中古マンションの耐用年数は?減価償却の計算方法や寿命が来たときの対処法を解説
この記事でわかること
- 中古マンションを購入した人、購入したい人がマンションの「寿命」と「耐用年数」の違い
- 「寿命」と「耐用年数」の違いを理解した上で、とりうる対応別のメリット・デメリット
- 建て替えを検討している人、買い替えを検討している人がとるべき手段
戸建てやマンションのような不動産には問題なく住める年数、いわゆる「寿命」というものがあります。
しかし、不動産の場合は、食品の消費期限と違って、具体的に何年で建物が使えなくなる、という日付があるわけではありません。
そこで、中古マンションを購入した方や購入を検討している方に向けて、「寿命」「耐用年数」「築年数」などを区別しながらわかりやすく説明していきます。
目次
中古マンションの耐用年数は40年前後
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のマンションの場合、法定の耐用年数は47年とされています。
税金などの計算では、47年経つと価値はゼロになります。
法定耐用年数と実質的な寿命は多少異なるものの、中古マンションの場合は購入した時点ですでに築数年経過しているものが多く、耐用年数は40年前後と考えるのが一般的です。
マンションの「寿命」と「耐用年数」の違い
マンションの「寿命」と非常に似た言葉として、「耐用年数」という言葉があります。
ここではこの2つの言葉の違いを比較しながらわかりやすく解説していきます。
明確に決まっている「耐用年数」、決められない「寿命」
耐用年数と寿命の一番の大きな違いは、マンションの寿命は明確に決まっていないのに対して、耐用年数は法律で明確に決まっていることです。
耐用年数はマンションの構造によって1年単位で決まっていて、例えば鉄骨鉄筋コンクリート造であれば47年、れんが造・石造・ブロック造であれば38年と定められています。
一方、寿命は建物に住むことのできる期間を指すため、法律で具体的な年数が決められておらず、構造が同じでも寿命は一律ではありません。
もちろん同じ建物であっても部屋の使い方によって劣化のスピードは変わるため、具体的にいつ寿命になると決めることはとても難しいです。
税金のために作られた「耐用年数」、住むための基準である「寿命」
次に大きな違いは、それぞれの目的です。
耐用年数は、国税庁が定めていることからわかるように、本来は建物に関する税金の計算の際に使用する数字です。
これに対して、寿命は住む人があとどのくらい住むことができるかを判断する際に用いる数字です。
耐用年数が過ぎた後のマンションを購入する際の注意点
耐用年数はあくまで税務上の計算方法であって、マンションの寿命と一致するものではありません。
しかし、中古マンションを購入するケースにおいて銀行は、住宅ローンの年数を計算する際に参考にする場合があります。
例えば、先ほどの鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションを築20年時点で購入しようと思った場合、銀行は耐用年数を住宅ローンの上限とする場合などです。
このケースだと、47年-20年=27年で、最長でも27年しか住宅ローンが組めない場合もあります。
つまり耐用年数は寿命とはイコールではなく、あくまでも耐用年数は減価償却の目安となるものなのです。
減価償却とは
耐用年数の長い不動産や車などを購入したとき、購入した年に一度に費用として計上してしまうと偏りが出てしまいます。
そこで、それぞれの利用可能な年数に応じて、その年数の間毎年費用として計上する方法が減価償却です。
この章で、減価償却を行うメリット・デメリットや具体的な計算方法を確認しましょう。
減価償却を行うメリット
減価償却を行うメリットは、以下の通りです。
- ・数年間経費計上できる
- ・買い替え時期を考えるきっかけになる
- ・設備投資によって節税が可能
以上の内容について、詳しくみていきましょう。
数年間経費計上できる
数年間経費計上できることが挙げられます。
マンションなどの場合、購入した年に全て経費計上すると、その年の利益は大幅に減少する形になるうえ、翌年以降は経費に計上できず不利益を被ります。
減価償却によって複数年に分けて計上できれば、経理上起きる不利益が解消されるのです。
買い替え時期を考えるきっかけになる
次に、買い替え時期を考えるきっかけにできる点もメリットです。
減価償却に耐用年数があるため、減価償却費がなくなったタイミングで買い替えやリフォームについて考えられます。
設備投資によって節税が可能
また、設備投資によって節税が可能になる点も減価償却のメリットです。
経費として設備投資を行って減価償却費を増やすと、利益を減額させられるため節税につながります。
減価償却のデメリット
減価償却を行う主なデメリットは、以下の2つです。
- ・購入時は現金支出が重く感じることもある
- ・耐用年数と中古マンションを使用できる年数に差が生じることがある
それぞれ内容を見ていきましょう。
購入時は現金支出が重く感じることもある
減価償却は実際の現金移動ではなく、あくまで帳簿上の処理の話です。
マンションを購入すれば、実際には多くの資金が一度に必要となります。
帳簿上は数年にわたって分割できても、現金や借入金の項目では実際の数字がそのまま反映されます。
そのため、経理上黒字であっても現金が不足するような事態も起きかねません。
