住宅ローンを組むときに貯金はいくら必要?頭金の目安やいくら貯金を残すべきか解説
この記事でわかること
- 住宅購入資金の総額や内訳がわかる
- 住宅購入に必要な貯金額がわかる
- 十分な貯金とフルローンのどちらがよいのか理解できる
「我が家」という響きには安心感や安堵感があり、家族にとっては「ここにいれば大丈夫」というセーフティゾーンになります。
モデルハウスやモデルルームの見学、担当者からの説明には心躍るところもあり、マイホームを拠点にした将来の家族像をイメージする方もおられるでしょう。
しかし住宅購入は人生最大の買い物であり、資金計画が不十分な場合は住宅ローンの返済不能に陥るため、大切な我が家を失ってしまう可能性もあります。
特に重要なのが自己資金であり、預貯金の額によって住宅ローンの負担は大きく異なります。
今回は住宅ローンを組む際の自己資金に焦点を当て、いくらが適正額になるのかわかりやすく解説します。
目次
住宅を購入する際にかかる費用
マイホーム購入を検討する際によくある例ですが、建物と土地の購入費に住宅ローン金利を足したものが「総費用」だと思われがちです。
しかし実際には頭金や税金、各種諸費用も必要であり、不動産価格と金利だけで返済計画を考えるとあっという間に返済不能に陥ります。
住宅の購入費用には「諸費用」「物件価格」「維持費」の3種類があるので、住宅の種類に応じた目安額を把握しておくとよいでしょう。
ではそれぞれいくらになるのか、平均的な相場を解説します。
住宅購入の諸費用
一戸建ての場合は購入費の6%~9%、分譲マンションは3%~6%が諸費用になり、以下のような内訳になっています。
項目 | 詳細 | 相場 |
---|---|---|
印紙税 | 売買契約書に必要 | 購入額が1,000万円超~5,000万円以下であれば2万円 |
不動産取得税 | 不動産購入時に発生する地方税 | 固定資産税評価額の3% (0円になる場合もあり) |
登録免許税 | 不動産登記の際に発生する国税 | 固定資産税評価額の0.1~2% |
固定資産税などの清算金 | 売主、買主の所有期間による | 固定資産税評価額の1/6に1.4%の税率を乗じて日割計算 |
修繕積立金 | マンション引き渡し時に必要 | 20万円~40万円程度 |
仲介手数料 | 不動産会社へ支払う手数料 | 物件価格×3%+6万円+消費税 |
司法書士報酬 | 不動産登記を依頼した場合の報酬 | 1万円~13万円程度 |
3,000万円でマンションを購入した場合は240万円~300万円程度が必要になり、諸費用は現金払いが原則です。
住宅の物件価格
住宅ローンを利用する場合、一般的には物件価格の10%~20%を頭金として現金払いし、残りを分割払いにします。
住宅金融支援機構の調査によると、2020年度の物件価格や頭金の平均額は以下のようになっています。
住宅種別 | 所要資金(物件価格) | 頭金 | 物件価格に対する頭金割合 |
---|---|---|---|
注文住宅 | 3,534万円 | 621.9万円 | 18.0% |
土地付注文住宅 | 4,397万円 | 443.2万円 | 10.4% |
建売住宅 | 3,495万円 | 282.4万円 | 8.1% |
マンション | 4,545万円 | 736.2万円 | 16.3% |
中古戸建 | 2,480万円 | 209.0万円 | 8.1% |
中古マンション | 2,971万円 | 352.1万円 | 11.3% |
物件価格について過去10年間の推移をみると、中古戸建と中古マンションは2019年を境に落ち込みましたが、その他の住宅は緩やかに上昇しています。
物件価格に連動し、頭金の額も少しずつ増えているようです。
参考:2020年度フラット35利用者調査(住宅金融支援機構)
住宅の維持費
一戸建て、マンションともに購入後は維持費が発生します。
共通する維持費は固定資産税と都市計画税ですが、その他の維持費は一戸建てとマンションとで異なります。
マンションには毎月の修繕積立金が必要となり、新築の頃は5,000円~6,000円程度ですが20年を超えると2万5,000円程度になる場合もあります。
車を購入した場合は駐車場料金もかかるので、年間20万円~50万円が維持費として必要です。
一戸建ての場合は将来の修繕やリフォームに備えますが、どこから手を付けるか、いくら必要かといったプランは自分で組み立てます。
外壁塗装の場合は坪数によって費用が変わるので、都会よりも田舎に建てた物件の方が高くなるケースもあるでしょう。
住宅ローンを組むときに必要な貯金額
住宅の種類によって必要な貯金額は変わりますが、3,000万円の新築マンションでは240万円~300万円程度の諸費用になり、頭金割合は平均16.3%です。
つまり頭金+諸費用が少なくとも730万円あれば安心というわけですが、あくまでもマンションの場合であり、物件の種類によっては1,000万円程度が必要になります。
また、誰もが同じ条件で住宅ローンを利用できるとは限りません。
勤務先の信頼度や将来性によっては十分な自己資金があっても審査が通りにくい、あるいはローンの種類が限定されてしまうケースもあります。
