土地売却時におこなう測量とは?必要なケースや費用相場を解説
この記事でわかること
- 土地の測量とは何かがわかる
- 土地の測量が必要なケースと不要なケースについてわかる
- 土地測量の費用の内訳や相場についてがわかる
- 土地測量を行うときの流れや期間についてわかる
土地を売却しようと考えているものの、「土地の測量は必ずしなければならないの?」と疑問を持つ方は少なくありません。
測量は費用も時間もかかるため、できれば回避したいものです。
土地を売却する時に、必ず土地の測量をしなければならないわけではありません。
本記事では、土地の測量とは何かをはじめ、不動産を売却する時に測量が必要になるケースを紹介します。
また、土地測量にかかる期間や流れ、費用相場についても詳しく解説します。
目次
土地売却時の測量とは
所有する土地を売却する際に、測量が実施されることがあります。
測量とは、土地の境界線や面積を確定するために、境界線の距離や高低差などを測ることです。
特に土地の価格は面積によって大きく変わる可能性があるため、正確な面積を求めることは非常に大きな意味があります。
ただ、測量をせずに土地を売買してしまうこともあります。
この場合、面積は登記簿謄本に書かれたものに従うこととなります。
実際に売買が行われる際には、特に買い手は測量を希望することが想定されます。
買い手としては、売買の後長年にわたって利用することとなる土地の境界が不確実な状態では、生活しにくくなります。
また、実際の面積と登記上の面積が違うこともあるため、実際の面積で売買できるように測量が実施されます。
土地売却時に測量が必要なケース
以下のようなケースは、売買時の測量が必要となります。
- 境界杭がない土地
- 都市部・市街地の住宅や高額な土地
- 都市部の住宅地
- 旗竿地や変形地
- 抵当権の設定予定の土地
- 住宅を建てる予定の土地
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
境界杭がない土地
売却する土地に境界杭など土地の境界点を示すものがない場合は、測量をする必要があります。
境界杭には、金属標やプラスチック杭、コンクリート刻印といった種類があります。
いずれも測量時に境界を確定した際に境界点の印として打つものですが、年月が経つと地面に埋もれたり場所が移動したり抜き取られたりしてしまうことがあります。
こういった場合は、新たに測量をして境界杭を設置する必要があります。
また、境界杭があっても塀やフェンスといった境界線を示すものがなく、土地の境界がわかりづらいケースでも測量を行うべきです。
客観的に土地の境界を示すものがなければ、もめごとの原因になってしまうからです。
都市部や市街地・高額な土地
一般的に、都市部の住宅地では境界についてのもめごとが起こりやすいです。
郊外に比べて狭い土地を活用しているため、駐車の位置や植木の越境などについてのトラブルが起こります。
また、都市部は地価が高いため、登記簿上の面積と実際の面積に差異があった場合買主に大きな影響を及ぼすことがあります。
それらを考えると、都市部の住宅地では売買時の測量は必須だと言えます。
旗竿地や変形地
旗竿地とは、細い路地を通った先にある奥まった土地のことで、竿についた旗のような形をしているため旗竿地といいます。
変形地とは、形が四角形ではなくL字型やS字型などの土地のことです。
旗竿地や変形地を売買する場合、買主としてはその土地にどんな建物を建築できるのかが重要となります。
そのため、土地面積や土地の形状、境界点や境界線についての正確な情報を得られる測量が必要になるのです。
抵当権の設定予定の土地
抵当権を設定しようとする土地については、必ず測量を行わなければなりません。
土地の正しい面積がわからないと、土地の評価額を正確に計算することはできず、抵当権を設定することができるかどうか、判断できません。
そのため、抵当権を設定する予定がある土地については、早目に測量を行う必要があります。
住宅を建てる予定の土地
土地の上に家を建てようとしている場合、その土地の測量を行う必要があります。
家を建てる際には、建築基準法など様々な法律に違反しないようにする必要があります。
土地の面積や境界を確定させなければ、法令に違反していない家を建てることはできません。
また、隣地の所有者とのトラブルを回避するためにも、測量は非常に重要なものです。
土地売却時に測量が不要なケース
土地を売却する際には、基本的に測量した方がトラブルが発生することがありません。
ただ、土地を売却する時であっても、測量する必要のないケースはいくつかあります。
このような場合では、測量せずに売却しても問題はありません。
測量が不要ならばお金をかけずに売却できるので、その方向で交渉を進めていきましょう。
境界が明確な土地
土地の境界が明確になっている場合は、測量を行う必要はなく、そのまま売却することができます。
境界が明確とは、隣地との境界線について争いがないことを意味するものではありません。
まだ最近に分譲されたばかりの土地であり、その後状況の変化がないような場合を指します。
また、法務局に正確な地積測量図があるため、その地積測量図を基に境界を確認し、面積が確定できれば問題はありません。
