【不動産売却後の確定申告】税理士に依頼した場合と自分でやる場合の流れと費用相場の比較
この記事でわかること
- 不動産売却後の確定申告の内容と理由がわかる
- 確定申告のやり方と、申告方法がわかる
- 確定申告を税理士に依頼する場合の報酬の相場がわかる
不動産の売却が終わった後にしなければならない作業として確定申告があります。
サラリーマンとして働き、給与で暮らしていると縁がない言葉なので、初めての方も多いかもしれません。
そこで、確定申告とは何かというご紹介と申告の方法、税理士に依頼する際の相場についてもご紹介します。
不動産売却後に確定申告が必要な理由
テレビや新聞などで12月ごろになると確定申告という文字を目にすることも多くなると思いますが、一般のサラリーマンの方には馴染みがない言葉でしょう。
しかし、不動産売却をした後は、税金の関係で確定申告をする必要が出てくるので注意が必要です。
確定申告とは何か
確定申告とは、過去1年間に得た所得の合計金額を確定させて税務署に申告し、税金の金額を確定させる手続きのことです。
サラリーマンのような給与所得者は会社が代わりに年末調整を行っているため、確定申告を意識することは少ないかもしれませんが申告と納税をしていないわけではありません。
なお、確定申告は毎年2月中旬から3月15日の間に、住所地を管轄する税務署に申告します。
例年だと全国で約2,000万人がこの時期に確定申告をするので、この期間は税務署が大変混み合います。
どうして確定申告が必要になるのか
副業をしていないサラリーマンのように、その人の所得が給与だけの場合は確定申告をしなくても会社がその人の全ての所得を把握しているので、代わりに年末調整をすることができます。
しかし、不動産を売却すると譲渡所得と呼ばれる所得が発生し、また売却にかかった費用なども発生しますが、この所得は会社の給与とは別の所得になります。
この譲渡所得や費用が、サラリーマンの給与所得とは別の所得になるため確定申告の対象になるのです。
つまり、不動産を売却した翌年は、確定申告をする必要があります。
確定申告をしないとどうなるのか
確定申告は、所得と費用について税務署に申告をする手続きです。
つまり、不動産を売却したらマイナスになってしまった場合や、利益がなかった場合は税金が課税されないのだから確定申告を行う必要がないのではないかと思われる方もいるかもしれません。
しかし、仮に譲渡所得がマイナスだったとしても、確定申告をすることをお勧めします。
なぜなら、確定申告は税金を納める手続きだけではなく、納税しすぎた税金の還付を受ける手続きも含んでいるからです。
つまり、確定申告は支払いすぎた税金を取り戻す手続きも兼ねているため、確定申告をした方が将来にとって良いことが多いでしょう。
万が一、所得があるにもかかわらず確定申告をしないとどうなるか
仮に、譲渡所得があるにもかかわらず、確定申告をしなかった場合はどうなるのでしょうか。
この場合は、無申告加算税 と追加の税金と、本来支払うべき税金にさらに延滞税が課税されます。
無申告加算税とは、納付する税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合で、本来の税額とは別に発生する税金です。
延滞税 とは、税金が定められた期限までに納付されない場合に自動的に課せられる利息に相当する税金のことです。
税率は未納期間に応じて異なり、平成30年1月1日から令和2年12月31日までの期間は年2.6%です。
いずれにせよ、確定申告をしないと税金が増えるだけでいいことは一つもありませんので、期限内に確定申告をすることをお勧めします。
青色申告と白色申告とは何か
確定申告には白色申告と青色申告の2種類があります。
青色申告とは、所得税を正確に納税するために行う申告方法のことです。
青色申告の対象者は「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかの所得がある個人事業主です。
青色申告では、一年間で発生した所得金額を計算するために、収入や経費に関する記録と複式簿記の帳簿が必要で、それを保存しておく必要があります。
具体的に提出しなければならない書類は、確定申告書、控除を証明する書類、青色申告決算書、貸借対照表と損益計算書です。
また貸借対照表と損益計算書は、総勘定元帳と仕訳帳を根拠に作成する必要があります。
一方、白色申告は、青色申告に比べて提出する書類が非常に簡略化されています。
提出しないといけない書類は確定申告書、控除を証明する書類、収支内訳書だけで、青色申告書に比べると少なくて済みます。
青色申告のメリット、デメリット
青色申告の税金面でのメリットは、大きく分けて4つあります。
