【少額不動産投資】投資方法や少額によるメリット・デメリットとは
この記事でわかること
- 少額投資について理解できる
- 不動産投資が自分でできる
- 少額不動産投資の種類と違いがわかる
平成12年の法律改正で公的年金支給は60歳から65歳に引き上げられました。
毎年、誕生月前に送付されてくる「ねんきん定期便」を見れば分かりますが、20歳から60歳まで保険料負担を行い、満額支給が開始されても、ゆとりのある生活が出来る支給額ではありません。
従来は、額や支給開始時期についても収めた保険料に見合うものでしたが、現在において2階建て年金のうち国民基礎年金ではとても生活を維持することが出来ないでしょう。
個人により支給額が異なる厚生年金の支給を合わせて、老後の生活がかろうじて成り立つ程度です。
個人差もありますが、最終的には預貯金を取り崩しながら月々の生活費を補填する、といった考え方が一般化しています。
もはや老後資金は年金のみに頼るのではなく、それ以外に何らかの資金確保が必須です。
不動産投資が活発化している背景には、老後不安による資産形成の意識が少なからずあるでしょう。
ただし、不動産投資は大きなリスクと多額の金銭が用意できなければ始めることが出来ないという思い込みから、とまどう方も多いようです。
不動産投資にそれなりのリスクがあるのも事実ですし、運用する資金が大きいことも、また否定できません。
ですが不動産投資には、小額から始めることが出来る投資方法があるのはご存じでしょうか?
今回は、資金面から不動産投資に二の足を踏む方に対して、少額でも始められる不動産投資の方法について説明することにより、安心して始められるように解説を行います。
目次
従来の不動産投資の考え方
不動産投資は、投資物件を取得して運用することにより利益を得る方法です。
投資利益を得る方法は大きく分けて2種類あり、それぞれインカムゲイン・キャピタルゲインと呼ばれます。
取得した物件を賃貸運用して月々の家賃から利益を得るインカムゲインと、購入した投資物件を買値よりも高く売却することにより、その差額を利益とするキャピタルゲインの2種類です。
どちらにも共通しているのは、いったん投資不動産を購入してから運用しますので、購入費用が必要であることです。
一般的に利益は、投資額の大きさに比例しますので、大きな利益を得るためには投資物件も高額な物を購入しなければならないという理屈になります。
それなりの利益を得たければ、見合う資金を準備しなければならず、またリスクもあることから不動産投資に興味があっても手を出せない方が多いのです。
小額投資という考え方
利益は投資額に比例するし、不動産投資にはリスクがつきもの。
せっかく貯めた貯金を全額、不動産投資に使用するのも嫌だし、多額の不動産投資ローンを借りて失敗したらどうすればよいのか、などと悩みは尽きないものです。
そこで小額投資という考え方が出てきます。
最初から多額の資金で不動産投資を行うのではなく、最初は小額から初めて運用益を活用することより、徐々に投資額を増やしていくという考え方です。
万が一失敗しても納得できる金額から運用を開始して、運用益を積み重ねながら大きな投資物件へとステップアップしていくことを目的としています。
どのような投資にもリスクはつきものですが、その中でも不動産投資は運用リスクを理解して、優良物件を購入し手堅く運用すれば、失敗することが少ない投資になります。
不動産投資の失敗をよく耳にするのは、知識や経験・リスク理解が足りていないのに不動産営業マンに勧められて、身の丈の合わない多額な資金を投入して失敗していることがほとんどです。
不動産投資の成功に必要な情報の大半は、投資家が自ら努力することにより得られるものですし、予めリスクヘッジを考慮して運用をしていれば、失敗のほとんどを回避することが出来ます。
知識と経験を積み重ねる意味においても、小額投資は適しています。
少額不動産投資のメリット
今回のテーマは、小額の投資で運用を開始して、成功と経験度合いに応じて投資額を増やし、将来的に大きな不動産投資を行い個人年金の構築が出来ることを目標としています。
そこで、まず小額投資のメリットについて解説します。
1万円から始められる手軽さ
小額投資最大のメリットが、投資金額の少なさです。
投資する商品によって異なりますが、最小では1万円から始めることが出来ます。
もっとも、利益は投資額に比例しますので、手元に現金はないけど、もう少し高額の運用から開始したいという場合には、全額を融資で補うといった方法もあります。
小額不動産投資の商品については、のちほど詳しくご説明しますが、基本的には複数の出資者を集めて大きな不動産投資を行い、そこから得られた収益を出資比率に応じて配分するといった方法になります。
それらを理解したうえで投資金額を決められる手軽さがあります
リスクは投資金額の範囲内
不動産投資の失敗は、投資した金額に見合う利益が得られないことです。
