固定資産税のシミュレーションができる計算方法!税負担を軽減する特例も紹介
この記事でわかること
- 固定資産税を計算する流れがわかる
- 固定資産税額のシミュレーションができる
- 固定資産税の軽減制度の内容がわかる
固定資産税は、不動産を所有している方が毎年支払わなければならない税金です。
建物や土地を取得または相続したときに「固定資産税はいくらになるのだろう?」と不安に思う方も多いかもしれません。
固定資産税には決まった計算方法があるので、自分で計算して金額をシミュレーションすることができます。
シミュレーションした結果、もし税額が高いと感じたら固定資産税の負担を減らす対策も検討してみましょう。
この記事では、固定資産税をシミュレ―ションするときの計算方法や税負担を軽減する特例を紹介します。
目次
固定資産税を計算する方法
土地や建物を所有していると、その所有者に固定資産税がかかります。
固定資産税は、1月1日現在の所有者に対して課税されますが、その金額は土地や建物の所在する市町村で計算されます。
そのため、通常は固定資産税の額を自分で計算する必要はありませんが、あらかじめ自身で計算し確認することはできます。
固定資産税評価額を確認
土地や建物の固定資産税額は、土地や建物の購入価格や建築価格を使って計算をするわけではありません。
固定資産税の税額は、固定資産税評価額として計算された金額を基にして計算します。
この固定資産税評価額は、各市町村において決定されます。
土地の固定資産税評価額は、その土地の所在地や地目などから求められ、建物の固定資産税評価額は、その建物の材料や構造により決定されます。
固定資産税評価額の計算方法を詳しく知ることはできませんが、計算結果を知ることはできます。
毎年、土地や建物の所有者に送られてくる固定資産税の納税通知書には、土地や建物の固定資産税評価額が記載されています。
また、市町村役場では固定資産評価証明書を入手することができます。
これらの書類から、自身が所有する土地や建物の固定資産税評価額を確認します。
建物の固定資産税を計算
建物の固定資産税の金額は、「建物の固定資産税の課税標準額×税率」で計算されます。
課税標準額とは、建物の固定資産税評価額から求められる金額で、税額計算の基礎となる金額のことをいいます。
固定資産税評価額とは別に、実際の税額を計算する際は課税標準額を求める必要があります。
建物の課税標準額については、以下のような計算式が設けられています。
エアコンなどの設備が設置されていると、その分評点が高くなり、固定資産税評価額も高くなる結果となります。
また、再建築費評点は、その建物をもう一度評価時点で建築した場合にかかる費用のことです。
また、建物は建築から年数が経過すれば、老朽化によりその価値が下落していきます。
そのため、経年減点補正率を使い、建物の課税標準額が減少するようにします。
ただ、課税標準額の計算を自身で細かく行うことは、ほぼ不可能です。
そのため、建築価格や購入価格の7割程度の金額を課税標準額の目安として、固定資産税の計算を行います。
なお新築住宅については、新築から5年間に限り、その課税標準額が1/2になる特例が設けられています。
標準の税率は1.4%ですが、中には異なる税率を使用している自治体もあるため、確認しておきましょう。
土地の固定資産税を計算
土地の固定資産税評価額は、土地の地目によりその算出方法が定められています。
宅地の場合は、「市街住宅地評価法」または「その他の宅地評価法」のいずれかによることとなります。
市街住宅地評価法は、路線価方式とも呼ばれます。
道路に面する土地の1㎡あたりの価格に、土地の状況に応じた補正率を乗じて、1㎡あたりの単価を決定します。
この価格に土地の面積を乗じて、土地の固定資産税評価額を求めます。
また、その他の宅地評価法は標準値比準方式とも呼ばれます。
宅地の面する道路の状況、家屋の疎密度などから判定して利用状況が類似している地区ごとに標準値を定め、その価格に土地の面積を乗じて固定資産税評価額を計算します。
なお、土地に対する固定資産税の課税標準額は、居住用建物が建っている土地については、小規模宅地の特例が適用され、200㎡までは課税標準額は6分の1となり、200㎡を超える部分については3分の1となります。
課税標準額に標準税率1.4%を乗じて、土地の固定資産税額を計算することができます。
都市計画税を計算
固定資産税の計算を行う際、同時に都市計画税が課されることがあります。
都市計画税は、固定資産税とほぼ同額の課税標準額に対して、標準税率0.3%を乗じて計算されます。
