インスペクションとは何?手続き・費用相場などを詳しく解説!【売却をスムーズかつ有利に進めたい方必見】
この記事でわかること
- 住宅のインスペクションとはどのようなものかがわかる
- インスペクションのメリット・デメリットがわかる
- インスペクションの手続きや必要な期間がわかる
- インスペクションの費用の内訳や検査内容がわかる
住宅の売却を行う時には、なるべく買主との取引をスムーズに行い、引渡し後もトラブルを避けたいものです。
そこで最近注目されているのが住宅のインスペクションです。
今回はインスペクションについてその概要、メリット・デメリット、手続きや費用について説明します。
インスペクションは中古住宅の価値や性能を正しく伝えるために行うものとして、近年宅建業法の改正がなされたり、国土交通省のガイドラインが作成されたりするなど、使いやすい制度にするための整備が行われています。
今後、中古住宅の流通が増えるにつれて、主流になってくると思われる手続きですのでしっかりと押さえておきましょう。
目次
インスペクションとは
中古住宅における「インスペクション」とは建物診断、建物状況調査とも呼ばれ、建築士や住宅診断アドバイザーなどの建物の専門家が、目視や非破壊検査などにより建物の劣化や不具合の状況を検査することをいいます。
具体的には土台や床組、建物の基礎、柱や梁の状況、外壁のひび割れや塗装の剥がれ、雨漏りの有無などについて検査します。
日本では、古くから既存の木造住宅の価値は低く、以前は中古住宅の流通が活発に行われる環境ではありませんでした。
しかしアメリカなどの諸外国では築数十年経過した木造の住宅であっても、建物のインスペクションを行うことで性能を検査し、中古住宅の売買が盛んに行われています。
この状況にならい、日本でもインスペクションの文化を根付かせることで中古住宅の価値を維持し不動産市場を活発化させようとする動きがあります。
例えば、インスペクションに関して宅建業法が改正される、インスペクションを行う専門技能者の認証制度がスタートなど法整備が進み、国土交通省もインスペクションに関するさまざまなガイドラインを公表しています。
現在は、インスペクションを請け負う不動産業者も増加しているために、今後は中古住宅の際にはインスペクションを行って建物の状況や性能を明示して取引することが主流になってくると思われます。
インスペクションのメリット3つ
インスペクションは住宅の日常の維持管理のための他、主に土地建物の売却の前に行います。
インスペクションを行うことで、売主にとって様々なメリットがあるからです。
売却不動産としての価値が高まる
インスペクションを行うことによって、築年数に比して住宅の劣化度合いが少ないことが判明すれば、売却不動産としての価値が高いことをアピールすることができます。
住宅の売出価格は、不動産市場の状況や周辺の売買事例、売出価格の相場などのデータを収集し、売却対象不動産の個別の状況を加味して、売主と相談しながら決定します。
しかし対象不動産の個別の状況は、築年数や建物の外観、周辺環境、日照や風通しなど表面的な情報しか考慮されないことが多くありました。
その結果、築年数が経っている中古住宅は安価な査定しか出ないことが通常だったのです。
インスペクション行うことで、プロの目から判断して一般の住宅よりも建材の腐食が少なく、丁寧に利用されてきたとお墨付きが得られれば、住宅の売出価格に反映することができます。
表面的な情報からは判断できない住宅内部の状況について、他の住宅に比べて優れた点をアピールポイントとして、買主に説明することができるのです
当事者双方が安心してスムーズに取引できる
インスペクションがなされると、住宅の不具合や劣化度合いが建物検査報告書によって明らかになるために、買主も安心して取引できます。
その結果、買主候補者が早期に発見でき、迅速な不動産取引をすることが期待できます。
また、特に気になる点については重要事項説明書に記載することにより、当事者双方が不具合や劣化があることを、納得した上で売買取引をすることができます。
