固定資産税評価額とは|新築・中古住宅の調べ方や計算方法を解説
この記事でわかること
- 固定資産税評価額とは何かがわかる
- 自己所有土地の固定資産税評価額を調べる方法がわかる
- 固定資産税評価額を基に計算される税金の計算方法がわかる
- 固定資産税評価額の計算方法がわかる
不動産を所有していると、毎年4月から6月の間に固定資産税・都市計画税の納税通知書が送られてきます。
忘れたころに送付されてくるので、慌てて納付している方も多いことでしょう。
この、固定資産税・都市計画税はどのようにして決められているのでしょうか。
今回は、固定資産税・都市計画税の算出のベースとなっている固定資産税評価額について、その概要、計算方法を説明します。
また固定資産税・都市計画税以外の税金についても固定資産税評価額を基にして計算するものがあるため、その内容も解説します。
単に固定資産税・都市計画税を支払うときだけではなく、不動産売買のときにも資料として必要になる情報です。
固定資産税評価額の内容についてもあわせて押さえておきましょう。
目次
固定資産税評価額とは?
固定資産税評価額とは、固定資産税・都市計画税を課税するために定められた土地・家屋の評価額をいいます。
不動産の価格にはいろいろな評価方法がありますが、地方公共団体が独自の評価方法・評価基準(固定資産評価基準)にしたがって土地・家屋を評価することによって決定された評価額です。
固定資産税評価額は、固定資産税・都市計画税を課税するときの基準となる価額です。
また、不動産売買をするときの税金や司法書士報酬を決定するための基準になったり、家屋や一部の土地(相続税路線価が付されていない土地)の相続税評価額を算出するときに用いられたりもします。
固定資産税評価額は3年に1度見直されており、各市町村が選出した固定資産評価員によって出された評価を基に、各市町村が固定資産税評価額を決定します。
固定資産税評価額の調べ方とは
固定資産税評価額を調べたい場合は、どのような方法があるのか以下で詳しく解説します。
調べ方1:固定資産税評価証明書を確認する
自己所有の土地・家屋の固定資産税評価額は、毎年自治体から送られてくる固定資産税納税通知書を確認すれば、簡単にわかります。
他には、自治体の固定資産税課(名称は自治体によって異なる)から、「固定資産税評価証明書」を取得することによって、固定資産税評価額の証明を得ることができます。
不動産売買の際には必ず必要になる書類です。
取得するときには数百円の発行手数料がかかります。
また、対象土地の所有者であれば、自治体の担当窓口に訪問することで、固定資産台帳の閲覧をすることで、固定資産税評価額を確認できます。
こちらは本人確認書類の提示等を求められますが、通常、手数料は無料です。
「価格」と「課税標準額」の違い
課税明細書には価格の他に、課税標準額も記載されています。
原則として、家屋の価格は課税標準額と同額ですが、土地の価格と課税標準額の金額は異なります。
土地の課税標準額を決める際は、住宅用地における特例措置や負担調整措置が考慮されるため、価格よりも安くなるのが一般的です。
価格と課税標準額を混同しないように注意しましょう。
調べ方2:固定資産課税台帳を確認する
固定資産税評価額は、固定資産課税台帳でも調べられます。
固定資産課税台帳とは、総務大臣によって定められている固定資産評価基準に基づき、評価された土地や建物の価格が登録された帳票です。
固定資産課税台帳は、土地や建物の所有者の氏名や所在地、価格が記載されており、市町村の担当窓口で閲覧できます。
閲覧の権限を持つのは、各市町村で土地や建物を所有している人や相続人、借地人、借家人などです。
固定資産課税台帳を閲覧したい場合は、各市町村の申請書の提出と写真付きの本人確認書類の提示が必要です。
市町村によって、閲覧に手数料がかかる場合や閲覧が可能な期間を設定している場合もあるため、申請前にホームページで確認しておきましょう。
固定資産税評価額からわかる税金
固定資産税評価額は、固定資産税・都市計画税の算出の基準となるだけではなく、いろいろな税金を計算するときのベースとなる価額です。
それぞれについて、計算方法を確認していきましょう。
固定資産税