固定資産税と同じ時期に、同じものを対象とする税金が計算されることとなるため、都市計画税が課されていることに気づかない人もいるかもしれません。
固定資産税の納税通知書には、固定資産税だけでなく都市計画税についても記載されているため、注意深く見れば、その税額を確認することができます。
なお、都市計画税に対する小規模宅地の特例は、200㎡以下であっても課税標準額は6分の1ではなく3分の1となることに注意が必要です。
都市計画税は、すべての土地や建物に対して課されるわけではありません。
原則として市街化区域に所在する土地に対して課されるものであり、たとえ宅地であっても市街化調整区域などにある場合は、課税の対象にはなりません。
そのため、まずは市街化区域に所在するかどうかを確認し、次に小規模宅地の特例が適用されるかを確認したうえで、課税標準額に0.3%を乗じて計算します。
【ケース別】固定資産税額のシミュレーション
ここまで、固定資産税の計算方法について説明してきました。
ただ、これらの説明だけでは、実際にどのような計算が行われているか分かりにくいでしょう。
そこで、具体的な事例を使って固定資産税の計算の流れをご紹介していきます。
なお固定資産税の計算は、建物の種類や新築・中古の違いにより適用される特例に違いがあるため、固定資産税の計算方法にも違いがあります。
そこで、パターンごとに固定資産税の税額の計算の流れを確認していきます。
新築戸建てのケース
新築戸建ての土地・建物で、その固定資産税評価額が土地(300㎡)4,500万円、建物1,000万円だとします。
この場合、土地については「小規模宅地の特例」、建物については「新築住宅の軽減措置」が適用できます。
そのため、土地と建物の課税標準額はそれぞれ以下のようになります。
- 土地(200㎡以下の部分)4,500万円×200㎡/300㎡×1/6=500万円
- 建物1,000万円×1/2=500万円
(200㎡を超える部分)4,500万円×100㎡/300㎡×1/3=500万円
合計1,000万円
土地の固定資産税額は14万円、建物の固定資産税額は7万円となり、合計21万円の税金が発生します。
新築マンションのケース
新築マンションの場合も、小規模宅地の特例および新築住宅の軽減措置が適用されます。
例えば、新築マンションの土地の固定資産税評価額が600万円、建物の固定資産税評価額が2,000万円だったとします。
この場合、土地については小規模宅地の特例が適用され、課税標準額は600万円×1/6=100万円となります。
一方、建物の課税標準額は新築住宅のため軽減措置が適用され、2,000万円×1/2=1,000万円となります。
土地の固定資産税額は100万円×1.4%=1万4,000円、建物の固定資産税額は1,000万円×1.4%=14万円となります。
その結果、固定資産税の合計額は15万4,000円となります。
中古戸建てのケース
中古の戸建て住宅の固定資産税評価額が、土地(300㎡)3,600万円、建物500万円だったとします。
土地については、中古住宅であっても小規模宅地の特例が適用されるため、課税標準額は以下のように計算されます。
(200㎡を超える部分)3,600万円×100㎡/300㎡×1/3=400万円
合計800万円
一方、中古住宅の場合、建物について新築住宅の軽減措置は適用されません。
そのため建物は、固定資産税評価額500万円がそのまま課税標準額となります。
結果として、土地の固定資産税額は11万2,000円、建物の固定資産税額は7万円の合計18万2,000円となります。
中古マンションのケース
中古マンションの固定資産税評価額が、土地600万円、建物1,000万円だったとします。
中古マンションの場合も、土地について小規模宅地の特例は適用されます。
そのため、この中古マンションの土地の課税標準額は600万円×1/6=100万円となります。
一方の建物については新築住宅の軽減措置が適用されないため、固定資産税評価額がそのまま課税標準額となります。
そのため、土地の固定資産税額は1万4,000円、建物の固定資産税額は14万円となり、固定資産税の合計額は15万4,000円となります。
固定資産税の負担を軽減する方法
固定資産税の金額は、その土地や建物が所在する各市町村で計算されます。
固定資産税評価額の計算も各市町村で行われるため、土地や建物を所有する人がどのようなことを行っても、固定資産税の負担を軽減することは難しいと考える方もいることでしょう。
しかし、実際には固定資産税の負担を軽減する方法はあり、その土地や建物にあわせた方法を選択することができます。
どのようにすれば固定資産税を減額することができるのか、その内容を確認しておきましょう。
