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最大3000万円が控除される居住用財産の譲渡所得の特別控除とは

財産を売却した場合、受領した譲渡代金が当該財産を取得した時の費用を超過する場合には、その超過額(これを「譲渡益」といいます。)に所得税が課税されます(所得税法第33条)。これを「譲渡所得税」といいます。
ただ、租税特別措置法はこれについていくつかの特別措置を定めています(租税特別措置法第31条~第40条の3)。
本稿では、それらの特別措置のうち、居住用財産を譲渡した場合の特別措置について確認します。

居住用財産の譲渡所得の特別控除

制度の概要

租税特別措置法第35条は、個人が居住用財産を売却した場合について、譲渡所得から最大3,000万円(譲渡益が3,000万円に満たない場合には、その譲渡益を上限とします。)が控除されるという特例制度を定めています。
この結果、居住用財産の譲渡代金から取得費用等を控除した譲渡益が3,000万円以下の場合には譲渡益がなかったものとされ、譲渡所得税を納めなくてもいいことになります。
また、譲渡益が3,000万円を超える場合でも、その譲渡益のうち3,000万円を控除した残額についてのみ譲渡所得税がかかることになります。
例えば、譲渡代金からその取得費用等を控除した譲渡益が5,000万円生じた場合には、3,000万円を控除した残りの2,000万円についてのみ譲渡所得税が課税されることになるわけです。

特別控除が認められる理由

なぜ、このような制度が認められているのでしょうか。
通常、自らが居住していた物件を売却等した場合、その売却代金は次に居住する物件を取得する費用に充てられるのが一般的です。
つまり、居住用物件を売却処分した際の譲渡代金は、当初からその使用目的が決められている訳です。従って、そこから譲渡所得税を取ってしまうと、次の居住用物件を取得する資金が不足する等の支障が生じかねません。
そこで、法律は、居住用財産を売却した場合には譲渡益が生じた場合でも、3,000万円までは譲渡所得税を課さないこととしたと考えられています。

譲渡所得税の具体的な計算については「マンションが売れたら要チェック譲渡所得って何?」をご参照ください。

居住用財産の譲渡所得の特別控除が認められる要件

居住用財産の譲渡所得要件としては、
・居住用財産の譲渡であること
・前年または前々年に、居住用財産売却の特例の適用を受けていないこと
・売却した年、その前年および前々年にマイホーム買換・交換の特例の適用を受けていないこと
・譲渡の相手方と特別な関係にないこと

があげられています。
具体的に見ていきましょう。

(1)居住用財産の譲渡であること
この制度の目的が、居住用財産を売却したことによる所得を、新たな居住用物件取得に利用してもらうためであることから、この特例の適用を受けるのは、自らが実際に居住に使用していた家屋、または、家屋とその敷地の所有権・借地権を譲渡する場合に限られます。
この要件に関しては、次の点が問題となります。
①売却時まで居住していた家屋に限定されるか
必ずしも譲渡時まで居住していたことは必要でなく、居住を終了した日から3年を経過した日の属する年の12月31日までに売却する場合には適用されるとしています。
②居住していた家屋を取壊して敷地のみを売却する場合に特例は適用されるか。
次の3つの要件をすべて満たした場合には、敷地のみの売買にも特例が適用されるとされています。
・敷地の譲渡契約が家屋取り壊しの日から1年以内に締結されたこと
・当該家屋での居住を終了した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに実際の売却が完了したこと
・家屋取り壊しから譲渡契約締結日までの間に、その敷地が他の目的に利用されていないこと
③居住期間が短期である物件についても本特例は適用されるか
本特例自体は所有期間の長短を要件とはしていません。
ただし、この特例を受けるためだけの目的で入居したと認められる場合、および、居住用家屋を新築する為の一時的な仮住まいとして居住したに過ぎない場合、その他、一時的に居住したに過ぎない場合には、本特例は適用されないとされています。

(2)売却した年の前年および前々年に居住用財産譲渡の特例、または、マイホームの譲渡損失の特例を受けていないこと

(3)居住用財産を売却した年その前年および前々年に、マイホームの買い換えやマイホーム交換の特例の適用を受けていないこと。

(4)売却した家屋・土地について、収用等の場合の特別控除など、他の特例の適用を受けていないこと。

(5)売主と買主とが、特別な関係ではないこと。
具体的には、売主と買主とが親子、夫婦、生計を同一にする親族、売買の後当該家屋で同居する親族、内縁関係にある者、その他特別な関係にある法人などではないことが要件とされています。

特例を受けるための手続

居住用財産売却に関する特例の適用を受けるためには、居住用財産を売却した者が、譲渡等をした日の属する年の翌月2月16日から3月15日の間に確定申告を行う必要があります。
その際には、確定申告書に「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]」を添付する必要があります。

まとめ

居住用財産売却に関する特例の内容、要件を見てきました。
この特例は、非常にメリットが大きいものです。ただ、税務署の方からそれらを教えてもらえるわけではありません。本人がこれを申告して初めて適用されるものですから、しっかり、その内容を把握しておくことが望ましいといえます。

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