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土地売買の契約書に含めるべき内容とトラブルを避けるための注意点

この記事でわかること

  • 土地売買の流れが理解できる
  • 土地売買契約書のポイントがわかる
  • トラブルを避けるための土地売買契約書の注意点がわかる

土地の売買契約では、契約書が大切だということはよく聞くのではないでしょうか。

後日のトラブルを避けるために、土地売買契約書が作成されます。

でも、土地売買契約書に「どんな内容が書かれているか」については、意外と知らないかもしれません。

土地売買契約書の内容を知らなければ、どんなトラブルが発生する可能性があるかわかりません。

実際に土地売買をおこなうとき、売買契約書のどの部分が注意すべき項目かわからず不安になるでしょう。

この記事では、始めに土地売買の流れを解説します。

そのうえで、土地売買契約書の記載内容や見るべきポイント、土地売買契約書の注意点についてお話します。

最新の民法の改正点もお伝えしますので、土地売買を検討している方は参考にしてください。

【不動産売買】契約から売買までの流れ

不動産売買では、物件を売りに出そうと思ったらすぐ売れるというわけではありません。

不動産会社選びや媒介契約締結、宣伝・販売活動などを経て、売買契約に至ります。

不動産売買の流れをみていきましょう。

不動産売却の大きな流れ

不動産売却の流れは、大きく分けると次のステップがあります。

それぞれのステップの内容や注意点をみていきましょう。

不動産会社選びから媒介契約締結まで

不動産売却を検討する方は、不動産会社選びから始めるのが一般的です。

買取か媒介か

もちろん、知り合いの方に売却する方法もあります。

しかし、不動産売買契約は専門的な内容も多く、後日のトラブルを避けるためにも、不動産会社を通すほうが安心です。

また、最終的に不動産会社の買取を利用する場合でも、査定と媒介契約締結について知っていれば対応できます。

不動産会社選び

次に、不動産会社選びから媒介契約締結までの一般的な流れを確認します。

  • 1 相談と簡易査定
  • 2 訪問査定(本格的な査定)
  • 3 媒介契約締結

電話やメールなどで不動産会社に問い合わせて、物件の査定を依頼するところから始めなければなりません。

「査定」とは、簡単に言えば物件の値段を見積もることで、簡易査定と訪問査定があります。

多くの不動産会社が無料で査定を行ってくれます。

簡易査定なら気軽ですし、一括査定サイトの利用も便利です。

ただし、簡易査定は机上で行う査定なので、売却する不動産の特徴は考慮できません。

正確な査定価格を知りたい場合、早めに訪問査定を依頼することをおすすめします。

媒介契約の締結

納得できる査定価格を出してくれたり、信頼できる営業担当者がいたり、気に入った不動産会社がみつかったら媒介契約(仲介契約)を締結します。

媒介契約の種類

一般媒介契約複数の不動産会社に依頼することができる媒介契約
専任媒介契約1社のみに依頼することができる媒介契約
(ただし、自分で買主を探してきても良い)
専属専任媒介契約1社のみに依頼することができる媒介契約
(ただし、自分で買主を探した場合でも報酬を支払う義務有り)

上記のほかにも、一般媒介契約と専任媒介契約と専属専任媒介契約には違いがあります。

具体的な両社の違いは以下の通りです。

媒介契約の違い

レインズ登録義務業務処理状況の報告義務有効期間の定め
一般媒介契約なしなしなし(ずっと拘束される)
専任媒介契約あり(7日以内)あり(2週間に1度)3か月間で更新または解除
専属専任媒介契約あり(5日以内)あり(1週間に1度)3か月間で更新または解除

販促活動から売買契約まで

媒介契約締結後、不動産会社はさまざまな販促活動をおこないます。

  • ・新聞折り込みチラシ
  • ・インターネット広告
  • ・自社の購入希望者への営業活動
  • ・他社の問い合わせ対応や現地案内同行
  • ・オープンルーム

購入希望者の意思が固まれば、売買契約に進みます。

売買契約締結時の基本的な注意事項は、購入者が一般の方でも不動産会社でも変わりません。

売買契約時には、以下の書類が必要になるので、事前に用意しておくとよいでしょう。

印鑑証明書(市区町村が発行するもので、発行後3か月以内)
物件取得時の売買契約書、重要事項説明書、物件状況報告書、境界確定書など
税金関連の書類など(不動産会社に確認)
登記事項証明書、公図、地積測量図、建物図面など(不動産会社に確認)

