登録免許税はいくらかかる?具体的な計算方法や軽減を受けるコツを解説
この記事でわかること
- 登録免許税の計算方法と具体例がわかる
- 登録免許税を抑える方法がわかる
- 司法書士を探す場合におすすめの選び方がわかる
登録免許税とは?
登録免許税は、以下のような場合に納税が必要となる税金です。
- (1)不動産に関する登記
- (2)会社に関する登記
- (3)著作権などの権利の登録
- (4)宅建業、建設業を始める際の免許登録
(1)不動産に関する登記
不動産登記は少し複雑な制度となっていますので、ご存知ない方も多いかもしれません。
不動産の名義は客観的に第三者に伝わるように、法務局にて詳細な情報が保管されています。
新しく建物を建築する際には法務局で不動産登録してもらう必要があるため、登録免許税を納付することになります。
他にも、不動産を売却したり、相続で名義の移転したりする際、申請時に登録免許税の支払が必要です。
(2)会社に関する登記
不動産と同じように、会社の法的情報についても登記されることとなっています。
会社を新規で設立する場合のみならず、役員の任期を更新する際にも登記手続きが必要となります。
会社が必要となくなり、解散をする際にも登記申請が必要です。
(3)著作権などの権利の登録、(4)宅建業、建設業を始める際の免許登録
登録の際に登録免許税を納める扱いとなっています。
登録免許税を納め、これらの登録手続きが完了することで、正式に登録が認められる仕組みです。
登録免許税の計算方法
登録免許税の計算の仕方には、定額課税と定率課税があります。
定額課税というのは、不動産の個数に応じて税金額が大きくなるというものです。
例えば、所有権抹消の登記を申請する場合には、「不動産の個数×1,000円」という計算がなされますので、抹消する対象の不動産が4つであれば、4,000円(=4×1,000円)となります。
一方で、定率課税の場合は様々なパターンがありますが、原則として以下の計算式を用います。
このうち、「課税標準金額」については、何に対する登録免許税を算出するかによって用いる値が変動します。
例えば、不動産を購入する場合には、課税標準金額に「固定資産評価額」が必要です。
しかし、抵当権を設定する際には、課税標準金額に「債権の金額」を用いることになります。
また、会社の登記設立の際には、課税標準金額に「資本金の額」を利用することになります。
登録免許税の計算は、ケースによって利用するものを確認しなければいけないことを覚えておきましょう。
固定資産税評価額を読み取る
仮に不動産登記の申請をする場合には、課税標準金額として固定資産評価額を知っておかなければいけません。
固定資産税評価額については、毎年送られてくる納税通知書に記載がありますので参照してください。
また、納税通知書でなくても固定資産評価証明書を各市町村で取得すれば算出可能です。
その他、法務局に備え付けられている固定資産評価台帳でも確認できます。
抵当権の設定金額を計算する
不動産登記の申請をする場面でも、抵当権を設定する場合には、債権の金額を課税標準金額としなければいけません。
抵当権とは、債務者が何らかの事情で返済できない状況になった場合にときのことを考えて、債権者が設定するものです。
具体的には、建物や土地などの不動産を担保にします。
例えば、住宅購入時のローン返済が難しくなった場合、不動産の処分権が債権者である銀行に移って金銭化等されてしまうことを指します。
会社を作る場合には、資本金を確認する
同じように、会社を設立する際には、資本金を課税標準金額とすることになっています。
会社の資本金の額は、設立者が自由に決められるためわかりやすいでしょう。
なお、設立後は法務局で登記簿謄本を確認すると資本金の額を再チェックできます。
登録免許税の税率を確認する
それでは、よく使われやすい登録免許税の税率について、申請内容とともに下図にまとめました。
申請内容によって税率が変わってくるため、ここでしっかり確認しておきましょう。
申請 | 課税標準金額 | 税率 |
---|---|---|
1.所有権保存登記 | 固定資産評価額 | 0.4% |
2.相続による所有権移転登記 | 固定資産評価額 | 0.4% |
3.売買による所有権移転登記 | 固定資産評価額 | 2.0% |
4.抵当権設定登記 | 債権金額 | 0.4% |
5.所有権抹消登記 | 不動産の個数×1,000円 | – |
6.会社設立登記 | 資本金 | 0.7% |
7.会社の役員変更登記 | 3万円 | – |
上図から不動産の登記に関しては多くが定率課税で、課税標準金額に税率を乗じることがわかります。
これ以外でも会社の登記に関しては定額課税であるものも多く見られます。
また、不動産の登記では2と3のように「移転登記」ではあっても、相続によって移転するのか、売買によって名義が移転するのかと移転する原因によって、税率が異なるのがポイントです。
上記以外の申請をする場合には、必ず申請前に課税標準金額の対象となる内容と税率について調べておくようにしましょう。
【具体例あり】実際に登録免許税を計算してみよう
登録免許税の計算方法について、少し複雑な事例にも対応できるように解説していきましょう。
まず始めに、登録免許税の計算方法はこちらです。