固定資産税とは、その年の1月1日時点において不動産(土地・家屋)、償却資産(機械工具・器具備品・事業のために保有している構築物など)を所有している場合に、その資産の評価額に応じて課税される税金です。
固定資産税は以下のように計算されます。
固定資産税
(固定資産税額)=(固定資産税課税標準額)×1.4%
固定資産税課税標準額とは、固定資産税評価額に色々な特例措置や軽減措置を考慮して算出された評価額です。
家屋や償却資産の場合には、固定資産税評価額と変わらない評価額になる場合が多いです。
しかし土地の場合にはいろいろな特例があるために固定資産税評価額と比べて低額になることが多い傾向です。
例えば住宅用地の場合には、所定の要件を満たせば、住宅一戸について200㎡までの部分について、課税標準額が固定資産税評価額の6分の1になる特例があります。
200㎡超で住宅の延床面積の10倍まで場合には、3分の1に軽減されます。
都市計画税
都市計画税とは、都市計画法に定められた市街化区域内に土地又は家屋を保有している場合に課税される税金です。
通常、固定資産税と合わせて納税通知書が送られてくるため合算して納付します。
都市計画税は以下のように算出されます。
都市計画税
(都市計画税)=(都市計画税課税標準額)×0.3%(上限)
都市計画税の税率の上限は0.3%で、税率は土地・家屋の所在地によって異なります。
東京都23区の場合には、上限いっぱいの0.3%ですが、市部になると0.2%を採用しているところも見受けられます。
都市計画税の課税標準額は、固定資産税評価額をベースにさまざまな軽減措置を加味して決定されるルールです。
例えば住宅用地の場合には、200㎡までの部分について、都市計画税の課税標準額は固定資産税評価額の3分の1に軽減されます。
200㎡を超え住宅の延床面積の10倍まで部分については、3分の2に軽減されています。
不動産取得税
不動産取得税とは、有償・無償の別を問わず、土地・家屋の購入、建築、などによって不動産を取得したとき、また増改築により家屋の価値が増加したときに課税される税金です。
不動産取得税の納税通知書は、不動産を取得してから数ヶ月経った後に送られてきますので、注意が必要です。
不動産取得時の課税主体は都道府県であるため、都道府県に対して納税します。
不動産取得税は以下の計算式によって算出されます。
不動産取得税
(不動産取得税額)=(固定資産税評価額(注1))×4%(住宅は令和3年3月31日まで3%)
(注1)
宅地の場合には、課税標準は2分の1となります。
また、新築住宅を取得した際は床面積が50㎡から240㎡以下の場合、土地取得後3年以内に住宅を建設するなど一定の要件を充たした場合、以下のような特例があります。
- (家屋)1,200万円の課税標準の控除※長期優良住宅の場合1,300万円
- (土地)以下のいずれか多い額が不動産取得税の税額から控除されます。
(1)4万5,000円
(2)1㎡当たりの土地単価×1/2×住宅の床面積の2倍(200㎡が限度)×税率
中古住宅の場合も、50㎡から240㎡以下、耐震基準を充たすなど一定の要件に該当する場合には、築年数に応じた控除が受けられます。
登録免許税
登録免許税とは、不動産登記や商業登記をするときに手数料のような形で支払う税金です。
司法書士に登記手続きを依頼する場合には、登記書類作成費用等と合わせて司法書士に支払うことが多いです。
登録免許税は、課税標準に一定の税率を乗じて算出されますが、この課税標準は固定資産税評価額がベースになっています。
具体的な税率については以下のホームページをご参照ください。
固定資産税評価額以外の4種類の価格とは
土地の価格は所在地や土地の形状、用途などさまざまな事情を考慮して、売買当事者の合意によって決まりますが、交渉の過程で用いられる参考価格があります。
この参考価格は、固定資産税評価額の他に以下のような価額を参考にしながら定められます。
このうち、公示地価、基準地価、相続税路線価はいずれも公的な機関から発表されるものです。
それぞれどのようなものか、以下で詳しく解説します。
公示地価
「公示地価」とは、毎年1月1日時点における標準地(全国で約26,000地点)1㎡当たりの価格を発表するものです。
