築年数で家の売却相場はどう変わる?中古住宅の価値の考え方を解説
この記事でわかること
- 中古一戸建てと中古マンションの価格の傾向がわかる
- 中古一戸建てを売却するときの価格の下落傾向がわかる
- 築20年以上の築古の一戸建てを売却するときのポイントがわかる
同じ広さの中古住宅でも、その売出価格は変わってきます。
売買価格を決める要因としては、土地面積・延床面積のほか、エリア、住環境、駅からの近さなどがあります。
中でも中古建物の価格に大きな影響を与えるのが築年数です。
今回は、中古住宅の価格と築年数の関係について説明していきます。
どのタイミングで家を売却するのかによって売却価格が大きく変わってくるため、今後自宅の売却を検討するときの参考にしてください。
目次
家の売却相場は仲介の7割ほど
住宅を売却する際の相場は、仲介相場の7割程度が一般的です。
住宅を売却する方法として、仲介取引と買取取引の2つの手段がありますが、買取取引と仲介取引とでは売却金額に差が出てくるため注意が必要です。
それぞれの取引方法について詳しく見ていきましょう。
不動産仲介とは
不動産仲介とは、不動産会社に所有する不動産の売却相手を探してもらう取引方法のことです。
所有者は不動産の買い主を探すなど、買い取りを希望する顧客対応の一切を不動産会社に任せられます。
ただし、不動産会社に仲介手数料を支払わなければならないため、実際の不動産の価値よりも安い価格で売らなければなりません。
このような不動産仲介の詳細については、不動産売買仲介とは|流れや仲介手数料の相場、メリット・デメリットの記事で詳しく解説しています。
不動産買取とは
不動産買取とは、所有する不動産を不動産会社に直接買い取ってもらう取引方法のことです。
所有者は買い手を探す必要がないため、売りたいタイミングで不動産を現金化できる上に、不動産会社への仲介手数料が発生しません。
ただし、買い取った不動産を売る際にリフォームなどの工事費用がかかることを見越した不動産会社から、相場よりも安い価格を提示される傾向にあります。
不動産買取の詳細は、不動産買取とは?メリット・デメリット、仲介との違いも解説の記事を参考にしてください。
築年数が長いほど価格相場は下がる
一戸建て住宅は、築年数が経過すればするほど価値が下落していきます。
皆さんも、住宅情報サイトを閲覧してみたときに、築年数の古い物件について安値で売出しがされているものを見たことがあるでしょう。
一戸建て住宅の価格は「土地価格」と「建物価格」に分けられますが、土地価格は不動産市況の影響を多少受けるものの、住宅地の価格はそれほど上下するものではありません。
一方で、一戸建ての木造住宅の価格は築年数を経るごとに下がっていき、20年後には価値がなくなる(取引価格がゼロに近くなっていく)といわれています。
例えば、6,000万円(土地価格3,500万円、建物価格2,500万円)の新築一戸建てを購入したなら、土地の3,500万円の部分は急激に価値が上下することはそれほどありません。
しかし、建物の2,500万円の部分は20年間経過後に200万円から300万円程度になってしまうようなイメージです。
一戸建てとマンションの価格相場の違い
一戸建てとマンションの中古価格を比較してみると、一戸建ての下落スピードの方が速い傾向にあります。
一戸建ては木造建築が多く、他の構造の建物に比べて老朽化が早く進行するのが特徴です。
長年の風雨や温度・湿度変化による木材の劣化・歪み、またシロアリをはじめとする虫害等によって、柱や床材、屋根材、基礎部分に摩耗や劣化が進みます。
実際は住宅のメンテナンスや補修、設備の交換を行うことによって数十年の長期間、性能維持が可能ですが、住宅市場においては「老朽化しやすいもの」として評価されます。
一方、分譲マンションの場合、多くは鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造であり、老朽化の速度は木造よりもゆっくりです。
例えば、鉄筋コンクリート造の場合、主にコンクリートの中性化による鉄筋の錆び(酸化)の進行で、コンクリートと鉄筋の付着度合いが弱まることによって構造が劣化します。
コンクリートは元来アルカリ性ですが、風雨や積雪などによって外壁からコンクリートが中性に近づき、鉄筋の酸化に繋がるのです。
しかし、劣化のスピードはゆるやかであるために、木造建物に比べて「劣化しにくい」と評価されています。
