不動産売却の流れ|手順と必要書類、かかる税金、注意点を解説
「不動産売却の流れが知りたい」
これから不動産を売却することを考えている人は、こんな疑問があるでしょうか。
ほとんどの人にとって、不動産の売却は長い人生でも1回あるかどうかです。
そのため、どんなステップを踏んでいくのか分からない方も多く不安に感じている方も多いでしょう。
そこで今回は、不動産売却の流れと各ステップで注意するべきことをまとめました。
この記事を読めば、スムーズな取引ができる様になりますよ。
不動産売却の流れ
不動産売却は以下の様に進んでいきます。
- 1.情報収集
- 2.査定依頼
- 3.契約締結
- 4.売却活動
- 5.売買契約と引き渡し
- 6.確定申告
それぞれのステップごとに解説していきます。
情報収集
まずは不動産を売却する際に必要な情報を収集していきます。
以下の情報は最低限調査していきましょう。
【不動産売却をする際に収集しておくべき情報】
- ①売却にかかる期間について
- ②全体の流れについて
- ③不動産の周辺エリアの相場について
- ④住宅ローンについて
「①売却にかかる期間について」と「②全体の流れ」に関しては、インターネットなどで調べることで最新の情報を知ることができるでしょう。
「③不動産の周辺エリアの相場について」に関しては、以下のサイトで調べることができます。
検索方法 | 特徴 |
---|---|
REINS Market Information | 国土交通省指定の不動産流通機構が運営している実際の成約価格をもとにした不動産情報提供サイト。 |
土地総合情報システム | 国土交通省が運営している土地・物件の実際の成約価格や地価を検索できるサイト。 |
行政が運営している、または関わっている検索サイトなどで実際の事例を確認しながら相場を調べることでより正確な相場が分かるでしょう。
住宅ローンの確認
住宅ローンの残債が現在もあるならば、まずは残債を確認する必要があります。
物件を買主に引き渡す際には、必ずローンを完済している必要があるためです。
住宅ローンの残債を確認する方法は以下の通り3つあります。
【住宅ローンの残債確認方法】
- 返済予定表を確認する
- 年末残高証明書を確認する
- 金融機関のサイトを確認する
売却を考え始めたタイミングで必ず残債を確認しましょう。
査定依頼
不動産の売却の決心がついたら、不動産会社に査定依頼を行いましょう。
査定依頼とは不動産を売却等するにあたって「売却できそうな価格」つまり相場を不動産会社に調べてもらうことです。
査定には、机上査定と訪問査定の2種類があります。
※ また、最近は「○社一括査定」等の一度の依頼で複数社の査定を受けられるシステムも多くありますが、査定方法としては同じです。
査定の種類 | 概要 |
---|---|
机上査定 | 物件は見ずに不動産の情報のみで査定する方法。 |
訪問査定 | 実際に物件に訪問をしてより緻密に査定をする方法 |
机上査定は物件を見ることがないため、比較的短時間で完了します。
しかし、実際に物件を確認してもらう訪問査定の方が、査定の精度が高いという特徴があります。
同じ不動産でも、個別要素で査定額が大幅に変わることも少なくありません。
特別な理由がない限り、訪問査定を実施する方が正確です。
契約締結
査定額が明確になったら、買い手を探すために不動産会社と媒介契約を結びます。
媒介契約は1社だけと契約する必要はなく複数社と契約し、買い手を探すことも可能です。
不動産会社とどの様な契約をするかによって以下の3通りの形態に分かれます。
専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
自己発見取引 | 〇 | ✖️ | 〇 |
複数業者との契約 | ✖️ | ✖️ | 〇 |
指定流通機構(レインズ)への登録義務 | 〇 | 〇 | |
依頼主への報告 | 2週間に1回 | 1週間に1回以上 | なし |
契約有効期間 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 | 法令上の義務はない |
それぞれの契約形態についてもう少し深掘りして見ましょう。
専任媒介契約
専任媒介契約は、1社のみと媒介契約を結びながら自分でも直接買主を見つけることができる形態です。
主な特徴は以下の通りです。
【専任媒介契約の特徴】
- 媒介契約できるのは1社のみ
- 自分で買主を見つけて直接取引が可能
- 指定流通機構(レインズ)への登録義務がある
- 不動産会社から依頼主への報告が2週間に1回ある
1社のみの契約であるため、不動産会社は高い確率で仲介手数料を貰えます。