国土交通省土地鑑定委員会が全国の都市計画区域内の土地を調査し、毎年3月下旬に公示されます。
各地点の周辺土地の固定資産税路線価等、相続税路線価等を定めるときの基準となるほか、不動産鑑定士による鑑定を行う際の規準となるなど、不動産取引を行う上で重要な指標となる土地価格です。
都道府県地価調査価格
「都道府県地価調査価格」とは各都道府県が毎年7月1日時点における標準地の地価を1名以上の不動産鑑定士が評定し、毎年9月に発表しています。
別名「基準地価」とも呼ばれています。
公示地価は都市計画区域内に限られますが、基準地価は都市計画区域内以外の標準値が含まれているために、地域の特性を踏まえた調査価格が発表されるのが特徴です。
相続税路線価
「相続税路線価」とは土地の相続税評価額を算出するために用いられる価格です。
道路ごとに1㎡当たりの土地価格を表示されているため、土地の前面道路に付されている1㎡当たりの土地価格に地積を乗じて相続税評価額を算出します。
地価公示や周辺土地の取引事例、不動産鑑定士による鑑定評価などを基に算出した土地価格の80%程度をめどに路線価が決定され、国税庁が毎年7月1日に発表する価格です。
実勢価格
「実勢価格」は実際に不動産市場で取引されている価格です。
宅建業者の場合は、レインズ(宅建業者のみが参照できる不動産情報サービス)を基に取引事例を抽出し、平均値を算出するなどの方法で実勢価格の目安を読み取ります。
現在ではさまざまな不動産情報サイトがあるために、一般の方でもおおよその実勢価格を知ることができるようになりました。
不動産情報サイトの売り出し価格で、実際の取引がなされているわけではありませんが、大体の取引相場を調べることは可能です。
もっとも不動産価格は、周辺の取引相場の他、物件固有の事情(土地の形状、向き、道路付け、周辺状況、建物の築年数、老朽化の度合いなど)によって決まってくるために、データを鵜呑みにすることは禁物です。
固定資産税評価額の計算方法
固定資産税評価額は、土地が所在する市町村が決定しますが、評価基準は全国で統一されており「固定資産税評価基準」に詳細が定められています。
ここでは土地・家屋の固定資産税評価額の決定方法について紹介します。
土地の固定資産税評価額の計算方法
土地の固定資産税評価額は、路線価方式もしくは標準宅地比準方式によって決定されます。
路線価方式は、相続税評価額を算出するときの相続税路線価のような方式で、道路に付された1㎡あたりの固定資産税評価額をもとに、土地の形状などに応じて定められた点数である「評点」を加味して固定資産税評価額を算出します。
具体的な算出方法は以下の通りです。
一方、標準宅地比準方式とは市町村が「標準宅地」を設定し、その標準宅地の1㎡あたりの土地単価に地積を乗じて、対象となる土地の形や用途によって価額を補正して算出する方式です。
建物の固定資産税評価額の計算方法
家屋の固定資産税評価額は、家屋の構造、材質、床面積その他の要素から算出される再建築価格を基に、築年数に応じた摩耗分を加味して算出されます。
摩耗分は「経年減点補正率」と称され、木造一戸建ての住宅も鉄筋コンクリート造のマンションも、基本的には同じ仕組みが取り入れられています。
固定資産税が軽減される特例とは
固定資産税には、納税額が軽減される特例措置が設けられています。
以下では、2種類の特例措置について解説します。
住宅用地の特例
住宅用地の特例は、固定資産税の納税義務が発生する住宅用地を課税対象とします。
200平米以下の住宅用地は、固定資産税評価額の6分の1が課税対象です。
200平米を超える住宅用地かつ建物の延べ床面積の10倍までの広さの住宅用地の課税対象は、固定資産税評価額の3分の1と決められています。
居住スペースの他に店舗スペースがある住宅用地の場合、敷地面積のうち2分の1を居住スペースが占めていれば、住宅用地の特例を受けられます。
新築に対する特例
新築に対する特例とは、住宅用地の特例に加えて新築を建てた場合に固定資産税が一定期間軽減される制度です。
どのような住宅を建てたのかによって、軽減措置が適用される期間が異なるため、注意が必要です。
120平米までの一般住宅なら3年間固定資産税が半分になり、3階建て以上で耐火・準耐火構造の住宅や認定長期優良住宅なら5年間適用されます。