一つ目は、最大65万円の青色申告特別控除が受けられる点です。
税金の対象である所得が控除されるので、節税効果が非常に大きいです。
二つ目は、減価償却の特例を受けられることです。
30万円未満のものであれば一括で全額経費にすることが可能なので、所得金額を減らすことができるため税負担を軽減できます。
三つ目は、赤字を最大3年間繰り越せることです。
損失の繰り越しをすれば、その年の所得金額を減らすことができるため、税負担を軽減できます。
四つ目は、家族の給与を必要経費にすることができることです。
たとえば、家族が仕事を手伝っている場合などはその人に対して給与が支払われていれば、その給与を必要経費として算入することができます。
逆にデメリットは、やはり手間がかかることです。
まず事前準備として、青色申告を行うためには開業後2ヶ月以内に税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出しなければなりません。
その上で、複式簿記で帳簿をつけ、総勘定元帳と仕訳帳の作成をし、貸借対照表と損益計算書の作成が必要です。
白色申告のメリット、デメリット
白色申告のメリット、デメリットは青色申告のメリット、デメリットの裏返しになります。
白色申告は、青色申告で受けられる税金面でのメリットを受けることができませんが、代わりに提出しなければならない書類は簡略化されて手間がかからないと言えます。
確定申告を行う2通りの方法
確定申告の方法には大きく分けて、税理士に依頼をして書類作成・申告をする方法と、自分で書類を作成して申告をする2通りの方法があります。
それぞれのやり方について簡単に解説をしていきます。
税理士に依頼する方法
税理士とは、税務署に提出する届出書を作成したり、代わりに申請したりすることができる専門家です。
そのため、確定申告も税理士に依頼して代わりに行ってもらうことが可能です。
自分で書類を作成する時間がないケースや、税理士に依頼した方が確実で安心という場合は税理士に依頼して書類の作成と提出を依頼しましょう。
自分で確定申告をする方法
税理士に依頼しない場合は、自分で届出書を作成して確定申告をすることになります。
自分で届出書を作成する場合は、普段使用している会計ソフトを使用して書類を作るケースが一般的です。
また税務署や市役所などでも書類作成について無料相談会を開いているので、このような機会を利用して作成方法のアドバイスを聞く方法もあります。
確定申告の方法について
自分で確定申告をする場合の書類の提出方法については、3つの方法があります。
一つ目は、直接書類を持参して税務署に行く方法です。
この方法は、目の前で書類を受け付けてくれるので確実ですが、混み合っている時期は待ち時間も長くなります。
書類作成に自信がなくて、時間に余裕がある方にはお勧めです。
二つ目は、書類を印刷して税務署に郵送して提出する方法です。
この方法は、なかなか平日に休めない方には一番お勧めの方法です。
そして、三つ目は、e-Taxと呼ばれるインターネットを利用して提出する方法です。
この方法は電子証明書の取得、ICカードリーダーを揃える必要はありますが、インターネットを利用して書類の提出、申告を済ませることができます。
確定申告を税理士に依頼する際の流れ
確定申告を自分で行うのはちょっとハードルが高いと感じる方は、まずは税理士に依頼することを検討してみましょう。
ここでは、税理士に確定申告を依頼する大まかな流れについてご紹介します。
依頼までの流れ
確定申告の申告期限は毎年3月15日までですが、実際の書類作成業務から考えるとやはり早めに依頼することをお勧めします。
税理士側は年末から書類作成の準備などを行っているため、費用の見積もり等は年内に済ませておくとスムーズに進めることができるでしょう。
書類の作成のために資料の送付
依頼する税理士が決まったら、確定申告のための資料を送付しましょう。
具体的には不動産事業で得た利益や、支払った費用などの領収証、通帳のコピー、源泉徴収表、振り込みの控えなどです。
いくら税理士といえども、作成する書類の元がないと作成することができませんので、この書類の送付はもれなく行いましょう。
確定申告書の提出
税理士によって対応は異なりますが、通常の依頼は提出までを含めて税理士に依頼することが一般的です。
その際に、納税の必要がある場合には納税方法も事前に取り決めておきましょう。
書類の返却、報酬の支払い
申告期限までに税理士が申告した後は、申告書控えや資料などの返却を行います。
税理士への報酬支払いもこの時期であることが多いです。
税理士に確定申告を依頼した場合の費用
確定申告に必要な書類の作成と申告を税理士に依頼する場合は、税理士に対しての費用が発生します。