耐用年数と中古マンションを使用できる年数に差が生じることがある
次に、耐用年数と中古マンションを実際に使用できる年数に差が生じることがある点も、デメリットとして挙げられます。
使用不能になってからも経費がかかる状態にならないよう、リフォームや買い替えの計画を立てておくことが大切です。
耐用年数を使った減価償却の計算方法
それでは、具体的に耐用年数を用いた減価償却の計算方法を確認しましょう。
例えば、鉄骨鉄筋コンクリートのマンションを4,700万円で購入したとします。
このマンションは耐用年数が47年なので、47年間かけて減価償却していくことになります。
減価償却とは、高額なものを購入した際の代金を分割して計上できる制度です。
そして、税金がかかる対象としての価値は新築の時点から毎年100万円ずつ減少していき、47年後には耐用年数上では0円になる、つまり価値がなくなるというように計算します。
購入した中古マンションの寿命を決める要素
「マンションの寿命はどのくらいなのか」と考える人は、いったいどのようなことを想像するでしょうか。
そもそもマンションは基本的にはコンクリートと鉄筋、鉄筋でできているものなので、ある日に急に壊れることはありません。
しかし、マンションはいきなり壊れない代わりにゆっくりダメになっていきます。
ここでは、マンションの寿命を決める要素を順番に説明していきます。
建築時期と構造
マンションは建てられた年代によって、建物の寿命が大きく左右します。
これは建てられた時期の耐震基準によって構造が全く異なるからです。
一番の分かれ目は1981年(昭和56年)5月31日までに、建築確認を受けたかどうかです。
業界では1981年より前の基準を「旧耐震基準」、それよりも後の基準を「新耐震基準」と呼んで区別しています。
注意すべき点は、建築確認を受けた時期が基準なので建物の完成年月日ではないという点です。
通常はマンションの建設には工事期間が1年から1年半程度かかるため、早くても昭和57年(1982年)の夏以降に完成したマンションから新耐震基準になっているといえるでしょう。
詳細については、不動産購入時に説明を受けた重要事項説明書で必ず説明することになっているのでご確認ください。
旧耐震基準では「震度5強程度の地震ではほとんど建築物が損傷しない」とされているのに対して、新耐震基準では震度6以上の地震に耐えられることを想定しており、新耐震基準のマンションのほうが圧倒的に寿命が長くなります。
材質
次に、建物の材料であるコンクリートが大きく寿命に影響します。
これはひとえに施工会社によるものと考えられています。
コンクリートの材料はセメントなので、そのセメントの質がよいかどうかで判断できます。
一般化はできませんが大手施工会社が建築したマンションはきちんと質がよいものを使っている傾向にありいます。
施工会社名は重要事項説明書で記載されているため、確認するようにしましょう。
メンテナンス
マンションの寿命を左右する要素として、外壁のメンテナンスや、構造のリノベーションなども関わってきます。
経年劣化によって剥げていく外壁を塗装したり、建物の構造を和室中心から洋室にリノベーションしたりすることによって、マンションそのものの寿命が延びるといってよいでしょう。
水回り・配管工事
三番目は、水回りなどの設備のメンテナンス状況です。
実際のマンションの寿命を大きく左右するのは、建物そのものよりも劣化が激しい給排水管だといわれています。
旧耐震基準で建てられたマンションの多くは配管そのものがコンクリートに埋め込まれていることが多く、単独で交換できません。
そのため、給排水管に致命的な問題があれば、建物としては使用できても、居住できなくなる恐れがあります。
この場合、住宅としての価値がなくなってしまう可能性があるといえます。
立地条件
マンションの寿命を予想するうえで重要なものの1つに、立地条件があります。
例えば日当たりの悪い場所に建てられている場合には、カビが発生しやすい状況にあると予想できるでしょう。
海に近い場所であれば、塩害の対策も必要です。
また、地盤の弱い地域に建っている場合、地震によりマンションが傾く危険性も考慮しなければなりません。
購入した中古マンションの寿命がきたときの対処法とは
次に、「購入したマンションがそろそろ寿命がくるかもしれない」「今後についてどんな対応をすればよいのか」と考えたときに取りうる手段についてわかりやすく解説していきます。
対処法1:まずは、今後も住み続けるか考える
最初のステップは、現在のマンションの価値を正確に知ることです。
具体的には購入時の契約書や重要事項説明書に書かれている築年数、施工会社、構造、メンテナンス状況、管理組合の有無を調べることです。
この作業によって法定耐用年数も調べられ、このあとマンションの査定を依頼するときに重要な情報になります。
中古マンションの管理組合の状況を調べる
分譲マンションの多くは管理組合があり、毎年の会計監査などが行われています。
管理人室などがある管理組合であれば、管理人室に毎年の会計帳簿が保管されていることも多いので、修繕費や積立金の合計、過去のマンションの修繕履歴などを調べましょう。
中古マンションの価値がいくらか把握する
客観的なマンションの価値を知る方法は、不動産業者に査定をとることです。
できるだけ客観的な情報があればより実勢価格に近い査定が出るため、最初に調べた築年数や施工会社、構造などの情報は必須といえるでしょう。