土地売買契約書に記載する内容

不動産売買では、一般的に、売主と買主の間で売買契約書を取り交わします。

売買契約書の意義や記載内容、注意点などを確認していきます。

土地売買契約書の意義

民法の定めによれば、売買契約は口頭でも成立します。

しかし、不動産など重要な財産の売買では、契約内容の確認や後日のトラブル回避のため、売買契約書を作成します。

不動産会社が媒介する場合、売買契約書の作成は不動産会社の義務です。

一般の方だけで契約を行うケースでないかぎり、売買契約書を自分で作成する必要はありません。

ただ、不動産会社の説明を受けてもわからない部分が多いと、大切なことを見過ごしてしまうかもしれません。

自分の権利を守るためにも、土地売買契約書の内容や注意点の知識を備えましょう。

土地売買契約書の記載事項

土地売買契約書に記載する主な事項は、次の項目です。

  • ・売買物件の表示(土地の所在や面積など)
  • ・売買代金や手付金・保証金の額
  • 契約不適合責任について
  • 契約の解除に関する事項
  • ・損害賠償額の予定、違約金の定め
  • ・代金以外の金銭の額、授受時期、授受目的
  • 特約について
  • ・代金の支払時期・支払方法
  • 移転登記の申請時期
  • 物件の引渡時期、条件
  • ・租税その他公課の負担
  • ・代金に関する貸借のあっせんが不成立のときの措置(買主のローンが不成立の場合)

詳しくは後述しますが、契約不適合責任と、契約解除、特約についての事項が大切です。

特約の主な内容は、契約不適合責任です。

ただし、建物の取壊し費用やリフォーム費用、測量費用など付随する費用を誰が負担するか、売買契約書の特約に盛り込むこともあります。

契約解除に関する契約内容の注意点

契約解除といっても、その原因はさまざまです。

次の3つの契約解除原因が、売買契約書に記載されます。

  • 手付解除
  • ・違約金による解除、債務不履行解除
  • ・ローン解除

手付解除

土地売買契約時に買主から売主に交付される手付には、民法上は次の3つがあります。

  • 解約手付…買主が自己都合で解除するための金銭
  • ・証約手付…契約の成立を証明する目的
  • ・違約手付…違約金としての性質

通常、手付は解約手付として交付されます。

解約手付は、いわば「気が変わっただけで解除できる道」を残すための金銭です。

一度契約したからには、民法や特約で定めた理由がなければ、契約を解除することはできません。

しかし、他に良い物件がみつかった、家庭の事情が変わったなど、どうしても売主・買主の都合で解除したいケースもあります。

そこで、解約手付による解除が認められているのです。

解約手付による契約解除の方法と時期は次のとおりです。

いつまでも許されるわけではないので注意しましょう。

手付解除の方法・時期

方法手付金を放棄
売主は手付金の倍返し
時期相手が契約の履行に着手するまで
(自分が着手している段階なら解除可)