これは投資利益であるインカムゲイン・キャピタルゲインそれぞれに共通した考え方です。
インカムゲインを目的とした賃貸運用の場合には、借入返済や固定費の支払合計額が年間家賃収入を上回る場合には失敗と言えますし、キャピタルゲインの場合には売却額が購入額を下回れば失敗と言えます。
投資額が大きいほど、これらの失敗による損失も大きくなりますが、小額投資の場合には出資比率によるリスク負担となりますから、最悪でも投資額の範囲で収まります。
また不動産投資は、安全性を重視したローリスク・ローリターンと、ハイリスク・ハイリターンの投資案件が存在しますが、小額投資にも投資額に対して利益の大きいハイリスク商品を選択するといった考え方もあります。
育てる運用益
初めは小額から投資を開始して、不動産投資に関しての知識や経験を積みながら投資額に見合った利益を積み重ね、自信がつき、ある程度の利益が蓄積されたら、その段階に併せて投資先を変更していけるのが小額投資のメリットの一つです。
投資を行えば必ず利益が出るわけではありませんが、それらも全て経験です。
資金と経験を積み重ねながら、運用を検討できます。
税金対策にも活用できる
不動産等のメリットは利益と併せて、節税効果も見逃せません。
これは小額投資であっても同じです。
不動産投資による得られる利益は給与所得と異なりますので、毎年、確定申告が必要になります。
確定申告では投資利益と給与所得を合計して、そこから様々な経費を差し引くことが出来ます。
不動産投資を行う場合には、確定申告が不可欠であることから、計上できる経費の理解を深めて適切に申告をする方法を学べ、税金も低くなりますのでメリットが大きいと言えるでしょう。
少額不動産投資のデメリット
これまでの解説の中で、メリットと併せてデメリットにも多少、触れてきました。
小額で不動産投資が行え、リスクも分散されることから、あまりデメリットがないように感じられる小額不動産投資ですが、投資である以上はデメリットが存在します。
このデメリットを正確に理解することが、小額投資を成功させる秘訣かもしれません。
ここでは改めて、不動産投資ついてのデメリットを解説いたします。
投資物件の範囲が狭い
小額投資の基本は出資者を集めての資産運用であることから、金融商品としてどの不動産でも適応しているものではありません。
つまり、小口商品化されている不動産しか選べないという特徴があります。
一般的な不動産投資ですと、ワンルームマンション・分譲マンション・一戸建て・アパートやマンションの1棟・土地運用など、投資家の資金と経験に併せて不動産物件情報などを活用しながら物件を選ぶことが出来ますが、小額投資にはそこまでの自由性がありません。
投資物件の所有者となり運用するのではなく、個人所有ではなく、あくまでも出資をしている大勢の中の一人であると理解しましょう。
利益率の低さ
小口化商品の場合は組合を形成して共同所有となりますが、それ以外ですと投資家から集められた資金を投資会社が運用して、そこから得られた利益を出資者に配分する方式になります。
そのため、いずれの商品でも単独で不動産投資を行うのに比べると利益率は低くなります。
またJ-REITなどはあくまでも投資信託ですので、委託にも手数料が発生します。
このように小額不動産投資は投資策に運用してもらう形式ですので、投資金額に応じての各種手数料が発生します。
もともと低く配分される利益から手数料負担分を控除すると、総じて利益率が低くなります。
投資先企業の信用も重要
小額不動産投資は個人運用と異なることから、投資先にその運用を委託することになります。
個人運用と違って運用方法を直接指示できるわけでもありません。
また、J-REITのような投資信託ですと、金融商品として販売する証券会社の信用性によって物件価値以外の原因による格付けが異なるなど、自由にならないもどかしさのようなものが存在します。
また投資会社の倒産などによるリスクもあります。
資金の換金がすぐには出来ない
すべての小額投資に当てはまる訳ではありませんが、投資会社が資産運用をおこなうにも一定の期間が必要となります。
そこで、運用期間中の途中引き出し、換金が出来ないことから、運用管理のコントロールが自分で出来ないと感じることもあるでしょう。
少額不動産投資には、こういった一般の不動産投資とは異なる弊害が生じます。
少額で始められる不動産投資方法は4つ
ここまで小額投資の説明と、メリット・デメリットについて解説してきましたが、ここでは具体的に小額投資にはどのような種類があるのかを解説します。
運用窓口や投資方法が異なることから、それぞれの内容を理解して、自分に最も適した小額投資先を検討することが大切です。
J-REIT
REITは、もともとアメリカで生まれた小額投資方法で、不動産投資会社が扱う投資信託です。
日本においては、頭にJの頭文字をつけ「J-REIT」として2001年9月に証券取引所に上場されています。