店舗兼住宅としている場合は、居住スペースが2分の1以上かつ床面積が50平米以上280平米以下であれば特例が適用されるルールです。
耐震建て替えに関する軽減措置
耐震立て替えに関する軽減措置とは、古い住宅を取り壊して現行の耐震基準に沿った住宅を新築した場合に固定資産税が減免される制度です。
対象となるのは、1982年1月1日以前に建てられた住宅を取り壊し、2021年12月31日までに現行の耐震基準を満たした新築住宅です。
新築後3年間は固定資産税が全額免除されます。
耐震改修に関する軽減措置
耐震改修に関する軽減措置とは、2021年12月31日までに所有する住宅に対し、耐震工事を施した場合に一定期間内の固定資産税が免除される制度です。
対象となるのは1戸あたり120平米に対する固定資産税で、全額が免除されます。
軽減措置が適用される期間は、耐震工事が完了した翌年度の1年分です。
省エネ改修工事に関する軽減措置
省エネ改修工事に関する軽減措置とは、2022年3月31日までに省エネ基準を満たした改修工事を行った場合に固定資産税が減税される制度です。
適用されるのは、改修工事後翌年度の固定資産税で、120平米までの床面積に対し3分の1が減税されます。
ただし、改修工事費用の負担額が50万円を超えていなければ、減税は適用されません。
バリアフリーに関する軽減措置
バリアフリーに関する軽減措置とは、2022年3月31日までにバリアフリーの要件を満たした改修工事を実施した場合に減税が適用される制度です。
バリアフリーの改修工事完了後、100平米の床面積あたり翌年1年分の固定資産税が3分の1に減税されます。
省エネ改修工事と同様に、自己負担額が50万円を超える必要があります。
分筆を活用して税金の負担を減らす方法もある
分筆の活用によって固定資産税評価額を下げ、税金の負担を減らすことも可能です。
固定資産税評価額を下げることができれば、自ずと税金の負担額を減らせます。
固定資産税評価額を下げる方法として、分筆が有効です。
分筆とは、所有する土地を複数の土地に分けて登記を行うことです。
分筆することで1筆ごとの土地が狭くなるため、土地の評価額が下がりやすくなります。
ただし、分筆する際に測量や登記申請などの手間と依頼費用がかかる上に、売却しづらくなることもあります。
将来的に売却する可能性がある場合はよく検討してから結論を出しましょう。
固定資産税・固定資産税評価額に関するQ&A
ここでは、固定資産税・固定資産税評価額でよくある疑問について、Q&A式で解説します。
これから買う不動産の固定資産税評価額の調べ方は?
新築の住宅を購入する場合は、モデルハウスの担当者に問い合わせてみましょう。
目安となる税額を教えてくれるはずです。
中古の住宅を購入する場合は、住宅を管理している不動産仲介会社の担当者に尋ねることをおすすめします。
不動産仲介会社の場合、決定している評価額を教えてもらえます。
納税通知書が合っているか調べる方法は?
納税通知書の評価額が正しいかどうか確認したい場合は、固定資産縦覧帳簿を閲覧できる「縦覧制度」を活用しましょう。
固定資産縦覧帳簿では、他人が所有する土地や住宅の評価額との比較が可能です。
評価額に納得できない場合は、審査を申請できます。
申請する際は、納税通知書の交付日の翌日から3カ月以内に固定資産評価委員会に申し出ましょう。
固定資産税を滞納するとどうなる?
固定資産税を滞納してしまった場合、納期限から20日以内に督促状が送付され、延滞金が発生します。
最悪の場合、財産が差し押さえられる可能性があるため、納税できない事情がある場合は市町村役場に相談しましょう。
まとめ
固定資産税評価額は、不動産に関するさまざまな税金を計算するときのベースなります。
毎年市町村から送付されてくる固定資産税決定通知書を確認すれば、評価額がいくらなのかがわかりますので一度確認してみましょう。
そのときには、住宅用地、居住用家屋であることによるさまざまな軽減措置が適用されて課税標準が決定されています。
あわせて確認してみることで理解が深まるでしょう。
不明な点については、市町村の担当課(固定資産税課)などに問い合わせてしっかり確認することをおすすめします。