こうした構造の違いが、中古の家の価格相場に影響を与えているのです。
中古一戸建ての価格の下落傾向
参考:中古住宅流通、リフォーム市場の現状|国土交通省
上のグラフは、木造一戸建ての価格の下落と築年数の関係を表したものです。
新築価格を100として、年数が経過するにつれて新築価格のどのぐらいの価格まで下落するかという点について、多くの取引事例データを分析したうえで平均化したものになります。
このグラフを見ると、築年数が10年までは下落のスピードが速く、10年で新築価格の半分程度です。
その後、15年、20年と経過するにしたがってスピードは緩やかになっていき、新築価格の15%程度に落ち着きます。
21年以降については、それほど価格の下落は見られません。
なぜこのように価格下落スピードに差があるのでしょうか。
その理由について詳しく見ていきましょう。
築0~10年は価値が下落しやすい
築浅の建物ほど価格の下落スピードが速いのは、マンションでも同様です。
これは、新築住宅の価格決定方法と中古住宅の価格の決定方法の違いが大きく影響しています。
新築住宅は、住宅分譲業者の土地の仕入れ値に住宅の建築費・付属設備費、販売費用および分譲業者の利益を上乗せして売出価格が決定されます。
新築住宅を購入する側も、中古住宅より多少高くとも今まで誰も住んだことのない自分の住宅に住みたいという心情があります。
このような要因によって、新築住宅の価格はエリアの不動産相場よりも1~2割ほど高くなりがちなのです。
一方で、中古住宅の価格は周辺の取引相場がベースとなって決定されます。
対象住宅のグレードや住環境によって多少の修正は入りますが、原則としては中古住宅市場の相場を反映した価格になりやすいです。
すると築10年ぐらいの住宅でも、築年の新しい住宅と比べて住宅の性能はそれほど劣化していないために、築年の新しい中古住宅の価格形成が築10年程度の中古住宅の価格に引っ張られてしまう傾向にあります。
もともと新築住宅の価格が相場よりも高いこともあいまって、結果的に築10年ぐらいまでは価格下落のスピードが速くなってしまうのです。
築11年~20年はゆっくりと下落
築11年から20年までは住宅の性能としてもそれほど変わりはなく、建物の劣化度合いに応じて緩やかな下落カーブを描きます。
最近の住宅は建材の質や建築技術が向上し、10年から20年程度で取壊しになることはほとんどありません。
もっとも、給湯器やビルトイン冷暖房機などの設備については故障してしまうこともありますので、補修・交換する必要が出てきます。
築20年を超えると市場価値はゼロ
木造一戸建て住宅の価値は20年でゼロになるといわれています。
実際の取引相場も、築20年以降になると新築価格の10分の1程度の価値しかなくなってしまっている例が多く見られます。
これは、木造家屋の法定耐用年数が22年であることが大きな理由です。
税務会計上の減価償却費を計上するうえでの基準は、築22年で価値がゼロになるという設定がなされています。
法定耐用年数は単に税務会計上の基準であり、実際の効用持続年数とはズレがあります。
家の築年数が20年を超えてくると、金融機関の担保評価が極端に低下し、建物を担保にした融資が実行しにくい状態になるのです。
そのため、築年数が20年以上の建物は価値がないと言われます。
築20年を超えた家を売却するコツ
築年数が20年を超えている家でも、コツさえ抑えれば売却できる可能性は十分にあります。
この章では、どのようなコツが有効なのか、具体的な内容を確認していきましょう。
近隣の売出相場をチェックする
まず、近隣の築古の一戸建ての取引相場をチェックして、自分でも相場を把握します。
近隣の取引相場は、不動産情報サイトで物件を検索すれば確認できます。
物件によって広さが異なるため、坪単価や㎡単価を算出して比較するとよいでしょう。
売却されている家の買い手はあくまでも、物件の仕様や価格を比較検討して購入物件を選択します。
売り手としては、希望の売却価格があるでしょうが相場よりも高い金額で売却するためにはそれなりの理由が必要です。
自分が長年住んだ住宅ですので思い入れはあるかもしれませんが、個性的であればあるほど売れにくくなります。
自分の住宅の売出価格が周りの相場より高いのか、低いのかについては自ら調査してみて、価格設定をするときには、不動産会社の担当者にも意見を伺ってみるのもひとつの方法です。
リフォームは必要に応じて行う
中古住宅を売却するときには、リフォームするかどうかという点について迷う方が多いでしょう。