古くからの土地については、この条件に当てはまらないこととなります。
測量費用よりも価格が低い土地
土地の種類や所在地によっては、土地の価格より測量費用の方が高くなるようなケースがあります。
このような場合、高い費用を支払って測量を行うことに、それほど大きな意味はありません。
そのため、測量を行わずに売却してしまうことがあります。
このようなケースは、特に田舎の広大な山林などを売却する際に起こりやすいことです。
広大な土地になるほど、測量費用は高くなりますが、土地の価格はそれほど大きなものにはなりません。
このような場合には、事前に不動産会社や買い手に相談するようにしましょう。
行政の承認に長い時間がかかる土地
土地を売却するために境界を確定しようとする場合、その境界の確定に行政が関わると、承認までにかなりの時間がかかります。
このようなケースでは、売り手と買い手が測量が完了する前に双方で合意したうえで、売却することも認められます。
ただ、最終的に境界を確定させるためには、行政の承認が必要になります。
そして、その承認を得るには民間とは比べ物にならないほど時間がかかることもあるため、気長に待つしかありません。
土地測量図の種類
土地の境界線は、地面に直接引かれているわけではなく、測量図を使って確認することとなります。
土地の測量図にはいくつか種類があり、それぞれ異なる目的のために作成されています。
どのような土地測量図があるのか、その種類と特徴をご紹介しますので、土地の売買にはどの測量図が使えるのか、確認しておきましょう。
確定測量図
確定測量図とは、隣地との境界性を確定し、隣地の所有者から承諾を得て境界確定を行ったうえで作成された測量図のことです。
すべての隣地の所有者に立ち会いをお願いし、境界に間違いがないことをお互いに理解して作成された図面となります。
すべての土地は道路に面しているはずなので、その道路の所有者である自治体にも立ち会ってもらうこととなります。
土地を売買する時や、土地の分筆を行う場合などには、確定測量図が必要となります。
現況測量図
現況測量図は、測量機器を使用し、土地の境界線や面積などを測量したうえで作成された測量図のことです。
隣地所有者の立ち会いをお願いせず、境界の確定をしていない点が、確定測量図とは大きく異なります。
現況測量図があれば、所有する土地の上に建物を新築することができます。
これは、建築確認申請の際には、境界確定は必須とされていないためです。
また、相続の際に土地の評価額を計算するために、現況測量図が用いられることもあります。
地積測量図
地積測量図は、土地所有者が自身で作成する測量図ではありません。
法務局に備え付けられた測量図のことです。
測量の作業を依頼することなく、申請すれば誰でも土地の測量図を入手することができます。
ただし、地積測量図はすべての土地について作成されているわけではありません。
また、地積測量図を作成するために行われた測量が、かなり古い時期のケースもあります。
この場合、測量の精度が低く、実際の土地の状況とは異なる点があることに注意が必要です。
土地売却時に行う測量費用の内訳・相場
測量にかかる費用は、土地や測量方法によって大きく変わります。
一般的に、現況測量に比べて確定測量は手間がかかるため金額が高くなります。
また、隣地所有者の人数が多いケースや、整形地ではなく変形した土地などは、測量費用が高額になる原因になります。
現況測量の費用相場と内訳
現況測量は測量士に依頼し、現地にある境界標やフェンスなどをもとに測量をします。
隣地所有者に立ち合ってもらう必要はありません。
現況測量の費用相場は、100㎡程度の土地で10~20万円となります。
現況測量 | |
---|---|
依頼先 | 測量士 |
隣地所有者の立合い | 不要 |
登記 | 不可 |
費用相場 (100㎡程度) | 10~20万円 |
現況測量の費用の内訳は、下記の表のとおりです。
一番多く占めるのが現地での測量費用です。
土地が変形地だったり、測量しにくい土地だったりすると、測量費用はより高額になります。
現況測量の費用の内訳 | |
---|---|
事前準備 | 2~6万円 |
現地での測量 | 5~10万円 |
図面作成 | 3~6万円 |
確定測量の費用相場
前述したように、確定測量は土地家屋調査士に依頼します。
隣地所有者や行政の担当者に立ち合ってもらい、境界の確定を行います。
費用相場は、行政の立ち合いがあるかどうかで異なります。
行政の立ち合いを行う場合、提出する書類や手続きが多く、手間がかかることが理由です。
確定測量 | |
---|---|
依頼先 | 土地家屋調査士 |
隣地所有者の立合い | 必要 |
登記 | 可 |
費用相場 (行政立合なし・100㎡程度) | 30~50万円 |
費用相場 (行政立合あり・100㎡程度) | 60~80万円 |
確定測量の費用の内訳は下記の表のとおりです。
境界立ち合い、境界標設置についての費用が最もかかります。
境界点や境界標がいくつあるかで金額が変わるため、変形地だとより高額になります。
現況測量の費用の内訳 | |
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事前準備 | 6~12万円 |