実際に査定を受けた金額をもとにして、今後どうするかを決める大きな指標にしましょう。
対処法2:居住者負担の建て替えを検討する
2つ目に取りうる手段としては、建て替えを検討することです。
マンションの場合は、戸建てと違って自分1人の考えで建て替えられません。
しかし、建築時期によっては現在のマンションよりも広いマンションを建設できる可能性があります。
そのため、建て替えを検討することは必ずしも非現実的とはいえません。
建て替えたいと思ったときに検討すべきことなどを確認しておきましょう。
管理組合に相談から話を進める
分譲マンションには多くの場合、管理組合が設置されています。
まずはこの管理組合に対して、建て替えを検討してはどうか、有志で検討することを提案してみましょう。
なお、最終的には、この管理組合で全所有者と議決権の5分の4以上の賛成が得られれば建て替えが可能です。
専門家を探す
この建て替えの際には、マンション建替組合の設立や、所有権・抵当権(住宅ローン)の引継ぎのためにかなり専門的な知識が必要です。
そのため、コンサルタントやデベロッパー、マンション管理士などの専門家の協力は不可欠です。
そのため、建て替えを成功させるには、これらの専門家を探すことがスタートになるといえるでしょう。
参考:マンション建て替え円滑法の改正
マンションの建て替えのためだけに作られた 「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」という法律があります。
建て替えを目的とした「マンション建て替え組合」が建て替えに賛成する人の4分の3以上の賛成で設立できれば、この組合が工事の契約や資金の借り入れによって、建て替えを円滑に進められるようになりました。
対処法3:中古マンションを売却して住み替える
今のマンションを売却して築年数の浅いマンションに買い換える方法もあります。
生活スタイルの変化によって、家族が少なくなったりする場合はファミリータイプのマンションを売却して、夫婦二人用のマンションに引っ越すなどの住み替え自体はよくあるケースです。
対処法4:そのまま中古マンションで生活する
中古マンションの耐用年数が過ぎても、そのまま住み続ける人もいます。
耐用年数が過ぎて不自由な箇所があっても、新たに居所を探すよりも終の棲家として住み続けようというものです。
そのまま住み続ける場合、建て替えや住み替えのように費用や労力がかからない点はメリットといえるでしょう。
しかし、管理組合が機能していないケースも多くあり、耐震性に問題を抱えているマンションも少なくないため、安心して生活できない点はデメリットといえます。
中古マンション・耐用年数に関するよくあるQ&A
中古マンション・耐用年数に関するよくあるQ&Aを3つ紹介します。
マンションの売却などを検討している際に参考にしてください。
中古マンションの価格はずっと下がり続ける?
通常のマンションでは新築時点の価格が一番高く、築年数が古いほど下がるといわれています。
しかし、ずっと右肩下がりというわけではなく、一定の年数で下げ止まってある程度の年数からはあまり差が出てこなくなるのが一般的です。
これらの年数はマンションの場所や広さ、構造によって大きく左右されるため一般化は難しいですが、首都圏にあるファミリータイプの分譲マンションであれば15年程度が目安になるといわれています。
古いマンションは絶対に売れない?
それでは、古いマンションを買う人は全然いないのでしょうか。
実は、年数を気にしない層も一定数いるので需要がまったくないということはありません。
賃貸のデータにはなりますが、国土交通省がまとめたデータによると、2008年(平成20年)以降の契約成約事例のうち、約25パーセントが築30年以上の建物となっています。
つまり、全体の4分の1程度の人は、築年数にかかわらず建物を選んでいるということになります。
住宅ローンが残っている場合でも売却できる?
いざ売却を決意しても気になるのは住宅ローンのことです。
「今の住宅ローンが返し終わっていないのに売れるのか」「新しく買ったマンションで住宅ローンが組めるのか」と心配になる方は多いでしょう。
しかし、住宅ローンが残っていてもマンションの売却は可能です。
この場合は、売却したマンションの価格から住宅ローンを返済して、売却のための所有権の移転をすることになります。
ただし、住宅ローンの残高によっては所有権の移転ができないケースもあります。
したがって事前に住宅ローンを組んだ銀行に問い合わせて、住宅ローン残高を調べておくことをおすすめします。
なお、寿命を迎えたマンションを売却し、同時並行で築年数が浅いマンションを探すのも1つの方法です。
同じ不動産業者に依頼すれば、金額や住宅ローンの手続き、所有権移転の時期も調整できます。
中古マンションの買い替えを検討するなら、なるべく同じ不動産業者に依頼することが交渉の手間を省くコツといえるでしょう。
まとめ
中古マンションの耐用年数は、法律によって明確に定められています。
具体的な年数は中古マンションの構造などで変わってきますが、40年前後であることが多いです。
購入した中古マンションが耐用年数を迎え、建て替えや買い替えを検討している方で不安や疑問がある場合は、お気軽に不動産売却マップまでご相談ください。
専門家が無料で売却査定などのサポートをいたします。