よって積極的な販売活動をして貰え、比較的スムーズに買い手が見つかるという特徴があるのです。
一方、1社しか契約できないため販売能力の高い不動産会社を慎重に選ぶ必要がある点は注意が必要です。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、1社とのみの契約で自分では買い手を探すことができない契約です。
主な特徴は以下の通りです。
【専属専任媒介契約の特徴】
- 媒介契約できるのは1社のみ
- 自分で買主を見つける場合も必ず媒介業者を仲介として契約しなくてはならない
- 指定流通機構(レインズ)への登録義務がある
- 不動産会社から依頼主への報告が2週間に1回ある
専属専任媒介契約は、専任媒介契約とは異なり自分で買主を見つける場合も必ず媒介業者を仲介として契約しなくてはなりません。
3つの媒介契約の中でも最も制約がある分、非常に手厚いサポートが受けられる傾向にあります。
一方、自分でも買主を探すことができない分、不動産会社の選択に一番慎重にならなくてはいけない契約形態です。
一般媒介契約
一般媒介契約は、複数の不動産会社に依頼をすることができ、何社とも媒介契約を結べる契約形態です。
もちろん自分で買主を探すことも可能であるため、3つの媒介契約の中でも最も自由度が高い契約形態です。
主な特徴は以下の通りです。
【専属専任媒介契約の特徴】
- 複数社と媒介契約を結べる
- 自分で買主を見つけることも可能
- 指定流通機構(レインズ)への登録義務がない
- 不動産会社から依頼主への報告がない
媒介契約の中で最も自由度が高いものの、他の媒介契約とは異なり不動産会社は販売に消極的になるという注意点があります。
なぜなら、他の不動産会社が買主を見つけた場合、仲介手数料という報酬を得られないためです。
ただ、需要の高い人気物件の売却であれば、一般媒介契約でも買主は見つかるでしょう。
売却活動
売却活動とは、その名の通り物件を商品として販売していく活動です。
媒介契約を結んだ不動産会社は、広告活動としてチラシの配布やWeb広告などの売却活動を行います。
一方、売主は物件を「商品」として魅力的にするために部屋を綺麗に片付ける」などやるべきことは多いです。
【売却活動で売主が行う主な内容】
- 物件の掃除
- 庭の手入れ
- 部屋の照明の交換
買主が魅力的だと感じられる様に物件をつくるのが売主にできる売却活動です。
売買契約と引き渡し
買主が決まれば、売買契約と引き渡しを行います。
売買契約はほとんどの場合、売主、買主、売主・買主両側の仲介会社の4名が集まって以下を行います。
【売買契約で行うこと】
- 宅地建物取引士による買主への重要事項説明
- 売買契約書の確認
- 署名押印
- 手付金の支払い・受領
契約内容に特に問題がないことや買主・売主の認識に差異がないことを確認し、契約が成立となります。
契約後、事前に契約書で同意している引き渡し日までに荷造りや引っ越しを済ませて、引き渡し完了です。
確定申告
購入価格よりも売却額の方が多い場合、売却翌年に確定申告を行う必要があります。
この利益分が「譲渡所得」と呼ばれ、支払う必要があるのが「譲渡所得税」と呼ばれるものです。
譲渡所得の具体的な計算方法は以下の通り。
譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 売却費用)
また譲渡所得税率は、不動産を保有していた期間によって変わります。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
---|---|---|
不動産保有期間 | 5年以内 | 5年以上 |
税率 | 39.63% | 20.315% |
税率の内訳 | 所得税30% 復興特別所得税0.63% 住民税9% | 所得税15% 復興特別所得税0.315% 住民税5% |
保有期間である5年の基準は、不動産を売却した年の1月1日時点です。
譲渡所得となる不動産を売却する場合には、売却時期を考える必要があるでしょう。
不動産売却に必要な書類
不動産売却には以下の様に多くの書類が必要になります。
書類 | 戸建て | マンション | 土地 |
---|---|---|---|
身分証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
印鑑、印鑑証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
登記済み権利書 | 〇 | 〇 | 〇 |
固定資産税・都市計画課税証明書、固定資産評価証明書 | 〇 | 〇 | 〇 |
ローンに関する書類 | △ | △ | △ |
