新築の不動産取得税の軽減措置について詳しく説明
私たちが新築で住宅を建てる時に支払わなければいけない税金として、「不動産取得税」があります。
しかしながら、不動産取得税というものは所得税や法人税、あるいは相続税といった比較的なじみのある税金とは異なり、関わりのある機会を持つことが稀であるため、対処法について十分に理解している方は多くないかもしれません。
ところが、今回お伝えします通り、不動産取得税をしっかりと把握しておくことで、私たちにとって多くのメリットがあります。
今回は、新築の不動産取得税の軽減措置を中心に詳しく説明をしていきたいと思います。
目次
不動産取得税
不動産は大きく、土地又は建物に分類することが出来ます。
ここから、不動産取得税は、土地又は建物に関する税金であると推測することが出来るでしょう。
不動産取得税はそれぞれの都道府県が管轄している税金で、不動産を購入、贈与、又は交換により取得した場合、あるいは建物を増築、改築、又は新築した場合に支払うことが求められる税金ということが出来ます。
これらの原因により不動産を取得したときには不動産取得税を支払うことになりますが、一方で不動産を取得しても税金を支払う必要がないときがあります。
それは、例えば相続により不動産を取得した場合です。
少し説明をしますと、相続により不動産を取得したときには確かに名義人が変動しますが、先述の不動産取得原因とは異なり、相続は以前の所有者の権利義務を相続人が承継することになります。
よって、相続により不動産を取得する者は以前の所有者の権利義務をそのまま使用することが出来るために、他の不動産取得原因とは性質が異なる訳です。
この他にも「法人の合併」による取得も、この「相続」と同じ効果が適用されます。
不動産取得税の算出方法はどうするの?
不動産取得税の計算式は以下のようになっています。
不動産取得税 = 固定資産評価額 × 税率
ここで、「固定資産評価額」というのはどこを見れば確認することが出来るのでしょうか?これは、不動産を取得すれば毎年納めることになる固定資産税の税額が記載された「納税通知書」により確認することが出来ます。
または、お住まいの市町村の役所では、「固定資産評価証明書」という書面が有料で発行されますので、こちらでも固定資産評価額を見ることが出来るようになっています。
次に「税率」ですが、これは4%と定められていますので、基本的には固定資産評価額に4%をかけて算出することになっています。
なお、この不動産取得税は不動産を取得した後、半年から1年後までのタイミングで届くようになっていますので、忘れないようにお金を残しておきましょう。
不動産取得税は軽減税率が適用されます
不動産取得税は、不動産という高い価格のものから生じる税金なので高いお金を支払わなければいけないのではないかと考えてしまいがちです。
ところが、そんな不動産取得税には軽減税率が適用されており、現在では比較的安価で済むようになっています。
まず、かけられる税率は、現在4%ではなく3%となっています。
そして不動産のうち、宅地である土地に対しては、固定資産評価額を半分にして税率をかければ良いとの対応策が採られています。
宅地に関しては新築住宅を建てる際の土地として使用されますので、不動産取得税を安く済ませる手段として覚えておくと良いでしょう。
更に大きな軽減措置を適用するためには?
先程不動産取得税を少しでも抑えるために、軽減措置が取られていることを説明致しましたが、この他に条件を満たすことで更に大きな軽減措置を利用することも可能です。
新築住宅以外にも利用できるものもありますので、よろしければそちらもご参照ください。
新築住宅の場合
新築住宅の場合、軽減措置として1,200万円の控除を含んで算出することができます。
具体的には、以下のようになります。
不動産取得税 = (固定資産評価額-1,200万円) × 税率
税率に関しては、現在3%が適用されることになっていますので、これを掛けることになります。
それでは、この1,200万円の控除を受けるための条件を見ていきましょう。
- (1)建物が新築であること
- (2)建物の延べ床面積が50㎡以上かつ240㎡以内であること
建物であれば、どのような建物でも対象となります。
例えば、マンションの場合には、「共有部分」も自身が所有する専有部分の床面積で割ることにより床面積の対象とすることになります。
新築住宅の場合、軽減措置を利用することが出来れば、1,200万円より低い固定資産評価額の不動産には不動産取得税はかからないことになります。
中古住宅の場合
新築住宅と同様に、中古住宅でも軽減措置を利用することが出来ます。
ただし、中古住宅の場合には、建物が新築された年によって、利用できる控除の額が異なることが特徴となります。
中古住宅の控除額について、一覧図を作成致しましたので下図をご参照頂ければと思います。
<中古住宅において適用される控除額早見表>
新築年 | 控除される金額 |
---|---|