借入先の金融機関によって審査条件や金利も変わるので、頭金+諸費用ぎりぎりではなく、少し余裕をもった貯金があるとよいでしょう。
フルローンか貯金をしてから住宅購入か判断する方法
住宅ローンを組む場合、頭金をどれだけ用意するのかが重要になってきます。
返済期間や金利負担にも影響しますが、あえて頭金を払わず、手元に残しておいた方がよいケースもあるため、以下を参考に検討してください。
十分に貯金してから購入する
自己資金をしっかり貯めてから住宅を購入すれば、返済期間は短くなり、金利負担も軽くなります。
ただし、持ち家のメリットを享受できる期間は短くなるので、何年で目標額を貯金できるかがポイントになるでしょう。
財形貯蓄や定期預金など、取り崩しにくい預貯金商品を選んでおくのも重要です。
フルローンを組んで購入する
全額を借り入れるフルローンの場合、手元資金がゼロでも住宅購入できますが、金融機関の審査はかなり厳しくなります。
返済期間も長くなり、金利負担も重くなりますが、少しでも早めにマイホームを手に入れたい場合は検討する価値があります。
借入額や年収によっては住宅ローン控除のメリットを最大限に活かせるため、十分な自己資金があってもフルローンにした方が有利な場合もあるでしょう。
専門家のアドバイスも参考にする
住宅ローンの返済負担は家族のライフイベントにも関わるため、出産費用や教育費、車の買い換えなど、あらゆる条件でシミュレーションする必要があるでしょう。
ファイナンシャルプランナーや不動産会社など、身近に専門家がいれば相談されることをおすすめします。
住宅購入後に残しておいた方が良い貯金額
マイホームを購入する際、将来の金利負担が軽くなるように資金は多めに用意したいところですが、頭金や諸費用にすべて使うのはNGです。
住宅購入のタイミングや家族構成にもよりますが、子どもの進学や車の車検など、ほとんどの家庭には定期的に到来するライフイベントがあります。
各ライフイベントには数十万~数百万円単位のお金が必要になるので、手元資金をすべて住宅購入に使ってしまうと生活そのものが破綻しかねません。
家計の収支がマイナスにならないよう、現在の生活費の6ヶ月分は手元に残すようにしてください。
住宅ローンの繰り上げ返済と貯金はどちらを優先すべき?
まとまったお金を住宅ローンの繰り上げ返済に充てると、元金部分の返済が前倒しされるため、利息の負担も少なくなります。
一方、将来のライフイベントに備え、手元資金をしっかり残しておきたい方もおられるでしょう。
では繰り上げ返済と貯金のどちらを優先するべきか、わかりやすく解説します。
繰り上げ返済には200万円程度の余裕が必要
住宅ローンを繰り上げ返済すると元金部分が減少するため、場合によっては利息額を数百万円圧縮することも可能です。
毎月の返済額も減少し、完済までの期間も短縮されるため、貯金する余裕も出てくるでしょう。
ただし、繰り上げ返済のためにこつこつ貯金し、一定額を貯めて返済というサイクルを繰り返すと、突発イベントに対応する資金が常に不足している状態になります。
病気や失業リスクにも対応できるよう、繰り上げ返済した後でも最低200万円は手元に残すようにしてください。
200万円あれば半年以上は生活をやりくりできるので、新たな借入れなどを考えなくても済むでしょう。
繰り上げ返済は住宅ローン控除とセットで考える
住宅ローンの繰り上げ返済には「いつ頃から始めるか」というタイミングの問題も出てきます。
まとまったお金があればすぐにでも返しておきたいところですが、住宅ローン控除を使える期間は繰上げ返済しない方が得策になります。
住宅ローン控除を利用すると、10年間は住宅ローン残高の1%が所得税から控除されますが、繰り上げ返済すると年末の借入残高が減少し、還付金も少なくなります。
低金利下では住宅ローン控除のメリットも大きくなるので、繰り上げ返済は控除期間の終了後に始めるとよいでしょう。
住宅ローン返済中でも貯金は可能
毎月の返済額が大きいため、住宅ローンを返済している間の貯金は無理と考えられているケースもありますが、決してそんなことはありません。
住宅ローンを申し込むときには「いくらまで借りられるか」ではなく「毎月いくらなら返済できるか」を考えるようにしてください。
高額な借入れは家計を見直すチャンスにもなるので、収支バランスがよくなるよう、無駄な通信料や娯楽費などを見直すとよいでしょう。
家族の理解と協力も必要になるので、返済プランやライフイベントは全員で情報共有することをおすすめします。
最初の10年間は住宅ローン控除の還付金を貯金に回し、11年目から繰り上げ返済に使っていくこともできます。
まとめ
住宅購入を検討する場合、ポイントになるのが資金計画と返済計画です。
現金一括購入が一番お得という考え方もありますが、実際にシミュレーションするとそれほど大きなメリットがない場合もあります。
また、返済方法についても、繰り上げ返済を利用するべきか、最初から返済期間の短いローンを組むべきかといった問題も発生します。
どのプランがベストになるかは家族構成やライフイベントにも影響されるので、まずは長期スパンのシミュレーションが必要になります。
銀行などのホームページには返済シミュレーターも設置してあるので、各社を比較してみるのもよいでしょう。