※△は、あれば好ましい
それぞれの書類について確認していきましょう。
身分証明書
身分証明書は、不動産の形態に関わらず必ず必要になる書類です。
以下が身分証明書として認められる書類となります。
【不動産売却における身分証明書例】
- 運転免許証
- パスポート
- 健康保険証
- 印鑑証明書
売却時に身分証明書が必要になるのは、契約時の契約当事者確認を行う際と決済時に権利移転に伴う本人確認の際です。
契約時と決済のタイミングでは必ず持参する様にしましょう。
印鑑、印鑑証明書
印鑑は契約時や決済の際に必要です。
認印でも契約自体は問題なくできますが、契約の信頼性を高めるためにも実印を使用する方が望ましいでしょう。
また印鑑証明書は、所有権移転登記の際に必要な書類です。
基本的には1通あれば、問題はないのですが紛失などの対策として複数枚発行しておくことをおすすめします。
そして、この印鑑証明書は不動産登記令16条により「発行から3ヶ月」と定められています。
それ以降のものは、受領されない可能性があるので注意が必要です。
登記済権利書
自身が不動産の登記名義人であることを証明する登記済権利書も売却契約の際に必ず必要な書類です。
この登記済権利書は、法務局から登記名義人に発行されている書類であなたが本当の不動産の所有者であることを示す重要な書類となります。
※平成17年以降に取得した不動産の場合は「登記識別情報」への名称変更。
いずれの書類もあなたが権利者であることを示す重要な書類であり、売却時に必ず必要なので事前に準備をしておきましょう。
固定資産税・都市計画税証明書、固定資産評価証明書
不動産売却の際には、以下のいずれかの書類が必要です。
- 固定資産税・都市計画税証明書
- 固定資産評価証明書
これらの書類は仲介業者が「固定資産税」と「都市計画税」を把握するために必要な書類です。
仲介業者はこの情報を基に年間コストを計算し、買主へと情報提供をしていくことになります。
ローンに関する書類
ローンが残っている場合は、以下の書類を準備しておくと良いでしょう。
【ローンに関する書類】
- ローン残高証明書
- ローン返済予定表
不動産の所有権を移転する時点でローンの返済が完了している必要がありますが、通常は売買代金を全額受領する時に所有権移転を行うので、そのお金でローン残額を一括返済します。
そのため、上記の書類は契約時などに使用するのではなく、残債の金額を把握し全額返済できるのか、また手元にどれだけ残るのかを把握するために準備をしておくべき書類となります。
その他の書類
その他、あった方が良い書類は以下の通りです。
【不動産売却時にあると良い書類】
- 地積測量図、境界確認書
- 建築確認済証や検査済証
- マンションの管理規約
事前に準備をしてスムーズな取引をしましょう。
不動産売却にかかる税金
不動産売却には主に以下の3つの税金がかかります。
金額の目安 | |
---|---|
譲渡所得税 | 保有期間5年未満:譲渡所得の39.63% 保有期間5年以上:譲渡所得の20.315% |
印紙税 | 書類による |
住民税 | 保有期間5年未満:譲渡所得の9% 保有期間5年以上:譲渡所得の5% |
不動産によっては、かからない税金もありますので、それぞれがどの様な税金であるかを確認しておきましょう。
譲渡所得税
譲渡所得税は、その名の通り譲渡所得(不動産の売却益)に対してかかる税金です。
つまり、不動産を売却した金額が購入した金額より大きい場合にかかります。
「確定申告」でも解説した通り、不動産の保有期間によって税率が異なるという特徴があります。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
---|---|---|
不動産保有期間 | 5年以内 | 5年以上 |
税率 | 39.63% | 20.315% |
税率の内訳 | 所得税30% 復興特別所得税0.63% 住民税9% | 所得税15% 復興特別所得税0.315% 住民税5% |
利益が発生する可能性がある不動産の売却をする際は、不動産の保有期間によってタイミングを考えることをおすすめします。
印紙税
印紙税は、課税対象として定められた書類を作成することに対して課せられる税です。
不動産売却における課税対象の書類とは以下の通りです。
【課税対象の書類】
- 不動産の売買契約書
- 建物の建築請負契約書
- 借入のための金銭消費貸借契約書
- 領収書
印紙税の金額に関しては国税庁の印紙税額の一覧表に書類ごとに記載されているので確認しておくと良いでしょう。
住民税
住民税は、不動産売却をして利益がでた場合に支払い義務が生じる税です。
