不動産売却で課される税金とは?納税期限や方法、節税が見込める特例も併せて解説
この記事でわかること
- 不動産を売却したときにかかる税金について理解できる
- 自分が不動産を売却したときに課せられる税金の予測ができる
- 不動産の売却時にかかる税金の節税方法やそのやり方が具体的にわかる
不動産を売却した後に「税金がいくらかかるのだろう」と心配にならない人はいません。
普通の人は一生に何度も売買をしないため、不動産にどのような税金がかかるかを知ることができず、予想外の課税で多く税金を支払うことになってしまいがちです。
特に不動産の場合は、思った通りの価格で売却されたとしても、税金が高く結局手元に残るのはほんのわずかになってしまった、というケースも十分に考えられます。
そのため、不動産の売却にかかる税金は売る前にきちんと理解しておく必要があります。
そこで、不動産売却をした際に課される税金についてを中心に、実例を挙げながら解説をしていきます。
目次
不動産売却で課される税金とは?
税金の問題はなかなか周囲の人には聞きづらいものです。
それが高額になれば尚更聞きにくいでしょう。
ここでは不動産を売却すると発生する税金の種類と内容についてご紹介していきます。
不動産売買に課せられる税金の特徴と難しさ
不動産を売却すると課せられる税金は、全ての不動産売買にかかる税金と売却して利益が出たときにだけかかる税金に大きく区別されます。
全ての不動産売買にかかる税金には登録免許税や印紙税があります。
これに対して、利益が出たときにだけかかる税金は譲渡所得税、復興特別所得税、そして住民税です。
これら5つの税金は、何に対して課税されるか、いつ課税されるかがそれぞれ異なるため、一般の方にとって複雑でわかりにくい制度になっています。
全ての不動産売買に課せられる税金
登録免許税と印紙税は基本的に全ての不動産売買に課せらせる税金です。
利益が出たときだけにかかる税金に比べて金額は少なく、また多くの場合は税額が決まっているので事前に予測して準備することができるタイプの税金です。
不動産売買から生じる利益に対して課せられる税金
不動産売却で最も金額が大きい税金が、譲渡所得税、復興特別所得税、住民税の3つで、全て利益が出たときにかかる税金です。
利益というのは所得から経費を引いたものなので、事前の準備次第では税金の金額をコントロールすることが可能になります。
そのため、これらの税金の内容を知らない場合では損をしてしまう可能性がとても高いです。
これらの税金は不動産売却をした翌年に確定申告をして初めて金額が決まり、課税されるため、税金を納めるタイミングは売却の翌年です。
必ず課せられる登録免許税・印紙税
税金も種類によっては課税される人とされない人がいます。
不動産を売却する場合も、条件や値段によっては課税されないものもあります。
まず最初は、不動産を売却しようと考えている人全員に共通の税金からご説明します。
登録免許税
「登録免許税」とは、法務局で不動産の登記をするときにかかる税金のことです。
不動産の売却の場合だと、買主に所有権の名義を変更するときや、住宅ローンの残債務がある場合で、抵当権抹消をするときに課税されます。
通常の不動産売買契約だと、買主が所有権移転に関する登録免許税を負担し、売主は抵当権抹消の登記費用を負担することが取引慣習となっています。
登録免許税は、法務局に登記申請書を提出する際に、収入印紙で納めるのが一般的です。
そのため、実務上は司法書士に登録免許税分の金額を渡して、納税してもらうケースがほとんどです。
登録免許税の金額は登記によって決まっており、所有権移転の場合は不動産の価額の0.2%程度です。
ただし、ここでいう不動産の価額とは売却金額のことではなく、市町村役場で管理している固定資産課税台帳の価格のため、注意が必要です。
金額を知りたい場合は、市町村役場で証明書を発行してくれます。
抵当権抹消の場合は、不動産1つにつき1,000円です。
土地と建物は別々の不動産として計算されるため、土地付き戸建てならば2つとしてカウントされ2,000円かかることになります。
印紙税
「印紙税」とは、不動産の売買契約書に対してかかる税金のことです。
不動産売買契約書は、印紙税額の一覧表(その1)第1号文書といわれており、契約書そのものに税金がかかります。
印紙税は不動産取引の実務上、契約書原本を受け取る方が負担するのが一般的です。
買主が契約書原本を持ち、売主がそのコピーを持つならば買主が印紙税を負担することが多いです。
印紙税の金額は契約書の金額によって決まっています。