リフォーム済みの物件は見栄えが良く、一般的な間取りであれば買い手が付きやすいことも確かです。
しかし、リフォームをしたからといってリフォーム費用を含めた価格で買い手がつくとは限りません。
結局価格交渉の末に安値で売却せざるをえなくなった場合はなれば、リフォーム費用が無駄になってしまいます。
また、築古の中古住宅を探している人は、自分の好きなようにリフォームすることを楽しみにしていることも多いです。
リフォームを検討するときには、住み心地に重大な影響があるような補修(基礎部分の補修や安全性に関わる補修など)にとどめ、その他は費用対効果を考えて行うべきでしょう。
インスペクションを活用する
インスペクション(建物状況調査)とは、中古住宅の性能や劣化の程度について専門家が調査することです。
専門家による調査報告書を作成してもらうことで、住宅の品質、性能、劣化度合いについて明らかにできます。
買主からすると、インスペクションされた家の方が安心です。
インスペクションの費用は、5~10万円です。
金銭的な負担はそれほど大きくないため、説得力がある資料を買主に提示したい場合は活用することをおすすめします。
自分の家の売却相場を知る方法とは
所有する住宅がおおよそいくらで売却できるのか、一般的な相場を知るには以下の方法を試してみてください。
レインズ・マーケット・インフォメーションを利用する
レインズ・マーケット・インフォメーションとは、不動産の取引価格を提供しているWebサイトです。
都道府県やエリア、築年数などの必要項目を設定するだけで、マンションや戸建住宅の実際の成約価格に基づいた取引価格の相場を検索できます。
レインズ・マーケット・インフォメーションの提供元は、国土交通省大臣が指定する「公益財団法人不動産流通機構」です。
成約価格に基づいた取引価格の相場を知りたい人におすすめです。
不動産取引価格情報検索で取引価格をチェックする
不動産取引価格情報検索は、マンションや戸建住宅だけでなく、土地の取引価格を過去に遡って閲覧できる検索サービスです。
国土交通省が運営する「土地総合情報システム」の検索機能として搭載されています。
レインズ・マーケット・インフォメーションと同様に、成約価格に基づいた取引価格を調べられるWebサイトです。
不動産取引価格情報検索は、土地のみの取引価格を調べたいという人に適しています。
路線価図で相場を確認する
路線価図とは、全国の路線価を実際の地図で確認するためのもので、国税庁のホームページや税務署などで閲覧が可能です。
国税庁のホームページでは、過去6年分まで遡って路線価図の価額を確認できます。
ちなみに、路線価とは、路線(道路)に隣接する宅地の価額を示す用語です。
一般的な宅地の1平方メートルあたり千円単位で表されています。
国税庁は、固定資産税の対象者が決まる1月1日時点での路線価を毎年7月頃に公表しています。
一括査定サイトを活用する
一括査定サイトは、全国の不動産会社に査定の依頼を申し込めるWebサイトです。
所有する住宅の築年数や間取り、面積などの不動産情報を登録すれば、Webサイトが依頼可能な不動産会社へ申し込んでくれます。
一括査定サイトを活用するメリットは、インターネット上で複数の不動産会社に無料査定してもらえる上に、比較検討が簡単に行いやすいことです。
ただし、査定を依頼した不動産会社から電話がかかってくる可能性が高いため、「本格的に不動産を売りたい」と考えている人におすすめします。
自分で売却相場を調べるときの3つの注意点
不動産の売却相場を自分で調べたい場合は、以下で解説する注意点に気をつけましょう。
成約価格と売り出し価格には差が出る
成約価格と売り出し価格は、必ずしもイコールではありません。
売り出し価格は、あくまでも売り手が希望する売値です。
一方、成約価格は売り手と買い手が交渉した結果、両者が納得の上で売買取引が成立した際の価格を意味します。
たとえば、早く不動産を売りたい売り手が、買い手からの値下げ要求を受け入れた場合、売り出し価格から値引きされるため、成約価格のほうが安くなるケースがあります。
査定は複数社に依頼する
不動産会社に査定を依頼する場合は、必ず複数社に相見積もりを取ることが重要です。
不動産会社の中には、利益を得るために安い価格で査定する会社が少なからず存在します。
相見積もりを取らないと相場よりも安く売却しなければならず、損する可能性があります。