仮に、不動産の固定資産評価額が1,000万円で、これを相続する場合には上の図より税率は0.4%となりますので、
となります。
ところが、現実的には固定資産評価額が1,000万円のようなきれいな数字になることはほぼありません。
たいてい10,007,852円や、10,009,362円といった数字になるのではないでしょうか。
それではこのような端数が出た場合の処理について考えてみたいと思います。
このような場合には、1,000円未満の端数は切り捨てて計算することとなっています。
例えば、以下のようになります。
- 10,007,852円・・・10,007,000円
- 10,009,362円・・・10,009,000円
また、同一の申請内容に係る不動産の計算をする場合には、不動産の種類をまとめて合算することになりますので、複数の不動産が対象となる場合には、それらを合計して算出することになります。
よって、例えば10,007,852円の不動産と10,009,362円の不動産の2つを相続することになった場合には、課税標準金額は以下のようになります。
= 20,017,214円
となり、端数を切ると、20,017,000円となります。
またこの課税標準金額を算出すると端数が生じる場合がありますが、100円未満の端数は切り捨てる扱いとなります。
課税標準金額は1,000円未満の端数を、登録免許税は100円未満の端数を切り捨てると覚えておきましょう。
登録免許税計算シミュレーション
それでは、実際に登録免許税計算のシミュレーションで理解を深めていきましょう。
それでは、以下のケースを考えます。
事例
AさんはBさんより、不動産甲と不動産乙を譲り受け、売買代金を支払い、その日のうちに法務局に登記申請をしました。
なお、不動産甲の固定資産評価額は7,186,253円、不動産乙の固定資産評価額は8,461,395円であるとします。
の計算式に当てはまるようにそれぞれ検討していきます。
まず、課税標準金額ですが、不動産の売買移転登記であるため、上の図より固定資産評価額を確認すればよいことになります。
今回は、不動産が2つありますので算出していきます。
= 15,647,648円(≒15,647,000円)
となり、1,000円未満の端数処理を行うと、15,647,000円となります。
また税率は上の図より1,000分の20であることがわかります。
よって、
= 312,940(≒312,900)
となり、100円未満の端数処理を行うと、登録免許税は312,900円となることがわかります。
登録免許税を少しでも抑えるコツ
さて、登録免許税の計算のシミュレーションで次のようなことを感じた方もいるのではないでしょうか。
「登録免許税はこんなに高くなるのか?」
「不動産に関する税金だから高くなるのは仕方ないのか…」
登録免許税の金額に、驚いた方も多いでしょう。
しかし、登録免許税は税額を抑えるコツがいくつかあるため、ここでしっかりチェックしておくことが大切です。
当事者間で折半できないか協議する
登録免許税は、例えば不動産の売買の際に収める必要がある税金です。
しかしながら、必ずしも購入者が税金を負担しなければいけないわけではありません。
当事者の協議の結果、売主に全額出してもらうことや、少なくともいくらか折半してもらうということの提案をするだけは問題ないといえます。
通常は買主が負担することの多い税金ですが、試してみる価値はあるかもしれません。
信頼できる司法書士に登記を依頼する
登記は司法書士に代行してもらうことができます。
司法書士に支払う報酬の相場は、以下のようになっています。
抵当権抹消登記 | 5,000円~ |
---|---|
贈与による登記 | 50,000円~ |
不動産売買による登記 | 85,000円~ |
また、登記を行う際に必要となる登録免許税が報酬と別に必要になります。
抵当権の設定による登記では、抵当権設定額の0.4%が、司法書士報酬とは別に登録免許税として課税されます。
司法書士によっては料金が明確になっていないところや、相場より高いところもあるので、報酬の目安を確認しておくことが大切です。
登記代行を依頼するのにおすすめの司法書士の選び方は、記事の最後で紹介します。
軽減税率を利用する
登録免許税の負担を抑えるために、軽減税率を利用する方法があります。
軽減税率が利用できれば登録免許税の負担が少なくなりますが、要件や手順はしっかりと理解しなければなりません。
登録免許税の軽減税率について、次から説明していきます。
登録免許税の軽減税率とは
一般的なマイホームを取得する際、適用要件を満たした場合には登録免許税が軽減されます。
住宅であれば所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記について、土地であれば所有権移転登記について、登記種別や本則税率に応じて異なる特例税率が設定されています。
この軽減措置の期間は令和4年(2022年)3月31日までの予定でしたが、令和6年3月31日まで延長されました。
軽減税率を利用するための要件
登録免許税を抑えられる軽減税率ですが、要件を満たしていなければ利用できないため注意が必要です。
例えば、軽減税率の最初の例でご紹介した所有権の保存の登記を0.4%の税率で計算するためには、以下の条件を満たさなければいけません。