例えば、4,000万円のマンションの売買契約書ならば印紙税は2万円と決まっています。
但し、令和4年3月31日までの締結された契約書については軽減措置が適用され、1万円となっています。
利益があったときに課される譲渡所得税・復興特別所得税・住民税
次に、利益があった場合にかかる税金についてご説明をします。
不動産の売却で最も難しいのが、最終的に手元に残る金額が一体いくらなのかというところです。
その理由の一つが、税金が、何に対していくらかかかるのかが非常に複雑ということにあります。
ここではその複雑な仕組みについて、わかりやすく単純化してご紹介していきます。
売却時に残る利益が課税対象
不動産を売却した際に利益が出た場合は、その利益に対して譲渡所得税、住民税などがかかります。
このときの利益というのは、実際の売却金額から購入金額などの経費を引いた金額のことです。
そのため、購入金額よりも大幅に値下がりしていれば利益が発生せず、課税されないというケースもあります。
逆に大きく値上がりしていれば差額が利益となり、その利益に対して課税されることになります。
所得税と住民税
前の項でも述べましたが、不動産を売却した際に課せられる税金は、「所得税」と「住民税」に大きく分けられます。
所得税とは国税の一つで、その名の通り、所得に対してかかる税金のことです。
ここでいう所得とは、単純に自分が得た金額ではなく、確定申告を行って確定した所得のことです。
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税の額を計算し、源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、その過不足を精算する手続のこと。
引用元:国税庁ホームページ「No.2020 確定申告」
住民税は、地方自治体に納める税金のことです。
住民税も所有期間に応じて税率が変わります。
期間の区切りは所得税の譲渡所得と同じです。
収益物件の所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得となります。
住民税の税率は5%です。
収益物件の所有期間が5年を超える場合は、長期譲渡所得となります。
住民税の税率は9%です。
譲渡所得税
「譲渡所得税」とは、不動産を売却して利益が出た場合にかかる税金のことです。
一般的にはこの譲渡所得税の金額が不動産売却時にかかる税金の中で最も金額が大きくなります。
譲渡所得税には短期と長期があり、不動産を所有していた期間によって税率が異なります。
譲渡所得の場合は、取得の日の翌日から売却した年の1月1日までの所有期間が5年以下か、5年を超えるかで税率が大きく変わってくるのです。
注意が必要なのは、売却した年の1月1日が判定日になるので、その年内であればどの日に売却しても所有期間が変わらないという点です。
復興特別所得税
平成23年12月2日に、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が公布されました。
そのときに創立されたのが「復興特別所得税」及び「復興特別法人税」です。
また、平成25年(2013年)から令和19年(2037年)までの間は、所得税を納める場合にプラス2.1%の割合で復興特別所得税が加算されることになっています。
短期譲渡所得税
不動産の所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得となります。
これにかかる税金を「短期譲渡所得税」といい、税率は30%です。
復興支援所得税の税率は、30%×2.1%で0.63%です。
長期譲渡所得税
不動産の所有期間が5年を超える場合は、長期譲渡所得となります。
これにかかる税金を「長期譲渡所得税」といい、税率は15%です。
復興支援所得税の税率は、15%×2.1%で0.315%です。
譲渡所得に関するよくある誤解
例えば、2015年8月1日に取得した不動産を2020年10月1日に売却しようと思い、所有期間は5年2ヶ月なので長期譲渡所得になるだろうと判断をしてしまうとします。
実はこの場合は、2016年の1月1日が基準日なので計算上の所有期間は4年10ヶ月となり、5年以下なので短期譲渡所得になってしまいます。
短期と長期では税率が10%以上も異なるため、この誤解は要注意です。
損をしないためにも、必ず専門家の意見を聞いて確認しましょう。
【実例】マンションを売却したら、税金はいくらになる?
