発生し権利関係が複雑になっていったりしてしまいます。こうなると、不動産を売却するのは非常に難しくなってきます。

共有名義の不動産を売却するには全員の同意が必要

被相続人の不動産を誰か1人が受け継ぐのではなく、複数の相続人の共有名義として受け継いだ場合には、不動産の売却には共有者全員の同意が必要です。

具体的には、共有者の全員が「不動産を売却すること」と「売却価格」のそれぞれに同意しなければ、不動産を売却することができません。

不動産を売却することについて共有者全員の同意が得られたら、売却価格についても同意を得ましょう。売却価格は買主側との交渉によっても変わってくるので、最初からはっきりした額を決めておくことは難しいものです。共有者全員で「少なくともこの金額以上の額であれば売却する」という最低額を決めておくと、売却手続きをスムーズに進めることができます。このようにすれば、買主側から価格の交渉があった際にも、いくらで売るのか、売らないのかなどについて、意思決定がしやすくなります。

売却は3年以内をめどに行うべき

相続が開始した後しばらくはさまざまなことで忙しく、不動産の売却手続きに取り掛かることができないかもしれません。しかし、いつまでも不動産の売却手続きを先延ばしにしてしまうのも適切ではありません。

相続によって得た不動産の売却は、相続開始の時から「3年以内」をめどに行うようにしましょう。

相続開始時から3年以内に不動産を売却するべきなのは、ここまでにご紹介した「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(取得費加算の特例)や「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を受けるためです。

さきほどもご紹介したとおり、これらの特例の期間制限は次のとおりです。

  • 「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(取得費加算の特例):相続開始時から3年10か月以内
  • 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」:相続開始時から3年が経過する日の属する年の12月31日

厳密には3年ちょうどより少し長い期間制限ですが、分かりやすく「相続開始時から3年以内に不動産を売却する」と覚えておくとよいです。

3年以内に不動産を売却すれば、要件を満たす限りこれらの特例の対象となって支払う税金の額を少なくすることができます。やむを得ない事情がない限り、不必要に売却手続きを先延ばしにして3年を超えてしまうことのないようにしましょう。

取得費は親の購入額を引き継いで計算する

不動産を売却した場合には、譲渡所得を計算して必要に応じて譲渡所得税を納めなければなりません。

譲渡所得の計算にあたっては、売却価額がそのまま譲渡所得となるのではなく、「取得費」などの一定の項目を差し引いて計算する必要があります。

「取得費」とは、譲渡所得を計算する際に使われる項目であり、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した額です。

相続によって不動産を取得した場合には、不動産の取得にあたって対価を支払っているわけではないので、取得費はないのではないかと思われるかもしれません。しかし、そうではなく、相続によって得た不動産の取得費は、親の購入額を引き継いで計算します。

譲渡所得は、次の計算式で求めます。

  • 譲渡所得=譲渡価額―取得費―譲渡費用

「譲渡価額」とは、不動産の売却価額のことです。また、「譲渡費用」とは仲介手数料など売却のために必要となった費用のことです。

このように、相続によって得た不動産を売却する際には、被相続人が不動産を購入した際の契約書などから取得費を算出するようにし、「相続だから取得費はゼロ」と思ってしまわないようにしましょう。

所有期間は親の所有期間を引き継いで計算する

譲渡所得がある場合、税金の額は譲渡所得に税率を掛けて算出されます。

  • 譲渡所得税額=譲渡所得×税率

この税率は、不動産を所有していた期間によって異なります。

売却する年の1月1日時点において、所有期間が5年を超える場合には「長期譲渡所得」、5年以下の場合には「短期譲渡所得」と分類され、それぞれ異なる税率が適用されます。

税率は、それぞれ次のとおりです。

  • 長期譲渡所得:15%(所得税)、5%(住民税)
  • 短期譲渡所得:30%(所得税)、9%(住民税)

このように、長期譲渡所得と認められると税率が低くなり、支払う税金の額も少なくなります。

相続によって得た不動産の所有期間は、親の所有期間を引き継いで計算することとされています。例えば、親が5年以上不動産を所有していたならば、相続でその不動産を得て売却する場合には常に長期譲渡所得として計算することになります。

相続によって不動産を得る場合には、親がすでに5年以上不動産を所有していることも多いため、長期譲渡所得として計算するケースが多いといえます。

相続によって不動産を得たのだから、所有期間は自分の分だけだと勘違いして誤って短期譲渡所得として計算してしまい、不必要に高い税金を支払うことのないようにしましょう。

まとめ:不動産を相続後に売却すると税金が安くなるメリットがある

不動産を相続前に売却して現金として相続した場合には、不動産をめぐるトラブルをなくすことができたり遺産分割にあたって簡単に遺産をわけられたりするというメリットがあります。

これに対して、不動産を相続後に売却すると、相続前に売却して現金として相続した場合に比べてさまざまな減税措置を受けることができ、結果として支払う税金の額が少なくなる可能性が高まります。

「支払う税金の額をできるだけ少なくしたい」という場合には、不動産を相続前ではなく相続後に売却するほうがよいといえます。

不動産を相続後に売却するにあたっては、売却手続きの前にあらかじめ相続登記を済ませておく必要があったり、3年以内を目安に売却する必要があったりするなど、いくつか注意しておくべき点があります。

もし不動産を相続後に売却しようという場合で、わからないことや困ったことがあるときには、相続手続きの専門家に相談するようにしましょう。

普段から相続不動産売却を多く取り扱っている専門家に相談すれば、不動産を売却するにあたってどのようにすればいいかを的確に教えてくれます。これにより、できるだけ損をしない形で不動産を売却することが可能になります。

相続後の不動産売却で困ったら、不動産の売却を専門に取り扱っている不動産コンサルタントに相談するようにしましょう。不動産売却マップでは、専門の不動産コンサルタントが無料で相談にのっていますので、まずはお気軽にご相談ください。

執筆者:弁護士 岡島 賢太

経歴: 東京大学文学部卒業(中国語・中国文化専攻)。出版社にて書籍編集者、新聞社にて校閲記者として勤務し、最高裁判所における司法修習を経て、弁護士(第二東京弁護士会所属)。

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