相続対策もできて地域貢献もできる?保育園の建築での相続対策
私たちが相続について意識をしたときに、相続対策を検討されていらっしゃる方も少なくないかもしれません。
いまや相続対策に関する情報は多くありますので、その対策も千差万別であると思います。
そんな中で、今回皆様にお伝えしたいのが不動産を活用した相続対策です。
不動産を用いた相続対策は、実は非常に高い効果を期待できるのですが、不動産ということもあってハードルが高いと感じられるかもしれません。
不動産を所有して賃貸することの一番のリスクとして、「空室リスク」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
そこで、この空室リスクを回避するための手法として保育園を建築するという相続対策を今回は皆様にお伝えできればと思います。
有効な相続対策のために保育園を建築しましょう
有効的な相続対策を行うために保育園を建築することのメリットとして、相続税評価を抑えることができること並びに小規模宅地等の特例の適用についてご説明させて頂きたいと思います。
保育園で相続することで、評価を抑えることができます
相続対策をするにあたり、一般的なアパートとして賃貸する場合と保育園として賃貸する場合とで分けて考えてみたいと思います。
その前にまずはご自宅の不動産評価について見ていきましょう。
土地の評価額の算出
(路線価が設けられているエリアに対しては路線価を、そうでないエリアには倍率方式により算出します)
路線価方式:路線価×面積×補正率
倍率方式:固定資産税評価額×補正率
建物の評価額の算出
固定資産税評価額×1.0
上記が一般的な自宅不動産の評価ですが、これをアパートなど他の人に賃貸する場合には通常の自宅仕様とは異なり、使用のできる範囲が少なくなりますので、評価額がそれに応じて少なくなります。
土地の評価額の算出(貸家建付地の土地の場合)
自用地の価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
建物の評価額の算出(貸家の場合)
固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
なお、上記計算にあたり、借地権割合は路線価図におけるA(90%)~G(30%)の割合によって示されます。また、借家権割合は30%として算出することになります。
今回提案いたしました保育園の建築についても賃貸の一種であり、通常の自宅使用よりも固定資産税が安く収まることになります。
アパートとしての貸付とは異なり、保育園の貸付は建物そのものの貸付ということになるため、空室リスクを考慮することなく、相続評価を算出することができます。
小規模宅地等の特例を利用しましょう
小規模宅地等の特例制度は相続税の減税制度としてしばしば登場します。これは、被相続人が居住用不動産もしくは事業用不動産の相続税評価額を下げるための制度です。
たとえば、被相続人が保育園を賃貸していた場合には「貸付事業用宅地等」として、被相続人が保育園を事業としていた場合には「特定事業用宅地等」として、減税のメリットを享受することができます。
本制度の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
(1)対象宅地等が建物もしくは建築物の敷地となっていること
(2)被相続人もしくは被相続人と生計を同一にしていた親族にとっての事業用又は居住用の宅地であること
特定事業用宅地等の場合について
改めて、「特定事業用宅地」とは、被相続人又は被相続人と生計を同一にする親族が自ら運営する事業として利用している土地のことです。
特定事業用宅地等の条件として、以下に当てはまることが必要です。
(1)保有継続要件
対象不動産を相続税申告期限まで継続して保有していること
(2)事業継続要件
被相続人が運営していた事業を継承し、相続税申告期限まで事業を継続していること
特定事業用宅地等の条件を満たすと、以下の範囲において、減額措置の適用対象となります。
限度面積 400㎡
限度割合 80%
貸付事業用宅地等の場合について
続いて、「貸付事業用宅地」とは、被相続人又は被相続人と生前を同一にしていた親族が不動産を貸し付けていた場合に、その土地のことを言います。本制度の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
(1)保有継続要件
対象不動産を相続税申告期限まで継続して保有していること
(2)事業継続要件
被相続人が運営していた事業を継承し、相続税申告期限まで事業を継続していること
貸付事業用宅地等の条件を満たすと、以下の範囲において、減額措置の適用対象となります。
限度面積 200㎡
限度割合 50%
小規模宅地等の特例に関する法制度改正による内容変更も見込まれていますので、制度変更の内容もよく確認をするようにしましょう。
その他の税金面でのメリットについて
近年の相続法制度改正案として、保育所のための土地貸付により待機児童問題解消への寄与として評価される仕組みが整備されることとなっています。
この待機児童解消のための取り組みは、改正見送りとなってしまったようですが、現在問題となっている保育園待機児童問題は再燃し、近い将来にも法整備化される可能性も非常に高いと考えられます。
もし本改正が行われた場合には、保育所のための土地貸付を行う相続税もしくは贈与税が非課税となるはずでした。
この他でも地域によって、さまざまな減税措置が講じられています。
例えば、東京都の事例としては、不動産を有償にて賃借している場合にこれを保育所として使用する場合には、以下の条件を満たすことを条件として固定資産税・都市計画税の減免が行われます。
(1)対象不動産が1月1日を基準日として、以下の保育所等施設として利用されていること
- 小規模保育事業所
- 認証保育所
- 事業所内保育事業所
- 認可保育所
- 認定こども園
(2)上記対象施設が有償で直接的に賃貸されていること
(保育所施設を自己所有していること、又は無償で賃貸する場合は本制度適用対象外)
(3)平成28年11月1日より令和3年3月31日までの期間において以下の①並びに②を実施していること
①対象不動産についての賃貸借契約書を新規に締結すること
(具体的には、対象土地の賃貸借契約書もしくは対象土地を敷地とする建物の賃貸借契約書)
②①の契約締結後に保育所を新規で開設すること
相続税非課税の適用が見込まれます
事業用ではなく、個人経営の幼稚園の不動産には相続税が非課税の扱いを受ける可能性が考えられます。
この判断基準が素人にはなかなか難しいもので、保有継続要件及び事業適性要件に問題なく該当しているかどうかについては、専門家である税理士に一度相談に行かれた方が良いかもしれません。
まとめ
相続対策を考えるにあたり、不動産による活用について少々慎重に考えられていた方も保育園建築という視点を持つと、また考えが変わることもあるのではないでしょうか?
保育園として活用することにより財産的評価も安く抑えることが出来ますし、小規模宅地等の特例制度を利用することもできます。
このように相続対策については、近年注目されていますし、さらに別の手法が出てくることもありますので、引き続きアンテナを張って頂きたいところです。
また、このような相続対策についてご不明な点等ございましたら、税理士に確認をされても良いかもしれません。