不動産売却時の登記費用は売主負担?費用の内訳・相場まとめ
この記事でわかること
- 不動産売却時にかかる登記費用について理解できる
- 登記費用は誰が負担するのかがわかる
- 登記費用の納付方法や納税額を抑える方法がわかる
不動産を売却すると、所有者の変更や抵当権の抹消で登記費用がかかります。
登記手続きは、通常司法書士が代理で行います。
登記費用は、司法書士への報酬と一緒に支払うのが一般的です。
一方で不動産取引には必ず買主がおり、買主が負担する費用も当然にあります。
「所有者変更に伴う所有権移転登記の費用は、どちらが負担するの?」と、疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
本記事では、不動産売却に必要な登記の種類と登記費用を負担するのは、売主と買主のどちらになるのかについて解説します。
また、登記費用の相場や納付方法についても一緒に理解していきましょう。
この記事を最後までお読みいただくことで、不動産売却時に売主が負担すべき登記費用について理解できます。
目次
不動産売却に必要な登記
本章では、不動産売却時に必要な登記についてご紹介していきます。
所有権移転登記
所有権移転登記とは、不動産売買で所有者の変更があった場合に行う登記です。
不動産売却時に所有権移転登記を行うことで、第三者にその変更の公示を行っています。
所有権移転登記を行うと、法務局が管理する登記簿に記録されます。
この登記簿は、日本全国の土地や建物の所有者などの権利関係が記されており、誰でも閲覧できます。
なお、不動産の引渡し後は、即日所有権移転登記を行うのが原則となります。
仮に所有権移転登記を怠ると、取引に関係のない第三者に所有権を主張される可能性があるからです。
所有権移転登記をしないでいると、売買契約をして金銭授受を果たしたにも関わらず、買主にその不動産の所有権がないというトラブルに発展することも考えられます。
所有権移転登記時の必要書類
所有権移転登記をするときには、以下の書類を準備しておきましょう。
- 登記済証もしくは登記識別情報
- 印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 委任状
- 身分証明書
登記済証や登記識別情報は、不動産購入時に登記手続きが完了すると司法書士より送付されます。
印鑑証明書は、不動産が所在する役所や、マイナンバーカードがあればコンビニエンスストアなどでも取得できます。
固定資産評価証明書は、東京23区の場合は都税事務所、その他の地域では不動産が所在する役所で取得可能です。
委任状は、登記手続きを司法書士が代理手続きするために必要となります。
身分証明書は、顔写真付きの運転免許証やパスポート、マイナンバーカードが該当します。
抵当権抹消登記
抵当権抹消登記とは、住宅ローンに附帯されている抵当権を抹消するときに行う登記です。
一般的に、抵当権が付いたままの不動産を買主に引き渡すことはできません。
抵当権は、住宅ローンを完済することで抹消できますが、自動で抹消されることはありません。
住宅ローンを完済後、原則司法書士が代理で抹消手続きをします。
なお、抵当権とは住宅ローンを融資する金融機関が設定する権利です。
債権者のローン返済が滞ったときに、金融機関が抵当権を付けた不動産を売却し、弁済に充てるために設定されます。
また注意点として、住宅ローンの完済が難しければ抵当権の抹消はできず、売却自体ができません。
主に不動産の購入時期が比較的最近で、住宅ローンの残債額が多い場合などには注意が必要です。
このようなときは、売却で手元に残る資金と自己資金を合わせてローン完済ができるかを売却前に確認しておきましょう。
抵当権抹消登記時に必要な書類
抵当権抹消登記をするときには、以下の書類を準備しておきましょう。
- 登記済証もしくは登記識別情報
- 登記原因証明書
- 委任状
登記原因証明書は、登記の原因となる事実や法律行為が記載されたものです。
不動産売却時の登記費用は誰が負担?
