農地売買価格の相場を全国・地域・都道府県別に紹介【自分で相場価格を調べる方法とは】
この記事でわかること
- 農地の相場がわかる
- 農地売買価格の相場がわかる
- 農地の価格の調べ方がわかる
相続により農地を取得したり、農耕のリタイアを考えたりする方は、農地の価格が気になるのではないでしょうか。
また、都会を離れて、農業を始めたいという方もいらっしゃるでしょう。
一般の宅地なら見積もりサイトや、土地相場紹介サイトなどで価格を調べることができますが、農地の相場はどうやってよいかわからないという方も多いかもしれません。
そこで、この記事では農地の全国平均売買相場や、地域別の価格を紹介します。
農地の売却には農地法、都市計画法などの制限も関係します。
都市計画区域、線引き、農業振興地域など、農地に関する基本的な法令についても、用語やポイントを解説します。
農地の種類や相続税との関連もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
全国平均の農地売買価格の相場
農地は、種類によって価格の相場が変わります。
農地の種類と、農地売買価格の相場の関連を確認します。
農地の種類
農地には大きく分けて、農業振興地域と、それ以外の地域の2種類があります。
農業振興地域に指定されているか否かにより、農地を売りやすいかどうかが変わるので注意してください。
農業振興地域
農業振興地域とは、国が定める「農業振興地域整備基本指針」に従って都道府県知事が指定した区域です。
今後、10年程度の相当期間内に、総合的に農業振興を図るべき地域に指定され、その中でも下記の地域は農用地区域とされます。
- ・集団的に存在する農用地
- ・土地改良事業の施行にかかる区域内の土地などの生産性の高い農地等
- ・農業上の利用を確保すべき土地として指定された土地
特に農用地区域の指定を受けた農地は、農地転用の制限が厳しく、売買しづらい農地です。
ご自身や親族が所有する農地の売却をお考えの方は、農業振興地域内か、農用地区域内かを確認してください。
準農業地域と都市的農業地域
純農業地域とは、都市計画法で区分されていない地域にある農業地域です。
都市計画で線引きしている市町村で、市街化調整区域内にある区域を、都市的農業地域といいます。
農地の全国平均相場は、純農業地域と都市的農業地域の別で公表されていますが、「農地として使う人に売る」のが前提となっています。
農地から宅地への転用を前提としているわけではありません。
農地が都市計画区域内にある場合は、用語を知っているとわかりやすいので簡単にまとめておきます。
意味・概要等 | |
---|---|
都市計画区域 | 一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域 |
線引き | 都市計画区域を、市街化区域と市街化調整区域にわけること |
線引きされていない都市計画区域もあり、先述した純農業地域は線引きされていない区域にある農地です。
農地の売買価格の相場
農地の売買価格相場は、全国平均で次のように推移しています。
単位1,000円、10アール
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | |
---|---|---|---|---|---|
中田価格 | 1,256 | 1,207 | 1,182 | 1,165 | 1,133 |
中畑価格 | 910 | 891 | 872 | 861 | 838 |
令和元年度の農地の全国平均価格は純農業地域の田で10アールあたり116万5千円、畑が86万1千円となっています。
都市的農業地域の田は10アールあたり308万7千円、畑が295万1千円です。
都市的農業地域の方が田畑両方で純農業地域よりも価格が高くなっています。
都市的農業地域は、区域区分がされた都市計画区域内にある農地のため、市街地に近い区域にあるためと推測できるでしょう。
また、表を見れば分かるとおり農地の価格は種類を問わず年々下がっています。
これは農業の担い手不足や農産物の値下がりなど多くの原因が考えられます。
地域別・都道府県別の農地売買価格の相場
農地の価格は都道府県や市区町村でかなり違うのが現実です。
また、都市計画法による線引きがされていない地域と、されている地域によっても違いますが、共通しているのはほとんどの地域で、前年割れしていることです。
参考に、直近の主な地域別の農地の売買平均価格をまとめておきます。
都市計画法の線引きをしていない市町村で、農用地区域内についてです。
さらに中稲(なかて)が植えられているのが中田、田や畑の生産性が中程度の畑を中畑(ちゅうばた)という区分がなされます。
変動率が前年比マイナス11%という県もあり、農地の価格の下落が目立ちます。
単位1,000円、10アール、令和2年
中田価格 | 中畑価格 | |
---|---|---|
全国 | 1,133 | 5,402 |
北海道 | 242 | 190 |
東北 | 521 | 984 |
関東 | 1,393 | 619 |
東海 | 2,249 | 351 |
北信 | 1,323 | 834 |
近畿 | 446 | 401 |
中国 | 636 | 624 |
四国 | 394 | 390 |
九州 | 981 | 983 |
参考:全国農業会議所
なお、都市計画法の線引きをしていない市町村における農地の売買平均価格、都市計画法の線引きをしている市町村おける農地の売買平均価格について公表していない都道府県もあります。
たとえば、東京都はどちらも公表していません。
大阪府は都市計画法の線引きをしていない市町村における農地についてのみ公表しています。
沖縄県は一部、公表していない数値があります。
ただし、各都道府県の農業の特性も影響すると推測できます。
農地売買価格の相場を自分で調べる方法
農地売買価格の相場は、自治体から公表されていない場合もあり、その場合は自分で調べなければなりません。
そこで、自分で農地売買価格の相場を調べる方法をご紹介します。
農地の価格を調べるのに用いるのは、相続税評価額を算出する際と同じ方法です。
国税庁が定める農地の評価額算出方式は以下の通りです。
この区分は、農地法など、農業政策を実現するための法律とは必ずしも一致しませんので、注意してください。
方式 | 算出法 | |
---|---|---|
純農地 中間農地 | 倍率方式 | 農地の固定資産税評価額に、国税局長が定める一定の倍率を乗じる |
市街地周辺農地 | 宅地比準方式 または倍率方式 | 農地が市街地農地であるとした場合の価額80%に相当する金額 |
市街地農地 | 宅地比準方式 または倍率方式 | 宅地批准方式とは、農地を宅地に転用する際の造成費を考慮した方式 |
市街地農地の評価方法の1つである宅地批准方式の算式は「その農地が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額」から、一定の価額を控除し、農地の地積を乗じます。
控除する価格とは、宅地に転用する場合の通常の造成費(1平方メートル当たり)です。
まとめ
農地の売買価格の全国平均相場や、農地の価格の調べ方がわかりました。
しかし、ご自身や親族が所有する農地の売却を検討する場合は、農地の価格だけでなく農地法について必ず考慮しなければなりません。
農地の売却は農業委員会の許可が必要だからです。
農地を耕作目的で買ってくれる人がいるのか、宅地に転用すれば買ってくれる人がいるのかにより、農業委員会の許可が下りやすいかどうかが変ります。
農地が所在する地域も、農業委員会の許可が下りるかどうかの大きな要因です。
地域とは、市街化調整区域なのか、市街化区域なのか、農業振興地域なのかなどです。
農地の売買を行うには、一般の宅地の売買と異なる注意点や、行政への届出等が沢山あります。
農地の売買を検討する方は、ぜひ、農地法に詳しい行政書士や税理士と提携する不動産会社に相談することをおすすめします。
相続、休耕等で農地を手放そうと考えていたり、故郷に帰って農業を営もうと考えているとしたら、早めに不動産会社に相談してください。