J-REITの取り扱いは証券会社で行われており、商品分類や委託会社・受託会社や購入時手数料・保有時の信託報酬率・申込単位などの詳細情報を確認して購入できるシステムが構築されています。
投資信託は、投資家から集めた資金をまとめて、運用の専門家が株式や債券・不動産などに投資運用する商品で、投資額に応じて利益が配分されることから金融商品とされています。
金融商品であることからも、銀行預金などとは違い元本が保証されているわけではありません。
想定されるリスクとしては、リート価格変動リスク・信用リスク・流動性リスクなどがあります。
不動産小口化商品
特定不動産を一口、数万円から100万円程度での範囲内を目安として小口化して販売し、家賃収入や売却益を投資額に応じて分配する商品で、基本的な運用方法はJ-REITと同じです。
大きな違いは、金融商品であるJ-REITと違い、小口に権利を分けた不動産を所有することから所有権を持つということです。
このような方式は、不動産特定共同事業法による「不動産特定共同事業」が正式な名称なのですが、認知の度合いが低いことから、この解説でも不動産小口化商品との名称を用いています。
不動産小口化商品は事業主体により「匿名組合型」「任意組合型」の2つのタイプに分かれ、それぞれ特徴があります。
- ・匿名組合型
投資家が金銭で出資を行い、事業者は事業によって得た利益を事業者が投資家に分配する方式です。
投資家と事業者の関係は、匿名契約により締結され、事業者が事業主体になります。
匿名組合型の場合は、運営管理の一切を事業主体が行いますので、投資家とのやりとりは金銭の授受のみとなります。
- ・任意組合型
出資をした投資家が共同で事業主体になります。
この方式の場合には、金銭出資以外にも労務出資や現物出資での出資が可能で、直接の不動産オーナーであるという実感を持ちやすいという特徴もあります。
また任意組合型は、相続税対策に対して最も有効であるとされており、現物や金銭など出資内容に関わらず、相続税は相続税評価額で計算され適用されます。
共通事項として、小口化商品は不動産取得税や固定資産税など、所有することにより賦課される税金を負担しなければなりません。
税金対策として、それらの税金が経費計上出来ることから節税効果が高いと言えます。
不動産小口化商品を販売出来る不動産共同事業者は、国土交通大臣または都道府県知事に対して資本金の額など一定要件を満たしたうえでの届け出業者のみとされています。
クラウドファンディング
不動産プロジェクトに対して不特定多数の出資者を募り、出資する方法です。
プロジェクトごとに必要資金が異なり、出資者の数も目標金額に達するまでの範囲で増減します。
通常、不動産プロジェクトは不動産会社が発案しますので、出資者はその会社に出資を行う形になります。
インターネットのクラウドファンディングサイトで募集をおこなっていることから、不動産小口化商品と似通った性質を持ち混同されがちですが、あくまでもプロジェクトに対しての出資であると理解して下さい。
不動産のプロである不動産会社が起案したプロジェクトですので、内容による人気の度合いも様々にあり、人気プロジェクトはすぐに必要資金に達する傾向が高いことから、敏感に情報収集に努める必要があります。
ワンルームマンション
ほかの3つの方法と異なりますが、専有面積が小さいことから価格の低いワンルームマンションや、築年数が経過するなどして価格の安くなった中古住宅なども小額投資の一つに分類されます。
オーナーとして所有することから、物件選択・運営・管理方針などが自由にできるメリットがあります。
エリアにもよりますが、中古市場ですと100万円程度から物件を探すことも可能ですし、そこから運営のために必要なリノベーション代金などが必要になるなど、金融商品や信託などの小額投資と大きく異なりますが、リターンが最も多くなる可能性があります。
物件選定から売買契約、賃借人の募集や賃貸管理など最も労力を必要としますが、現在において複数の物件を運用して利益を上げている、不動産投資の成功者と言われる方々の多くは低額の不動産の購入をスタートとされています。
所有して運用することから、小額投資の中で最もリスクが高くなる傾向はありますが、投資家としての経験を積み、比較的短期間でステップアップ出来る可能性もまた魅力的です。
まとめ
今回は少額不動産投資について解説を行いました。
不動産投資というと、どうしても高額な資金運用と大きなリスクを考えてしまいます。
今回の紹介でお分かりいただけるでしょうが、運用可能な範囲内での少額から不動産投資を始める方法があるのです。
少額投資であることから大きな収益は期待できませんが、それ以上に不動産投資の知識を学んでいく成長過程として、実際の運用を行うメリットは利益額以上のものがあります。
皆さんも小額から積み重ね、やがて大きく展開できる不動産投資家を目指してみてはいかがでしょうか。