このため、契約条件の交渉がスムーズに進むことが多いようです。
また思いがけない住宅の瑕疵が発見されることによる引渡し後のトラブルを避けることにもつながります。
全宅連が2017年3月に実施した住宅売却者を対象とするアンケートでは、51.8%の方が「買手が早く見つかり売却がスムーズにできた」と回答しています。
参考:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会 2017年3月 土地・住宅に関する消費者アンケート調査
瑕疵担保保険に加入できる場合がある
瑕疵担保保険(既存住宅売買瑕疵保険)とは、売り主である個人が、インスペクションに加えて検査事業者に瑕疵担保保険に加入することを依頼することによって加入することができる保険です。
これにより、住宅に瑕疵があった場合には、補修費用が検査事業者に支払われますので、売主が補修費用を負担する必要がなくなります。
また、瑕疵担保保険に加入した物件であれば、買主は、購入物件が築20年以上の木造中古住宅であっても、住宅ローン控除を利用することができますので、売却活動の大きなアドバンテージになります。
中古住宅の流通が進まなかった理由の一つとして、売主が個人であっても民法上の契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任 2020年改正)を負わなければならないことが挙げられていました。
建物の瑕疵は見た目では判断がつかないことも多く、売却後に売主が思わぬ補修費用を負担しなければならないならば、安心して中古住宅の売却ができません。
瑕疵担保保険は、後に紹介する宅建業法上のインスペクションによっては発見することのできないような隠れた瑕疵が保険の対象となるために、売主にとっても買主にとってもメリットが大きいといえます。
瑕疵担保保険に加入するためには、国土交通省指定の研修を受けた建築士資格をもった検査員が住宅のインスペクションを行い、検査に合格することが必要になります。
インスペクションのデメリット3つ
インスペクションには大きなメリットがありますが、中にはインスペクションのデメリットが気がかりで、売却前のインスペクションを躊躇してしまう売主もいます。
しかし、インスペクションの一般的にデメリットとされている事項についても、未然にトラブルが避けられたという面では、必ずしもデメリットとはいえない点については理解しておく必要があります。
不具合が発見されると価格に反映される可能性がある
建物検査を実施してみると、基礎部分や天井裏など、いつもは目につかないところに不具合や劣化・腐食、シロアリやネズミなどの被害が発見される場合があります。
その場合には不具合がマイナス要因と判断され、売り出し価格に反映せざるを得ません。
売り出し価格が減額されることをデメリットととらえる人もいますが、そのような不具合を売却前に発見し、トラブルを未然に防ぐことがインスペクションの大切な目的の一つです。
事前に建物の不具合を説明されれば、買主も納得の上で取引の交渉することができますが、購入後に大きな不具合が発見されると売買価格の減額どころか、契約解除に発展する場合もあります。
そのような予期せぬ事態を起こさないためにも、インスペクションを依頼しておこうという方が増えているのです。
修補費用がかかる可能性がある
売却対象の不動産に、このままでは売却できないような大きな不具合が認められた場合には、不具合の修補を不動産業者から提案される場合があります。
たとえば、外壁のひび割れの補修、床の腐食を修補するための床の張り替え、配管の腐食が認められた場合の配管の取り替えなどです。
このような場合には、売却前に不具合部分の修補費用がかかるために、手持ち資金が必要になります。
あるいは手持ち資金がない場合には、売却までのつなぎ資金としてリフォームローンを活用することを考えなければならない場合もあるでしょう。
費用がかさむために、インスペクションを行なった時のデメリットとして捉えられがちですが、このような住宅の大きな瑕疵は、売却後の買主の住み心地にも直結してきます。