厳密には、「譲渡所得税」の中に住民税が含まれています。
譲渡所得税 = 住民税 + 所得税 + 復興特別所得税
また、不動産売却によって利益がでた場合に行う確定申告では、住民税を申告する必要がありません。
所得税を申告した際に同時に住民税も申告した扱いになるためです。
不動産を売却する際の注意点
不動産を売却する際には以下の6つに注意しましょう。
【不動産を売却する際に注意するべきこと】
- ローンが残っている場合
- 相続した不動産を売却する場合
- 土地の場合、名義を確認する
- 築年数の古い物件の場合
- 契約不適合責任について確認する
- 投資用のマンションを売却する場合、消費税がかかる
それぞれについて確認をしていきます。
ローンが残っている場合
ローンの残債がある場合に、不動産を売却することはできません。
そのため、売却をし始める前に必ずローンの完済をしましょう。
ローンの残債は、以下の方法で確認できます。
【ローンの残債の確認方法】
- 返済予定表を確認する
- 年末残高証明書を確認する
- 金融機関のサイトを確認する
売却を考え始めたタイミングで必ずローンの残債を確認することが重要です。
売却代金でローンを完済できないと想定した場合には、完済できない不足分についてどうするかをあらかじめ考えておく必要があります。
相続した不動産を売却する場合
相続した不動産を売却する際には以下について注意が必要です。
【相続不動産を売却する際の注意点】
- 関係者(相続人、親族)でしっかりと話し合う
不動産の売却をした際の費用の折半の方法や入金されたお金の振り分け方など、相続不動産ならではの事前確認事項が多くあります。事前にしっかりと関係者で話し合うことが必須です。 - 却前に不動産の欠陥を確認する
相続したての物件では、見えない部分や実際に住んでみないと分からない部分の欠陥が売却後に見つかることがあります。その場合、「契約不適合責任」という買主から売主に対しての責任を負わなくてはいけなくなります。事前に不動産の欠陥となる箇所を入念にみておくことが必須です。
土地の場合、名義を確認する
土地を売却する際には必ず名義の確認をしましょう。
なぜなら、土地売却をする際によくある例として「共有名義であるため自身で売却できない」ということが起きるためです。
例えば相続した土地の場合、兄弟間で同じ区画の土地を共有名義にして相続しているということがあります。
その場合、1/2ずつ分けて所有権があるため1区画全てを売却することは自身の判断だけではできなくなるのです。
この様に共有名義となっている場合などがあるため、必ず名義の確認が必要です。
築年数の古い物件の場合
築年数の古い物件の売却は、不動産会社などのプロに必ず相談してから決めましょう。
なぜなら、古い物件は耐用年数などの問題で需要が少なく、不動産会社も収益が見込みづらいため販売に工夫が必要だからです。
目安として築40年を超えると市場価値がほぼ無いに等しいと言われています。
この様な物件に関しては、不動産会社に相談し以下の様な対策を行う必要があります。
- 古い家を専門に扱っている業者の紹介
- リフォームを行なってから売却
- 解体し土地として売却する
いずれにしても不動産会社に一度相談をすることをおすすめします。
契約不適合責任について確認する
契約不適合責任説明について事前に確認をしておくことも重要です。
契約不適合責任説明とは、売買契約書に記載されている内容とは異なる欠陥などが発見された場合の売主側の責任です。
これを避けるために重要なので、事前に住宅の細かい欠陥なども全て調べておくことです。
契約書を作成する段階で、事前に把握できている欠陥に関しては契約不適合責任の範疇ではなくなります。
売却を考え始めたら、必ず契約不適合責任について確認をしておきましょう。
投資用のマンションを売却する場合、消費税がかかる
投資用マンションを売却する場合には、消費税がかかることも念頭に入れておく必要があります。
基本的に法人や個人事業主ではない個人が住宅を売却する場合、消費税はかからないのが原則です。
しかし、投資用マンションは「住宅用」とみなされず「利益目的の物件」とみなされ、消費税の課税対象になってしまいます。
不動産の売却額は高価であるため、10%の消費税も非常に大きな額になるでしょう。
投資用のマンションを売却する際は、消費税も考慮に入れることに注意が必要です。
まとめ
不動産を売却する際の流れをあらかじめ知っておくことは、スムーズに取引するために非常に重要です。
常に全体の中でどのステップいるのか、そして何に気をつけなければいけないのかを意識する様にしましょう。
不動産を売却する時は、ぜひこの記事の内容を思い出してみてください。