物理的耐用年数とは?木造住宅の耐用年数や計算方法を解説
この記事でわかること
- 物理的耐用年数とはどのようなものなのかがわかる
- 木造住宅の4つの耐用年数の違いや計算方法がわかる
- 木造住宅の物理的耐用年数を長くする方法がわかる
- 耐用年数を過ぎた物件を処分する方法がわかる
目次
物理的耐用年数とは
物理的耐用年数は、建物の構造や建築資材、あるいは付属設備の種類などが、物理的に壊れてしまうまでの年数を指します。
建物を建築する際に、どのような材料を使って作るかにより、その建物の耐久性には大きな違いが生じます。
耐久性の高い材料を使って建築すれば、それだけ長い間建物として使い続けることができますが、一般的には耐久性の高い材料は値段も高くなります。
物理的耐用年数を経過してしまうと、建物や設備をそのままの状態で使用し続けるのは危険な状態になるため、何らかの対応が求められます。
簡単に取り替えが可能な設備であれば、その部分だけ取り替える修繕工事を行うことができます。
一方、建物の構造など簡単に取り替えのできないものについては、大規模な修繕工事を行うか、建物の取り壊しも視野に入れる必要があります。
ただ、使用状況や周囲の環境により、実際には物理的耐用年数は大きく前後します。
そもそも耐用年数とは
耐用年数とは、建物などの資産を使用できる期間です。
資産の中で、経年や使用とともに資産価値が下がるものは、減価償却資産に分類されます。
減価償却資産は、いつか資産価値が喪失するため、使用開始から価値喪失までの期間を耐用年数と定めているのです。
減価償却とは、減価償却資産を取得した金額を一定の方法で必要経費として配分し、経費計上する手続きです。
減価償却するために用いる耐用年数は、国が定めているため、法定耐用年数とされています。
耐用年数は、資産価値維持のために補修などや通常使用されることを考慮して、年数を定めています。
注意すべき点は、同じ資産であっても耐用年数に違いがあることです。
耐久年数との違い
耐用年数とよく混同されがちなものに耐久年数があります。
耐久年数とは販売者や製造者が、独自の基準で表している数値であり、どの程度使用できるかの目安となります。
耐久年数は、あくまでも推定であるため、耐久年数よりも長持ちする場合もあれば、短期間で使えなくなるケースもあります。
耐用年数は、減価償却資産の使用期間を法的に定めています。
これは減価償却費を計算するために、必要な数値を定めたものです。
したがって、耐用年数は使用できる年数を保証するものではないため、勘違いしないように注意しましょう。
物理的耐用年数以外の耐用年数
木造の建物は、年数の経過とともに耐久性などが低下し、いわゆる寿命を迎えます。
木造住宅の寿命としては、一般的に法定耐用年数、物理的耐用年数、経済的耐用年数、期待耐用年数の4種類が使われ、法定耐用年数は22年とされています。
これらの耐用年数は何のために決められているのか、それを超えると住めないほどの欠陥が出るのかなど、大いに気になるところでしょう。
物理的耐用年数とそれ以外の耐用年数の違いについて解説していきます。
法定耐用年数
法定耐用年数は、税務上、建物や設備などの固定資産の価値が何年で計算上ゼロになるかを示す年数のことです。
この法定耐用年数が直接的に影響するのが、減価償却費の計算です。
建物や設備の種類に応じて法定耐用年数が定められており、その法定耐用年数に応じた償却率を使って、減価償却費を計上します。
耐用年数が短いほど、資産価値の下落が激しいことを意味しますが、その分毎年計上できる減価償却費の金額は大きくなります。
減価償却費の金額が大きくなると、その分所得金額が圧縮され、法人税や所得税の税額は少なくなります。
法定耐用年数は、減価償却費の計上できる年数の目安であり、誰もがその年数を確認できるため、なじみのある耐用年数といえます。
経済的耐用年数
2つ目の耐用年数は、継続して使用するために要する補修や修繕費などの費用が、改築にかかる費用を上回る期限となる経済的耐用年数です。
つまり、建て替えるより安上がりに利用できる期間のことを意味します。
通常は、鑑定評価などであと何年利用できるかを意味する残存年数で示されることが多く、この場合は経済的残存耐用年数と呼ばれます。
同一仕様の建物であっても、使用状況や適切なメンテナンスの有無、同居者やペットの有無などによって老朽化の程度が異なります。
したがって、耐震化やリフォームなどによって適切な補修や修繕が行われていれば、この耐用年数は伸ばすことが可能です。
このため、中古建物の鑑定評価においても経過年数で一律に判定することのないよう、個別の実態に応じた評価が求められています。
期待耐用年数
期待耐用年数とは、維持管理を行ったと仮定して使用できる期間を表したものです。
期待耐用年数は、需要が低い中古住宅や築古マンションなどの需要を換気するために用いられ、耐久年数と同じような意味合いがあります。
木造住宅の耐用年数の計算方法
木造住宅の法定耐用年数は、22年と定められています。
減価償却費の計算を行う際は、法定耐用年数である22年を使うこととなります。
ただ、これ以外の耐用年数については、その住宅の建っている環境や周囲の状況に大きく左右されることとなります。
同じような住宅であっても、海風にさらされる地域にある場合と、住宅街の中にある場合では、自然に劣化していくペースが違います。
