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借地権って何?売却できる?基礎知識と売却方法を教えます

「家は自己所有の土地に建てるもの」そんな通念が現代では定着しつつありますが、太平洋戦争前はかなり様子が異なりました。東京の下町では、およそ9割が借地に家を建てて住んでいたようです。

現在はどうでしょうか?借地権は年々減っては来ているものの、それでも借地権世帯は117万世帯に及び、持ち家全体3020万世帯に占める割合は3%以上に達しています。決して小さな数字とはいえません。

今回の記事では、そんな借地権に関する基礎知識と売却方法について解説します。

借地権とは何か

借地権とは、他人が所有する土地の上に、建物を建築し利用する賃借権を意味します。現在の借地権のうち平成4年改正前に設定された借地権は、法律により強く保護されていました。

法律で保護されている普通借地権

明治・大正時代、当時の民法は所有権絶対を基本思想としており、土地を借りている者の権利は弱かったのです。

そんな中で借地人は急に立ち退きを迫られたり地代の大幅値上げを通告されたりと、地主の横暴に泣かされてきました。

こうした状況が社会問題化するのを懸念した政府は、1921年借地法・借家法を制定します。

この法律により借地権の半永久的更新・第三者への対抗要件・建物買取請求権が認められ、借地人の権利は非常に強くなりました。

一方で、建て替え・使用目的の変更・売却等には地主の承諾が必要とされました。

こうした特徴は、現在にも引き継がれています。

戦後の高度成長期に地価が高騰する中で地代や更新料の値上げは抑えられ、さらに借地人の権利も強く保護されていたことも相まって、新規の借地契約は急減しました。

そこでより有効な土地利用促進を目的に、1992年に借地・借家法が制定されます。

新法により、契約期間が経過したら土地を返還する「定期借地権」なども新設され、多様な形態で土地の貸し出しが可能になりました。

ただし借地・借家法施行以前に契約された借地契約に関しては旧法が適用され、借地人の権利は従前どおり保護されることになりました。

旧法が適用される借地権を「普通借地権」と呼び、この記事で取り上げる借地権もこの「普通借地権」です。

登記簿に記載されていないことも

登記簿は、表題部・甲区・乙区の3区分で構成されています。

表題部には土地の地積・地目・地番・敷地面積の他、過去の分筆・合筆などの履歴が記載されています。

甲区には、所有者がどんな原因(相続・売買等)で土地を取得したか、所有権移転・仮登記・抹消に関する履歴の他、差し押さえ・買戻し・破産などに関しても記録されます。

乙区には、所有権以外の土地に関する権利、例えば金融機関等借入の担保に入っている場合は抵当権や根抵当権が記載されます。

その他に地上権・採石兼・地役権・賃借権といった土地利用に関する権利も記載されます。

借地権は賃借権として登記簿に記載できますが、地主の承諾が得られなければ記載はできません。

地主は、借地権が登記されるのを嫌がることが少なくなく、登記簿に記載されていない借地権が世の中には多く存在します。

一般的に登記簿に記載されていない権利は第三者への対抗要件を満たさないのですが、借地権に関しては特例として対抗要件が認められています。

つまり土地を買う側にしてみれば、借地権が設定されていないかどうか、実地に出向くなど確認を怠らないようにする必要があります。

借地権に類似する権利

借地権に類似する権利としては、地上権・地役権・占有権などがあげられます。

地上権・地役権

例えば袋地に住んでいて、他人の敷地を通らないと往来に出られない場合は、他人の土地を通らせてもらいますが、その「通る権利」こそが地役権です。

共同用水から他人の土地を通って水を引く場合も、地役権が設定されます。

つまり地役権は、他人の土地を使う権利なのです。

高圧送電線の真下にある土地にも、地役権が設定されています。

地上権は、他人の土地の上に工作物を所有する権利で、例えば地下鉄・高架道路などが挙げられます。

借地権は文字通り「借りる権利」であるのに対し、地役権・地上権は「使う権利」であり、法律上は使う権利の方が遥かに強力です。

構造物の建築・回収などに地主の承諾は一切必要ありませんし、他人への売却も自由です。

それどころか、地主側は土地の利用が大幅に制限されることも少なくありません。

例えば高圧送電線の真下や前後数mでは建物を建てられない、あるいは建築物の高さが規制されます。

占有権

たとえ借地契約等を取り交わしていなくても、その土地に住み着いていれば、住み続ける権利「占有権」が生じます。

さらに一定期間とくに追い出されるわけでもなく占有し続ければ、一般的に20年、占有が善意または無過失であると認められる場合には10年間で所有権が取得できます。

これが「取得時効」です。

かなりのレアケースのように思えますが、土地所有者が高齢で管理を怠っていた場合など実際には起こりうるケースです。