現況測量 | 7~15万円 |
境界立ち合い・境界標設置 | 境界点確認:1点あたり3万円 境界標設置 1点あたり3万円 |
図面・書類作成 | 3~10万円 |
登記申請 | 4~8万円 |
土地売却時に測量を行う流れ・期間
不動産売却時に土地の測量を依頼する先は、土地家屋調査士です。
測量には「現況測量」と「確定測量」の2種類ありますが、不動産売却時には境界を確定させる必要があるため、確定測量を行います。
確定測量を行える技術資格者は、土地家屋調査士のみです。
確定測量にかかる期間は、一般的に1~3か月程度です。
隣地所有者との立ち合いの調整ができなかったり、境界について合意が得られなかったりする場合は、それ以上かかることもあります。
売買契約を予定している場合は、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
【STEP1】必要な資料の準備
売主が土地家屋調査士に確定測量を依頼する際、準備する書類は下記のものが挙げられます。
必要な書類
- 登記簿謄本
- 共同担保目録
- 公図
- 地積測量図
- 建物図面(建物がある場合)
全て法務局で取得できます。
共同担保目録は共同担保の登記がなければなりませんし、また地積測量図や建物図面は、登記されていない場合もあります。
【STEP2】土地家屋調査士に依頼・立ち合いの日程調整
依頼を受けた土地家屋調査士が、隣地の所有者に連絡して境界確定の立ち合い日程を調整します。
土地に隣接する道路や水路などの公有地がある場合は、それを管轄している行政の担当部署に立ち合いを依頼します。
隣地の所有者がそこに住んでいない場合は、立ち合いの日程調整に時間がかかることもあります。
【STEP3】現地での仮測量
土地家屋調査士は提出された資料を参考に、現地にて現況の調査、確認をします。
既存の測量図をもとに境界点を確認するのですが、境界の印となるものがなければ、仮の境界杭を設置しておきます。
【STEP4】現地での確定測量
土地家屋調査士が依頼主と、隣地の所有者または行政の担当者の立ち合いのもと、現地で仮設置した境界杭による境界点について双方の同意を得ます。
合意を得ることのできた境界点に、境界標を設置します。
【STEP5】測量図と確認書の作成後、登記申請
新しく設置された境界標をもとに土地の面積を算出した境界確定図面を作成します。
また、依頼主と隣地所有者とで境界について合意を得た旨を記載した確認書の作成も必要になります。
境界確定図面に確認書を添付して、法務局で登記申請を行えば、測量の手続きは一通り完了です。
土地測量時の注意点
土地の測量は、頻繁に行われるものではありません。
しかし、測量が必要になる時は、その後に大きな動きが発生することが想定されます。
その後の取引をスムーズに行うため、測量をする際に注意すべき点をご紹介します。
隣地の所有者と良好な関係を築いておく
土地を売却するために境界確定測量を入れたら、隣地の所有者が「境界に納得できない」と言い出してトラブルになってしまった、という話があります。
こういった場合は、まず所有者と隣地所有者で話し合い、解決できなければ土地家屋調査士が境界についての資料を調査します。
法務局にある古い公図や航空写真など過去の資料を探し、境界が合意できるよう尽力します。
土地家屋調査士が調整することによって、トラブルが解決できる場合も少なくありません。
隣人との良好な関係を築くことは、普段の生活においても重要なことですが、そのことが測量を行う場面においても大きな意味を持つこととなります。
測量でトラブルが起きたときは筆界特定制度を利用する
土地家屋調査士が間に入って当人同士で調整をしても解決ができない場合に利用できるのが、筆界特定制度です。
筆界とは登記された土地の範囲のことです。
筆界特定制度とは、土地の所有者が、土地の境界の位置を特定してもらうために、筆界特定登記官に申し出をする制度です。
筆界特定登記官は、土地の所有者や隣地の所有者が提出した資料や、外部の専門家である筆界調査委員の意見を参考にして、最終的に境界を確定します。
土地の測量が必要な場合は早めに動く
測量が必要になった場合、その後に何らかの目的があるはずです。
その目的を達するために測量を行うこととなりますが、測量を完結するまでには1か月半~3か月程度の時間がかかります。
特に確定測量を行うには、隣地の所有者の立ち会いが必須であり、スケジュールを調整する必要があるため、これ以上の時間がかかることも考えられます。
測量が必要になった場合には、早目に準備を開始し、測量後の目的に悪影響が出ないようにしましょう。
まとめ
土地を売却する場合、測量を入れると費用もかかるため拒否する人は少なくありません。
以前は公募売買も多かったのですが、地価が上がり購入後のトラブルが急増したことによって、今は測量をすることが一般的になっています。
確定測量をして境界をはっきりさせることで買主も安心して購入できるため、売却がスムーズにいくというメリットがあります。
ただし、隣地の所有者によっては境界確定のときに合意を得られない場合もあります。
そういったときのために、あらかじめ筆界特定制度など利用できる制度を知っておくと良いでしょう。