ここからは、売却の際にかかる税金について、実際の数字を当てはめてご紹介していきます。
あくまでも簡略化した事例ですが、実際の不動産売買ではいくらくらい税金がかかるのか実感できるかと思います。
新築マンション、4年居住を売却したらいくら税金がかかるのかを検証
例として、4年前に新築マンションを3,000万円で購入し、4年間居住した後に4,500万円で売却したケースに対して、税金はおおよそいくらになるかをシミュレーションしてみました。
なお、架空の事例のため、わかりやすさを優先して減価償却費、仲介手数料などはかなり単純化しています。
必ずご自身の不動産の条件に合わせて計算し直すことをおすすめします。
1. 概算費用を予測
まず、新築マンションを購入したときの「所得費用」を計算します。
取得費用とはその不動産を取得するためにかかった費用のことで、不動産屋業者に支払う仲介手数料や建築代金、土地の調査費用やリフォーム費用などが該当します。
正確にわからない場合は、単純化して概算で算出することも可能です。
概算の場合は購入額の5%とし、150万円と仮定します。
続いて、マンションの、現在のおおよその価値を予測します。
建物は、新築時が一番価値が高く、時間が経つにつれて価値が減少していきます。
これを「減価償却費」といいますが、今回は毎年1.5%ずつ定額で下がっていくとします。
減価償却費(合計)は、建物購入価額×0.9×償却率×経過年数で算出します。
今回は、3,000万円に0.9を掛け、償却率1.5%×経過年数4年間で計算すると、162万円になります。
つまり、3,000万円で購入したマンションは、4年間で162万円価値が下がったことになり、4年後である現在の価値は2,838万円である、ということになります。
最後に、マンションを売却するときの「譲渡費用」を概算します。
譲渡費用とは、その不動産を売却するためにかかった費用のことで、代表的な例としては不動産屋業者に支払う仲介手数料や取り壊し費用、地主の承諾をもらうための名義書き換え費用などが該当します。
これらは、取得費用と同じく、正確にわからない場合は概算で出すことも可能です。
概算の場合は、購入時と同じく売却額の5%とし225万円と仮定します。
2. 税額を計算
次に、マンションを売却したときに最初に必ずかかる税金について計算します。
通常の不動産売買の場合は、売主側が抵当権抹消について登録免許税を負担することが多いため今回は1,000円を売主が負担します。
印紙税は4,500万円の契約なので、軽減措置を受けて1万円です。
続いて、譲渡所得税、復興特別所得税については所有期間が5年以下なので短期譲渡所得税で課税されます。
課税の対象となる利益の計算は
(4,500万円-(2,838万円+150万円)-225万円)=1,737万円
となります。
短期譲渡所得税は30%なので、
1,737万円の30%で、521万1,000円
です。
同じく復興特別所得税は、
1,737万円の2.1%で、36万4,770円
です。
但し、実際には100円未満の端数は切り捨てされるため、
36万4,700円
が税金の金額となります。
そして住民税は、
1,737万円の9%で156万3,300円
です。
最後に、全て足すと715万が税金の合計金額になります。
節税ができる特例とは?
不動産の売却は、金額が大きいため、かなりの税金がかかってきてしまうケースが多いです。
しかし、マイホームに限っては特例として税金を安くできる方法もあります。
ここでは、代表的な特例を3つご紹介していきます。
特例を受けるための共通の条件
特例を受けるためには、その不動産がマイホームであることが絶対条件になります。
つまり、居住用財産であり、事業用・投資用の不動産ではないということが必要になります。
具体的にはずっと住んでいた不動産であることや、退去してから3年以内であること、家族が住んでいることなどが居住用財産の条件になります。
3,000万円の特別控除
マイホームを売却したときには、所有期間とは無関係で譲渡所得から最高3,000万円を差し引くことができます。
これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。
この特例を受けるためには確定申告をすることが必要になります。
確定申告の際に不動産を売却した人がそのマイホームに住んでいなかった場合は、戸籍の附票の写しなどが必要になります。
所有期間10年超えの軽減税率の特例
マイホームを売却したときに所有期間が10年を超えている場合には、長期譲渡所得の税率よりもさらに低い税率で所得税の計算をすることができます。
これを、マイホームを売ったときの軽減税率の特例といいます。
この特例を適用した場合、6,000万円以下の部分については長期譲渡所得金額は10%、復興特別所属勢は0.21%、住民税は4%に軽減することができます。
特定の居住用財産の買い換え特例