債務不履行解除

売主または買主が期日までに代金を支払わなかったり、引渡し・登記をしなかったり、義務を果たさない場合を「債務不履行」といいます。

民法では債務不履行による契約の解除ルールを定めています。

しかし民法のルールはおおざっぱな部分もあるため、土地売買契約書に、相手方への催告や書面による解除方法など詳しく定めます。

どんな場合に債務不履行となり解除されてしまうのか、解除の方法など土地売買契約書をしっかり確認しましょう。

ローン特約による解除

買主がローンを組めなければ、土地の代金を払うことはできません。

しかし、ローンを組めない場合でも、契約解除をしなければ売主・買主双方とも契約に拘束されたままです。

民法には自動的に解除されるというルールはないからです。

「ローン特約」とは、買主がローンを組めなかった場合、売買契約が自動的にされるための特約です。

通常、損害賠償なども必要なしとする無条件解除が特約で定められます。

なお、債務不履行による解除、ローン特約による解除では、原則として手付金を返還しなければなりません。

手付金の返還方法についても定めておくとよいでしょう。

支払い方法に関する契約内容の注意点

土地売買契約の代金は、通常、土地の引継ぎや登記の移転と同時におこないます。

ただし、中間金が支払われるケースもあるので、代金支払い方法については、不動産会社や買主に確認しましょう。

注意しなければならないのは、土地に抵当権が設定されている場合です。

支払われる代金を土地のローン返済に充てる場合、代金支払い前に、借入先の金融機関にローン完済の相談をしなければなりません。

また、先述のように買主がローンを組んで土地を購入する場合、買主が取引する金融機関で土地代金支払い手続きが行われます。

土地の引継ぎや移転登記の日に、金融機関は買主に土地代金を貸し付けます。

買主は、金融機関から貸し付けられた代金を売主に支払うという流れです。

売主・買主ともに代金の支払いについて大きな心配は必要ありません。

ただし、疑問点があれば遠慮なく、不動産会社や決済(登記等)を担当する司法書士に事前に確認しましょう。

移転・引っ越し・引継ぎに関する契約内容の注意点

不動産売買契約では、物件の引渡や売主の引越しなどを行う前に、通常、残代金支払いなどの決済がおこなわれます。

代金・登記など決済

司法書士が金融機関や不動産会社と連携して、決済業務一式に滞りがないか確認するのが一般的です。

決済では、司法書士が次の内容を確認し、抵当権抹消や登記の移転をおこないます。

  • ・売主から買主に代金が支払われたか
  • ・売主のローンの残債の返済が行われたか
  • ・土地登記の移転に必要な書類がそろっているか

引渡し、引越し、引継ぎなど

上述した決済が終ったら、物件の引渡しが行われます。

建物の鍵の引渡しだけでなく、現地での確認に売主・買主と不動産会社が立ち会わなければなりません

とくに建物の売買の場合、売主は引渡し日までに完全に引っ越す必要があります。

売主は、建物内に家具や生活用品を残しておかないよう注意しましょう。

「このくらい良いだろう」と残してしまうと、廃棄費用などを負担しなければならないケースもあります。

なお、投資用マンションの売買などの場合、賃借人との契約書などを引き継ぐこともあります。

【契約不適合責任】に関する契約内容の注意点

民法の売買契約に関するルールは、令和2年4月に改正されました。

従来は瑕疵(かし)担保責任という責任が売主に課せられていましたが、契約不適合責任という新たなルールに衣替えされました。

契約不適合責任とは、売買契約に定められた目的物の数量や性質と適合しない欠陥について、売主が負う責任のことです。

契約不適合責任とは

契約不適合責任では、買主の権利が厚く保護されています。

言い換えれば、売主にとっては酷な内容もありえるということです。

まず、契約不適合責任の内容を確認しましょう。

契約不適合責任の内容

契約不適合責任で買主に認められた権利は以下の通りです。

契約不適合責任権で買主に認められた権利

損害賠償請求権
契約解除権
追完請求権(瑕疵の修補請求権など)
代金減額請求権

また、売主は過失なくても、契約不適合責任を負わなければなりません。

一方、買主は自己に過失があっても、損害賠償請求を除き、売主の契約不適合責任を追及することができます。

買主の過失(契約不適合責任)

契約解除権不要
追完請求権(瑕疵の修補請求権など)不要
代金減額請求権不要
損害賠償請求権必要

損害賠償の範囲、買主の権利の行使期間(契約不適合責任)

損害倍書の範囲要件を満たした場合は履行利益も含まれる
(履行利益 転売利益など契約が完全に履行された場合の利益)
権利の行使期間買主が契約に適合していないことを知った時から1年以内に、売主に通知

契約不適合責任の土地売買契約書の具体的記載

契約不適合責任の売買契約書の記載例を紹介します。

土地売買契約書の契約不適合責任についての条項例

(目的物に関する契約の内容) 
第〇条 売主は、買主に対し、本契約の趣旨に従い、土地として通常の品質を有する状態で本物件を引き渡すものとする。
2項 前項にかかわらず、売主による物件状況等説明書の記載例……略……に記載された内容は、本契約
の内容に適合するものとする。

土地売買契約書に直接細かな事項を記載すると、膨大なページ数の売買契約書になってしまうので、通常、物件状況等説明書を別紙で作成します。

売主による物件状況等説明書の記載内容例

給排水管、地盤沈下、敷地内配管、土壌汚染に関する調査内容、浸水内容、境界、越境、近隣の建築計画、騒音、電波障害など

従来よりも詳細に契約内容を定めるのが通例です。

買主側から見れば、できるだけ詳細に契約不適合責任を定めて契約書に記載すれば安心です。

しかし、売主にとっては、調査しづらい地盤沈下や土壌汚染など責任を負わされるのは、非常に酷といえるでしょう。

売主は、これら契約書や附属書類に記載される内容につき、買主と合意した契約内容と不適合があるにもかかわらず告げないと、帰責事由があるとされてしまいます。

特約による排除の可否

先述したとおり、土地売買契約書に特約条項を盛り込むことができます。

とくに、契約不適合責任は、売主にとって重い責任です。

契約不適合責任を負うなら代金を高くしたいという売主もいるかもしれません。

そこで、売主は契約不適合責任を負わないとしたり、責任を緩和する特約をしたり、売主・買主が話し合って決めます。

契約不適合責任免責・緩和の特約の可否

一般の方同士の売買・免責する特約も可
ただし、売主が知っていたにもかかわらず告げなかった事項については、免れることはできない
売主が宅地建物取引業者で買主が一般の方・免責する特約は不可
・買主の通知期間につき短縮する特約は可(「物件引渡しの日から2年を経過する日までに通知」とする特約)

まとめ

土地売買契約書の記載内容や見るべきポイント、土地売買契約書の注意点についてみてきました。

最新の民法の改正点である契約不適合責任も注意すべき項目です。

土地売買契約書をもらっただけで、内容はまったく見ないというのでは、何かトラブルがあったときに対処できません。

土地売買契約書がある以上「知らなかった」「よく読まなかった」ではすまされないからです。

土地売買契約書の作成は不動産会社にまかせるにしても、内容が自分に極端に不利にならないか、よく確認しましょう。

土地売買では、売主・買主双方の話し合いにより上手に折り合いを付ける必要があります。

売買契約書に盛り込まれた特約は、交渉の結果でもあります。

自分達で交渉するのはなかなか大変なので、信頼できる不動産会社に仲介を依頼することをおすすめします。

納得のいく説明をしてくれる不動産会社にまかせて、安心して土地取引を行ってください。

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