新築住宅の軽減措置を利用
一戸建てやマンションなどの新築住宅を取得した場合、住宅の用途や構造によって定められた床面積の要件を満たすことで、固定資産税が3年間(3階建て以上の耐火・準耐火建造物の場合は5年間)、固定資産税の課税標準額が2分の1になります。
建物の種類 | 固定資産税の減額 |
---|---|
戸建て | 3年にわたり2分の1 |
マンション | 5年にわたり2分の1 |
住宅が長期優良住宅に認定された場合には、さらに2年間延長され、5年間(3階建て以上の耐火・準耐火建造物の場合は7年間)固定資産税の課税標準額が2分の1となります。
床面積の要件は、一戸建ての場合は50㎡以上280㎡以下、共同住宅の貸家の場合には40㎡以上280㎡以下となっており、1戸当たり120㎡までの部分について、2分の1の軽減措置が受けられます。
延床面積が120㎡以下の一戸建てやマンションならば、評価額がそのまま2分の1になりますが、120㎡以上の場合には、120㎡の部分についての割合について評価額が2分の1となります。
住宅用地の特例を利用
小規模の住宅用地の場合には、200㎡以下の部分については課税標準額が評価額の6分の1、200㎡を超える部分については3分の1になります。
この特例の効果は非常に大きく、特に首都圏や地方の中心都市など土地の評価額が高い場所については、固定資産税を軽減するためにアパートなどの共同住宅の建設を検討する場合もあるほどです。
建物が専用住宅の場合には、適用の要件は比較的明確ですが、住宅の一部を店舗や事務所、作業場、工場などに利用していた場合には、住宅部分の割合によって適用の要件は異なってきますので注意しましょう。
省エネリフォームを行う
主に熱利用の効率化の観点から省エネに関するリフォーム行った場合には、築年数や工事の種類、工事金額などの所定の要件を満たすことで、住宅の床面積が120㎡の部分を限度として、固定資産税額の3分の1が減額されます。
これはリフォーム工事の翌年度分に限り適用される軽減措置です。
例えば、以下のようなリフォーム工事が該当します。
- 窓を断熱サッシや二重ガラスのものに変更するリフォーム工事
- 床や天井、壁の断熱材を追加、交換することによる熱効率の向上を図るリフォーム工事
なお、省エネリフォームとバリアフリーに関するリフォームについては、軽減措置を併用して適用することができます。
これに対して、耐震改修リフォームについては、他のリフォームとともに減額措置を併用することはできません。
そのためリフォーム工事を行う際には、どの工事を行うのかを明確にしておき、固定資産税の計算でどの減額措置の適用を受けるのかを決めておきましょう。
また、減額措置は1年間しか適用されないため、耐震改修リフォームは別の年に行うのも有効になる場合があります。
特例を適用するためには、必要書類を添付してリフォーム工事・改修・補強工事の完了後に自治体に固定資産税の軽減措置に関わる申告を行う必要があります。
バリアフリーに関する住宅改修を行う
バリアフリーに関するリフォーム工事を行ったときには、65歳以上の方や要介護の方が入居しているなど所定の要件を満たすことで、翌年に限り1戸当たり100㎡の部分を限度に固定資産税額の3分の1が減額されます。
以下のような工事を行ったときには、市区町村の固定資産税課に相談してみましょう。
- 車いすが入れるように廊下や入口を拡張した
- 廊下や階段に歩行補助のための手すりを設置した
- 玄関や部屋の入口の段差を解消した
- 浴室やトイレに滑り止めや手すりを設置・介助者が介助できるような仕様に変更
耐震改修を行う
耐震改修を行った住宅については、築年数や工事金額など所定の要件を満たす場合、翌年に限り、120㎡までの部分を限度に固定資産税の2分の1が減額されます。
要安全確認計画記載建築物に指定された住宅で、耐震基準に適合している工事である旨の証明書の交付を受けているなど一定の要件を満たす建物については、120㎡以上の部分も非住宅部分も、翌年度から2年分の固定資産税が2分の1軽減されます。
この場合には耐震改修費用の2.5%を限度とします。
まとめ
不動産を取得または相続したとき、固定資産税がいくらになるのか気になる方も多いでしょう。
固定資産税の金額は自分でシミュレーションすることができるため、事前にいくらかかるのか把握しておくと安心です。
また、固定資産税は新築か中古かなどのケースによっても金額が異なります。
自分が所有している不動産の条件を確認しながらシミュレーションしましょう。
固定資産税は特例などを利用することで税負担を減らすことができるので、節税制度をうまく活用することをおすすめします。