1社ずつ不動産会社へ査定を依頼するのが面倒な場合は、一括査定サイトを活用しましょう。
取引が相場通りにいくとは限らない
不動産会社に査定を依頼した結果、相場よりも提示された価格の方が安いケースもめずらしくありません。
とくに、売却期限が短い、需要が低いなどの場合が考えられます。
なるべく早く家を売却するなら、相場よりやや安い価格を提示することも検討しましょう。
また、必要な修理を行っておくなど、工夫次第で相場よりも高い価格での売却も可能です。
一般的な家の売却の流れを紹介
家を売却する際の一般的な全体の流れは、以下のとおりです。
- 1.売却相場を調べる
- 2.不動産会社に査定を依頼する
- 3.媒介契約を締結する
- 4.買い手を探すための売却活動を実施する
- 5.買い手と条件交渉・売買契約を行う
- 6.家を買い手に引き渡す
- 7.売り手は期限までに確定申告する
家を売却する場合は、まず、所有する家がいくら位で売却できるのか、相場のリサーチから行います。
一般的な相場がわかったら、複数の不動産会社に査定を依頼し、比較検討しましょう。
次に、仲介を依頼する不動産会社を決め、契約したい会社数にあわせて媒介契約を交わします。
買い手が見つかったら、必要に応じて条件交渉を行い、両者が納得した上で売買契約を締結します。
取引の成立後、買い手に家を引き渡し、家の売却で得た収入は期限までに確定申告を行いましょう。
このような不動産の売却方法・手順については、家を売却する方法|流れや相場、費用、高く家を売るコツも紹介の記事で詳しく解説しています。
最も家が売られる時期は「築10年前後」
中古一戸建てが売却されるのは築10年前後であるといわれています。
築年数が10年前後だと、住宅の性能としてもそこまでの劣化は認められません。
買い手の金融機関からの住宅ローンも承認されやすいため、買い手が付きやすいのです。
もっとも、売買価格は先に紹介したグラフのように下落するため、売却の良いタイミングを逃さないように事前準備を怠らないようにしましょう。
家の売却相場と築年数の関係についてよくある質問
家は築年数の経過とともに劣化し、その価値も落ちていきます。
そのため築年数と売却価格は密接な関係性があるのです。
ここでは、家の売却相場と築年数の関係についてよくある質問をご紹介していきます。
3,000万円の一戸建ては5年後にいくらで売れますか?
築年数が5年の場合、売却価格は概ね2,100万円程度です。
公益財団法人・不動産流通推進センターの木造戸建価格査定マニュアルをみると、築5年の一戸建ては新築時の70%まで資産価値が下がっています。
さらに築年数が経過すると、以下のように資産価値が下がります。
築7年の下落率 | 約40%(価格は1,800万円程度) |
---|---|
築9年の下落率 | 約50%(価格は1,500万円程度) |
築10年の下落率 | 約55%(価格は1,350万円程度) |
一戸建ての売却予定があれば、築5年を過ぎないうちに買い手を見つけるとよいでしょう。
一戸建ての資産価値は何年でなくなりますか?
一般的には、築22年で資産価値がなくなるといわれています。
建物の資産価値を決める尺度はさまざまですが、法定耐用年数を参考にするケースが一般的です。
木造の一戸建ては法定耐用年数が22年になっているため、築年数が22年を過ぎると資産価値はほとんどありません。
法定耐用年数は減価償却の計算にも使うので、木造住宅の購入価格を22年間で費用に計上し、償却期間を過ぎたときに資産価値がなくなるという考え方です。
法定耐用年数が過ぎても住めなくなるわけではありませんが、買い手が見つかりにくくなるため、売却も難しくなるでしょう。
一戸建てを売却するときは、築年数や法定耐用年数も考慮しておく必要があります。
まとめ
中古住宅の価格に影響を与える要因はたくさんありますが、中でも最も価格へのインパクトが大きいのが築年数です。
政府は中古住宅の価値を上げて流通市場を活発化させようと、インスペクションの制度を充実したり、住宅の性能を向上させるリフォームにさまざまな補助金を用意したりしていますが、実際に中古住宅の相場が上がるまではまだ時間がかかるでしょう。
一戸建て住宅を売却しようと考えている方は、今回のコラムを参考にして、いつ売却するのが最適かについて検討してみてください。
自分で判断するのが難しい場合は、不動産と税金の専門家のサポートが受けられる不動産売却マップに相談することをおすすめします。