任意売却ができないケースとは?買い手がつかないときの対処法について
この記事でわかること
- 任意売却ができないケースについて理解できる
- 任意売却ができないとどうなるのかと対処法がわかる
- 住宅ローンの返済が難しくなったときの対処法を理解できる
任意売却は、住宅ローンを滞納したときに競売を避けるための一般的な手段です。
しかし、「任意売却とはそもそも何?」「任意売却って普通の仲介と何が違うの?」と疑問に思う人も多いでしょう。
また、住宅ローンを滞納しても、任意売却ができないケースがあることにも注意が必要です。
本記事では、任意売却とは何か、任意売却ができないケースについてご紹介します。
また、任意売却で買い手が付かず困っているときなどの具体的な対処法も紹介していきましょう。
この記事をお読みいただくことで、任意売却の基礎的な部分を理解できるようになります。
任意売却とは
任意売却とは、住宅ローンの返済が経済的に難しくなったとき、金融機関の了承のもとで行う売却方法です。
物件を売却した資金と自己資金で、ローン残債を完済できないときに利用します。
任意売却には、競売の回避と市場価格で売却できるメリットがあります。
一方で、任意売却ができなければ競売となるため、速やかに売却活動を始めなければなりません。
なお、任意売却は専門の不動産会社に依頼します。
なぜなら、任意売却を始める前には金融機関への交渉があるからです。
交渉内容は、以下の項目が含まれます。
- 返済が経済的に困難という状況の説明
- 売却完了後に残る残債について無担保状態で返済すること
「状況の説明」には、生活状況表や売却価格の分配案などを提出する必要がありますが、自力で作成するのは大変困難といえます。
このため、任意売却を引き受けてくれる不動産会社を探し、必要な情報を集める手伝いをしてもらうことが必要になります。
全ての債権回収が困難となる競売と、返済が長期間でも確実に債権回収できる任意売却を天秤にかけて金融機関は判断を下します。
なお、任意売却の詳細は「任意売却をわかりやすく解説|競売との違いやメリット・デメリットを確認 」をご覧ください。
任意売却できないケース6つ
任意売却は、金融機関が了承しなければ行えませんが、他にも任意売却ができないケースがあります。
ここからは、任意売却できないケースについてご紹介していきましょう。
買い手がつかないとき
任意売却を行うも、買い手が付かないときです。
任意売却は、一般的な不動産仲介で売却を行います。
つまり、一般消費者向け(住宅を検討している人)に売却活動するため、周辺の不動産需要によっては買い手が付かない可能性があります。
任意売却は、買い手が付かなければ利用ができません。
買い手がつかないときの対処法
仲介での売却は、競売より高く売れる可能性があります。
一般的に、競売は期間入札制のため、相場はありません。
しかし、裁判所が設定する最低入札価格は、概ね相場の50%~70%となります。
このため、売却に進展がなければ、相場より相当安価にしてでも売却したほうがよいでしょう。
市場的に値打ちがある演出ができれば、売却は進展する可能性があります。
なお、任意売却は売却期間に制限(競売開札の前日まで)があるため、相場より安価に価格設定し早めの売却を心がけましょう。
住宅ローンの滞納がない
任意売却は、住宅ローンの滞納がなければ利用することはできません。
そもそも任意売却は、主に返済が難しく、売却しても完済できないときに用いる制度です。
返済に特に問題がなければ、金融機関が任意売却を了承することはまずありません。
住宅ローンの滞納がない場合の対処方法
住宅ローンの滞納がない場合には、不動産仲介での売却が可能です。
街の不動産会社などに売却の依頼ができます。
このとき、少しでも高く売るために複数社に査定依頼することや、売却前に相場の調査を行うなど高く売る方法を実践します。
一方で、不動産仲介で売却し、自己資金を併せても完済が難しい場合には、売却してローン完済できる残債額になるまで返済を継続するしかありません。
また、返済金額を抑えたい場合には、リバースモーゲージがあります。
リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借り、本人等が亡くなった後に自宅を売却し完済する方法です。
リバースモーゲージ利用の主な条件は、以下の通りとなります。
- リバースモーゲージの融資金を住宅ローン残債に充てて完済できる
- 本人の年齢が55歳以上(年齢は金融機関により異なる)
売却後の残債を払えない
任意売却を利用するも、売却後の残債を払えないときです。
任意売却では、売却後に残債が残り、当然に返済義務があります。
金融機関に交渉して返済期間を延ばすことで、支払い可能な金額に抑えることは可能です。
しかし、そもそも債権者に返済能力がなければ、この交渉は成立することはありません。
売却後の残債を支払う能力の有無が任意売却の利用の可否に大きな影響を与えます。
売却後の残債を支払えないときの対処方法
売却後の残債を支払えないときには、財産となるものがあれば、売却して支払いに充てる方法があります。
有価証券、貴金属、車など現金化できるものを売却します。
任意売却できる期間がない
任意売却をしたくても、任意売却できる期間がないことです。
任意売却には、金融機関との交渉があるため、一般的な仲介と異なり、売却を始めるまでに時間がかかります。
一般的に、不動産会社の選定や査定に1週間~2週間、金融機関との任意売却の交渉には1ヶ月~3ヶ月程度を費やします。
また、売却活動には最低でも2ヶ月~3ヶ月程度はかかります。
住宅ローン滞納から競売開札日までの目安はおおよそ1年ですので、1年以内に売却を完了しなくてはなりません。
しかし住宅ローンを滞納し、半年以上放置した状態で任意売却に動くと、売却期間がほとんどない状態となります。
競売の開札が迫っていれば、もはや任意売却はできず競売を待つしかありません。
任意売却できる期間がない場合の対処方法
任意売却は、売却を始めるまでに時間がかかること、売却期間に期限があることから、早めに動くことが重要です。
住宅ローンを滞納してから動き始めるのではなく、返済に困窮しそうであれば不動産会社に相談しておきましょう。
物件の査定や売却の方向性などを、あらかじめ担当者と相談しておくことは可能です。
これらの動きを先行することで、売却期間を長く取れることから成約できる可能性が高まります。
共有者が任意売却に同意していない
共有者が任意売却に同意していないときです。
不動産の売却は、所有者の同意のもと行われます。
しかし、その不動産が共有名義であれば、共有者全員の同意がなければ売却自体はできません。
よって、共有者の誰か一人でも売却に反対若しくは連絡が取れないなどの理由で同意を取り付けられないときには、任意売却はできないことになります。
共有者が任意売却に同意していないときの対処方法
共有者が同意していないときには、まずは名義人間での話し合いが必須です。
また、共有者と連絡が取れない場合には、親族など関係者に確認し、連絡が取れるように努力しなくてはなりません。
たとえば、夫婦でペアローンを組んで住宅を購入したものの、現在別居状態で連絡が取れないときなどは、弁護士など第三者を頼り連絡を取るようにしましょう。
内覧の実施や物件の公開ができない
任意売却は、通常の不動産仲介と同じ売却方法であるため、内覧の実施や物件自体の公開ができなければ売却活動自体はできません。
一般消費者向けに売買ができないと、任意売却は成立しません。
不動産を売却するときには内覧や物件の公開は必須といえます。
特に物件の内覧は、購入か否かが決まる大事な局面となります。
まれに「住んでいる人がいるので内覧はできない」という理由で、物件の写真で交渉することはできますが、それは賃貸物件の場合と考えた方がよいでしょう。
任意売却で内覧の実施や物件公開を拒むことで紹介できる顧客が少なくなり、成約できる可能性が低くなります。
内覧の実施や物件の公開ができないときの対処方法
内覧の実施や物件の公開ができないときの対処方法は、親族や友人など顔見知りの人で取引を進める方法があります。
また、不動産会社に依頼し、特定の顧客のみ紹介する方法もあります。
しかし、この場合には内覧は必須になるでしょう。
限られた人には公開すると覚悟を決めることができれば、この方法は有効だといえます。
任意売却できないとどうなる?