借地権を売却する

借地権の売却価格

まず借地権の売却にあたっては、地主(底地権者)の承諾を得なければなりません。承諾料は、通常売却価格の10%とされています。

借地権に関する土地利用上の制約(建て替え・抵当権設定・利用目的の変更などに地主の承諾が必要など)は、そのまま引き継がれます。

借地権はその後の土地利用が大幅に制約されるうえに売却も容易でないため、不動産取引では敬遠されます。

売却価格の相場は、どの程度でしょうか?相続税法に定める評価方法では、借地権価格は更地評価額の7-8割前後とされていますが、もちろんそんな価格では売却できません。

一般的には、借地権価格の1/3から2/3の範囲内とされており、売主・買主そして底地権者の個別事情により大きく変わってきます。

底地権者に売る

一番理想的なケースは、底地権者への売却です。

土地利用が制限されるのは底地権者も借地権者も同じで、借地権契約の解消は将来の土地利用にとっても大きなメリットが期待できるのです。

それに借地権設定を解除して土地を処分したい、あるいは事業用に活用したい・賃貸マンションを建てたいともくろむ底地権者も少なくありません。

彼らにとって、借地権の売却は渡りに船なのです。

底地権者への売却価格は、お互いの事情によって大きく変わってきます。

文字通り足元を見る世界で、「借地権を売ってもいいから高く買い取れ」、逆に「買い取るから安くしろ」と強気に出られるのです。

等価交換スキームを組む

底地権者の資金が乏しい場合は、等価交換の選択肢も有望です。

等価交換とは、借地権契約を解消したうえで底地権と借地権を交換し、土地を底地権者と借地権者で分け合う方式です。

双方とも、その後は自由な土地利用ができますし、お互いメリットが大きいのです。

不動産会社に売る

不動産業者でない個人が借地権を買うというケースは、極めてまれです。

土地利用の制限に加えて、買取に当たって銀行からの融資を受けることが極めて難しいからです。

一般の不動産会社も敬遠するところが多いですが、中には借地権を得意とする業者もあります。

業者は、何をねらいに借地権を買い取るのでしょうか。

その物件がもし繁華街のメイン通りに面した店舗なら、テナント化すればリターンを期待できます。

利便性の良い場所の戸建てなら、賃貸で稼ぐこともできます。

割安価格で借地権を買い取れれば、充分もとがとれるのでしょう。

底地権者との交渉がカギ

いずれの場合でも、底地権者が首を縦に振らなければ話は前に進まない、つまりカギを握るのは底地権者との交渉です。

底地権者とは常日頃からコミュニケーションをとりつつ、ちょっとした心遣いなどで良好なリレーションを保つことが大切です。

では、不幸にも両者の関係が上手くいかない場合はどうすればよいのでしょう。

世の中には過去に更新料や地代で揉め、中には訴訟にまで発展するケースも珍しい話ではなく、そうなると売却交渉どころではありません。

そんな状況でもその道の不動産業者が間に入れば感情的なしこりを解きほぐし、ベストなスキームに持ち込んでくれます。

だからこそ売却しようとする場合には、借地権に関する豊富な取引経験を有し、底地権者との交渉事にもたけている不動産会社を選ぶべきなのです。

もちろん交渉上手は単に懐に入るのが上手なだけではなく、借地権者・底地権者双方にメリットをもたらす解決法を提案するノウハウを持っているのです。

借地売却にかかるコスト

借地権売却にかかるコストは、前述の承諾料の他、税金、仲介手数料などがかかります。

税金は売却に伴う譲渡所得(売却金額-取得原価-譲渡費用)に所得税がかかります。

税率は所有期間(取得の日から譲渡の年の1月1日まで)が5年超の場合は15%、5年以下の場合には30%です。

仲介手数料の料率は、宅地建物取引業法により上限が定められており、売却金額400万円以上の部分の料率は3.24%、200万円-400万円の部分は4.32%、200万円以下の部分は5.4%です(消費税込み)。

ほぼ100%の仲介業者が、上限で請求してきます。

ちなみに取引金額が1000万円の場合、仲介手数料は200万円×5.4%+200万円×4.32%+600万円×3.24%=38.88万円がかかります。

底地を買い取る

借地権を売却するのではなく、底地権を買い取る選択肢もあり得ます。

底地が手に入れば地代も支払わずに済みますし、頃合いを見て手放すことも可能です。

ネックになるのがキャッシュですが、資金を確保できるのならぜひ検討したい選択肢です。

底地権者側の事情も大切で、代替わりで資産を整理しようとしている、低収益物件の整理を検討中、そんな状況なら話を持ちかければ意外と乗ってくるかもしれません。

まとめ

借地権の売却は、地主の意向に絶えず配慮することが大切です。同時に借地権取引は複雑な事情や法的要件が絡むので、取引に精通した不動産業者を選びましょう。

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