マイホームの買い替えで損したときに使える譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例とは?
この記事でわかること
- マイホームの買い替えで損失が出た際に使える税金の特例がわかる
- マイホーム買い替え時の特例の利用条件がわかる
- マイホーム買い替え時の特例と併用できる特例がわかる
建物の価値は年数とともに下がるため、一般的には買った値段よりも売値は低くなります。
土地の場合は価値の上昇もありますが、過去10年の地価をみると首都圏エリアや一部の地方都市以外は緩やかに下落しているようです。
自宅の買い替えを検討する場合、現在のマイホームがいくらで売れるか誰もが気になるところですが、購入時より価値が上昇するケースはあまり多くありません。
また不動産の売却には様々な費用が発生するため、価値に変化がなくても損する場合があり、さらに売却益に対して譲渡所得税も課税されます。
マイホームの買い替えは税金のオンパレードともいえますが、一定条件を満たせば優遇税制が使えるため、所得税や住民税の負担は軽くなるかもしれません。
今回はマイホームの買い替えで損をしたときに使える特例を詳しく解説します。
目次
マイホームの買い替えで損をしたときに使える特例
自宅の買い替えで損をした場合、「マイホームを買い替えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」を使えば税負担を軽くできます。
譲渡損が出ているので譲渡所得税などは課税されませんが、他の所得と損失額を相殺できるため、結果として所得税や住民税は安くなります。
単なる譲渡には、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」も使えるため、譲渡損の金銭的ダメージは予想以上に少なくなるかもしれません。
今回は前者の特例を詳しく解説しますので、マイホームの買い替えを検討している方はぜひ参考にしてください。
マイホーム買い替え時の譲渡損失の特例を利用する条件
自宅の買い替えで譲渡損が出た場合、譲渡損失の特例を使えば、損益通算により他の所得と譲渡損を相殺できます。
さらに譲渡した年の所譲渡した年とその翌年から3年間控除できるので、最長4年間は所得税や住民税を軽減でき、場合によってはゼロ円になることもあるでしょう。
ただし、特例を使うためには譲渡する自宅、新たに購入する自宅のどちらにも条件があり、具体的な内容は次のようになります。
譲渡するマイホームの所有期間が5年以上であること
特例を使う場合はマイホームの所有期間に条件があり、譲渡する年の1月1日時点で5年以上所有していなければなりません。
また、現在その家に住んでいるか、または空き家になってから3年目の12月31日までに売却する必要があります。
なお、譲渡損失の特例は期限付きであり、2021年12月31日までに売却しなければ適用されません。
マイホームを取り壊した後に他の用途に使っていないこと
住んでいた家を取り壊した場合、譲渡契約の締結までは更地で保有することになります。
貸駐車場などに使っていると特例が認められないので注意してください。
譲渡するマイホームの敷地面積は500㎡以内
特例には土地面積の制限があるため、譲渡する自宅の敷地面積は500㎡までが対象となっています。
500㎡を超える部分の譲渡損失には特例が使えないので注意してください。
合計所得金額が3,000万円以内であること
買い替え特例を使う場合、合計所得金額が3,000万円以内であることが条件となり、3,000万円を超える場合は、その年だけ特例が使えません。
特別な間柄の者への譲渡ではないこと
親子や夫婦など、特別な間柄にある者へ譲渡した場合は特例が使えません。
他にも生計を一にする親族や内縁関係、同族会社など特殊な関係の法人も適用除外になります。
買い替え後のマイホームに関する条件
新たに購入するマイホームは国内のものに限られ、以下の条件を満たす必要があります。
- ・家屋の床面積が50㎡以上あること
- ・以前の自宅を売った年の前年の1月1日から翌年12月31日までに購入すること
- ・購入した年の翌年12月31日までに入居するか、または入居の見込みがあること
- ・返済期間が10年以上の住宅ローンを使って購入すること
確定申告をしていること
マイホームの買い替え特例を使う場合は確定申告が必要であり、次の書類を揃えて2月16日~3月15日の間に申告書を提出します。
【損益通算を利用する場合】
- ・居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
- ・居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5用)
- ・以前のマイホームおよび新たなマイホームについての登記事項証明書や売買契約書の写しなど
- ・年末時点での住宅ローンの残高証明書
【繰越控除を利用する場合】
- ・損益通算を受けた年分について、一定の書類の添付がある期限内申告書を提出したこと
- ・損益通算を受けた年分の翌年分から、繰越控除を適用する年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を提出すること
- ・確定申告書に年末における住宅借入金等の残高証明書を添付すること
買い替えの譲渡損失の特例は住宅ローン控除とも併用可能
住宅ローン控除は、年間最高40万円(一定条件を満たせば50万円)まで所得税や住民税を控除できる制度であり、マイホームの買い替え特例と併用が可能です。
正式には「住宅借入金等特別控除」といい、最長で10年間、条件によっては13年間にわたって控除が適用されます。
適用条件は次のとおりですが、所得額によっては併用できない場合もあるので注意してください。
住宅ローン控除が使える条件
以下の条件を満たすと住宅ローン控除を利用できます。
【共通条件】
- ・登記上の延床面積が50㎡以上あり、居住部分の延床面積が建物の1/2以上であること
【新築住宅の場合】
- ・年間の所得合計額が3,000万円以下
- ・新築または取得日から6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで住み続けていること
【中古住宅の場合】
- ・取得日から6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで住み続けていること
- ・築年数が20年以内、マンションなど耐火建築物は25年以内であることとし、新耐震基準に適合した住宅など、一定条件を満たせば築年数に関係なく利用可能
- ・生計を一にする親族等からの購入や、贈与された住宅ではないこと
住宅ローン控除は自宅の増改築やリフォームにも利用できますが、入居した年の翌年には確定申告が必要なので注意してください。
所得が発生しない場合は住宅ローン控除を併用できない
住宅ローン控除は納め過ぎた所得税を還付してもらう制度になるため、所得がない場合は利用できません。
マイホームの買い替え特例を利用して譲渡損失を相殺し、所得がゼロ円になった場合は、住宅ローン控除が適用できないので注意してください。
まとめ
今回は、マイホームの買い替えで利用できる譲渡損失の損益通算や、繰越控除の特例を解説しましたが、適用条件が少々わかりづらく、確定申告も必要です。
マイホームの買い替えは生涯に何度も経験しないため、不慣れな状態が普通であり、給与所得者の場合は確定申告にも戸惑うでしょう。
他の特例と併用する場合はさらに条件が複雑になるので、特例が使えるかどうか不安な場合は税理士へ相談してみましょう。
1人で抱え込むと確定申告に間に合わなくなることや申告内容を間違える可能性もあるので、早めの相談をおすすめします。