買主は長期間にわたって対象不動産で生活するわけですから、気持ちよく過ごしていただくためにも、大きな不具合については事前に直しておきたいものです。
報告書の提出について費用と時間を要する
次に述べるように、インスペクションを行うときには手続きの費用と期間を要します。
インスペクション費用については、売却前に事前に用意しておかなければならないことがほとんどのため、負担に感じる方もいると思います。
また、住宅の売却を急ぐ場合には、インスペクションを行うときに必要となる時間が十分に取れないことがあるでしょう。
このような場合には、インスペクションを行うことがデメリットになってきます。
手続きの流れとかかる時間を確認
住宅のインスペクションは、専門の検査事業者によって実施されます。
手続きを行うために一定の期間を要しますが、多くの場合、売却活動のスケジュールに支障の出るようなことはありません。
ここでは大まかな手続きの流れを紹介します。
書類を整理する
まずは、住宅インスペクションに必要な書類を整理することから始めましょう。
書類の中には、住宅を建設した時から一度も中を開けていない書類もあるかもしれません。
以下の書類について、実際に保管してあるかどうか、事前に確認しておく必要があります。
すべての資料がなければインスペクションができないわけではありませんが、あった方が建物検査の精度は高まります。
法務局で取得できる資料 | 不動産登記簿謄本(土地・建物) |
---|---|
公図 | |
実測図・境界確定測量図 | |
建物図面 | |
各階平面図 | |
建物設計図書関連 | 建物配置図・外構図 |
敷地求積図 | |
平面図 | |
立面図 | |
断面図 | |
矩計図 | |
設備図 | |
仕上げ表 | |
確認申請書面 | 建築確認申請書面 |
検査済証 | |
性能評価関係書面 | 設計住宅性能評価・建設住宅性能評価・既存住宅性能評価 |
その他書面 | 住宅販売時に使用されていたチラシ |
売買契約書・重要事項説明書 |
不動産仲介会社に相談する
住宅のインスペクションを行うのは、住宅を売却する前が多いと思います。
住宅のインスペクションを行う検査事業者は、不動産売却の仲介を依頼する不動産会社にあっせんをお願いするのが良いでしょう。
インスペクションの検査事業者については、国土交通省の既存住宅状況調査技術者検索ページや民間の不動産情報サイトなどから検索して探すことも可能です。
しかし、インスペクションの結果次第では売却活動の内容が変わってくるために、売買の仲介を依頼しようとしている不動産会社との連携が必要になってきます。
また、住宅のインスペクションは比較的新しい制度であるために、インターネット上には色々な情報が溢れており、中には信頼性に欠けるものもたくさんあります。
経験や実績のない検査事業者に依頼して、余計なトラブルになってしまうことを避けるためにも、信頼できる不動産会社に検査施行者のあっせんを依頼することが無難です。
検査内容を確認し見積もりを取得する
不動産仲介会社からはできれば複数の検査事業者を紹介してもらうことをおすすめします。
複数の建設業者から検査内容の説明を受け見積もりを取得することで、検査の大まかな内容と検査費用の相場観を把握することができます。
検査内容について詳しく知りたい場合には、不動産仲介業者にお願いして検査事業者に直接会って話を聞いてみたり、質問をしてみたりすることで、インスペクションについての理解を深めることができます。
瑕疵担保保険への加入を考えている場合には、この時点で瑕疵担保保険の手続きを代行してもらえるのか確認しておくと良いでしょう。
瑕疵担保保険は、正式な登録を受けた検査事業者しか加入できないために、インスペクションの実施後だと場合によっては瑕疵担保保険に加入できないこともあり得るからです。
日時の決定とインスペクションの準備
インスペクションを行う検査事業者が定まった場合には、検査事業者と、実際にインスペクションを行う日時のすり合わせを行います。