ここでは、税理士に支払う報酬の相場について解説していきます。
税理士に支払う報酬の相場について
税理士に税務を依頼する場合は、大きく分けて「通常の顧問契約」と「確定申告のみ」の2つに分けることができます。
通常の顧問契約の場合は、定期的に税理士と面談をしたりするなどの継続的な契約のことです。
一方、確定申告のみの依頼は、確定申告の時期限定の依頼方式です。
通常の顧問契約と比べると報酬は安く依頼できる傾向にありますが、対応する業務内容は限定的でほとんどの場合は税理士との面談などはありません。
青色申告の相場について
税理士の報酬は依頼する業務の内容、納税者の所得の種類や作成する書類の種類、記帳代行するかどうかによって大きく異なります。
そのため、あくまでも一般的な例としての報酬の相場をご紹介します。
青色申告の場合は、収入や経費に関する記録を複式簿記の方式で記帳をする必要があります。
そのため、依頼内容には記帳作業が必ず発生することになります。
また、総勘定元帳と仕訳帳を根拠にした貸借対照表と損益計算書の作成が必要になるため、この書類の作成も含めての依頼になります。
以上の含めた場合の青色申告の税理士報酬の相場は、簡略化されたものであれば約3万円から約5万円の間、不動産を事業としている場合は、5万円から10万円前後が相場になります。
白色申告の相場について
白色申告の場合は、青色申告よりも作成する書類は少なくなります。
しかし、平成26年からは白色申告であっても書類の保存と帳簿付けが義務付けされたので、依頼内容とはならなくても書類の保存と帳簿は付けておかないといけないので注意しましょう。
白色申告の税理士の相場ですが、青色申告に比べて上限が低いといった違いがあります。
そのため簡略された規模であれば3万円前後、不動産を事業としている場合は5万円前後が相場でしょう。
不動産を売却した場合
不動産を売却した翌年には確定申告をする必要がありますが、この時の手続きは通常とは添付する書類が異なるため税理士に支払う費用も通常の相場とは別です。
不動産を売却した翌年の確定申告に対する税理士報酬の相場は、売却した不動産の売却益によって変動します。
たとえば、売利益が1,000万円以上3,000万円未満場合は、10〜20万円程度が相場と言えるでしょう。
税理士に依頼した費用を安くする方法
確定申告や不動産を売却した場合の税理士に支払う報酬の相場は、事業規模によって変わりますが決して安いものではありません。
そこで、確定申告の税理士費用を少しでも安くできる方法をご紹介していきます。
まず税理士報酬の内訳を考えること
一般的な税理士の仕事は、顧客から出された資料を元にして書類を作成することですが、その顧客からの書類が完璧に揃っていることはほとんどありません。
実際には書類が不足していたり、データとデータを補完するための時間が大きくかかるため書類作成にかかる時間が増加したりするのです。
そこで、依頼する場合でも税理士事務所が行う手間を極力省ける状態で依頼することが報酬費用の節約につながるのです。
書類作成の元になる収入や領収証は一覧表にまとめておく
税理士事務所の最初の仕事は、顧客から送られてくる領収証類をまとめることですが、これらの作業を代わりにきちんと行いましょう。
たとえば、普段使用している会計ソフトやエクセルなどに入力して、費用や出費をまとめることが大切です。
もちろん1年分の出費をまとめることは手間がかかる作業ですが、月ごとに入力する習慣にして税理士費用の節約を心がけましょう。
経費を節約するため会って面談ではなくではなくテレビ電話でする
確定申告だけであれば通常面談は発生しませんが、申告内容に疑問があれば税理士は依頼者から事情を聴取する義務があります。
このような場合は交通費をかけて会うのではなく、電話面談などで代替するように交渉しましょう。
特に2020年は新型コロナウイルスの影響でオンライン面談も一般的になってきたため、感染拡大を防ぐ意味と交通費を節約する目的で交渉しやすいでしょう。
やりとりは郵送よりも記録が残るメール中心にする
確定申告を依頼した後は、書類のやりとりが発生しますが、原本が必要なもの以外はなるべくメールで済ませるようにして郵送費用を節約しましょう。
特にメールでのやりとりの場合は記録を残すこともできるため一石二鳥とも言えます。
メールを活用することで、郵送費を節約できるため、結果的に税理士に支払う費用を安くすることができます。
まとめ
以上が、不動産の売却が終わった後に行う作業としての確定申告のご紹介でした。
青色申告も白色申告もそれぞれにメリット、デメリットがあるのでご自身の状況に合わせて選択をするのが一番良い方法かと思います。