あるマイホームを売却して、別のマイホームに買い換えたときには、課税を将来に繰り延べることができます。
これを、特定の居住用財産の買い替え特例といいます。
特に注意が必要なのは、この特例を適用しても非課税になるわけではなく、あくまでも将来に繰り延べしただけなので、次にマイホームを売却する際にはまとめて課税されるという点です。
特例を受ける際の注意点
これらの特例を受けるためには、全て確定申告が必要となります。
そして確定申告の際に、譲渡所得の内訳書を提出し、それぞれの特例を適用すること、適用の要件に当てはまっていることを申告する必要があります。
つまり、申告しなければ特例を受けることができないということです。
次に、それぞれの特例同士の関係があります。
例えば、3,000万円特別控は所有期間10年超えの軽減税率の特例は併用することができますが、特定の居住用財産の買い換え特例とは併用することができません。
また、3,000万円の特別控除を受けてしまうと、売却後に新しくマイホームをローンを組んで購入する場合に、住宅ローン控除の適用を受けることができなくなってしまいます。
これらの併用ができない制度は、事前にどちらの適用を受けるほうが有利かを計算しておくことをおすすめします。
不動産売却の税金で注意したいこと4つ
税金の手続きは、他の手続きと異なり、忘れてしまうと後で取り返しがつかない可能性があります。
ここでは、あくまでも一般論ですが、ありがちなミスとついつい忘れがちなケースをご紹介します。
1. 金額が大きいので必ず専門家に確認すること
不動産売却にかかる税金は、金額が大きいのが一般的です。
これはそもそもの値段が高いことが関係してきます。
金額が高いので万が一間違って計算してしまうと、予想外の損をしてしまうことがあるため、自分で計算した場合でも必ず専門家に確認をすることをおすすめします。
2. 似たようなケースでも混同しない
インターネットでは様々な情報が検索でき、実際にあった事例なども公表されています。
しかし、そのケースと自分のケースが必ずしも一致するわけではないことに注意が必要です。
特に税金の場合は売買契約自体は似ていても、過去に軽減措置を受けたことがあるかないかなどで適用の可否が変わってきますので、注意が必要です。
3. 特例や控除を受けるための手続きが複雑
不動産売却に関する税金の特例や控除を受けるためには、先にも述べましたが、確定申告が必要です。
確定申告は一年のうち決められた期間しか申告できません。
この期間に確定申告をしないと特例や控除も受けられなくなってしまうので、必ず申告をしてください。
メリットを受けるための手続きに事前準備が必要
不動産売却に関する特例を受けるためには、売買にかかった費用の計算書や領収証、所有者がわかる登記事項証明書や居住用であることを示す書類など、契約書以外にも多くの書類が必要です。
事前に作成しておかないといけない書類や、法務局でしか取得できないなど用意に時間がかかる書類が多いため、計画的な行動が必要です。
納税の期限や方法は?
税額が確定すれば、最後に納付をするだけになります。
ここでは、納付時期や納付方法について、実際の契約の流れに合わせて税金ごとに解説をします。
不動産売買契約をして決済までの間にかかる税金について
不動産売却を不動産屋に依頼して買主が見つかった場合は、不動産売買契約書を作成します。
そしてこの契約書には収入印紙を貼る必要があります。
ほとんどの場合は不動産屋業者が印紙を用意してくれ、最後に報酬と合わせて請求されることが多いためあまり意識はしませんが、この売買契約時に「印紙税」を納めます。
続いて、決済と呼ばれる所有権を移転する手続きがあります。
残代金の支払いと同時に、司法書士に対して所有権の移転を依頼する手続きです。
この決済の際に「登録免許税」を納税します。
多くの場合は、司法書士に登録免許税分の現金を渡して、代わりに法務局で納税してもらいます。
不動産を売却した後にかかる税金
不動産売却で利益が出た場合は、確定申告で税金の金額が確定します。
譲渡所得税と復興特別所得税は確定申告の時期に申告書と一緒に納税します。
確定申告は売却した翌年の2月16日から3月15日の間で行うため、譲渡所得税と復興特別所得税の納付時期も同じ時期になります。
なお、2020年は特例として確定申告の申告期限が延長になっているためご注意ください。
最後に住民税が課税されます。
住民税は確定申告によって金額が決定します。
不動産を売却した翌年の4月から5月の間に納付書が送付されてきて納税をすることになります。
まとめ
以上が、不動産売却で課せられる税金とその種類、納付期限や方法についてのご紹介でした。
最終的に手元に残る金額を少しでも多くするためには、手続きの理解や制度を知ることはもちろんですが、一番は信頼できる専門家を見つけることが大切です。
信頼できる専門家は、その人の状況に応じて、最も有利な方法を選択してくれることはもちろん、その他の手続きや売却に最も適したタイミングなどのアドバイスも受けられます。