このとき、不動産売却のスケジュールに支障が出ないか、改めて不動産仲介業者に相談しましょう。
できればオープンハウスや物件見学会の前にインスペクションのスケジューリングをしておいた方が、後々買主候補者にインスペクションの状況を現地で説明することができるために、物件の優れた点をアピールすることも可能になってきます。
また、インスペクションを行うときには住宅の周りや床下、場合によっては天井裏の状況も目視で確認することがあるために、障害物が多い場合には事前に移動・撤去しておく必要があります。
実施日当日
インスペクションの実施日当日は、できるだけ依頼者が立ち会うようにしましょう。
検査事業者の建築士などの不動産のプロがどのような視点で建物を検査しているのかについて見学することで、不動産についての知識が深まるとともに、中古住宅を購入する際のチェックポイントがわかってきます。
また、検査日当日になって残置物や障害物を取り除かなければならないということが判明した場合にも、住宅の所有者が一緒に立ち会っているとスムーズに対処できる場合が多いと思います。
当日になって不測の事態が生じ、依頼者がインスペクションに立ち会うことが出来なくなっても、インスペクションを実施することは可能である場合があります。
その際には親族や友人に立ち会いを依頼することも考えましょう。
建物検査報告書の受領と料金の支払い
インスペクションを実施してから約2週間から3週間後、検査事業者から直接、もしくは不動産仲介業者を通して建物検査報告書を受領します。
インスペクションの料金は、不動産売却の仲介手数料とは別料金になります。
また支払いのタイミングについても不動産売却の後ではなく、建物検査報告書の受領後速やかに支払う必要がある場合がほとんどです。
建物検査報告書には、検査対象となった土地建物の概要、インスペクションの検査項目や評価方法、検査対象の総合評価、性能評価、劣化状況、不具合や瑕疵の程度、現場写真などが掲載されています。
異常がなければ「異常なし」と記載されており、物件の売却をする時に他の売却不動産よりも優位な点としてアピールすることができます。
しかし中には不具合を指摘する項目も見つかるかもしれません。
その時には、軽微な不具合であればその場で不動産会社やインスペクションを行った検査会社に不具合の修補について依頼することも可能です。
必要な期間は2週間から3週間
インスペクションに必要な時間は、インスペクションの日取りを決めるまで1週間から2週間、インスペクション当日の実施時間として3時間から6時間をみておけばよいでしょう。
その後、建物検査報告書を受領して料金を支払うまでは、およそ2週間から3週間です。
インスペクションを実施しようと決めてから建物検査報告書を受領するまで、約1ヶ月かかることを念頭において、住宅の売却スケジュールを不動産仲介業者と相談する必要があります。
インスペクションにかかる費用の内訳と相場
インスペクションにかかる費用の総額は、概算で5万円から15万円になっています。
費用に幅があるのは、基本料金に加え、屋根裏や床下をインスペクションすると追加費用が加算されるからです。
中には、屋根裏や床下などのインスペクションを標準的なメニュー内容に加えて、他社よりも割安でインスペクションを提供している検査事業者もあるようです。
戸建住宅の床面積が標準的な住宅よりも広い場合には、料金が加算されます。
瑕疵担保保険に加入する場合は、インスペクションにかかる費用に加え、保険内容に応じて数万円の保険料が加算されます。
インスペクションの内容とその費用の内訳は以下の通りとなっています。
項目 | 費用の相場 |
---|---|
基本料金 | 5万円~7万円 |
床下の侵入による目視検査 | 3万円前後 |
天井裏や小屋根の進入による目視検査 | 2万円~3万円程度 |
ドローン等による屋根の検査 | 2万円程度 |
マンションの場合 | 5万円程度 |
基本料金5万円~7万円
インスペクションの基本メニューは、建物の構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分についての、目視による検査です。