任意売却ができないと、競売にかけられることになります。
競売は、裁判所が期間入札制度により、買主を決めます。
買主が決まると即退去しなければなりません。
なお、競売後に残った残債についても返済義務があります。
しかし、そもそも返済能力がなく自己資金もない状態で競売に進んでいるため、一括返済できる人はいません。
そこで、競売後は自己破産となるのが一般的です。
自己破産とは何か
自己破産とは、借金が免除される代わりに所持している財産を手放す制度です。
借金が多額で、自らの経済力では返済が難しいときに利用します。
借金の返済が困難な状態であれば、裁判所に「破産手続き開始」を申し立てます。
申立てが許可されることで、自己破産ができます。
なお、自己破産すると個人信用情報に事故情報として掲載され、概ね5年~10年程度はクレジットカードや新たなローンは組めません。
任意売却できないときの対処法
任意売却ができないときには、原則競売や自己破産を選択するしかありません。
そこで、任意売却できないケースを防ぐ対処法、もしくは任意売却できないときの手段をご紹介します。
【任意売却できないケースを防ぐ】滞納しそうになったら早めに金融機関に相談する
ローン返済を滞納しそうになったら、早めに金融機関に相談することをおすすめします。
滞納してからでは手遅れになるおそれがあるからです。
返済が計画通りに進んでいないことを金融機関に早めに伝え、滞納前に対処できるようにしましょう。
【任意売却できないときの手段】自己破産などの債務整理を行う
任意売却ができず、他に対処法がなければ、競売を挟まずに自己破産を選択します。
自己破産を選択すると住宅ローンは免責となる代わりに、車・貴金属・住宅などの現物や有価証券などの財産を現金化し債権者に配当されます。
なお、自己破産しても一部の財産は残すことができます。
裁判所により異なりますが、概ね現金であれば99万円までです。
また、失われるのは本人の財産のみであり、家族名義の預貯金や車、住宅は原則自己破産の影響は及びません。
住宅ローンの返済が難しくなったときの対処法
経済的に徐々に困窮すると、おのずと返済が厳しくなることは本人が最もわかるところです。
また、任意売却は必ずできる制度ではないため、まずは任意売却をしない対策が必須となります。
本章では、住宅ローンの返済が難しくなった、または難しくなりそうな状況のときに行う対処法についてご紹介します。
金融機関など専門家に相談する
住宅ローンの返済が難しくなったら、まずは自身だけで悩まずに専門家等に相談することが大切です。
金融機関の担当者や弁護士などの専門家になどに相談し、今の状況を打開できるかなどを話し合ってみましょう。
返済期間の猶予や返済額の軽減申請を行う
返済期間の猶予とは、現在の住宅ローンの返済期間を延長してもらう方法です。
たとえば、返済期間が20年の住宅ローンがあったとき、返済期間を10年間延長することで月の返済額を抑えられます。
金利負担は増えますが、返済額を現実的に支払える金額に抑えられるので、支払いに困窮したときにははじめに検討したい方法の一つです。
また、返済額の軽減とは、一定期間ローン返済額を軽減してもらう方法となります。
病気やけがなどによる一時的な収入減の場合などには、効果的です。
なお、いずれの方法も金融機関と交渉し、了承されなければなりません。
金融機関に金利引き下げの交渉を行う
続いて、金融機関と金利引き下げ交渉を行うことが考えられます。
毎月の返済額と総返済額を抑えるなら、こちらの方法が効果的でしょう。
また、ローンを借り始めてから10年以上経過し、高い金利のまま支払いを継続している人にもおすすめです。
さらに、金利を下げることで元本の減りが早まる効果もあります。
現状ローン金額が売却金額を上回る状態でも、元本の減りが早まれば売却金額を下回る時期も早まる可能性もあり、仲介での売却ができます。
交渉によって0.5%~1.0%程度の金利引き下げができれば、効果は高いと言えるでしょう。
金利の低い銀行に借り換えする
金利引き下げができなければ、金利の低い銀行に借り換えを検討してみましょう。
なお、新たに借り換えを行うには、注意点がいくつかあります。
ローン審査や団信の審査に通過する必要がある
借り換えをするには、新たにローン審査に通過しなければなりません。
ローン以外の借り入れ(カードローンやショッピングローン)が多いことや、個人信用情報に事故情報があると借り換えの審査に通らないおそれがあります。
また、借り換え時は新たに団体信用生命保険の審査があります。
過去3年以内に病気や通院・投薬履歴などがないことが望ましく、原則健康体であることが審査通過の条件です。
事務手数料などの諸費用がかかる
借り換えするには、事務手数料などで諸費用がかかります。
諸費用は原則現金で負担となりますが、ローンに組み込むことも可能です。
この場合、金融機関によっては金利が上がることもあるため、利用には注意しましょう。
まとめ
住宅ローンを滞納し、売却してもローン完済が難しければ、原則任意売却を行いたいところです。
しかし、任意売却を行うには金融機関へ交渉し了承を得ること、売却活動で買主を見つける必要があるなど、成立させるには多くの諸条件があります。
任意売却ができないケースも十分に考えられるため、任意売却を防ぐための対策を取っておくことも重要です。
たとえば、ローン滞納しそうになったら金融機関への相談を早めに行い、支払いの猶予や返済額軽減の申請を行うなどです。
任意売却とならないために、そもそも無理な返済計画を組まない、返済に滞りそうであれば早めに対策を施すようにしましょう。