物理的耐用年数を考える場合、このような状況に応じた建物の損耗を考慮する必要があるため、どのような状況にあるのかを考えておく必要があります。
また、同じコストをかけて建築した住宅であっても、そのデザインや立地によって資産価値は異なります。
経済的耐用年数を考える場合、このような観点から需要があるかどうか検討する必要があります。
木造住宅の物理的耐用年数を長くする方法
木造住宅の躯体のなかでも、柱や壁は構造を支えるうえで特に大きな役割を果たしています。
内装や外装、設備などは比較的容易に交換できるものの、柱や壁は簡単に取り換えられません。
したがって、木造住宅を物理的に長持ちさせるためには、これらの部位の耐久性を保つメンテナンスや対策を行うことが重要です。
定期的なメンテナンス
経年による老朽化は避けて通ることができませんが、定期的なメンテナンスやリフォームは木造住宅の耐用年数を長くするうえで効果があります。
屋根や壁などの劣化や亀裂、住宅設備の老朽化や故障などによる水漏れ、地震や地盤沈下などによる建物の歪みなどを放置すれば耐久性が低下します。
このような構造部分に影響を及ぼす原因を取り除くためにも、定期的なメンテナンスが重要です。
大掛かりなメンテナンスの目安は以下のようになります。
大掛かりなメンテナンスの目安
- 屋根:20年~50年
- 外壁:約30年
- 内装:20年
- 床下:30年
別々にメンテナンスすると費用がかさみます。
「屋根と外壁」「内装と床下」など、まとめてメンテナンスすると費用を抑えられるため、計画的なメンテナンスを心がけましょう。
シロアリ対策
建物の耐久性に大きくかかわる柱は、水漏れや歪みだけでなく、シロアリ被害によっても劣化が著しく進行し強度が低下します。
依頼する業者の選定には注意が必要ですが、シロアリ防除も物理的耐用年数を長くするうえで効果が高い対策といえます。
耐用年数を過ぎた物件を処分する方法
定期的なメンテナンスやリフォームで良好な状態を維持してきた建物も、やがては経済的耐用年数に至り、処分を考える必要がでてきます。
つまり、改築費用よりメンテナンスなど継続利用のための費用が割高となったときには、全面リフォームや建替、売却などを選択することが一般的です。
全面リフォームや建替
改築を選択する場合、全面的なリフォーム、いわゆるリノベーションやスケルトンリフォームか、建替かを検討することが一般的です。
建替は建物を解体して新しく建て直す方法ですから、新築と同様、2000万円から3000万円程度の費用が必要です。
一方、リフォームの中でも骨組みだけを残して作り変えるスケルトンリフォームでは、建替に比べ半分以下の費用で済みます。
ただし、どちらも解体費用のほか、引っ越し費用や仮住まいの費用が加わります。
以下では、全面的なリフォームと建替について、メリットとデメリットを確認しておきましょう。
建替のメリット
建物は設計からやり直すことになるため、希望を叶える間取りを実現しやすく、リフォームに比べるとローンを組みやすくなります。
またリフォームでは、既存建物の劣化状況などによって工事の内容や方法に影響を与え、結果的に価格にも影響を及ぼします。
これに対して建替では、このような既存建物の劣化の程度に影響されず、計画が立てやすいこともメリットと言えるでしょう。
建替のデメリット
建替の場合は、全面的なリフォームに比べ、約2倍の費用が必要です。
さらに、売買契約書や工事請負契約書、住宅ローン契約書などにかかる印紙税、建物の所有権保存や抵当権設定にかかる登記の登録免許税、不動産取得税、消費税も発生します。
また建替では工期が長期間になるというデメリットもあるので注意しましょう。
売却
全面的なリフォームや建替に必要な資金が用意できない場合やその土地に固執する必要がない場合などは、売却する方法があります。
売却によって資金を得ることができれば、次の計画が立てやすくなるでしょう。
売却のメリット
新築時にかかる様々な税金を支払う必要がなく、譲渡所得が発生する場合でも、マイホームの売却や買い替えなら課税の優遇措置を受けられます。
たとえば、売却だけの場合でも3,000万円の特別控除が適用されます。
売却収入よりも高い自宅への買換えなら、実質的に譲渡所得への課税がされずにすむのがポイントです。
また、住宅ローンが残っている場合や新たに融資を受ける場合でも、課税上の優遇措置を受けられます。
売却のデメリット
法定耐用年数を過ぎていれば、建物から大きな売却収入を得ることは期待できません。
敷地の立地次第で好条件での売却チャンスも期待できますが、一般的には買い手が現れにくく、売却までにかなりの期間がかかります。
なお、買い手が現れない場合は更地にして、土地だけを売却する方法が有効なケースもあります。
まとめ
木造の法定耐用年数は22年ですが、実際の寿命はかなり長く、80年とも100年とも言われています。
ただし、特に主要な構造部分が劣化しないように、定期的なメンテナンスや修繕は必須です。
たとえ法定耐用年数を経過しても、適切な維持管理を行っていれば、設備や内外装のリフォームなどによって、快適な住まいを維持できます。
最終的に、このような維持管理に費用がかさむようになったときは、全面リフォームや建替、売却などを検討するとよいでしょう。