この検査を基本メニューとし、5万円から7万円の検査料金を設定しています。
次項で説明するオプションによるインスペクション依頼しない限り、インスペクションを依頼した検査事業者によって、インスペクションの内容が極端に変わるということはありません。
「建物の構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分についての、目視による検査」は宅地建物取引法上の重要事項説明で求められる建物状況調査の内容に該当するからです。
具体的には、基礎部分、柱部分、外壁など構造上重要な部分や、屋根や雨水排出のための配管、雨どい、天井、エアコンの配管などの開口部についての腐食やひび割れ、劣化度合いについて、目視で非破壊による検査します。
床下の侵入による目視検査3万円程度
基本メニューにおいては床下については容易に目視で確認できる部分のみの検査となりますが、オプション料金を加算することによって、実際に床下に潜り込んで基礎部分の腐食などがないか確認することができます。
料金は3万円程度加算されます。
近年では台風による床下浸水の被害や、床上浸水の被害が多数報告されているために、目に見えない部分において建材の腐食や床材の劣化が発見されることが多くなっています。
インスペクションによって、将来において建物の構造上危険な部分が認められたり、地盤の状況の変化によって沈下やひび割れが発見されたりしたような場合には、補修が必要になってきます。
天井裏や小屋根の進入による目視検査3万円程度
天井裏や屋根に実際に侵入して屋根裏の腐食部分、ネズミなどの小動物や虫による被害の有無を確認する場合もオプションとして設定している検査事業者が多いようです。
費用は基本メニューに加えて2万円から3万円ほどとなっています。
床下や基礎部分に比べると劣化度合いは小さい場合がほとんどですが、屋根部分の劣化や飛来物の落下によって発生した小さな腐食部分から雨水が浸透して、屋根裏部分の建材の腐食につながる場合があります。
ドローン等による屋根の検査2万円程度
屋根については、小さな家でしたら基本メニューの範囲内で目視によるインスペクションが実施可能です。
追加料金は2万円程度です。
しかし、大きな家で屋根に登ることが難しい場合には、ドローンなどによって空撮することで精度の高いインスペクションを実施することができます。
近年では、ドローンの操作性が向上しカメラが搭載できるようになったことで、空撮をすることが非常に簡単になりました。
ただし東京都などの一部地域の場合は、ドローンを操作することが禁じられている地域、またドローンの操作に一定の届出や審査が必要になる場合がありますので、事前に行政に確認しておく必要があります
マンションの場合の相場5万円程度
マンションのインスペクションは専用部分の床材や壁、水回り、玄関、ポーチ、ベランダ、バルコニーの腐食や劣化度合いを目視により検査します。
費用は5万円前後です。
マンションの場合には鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の物が多いため構造がしっかりしており、一般の戸建住宅と同じようなインスペクションは必要ありません。
しかし、中古マンションの建物の信頼性を高めて売買をスムーズに行うために、マンションの専有部分におけるインスペクションを依頼する売主もいるために、実施している検査事業者も増えています。
共用部分についてもインスペクションの対象とするためには、管理組合の同意が必要です。
インスペクションに関するよくある質問
住宅のインスペクションは専門的な事項が多く、一般の方にとってはなじみのない専門的な用語が多く使われることから、インスペクションを依頼することについて不安に思う方も多いと思います。
ここでは、インスペクションを行う際のよくある質問についてまとめましたので、インスペクションを依頼する際にぜひご参考ください。
Q:インスペクションではどのようなところを調査するの?