- (1)物件が居住用の建物であること
- (2)新築若しくは購入後1年以内に登記をしたもの
- (3)延べ床面積が50㎡以上であること
抵当権の設定登記の軽減税率である0.1%を利用するためには、建物が上記条件に適合するものであれば、問題なく利用できます。
その他の条件もありますが内容が細かいので、税理士等の専門家に相談して確実な情報を入手することをおすすめします。
軽減税率適用のために必要なもの
不動産の軽減税率を利用するために必要となる書類について解説していきましょう。
上記の条件を満たすには、「新築若しくは購入後1年以内に登記をしたもの」であることを証明しなければいけません。
このために必要となる書面は、「住宅用家屋証明書」と呼ばれます。
住宅用家屋証明書の交付を受けるためには、登記事項証明書・住民票・売買契約書・建築確認済証などの書類が必要となりますので事前に確認しておくようにしましょう。
「認定低炭素住宅の所有権の保存登記」の減税を利用するためには「認定低炭素住宅の証明書」を、「特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記」の減税を利用するためには「認定長期優良住宅の証明書」の添付が必要となります。
軽減税率を利用する効果
登録免許税の計算において、特例を利用してどの程度安く済ますことが出来るのか確認してみましょう。
例えば、上図の通り不動産の所有権の保存登記は税率が1,000分の4となっていますが特例を利用すると、1,000分の1.5で計算することが出来ます。
すると、1,000万円の固定資産評価額の不動産について比較してみると、通常だと4万円ですが、特例を利用すると1万5,000円となります。
この差は2万5,000円ですので大いに利用する価値はあるといえるでしょう。
その他には、このような軽減措置がありますのでご紹介します。
申請内容 | 通常 | 特例利用後 |
---|---|---|
売買による建物の移転登記 | 2.0% | 3.0% |
抵当権設定登記 | 0.4% | 0.1% |
特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記 | 0.4% | 0.1% |
認定低炭素住宅の所有権の保存登記 | 0.4% | 0.1% |
特定の増改築がされた住宅用家屋の所有権移転登記 | 0.2% | 0.1% |
司法書士を探す場合におすすめの選び方
司法書士を探す場合にはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。
ここでおすすめの選び方を紹介します。
報酬の設定額で選ぶ
司法書士に依頼するうえで、報酬をどれだけ支払えばいいのかはっきりしないと不安になるでしょう。
そこで、報酬の設定額がわかりやすい司法書士に依頼すると、予算が立てやすくなります。
また、費用の説明がしっかりできる司法書士は信頼度も高いといえるでしょう。
さらに、費用が明確であれば他の司法書士との比較もできます。
対応の早さ・誠実さで選ぶ
対応の早さや誠実さも、司法書士を選ぶうえで大切なポイントです。
対応の早さは、経験にも関係してくる部分です。
また、中には報告などのレスポンスが遅く対応も不誠実な司法書士も存在します。
登記など専門的な仕事には、対応の早さが鍵を握る場面も多くあります。
対応が早く誠実な司法書士を選べば、安心して登録免許税などの手続きを依頼できるでしょう。
過去の実績で選ぶ
依頼する分野について、多くの実績を積んでいる司法書士は信頼度も高いでしょう。
司法書士が依頼する分野に精通しているかどうかは、ホームページなどに載せられている実績を確認するとわかります。
この機会に一度確認してみてください。
司法書士の業務は多岐にわたっているため、分野によっては得意不得意もあります。
司法書士の年齢や開業年数でははかりしれないケースもあるため、過去の実績には必ず目を通しておくことをおすすめします。
土地家屋調査士との連携の良さで選ぶ
登記について司法書士に依頼する場合、土地の専門知識を持っているかどうかも重要な要素になります。
そこで、土地家屋調査士と連携が取れていれば、土地についての知識も豊富であると判断できます。
実際に難しい案件になった場合にも、土地家屋調査士との連携ができていれば的確に判断でき、しっかりと対応してくれるでしょう。
アフターフォローで選ぶ
登記申請をはじめ、司法書士が行う業務は一般的に難解なものも多くあります。
その際、疑問を感じたときに答えてくれる司法書士に依頼することが大切です。
司法書士の表面上の仕事は、依頼の内容が終了したらそれで終わりかもしれません。
しかし、いつでも疑問に答えてくれる存在がいれば、その先も心強い存在として司法書士に頼れるでしょう。
まとめ
登録免許税とは、不動産に関する登記や会社に関する登記などの際に発生する税金のことです。
手続きの種類によって税率が異なるなどの細かなルールがあるため、自分で判断できない場合は専門家に相談した方が安心です。
不動産売却マップでは、不動産の専門家と税の専門家の両方からサポートを受けられます。
登録免許税の計算がわからずに困っている方は、ぜひお気軽にご相談ください。