1997年4月1日~現在 | 1,200万円 |
1989年4月1日~1997年3月31日 | 1,000万円 |
1985年7月1日~1989年3月31日 | 450万円 |
1981年7月1日~1985年6月30日 | 420万円 |
1976年1月1日~1981年6月30日 | 350万円 |
1973年1月1日~1975年12月31日 | 230万円 |
1964年1月1日~1972年12月31日 | 150万円 |
1954年7月1日~1963年12月31日 | 100万円 |
土地の場合
土地の軽減措置は建物の軽減措置とは異なり、固定資産評価額から控除するのではなく、固定資産評価額に税率を掛けた不動産取得税の計算結果に直接控除をかけることが出来ます。
控除される金額については、以下のうち大きい方の金額が適用されることになります。
- (1)45,000円(不動産取得税の金額がこれ以下になる場合はその金額)
- (2)(土地の1㎡当たりの価格×1/2)×(床面積×2)×3%
ただし、上記控除額を利用するためには以下のようないくつかの条件を満たす必要があります。
土地に軽減措置を適合させるためには、前提として新築建物が軽減措置の条件を満たしている必要があります。
その上で、以下のような条件に当てはまるものでなければいけません。
- (1)土地を取得した後に新築建物を建てる場合は、土地取得後3年以内であること
- (2)土地を賃貸しており、その上に新築建物を建てる場合は、新築建物建築後1年以内にその賃貸している土地の名義を取得すること
新築不動産の不動産取得税を算出してみました
それでは、実際に新築不動産のケースより不動産取得税を算出してみましょう。
ケース:先日家族で住むための居住用の物件を新築で購入しました。
この新築物件は、1階が広く150㎡あり、2階は80㎡という構造になっています。
これから納めることになる不動産取得税が気になって調べてみると、建物の固定資産評価額が1,700万円であると記載されていました。
この場合、不動産取得税はいくらになるのでしょうか?
新築建物の不動産取得税の計算式は、
不動産取得税 = 固定資産評価額 × 税率
となっていました。
それでは、今回のケースにより判明した情報を上記計算式に当てはめてみたいと思います。
すると、以下のような計算式となります。
不動産取得税
= 1,700万円 × 3%
= 51万円
ここで押さえておかなければいけないポイントとして、少しでも税金を抑えるために軽減税率は使えないかと考えてみることが重要です。
そこで、再度新築住宅が受けられる軽減税率の条件を見ておきます。
- (1)建物が新築であること
- (2)建物の延べ床面積が50㎡以上かつ240㎡以内であること
今回のケースでは、説明より「(1)建物が新築であること」は満たしており、また建物の床面積の合計も230㎡(=150㎡+80㎡)となり、二つ目の条件である「(2)建物の延べ床面積が50㎡以上かつ240㎡以内であること」も満たしていることが分かります。
よって、軽減税率が適用されることになります。
したがって、計算式は以下のように変わります。
不動産取得税 = (固定資産評価額-1,200万円) × 税率
= (1,700万円-1,200万円) ×3%
= 500万円 × 3%
= 15万円
納めるべき不動産取得税は、軽減後15万円になることが分かりました。
軽減前は51万円でしたので、差額は36万円(=51万円-15万円)ということになります。
不動産取得税について気を付けておかなければいけないこと
不動産取得税は都道府県が管轄している税金ですので、細かい取り扱いはお住まいの都道府県によって多少違いがあるかもしれません。
違う県に住んでいる知り合いから聞いた情報を全てやみくもに信じるのは禁物です。
もし少しでも気になる点があれば、お住まいの都道府県のホームページで確認するか、お電話で問い合わせをされるのが良いでしょう。
また、不動産取得税は忘れた頃に突然支払いを要求されるものです。
不動産を取得する際には、その税金額を理解して準備しておくのが望ましいです。
万が一、本記事で解説しました軽減措置を利用することを失念されていた場合には、税金の還付手続きを利用することにより、払いすぎた税金を戻してもらうこともできます。
間違いなく支払うことが重要ではありますが、このような裏技があることを覚えておくと心強いものです。
それでも何か不明なことがあれば、専門家の税理士等に問い合わせてみるのが良いでしょう。
まとめ
不動産取得税は、売買等の原因により不動産を取得することにより支払わなければいけない税金です。
新築を建てられた際には、すぐに払わなくても良いと油断してしまうかもしれませんが、後できっちり支払うことが出来るように不動産取得税の計算方法を押さえておきましょう。
そして、どうにかして軽減措置を利用できないか調べてみてください。
まだよく分からないという方は、この記事を何度もお読み頂き、理解を深めて頂ければ幸いです。