A:インスペクションは、基本的には目視による建物の現況の調査を行い、構造の安全性やこれから将来にわたって長期間住み続けた時に何らかの支障が生じないかについて判断し報告書にまとめて説明するものです。
インスペクションには、上記の基本的なインスペクションの他以下のような内容のものもあります。
・すでに日常生活に支障をきたしている場合に破壊検査を含む建物状況調査を行って不具合の原因を発見することを目的とするもの(二次的なインスペクション)
・リフォームや建物修繕を行った後に、その増改築や内装の変更、修補状況について検査して、安全性を評価したり、住宅の性能を評価したりするもの(性能の向上に関わるインスペクション)。
二次的なインスペクションや、性能の向上に関わるインスペクションは、住宅の状況に応じて特別に行われるものです。
売却前や日常の点検・維持管理のために行うインスペクションは、あくまで基本的なインスペクションのことを指しています。
具体的には以下のような項目について点検します。
基礎土台・床部分
- ・基礎部分のコンクリートの劣化や鉄筋の露出やサビの有無
- ・土台や床組のひび割れやたわみの有無
- ・床の傾斜の有無
- ・床に傾斜がある場合はその原因となる床下部分の不具合の有無
外壁・内壁・柱・軒裏部分
- ・合板、防水紙、断熱材、構造材に達するような著しいひび割れや損傷の有無
- ・タイル材、モルタル材、外壁塗装の劣化、ひび割れ、欠損の有無
- ・構造上重要となる柱の著しいひび割れの有無
- ・壁や柱の傾斜の有無
バルコニーや天井
- ・バルコニーの傾斜の有無・支柱のぐらつき
- ・天井の損傷、ひび割れ、腐食、変色、傾斜の有無
Q:インスペクションに関して宅建業法が改正されたそうですが、その内容は?
A:2018年4月1日に宅建業法が改正され、中古住宅に関するインスペクション(建物状況調査)について、媒介契約書、重要事項説明書、売買契約書に記載するインスペクションに関する事項が追加されました
- ・宅建業者(不動産業者)が、住宅の売主や買主と不動産売買の媒介契約を締結する時には、媒介契約書に建物状況調査を行う検査事業者のあっせんの可否について記載する必要があります。あっせんができる場合には、依頼者の求めに応じて検査事業者を斡旋しなければなりません。
- ・建物状況調査が実際に行われた場合には、宅建業者は、重要事項説明時において買主に対して調査報告の内容を説明しなければなりません。
- ・売買契約締結時には、建物状況調査の内容について、売主・買主双方が確認した上で、その内容について、宅建業者が売買当事者に対して書面で交付しなければなりません。
Q:インスペクションを行う事業者には資格や登録制度があるのですか?
A:宅建業法に規定されたインスペクションを行う場合には、 国土交通省の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を終了した建築士が実施しなければならないことになっています。
インスペクション当日に現地調査に来訪した検査担当者が、国が定める要件を満たしたモードであるかどうかについては、免許証のようなカードなどを見せてもらうことによって確認することができます。
Q:住宅を売却するときのインスペクションは売主の義務ですか?
A:インスペクションを実施することについては、民法上も宅建業法上も 売主の義務として規定されているわけではありません。
宅建業者からインスペクションを勧められたり、買主候補者からインスペクションを行ってほしいとの依頼を受けたりした場合でも、売主はその求めに必ず応じなければならないというわけではありません。
買主が自己の費用で検討対象物件についてインスペクションをしたいと求めた場合には、売主の承諾が必要となります
しかし、国土交通省は中古住宅の流通を活発化させて、中古住宅の価値を高めまた維持し、取引当事者が安心して中古住宅の売買ができるようにインスペクションをすることを推奨しております。
Q:既存住宅瑕疵保険と不動産業者が提供するアフターサービスや保証は同じですか?
A: 既存住宅瑕疵保険は、建物状況調査を実施して一定の要件を満たした場合に、検査事業者が売主の依頼に応じて加入するものです。
新築住宅のハウスメーカーや、不動産仲介業者が提供する一定の保証やアフターサービスとは異なるものです。
詳細については以下のリンクをご参照ください。
参考:一般社団法人 既存住宅瑕疵担保責任協会 既存住宅売買のかし保険(個人間売買タイプ)
まとめ
住宅のインスペクションは、日本ではまだまだ発展途上にある制度です。
しかし、中古住宅の流通を促進し、住宅の価値を適正に判断して中古住宅の売買を行うことは、不動産市場に新たな風を吹き込むことになります。
売主・買主双方にとっても先々のトラブルの防止になり、メリットが大きいものです。
中古住宅の売却をする時には、住宅のインスペクションを行うことも、一度検討してみてはいかがでしょうか。