不動産売却時の登記費用について、所有権移転登記は原則買主負担、抵当権抹消登記は売主負担です。
ただし、所有権移転登記費用の負担については、不動産業界では買主負担が慣例となっていますが、売主が負担しても問題はありません。
また、抵当権抹消登記は住宅ローンを組んでいる本人が行うため、売主負担となります。
不動産売却時の登記費用内訳・相場
不動産売却時にかかる所有権移転登記と抵当権設定登記の費用や相場について、ご紹介していきます。
所有権移転登記
所有権移転登記の費用は、「登録免許税+司法書士報酬+手続きの実費」で算出できます。
それぞれにかかる費用の目安については、以下に挙げたとおりです。
登録免許税
まずは、登録免許税です。
登録免許税は、個人が土地または建物を購入し、所有権移転登記を行う際にかかる税金です。
登録免許税は、登記の申請時に納付します。
登録免許税の税額は、取引を行う土地や建物の価格(固定資産税評価額)、所有権を移転する理由(売買や相続など)により税率が異なります。
不動産売買時の所有権移転登記にかかる登録免許税の税率を、以下にご紹介していきます。
所有権移転登記の税率(中古不動産売買時)
課税標準 | 標準税率 | マイホーム軽減特例の税率 | |
---|---|---|---|
建物の移転登記 | 固定資産税評価額 | 20/1000 | 3/1000 (令和6年3月31日まで適用) |
土地の移転登記 | 固定資産税評価額 | 20/1000 | 15/1000 (令和8年3月31日まで適用) |
(参照元: 国税庁)
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の土地の場合、登録免許税の税額は下記のように計算します。
10,000,000円×0.003(3/1,000)=30,000円
この場合の登録免許税は、3万円と算出できます。
なお、所有権移転登記でマイホーム軽減特例を受けるには、下記要件を満たすことが条件です。
- 自己の居住用住宅の売却であること
- 取得後1年以内に登記されたものであること
- 登記簿上の床面積が50㎡以上であること
- マンション等耐火建築物は築25年以内、木造等耐火建築物以外は築20年以内であること※1
※1上記の年数を超えているケースでは、耐震基準適合証明書または住宅性能評価書(耐震等級が1~3であるものに限る)が取れたもの、既存住宅売買瑕疵担保保険に加入していれば築年数要件は不要
司法書士報酬
所有権移転登記を司法書士に依頼したときにかかるのが、司法書士報酬となります。
不動産登記は、元来専門性の高い手続きのため、司法書士に手続きを依頼するのが一般的です。
司法書士の報酬は5万円程度が相場となりますが、実際は司法書士事務所により報酬は異なります。
司法書士に代理手続きを依頼するときには、複数の司法書士事務所に問い合わせすることをおすすめします。
手続きの実費
所有権移転登記にかかる実費は、数千円程度です。
具体的な内容は以下のようになっています。
- 印鑑証明書の発行費用:1枚につき200円~300円
- 固定資産評価証明書の発行費用:1枚につき200円~400円
また、これら書類を取得する際の交通費や、郵送で取り寄せる場合の郵便代を含めて、1,000円程度を見込んでおくとよいでしょう。
抵当権抹消登記
抵当権抹消登記にかかる費用は、「抵当権抹消の登録免許税+司法書士報酬」です。
抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円、司法書士報酬の相場は15,000円となります。
つまり、不動産1個分の抵当権抹消登記を司法書士に代理手続きを依頼するときの費用は、16,000円が相場ということになります。
なお、司法書士報酬は司法書士事務所により異なるため、こちらも複数箇所問い合わせをするのがよいでしょう。
(参照元: 津地方法務局 「抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税」)
不動産売却時の登記費用の納付方法
登録免許税は、原則現金納付です。
登記をするのは、売買代金を受領し買主に引き渡した後です。
管轄の税務署や金融機関に出向き、登録免許税を納付します。
なお、登記を司法書士が行うときは、手続きを行う司法書士が代理受領して納付となります。
また、現金で納付すると領収書が発行されますが、これを登記申請書に添付し、法務局に提出すると登記完了です。
登録免許税額が3万円以下なら収入印紙でも納付できる
登録免許税は原則現金納付ですが、税額が3万円以下であれば収入印紙での納付が認められています。
しかし、実際は税額が3万円を超える場合でも、収入印紙で納付するケースがほとんどです。
登録免許税の納付方法については、あらかじめ所轄の税務署に確認するのがよいでしょう。
なお、オンライン登記申請では、ネットバンキングなどを利用した電子納付もできます。
不動産売却時の登記費用を抑える方法
不動産売却時に少しでも費用を抑えたいと思う人は多いでしょう。
ここでは、誰でもできる登記費用を抑える方法についてご紹介していきます。
自分で登記手続きをする
登記手続きを自らで行うと、司法書士に支払う報酬がなくなるため、登記費用を抑えることができます。
ただし、登記手続きを自らで行う場合、手続き方法についてはあらかじめ知識を得るための時間が必要です。
また、書類の不備などが発生し、手続きがスムーズに進まないリスクがあります。
このように、自分で登記手続きすることは手間や時間がかかりますが、登記費用を抑えるには効果的です。
複数の司法書士事務所に問い合わせる
先述でも紹介しているとおりに、司法書士に支払う報酬は司法書士事務所により異なります。
複数の事務所に問い合わせを行い、登記手続きトータルでかかる費用を比較することが大切です。
報酬額を安く設定している司法書士事務所が見つかれば、登記費用全体を抑えることができるでしょう。
まとめ
不動産売却時の登記費用は、所有権移転登記は原則買主負担、住宅ローンがあるときの抵当権抹消登記は売主負担です。
不動産売却するときの登記費用は、抵当権抹消登記に必要な16,000円程度を想定しておけばよいでしょう。
なお、抵当権抹消登記は不動産1個につき1,000円ですが、司法書士の報酬は事務所ごとに設定額が異なります。
つまり、どこの司法書士事務所に依頼するかでトータルでかかる費用が変わる可能性があります。
少しでも安く抑えたいのであれば、複数の司法書士事務所に登記費用の確認をしておくことをおすすします。