実勢価格とは?調べ方や路線価・公示価格との違いをわかりやすく解説
この記事でわかること
- 土地の実勢価格は何かわかる
- 実勢価格の調べ方や計算式がわかる
- 実勢価格と公示価格の違いがわかる
目次
土地の実勢価格とは
土地の実勢価格とは、実際に土地を購入したり売却したりした際の市場価格をさします。
土地の取引が行われると、その取引データは国土交通省に集約されます。
そのデータの中から、土地の具体的な場所を特定されないような形で土地の価格や土地の広さ、建築条件などが公表されており、この価格のことを実勢価格と呼ぶのです。
実勢価格を利用するときの注意点
実勢価格は実際の取引が行われた際の価格を集約したものですが、その大きさ、立地、建築条件などをとってみても、1つとして同じ土地はありません。
そのため、過去の売買実例をみて、同じ市場価格で購入あるいは売却できると考えるのは間違いです。
実勢価格はあくまで過去にその土地がいくらで取引されたかを表す市場価格なので、その価格にこだわりすぎないことが大切です。
例えば土地を購入する際には、土地を売ってもいいという人がいなければ、いくら実勢価格以上の金額を支払うつもりでも購入できません。
また、土地を売却する際は購入希望者が大勢いれば市場価格は高くなりますが、購入希望者がいなければ価格を下げて購入希望者が現れるのを待つしかありません。
土地自体の利用価値も、その価格形成に大きな影響があります。
同じ地域にあっても、狭くて建物を建てることができない土地、形がいびつなため利用価値が低い土地などさまざまで、土地の条件によって市場価格が大きく変わることもめずらしくありません。
さらに、過去と現在の経済状況が異なるため、同じような土地であっても1、2年前と比べて土地の市場価格が変動していることも考えられます。
価格が妥当かどうかを判断するのは、非常に難しいということを念頭においておきましょう。
実勢価格の調べ方は全部で5つ
実勢価格を調べる方法は、以下の5つです。
- 国土交通省の「取引価格情報」で調べる
- 路線価をもとに計算する
- 相続税評価額をもとに計算する
- 基準地価をもとに計算する
- 公示価格をもとに計算する
それぞれの調べ方を詳しく解説します。
調べ方1:国土交通省の「取引価格情報」で調べる
出典:土地総合情報システム
土地の実勢価格、つまり過去の取引価格は、国土交通省の 「土地総合情報システム」で調べられます。
土地総合情報システムのトップページから「不動産取引価格情報検索」をクリックすると、日本地図が表示されます。
そこから取引事例を調べたい都道府県を選択しましょう。
左側に取引の時期や市区町村などの条件を指定する表示があるため、条件を指定して検索するとその地域で行われた取引の価格が表示されます。
また、価格だけでなく土地の広さや形状、前面道路などの情報も掲載されています。
そのため、取引しようとしている土地の条件に近いものを探せばそれを参考にできるでしょう。
調べ方2:路線価をもとに計算
路線価からも土地の実勢価格を算出できます。
路線価とは土地の評価額の1つで、土地を相続した場合の相続税、土地を贈与した場合の贈与税の額を計算するために用いられ、毎年国税庁が公表しています。
路線価は1平方メートルあたりの土地の価格を表していますが、その価格は、後ほど紹介する公示価格のおよそ8割程度となっています。
路線価の調べ方
路線価は、国税庁のホームページから調べられます。
まずは、国税庁のホームページにある「路線価図・評価倍率表」のページを開きます。
すると、日本地図が表示されるため、土地が所在する都道府県をクリックしましょう。
その後は、路線価図→市区町村→地名の順に選択すると、該当する地域の地図が表示されます。
路線価は、土地の相続税評価額を路線価方式により計算すべきこととされている地域の、ほぼすべての道路に対して設定されています。
実際に土地を相続したり贈与を受けたりした場合には、土地の場所を間違えずに路線価を探し出さなければならないのです。
より詳しい路線価の調べ方については、以下の記事をご覧ください。
実勢価格と路線価の違い
路線価と実勢価格の違いを以下の一覧表にまとめました。
路線価 | 実勢価格 | |
---|---|---|
価格の概要 | 国税庁が毎年7月に公表する指標 | 土地の取引が成立した価格 |
価格の決まり方 | 国税庁が決定する(時価公示価格、取引価格、鑑定評価価額、専門家の意見などを考慮) | 売買契約を交わす当事者間で自由に決められる |
評価されるタイミング | 毎年1月1日 | 取引時 |
路線価から実勢価格を求める計算方法
路線価は、毎年7月に国税庁が公表しています。
全国各地の路線価は、国税庁のホームページから簡単に調べることができます。
市街地などの場合、すべての路線ごとに路線価が設定されているため、路線価から実勢価格が計算できるのであれば、多くの人にとって非常に有益なものとなります。
そこで、路線価から実勢価格を求める計算方法を解説します。
路線価は、国土交通省が毎年公表している公示価格のおよそ8割程度になるように設定されています。
また、公示価格は実勢価格よりも若干低い金額となっており、公示価格を1.1倍~1.2倍すると、おおよその実勢価格になるといわれています。
そのため、路線価から実勢価格を計算するには、以下の算式を用います。
路線価も公示価格も、その価格は毎年見直され、不動産市況を反映して上がったり下がったりしています。
そのため、路線価は地価の変動をリアルタイムで反映しており、そこから実勢価格の計算を行うことは、非常に合理的な方法といえます。
調べ方3:相続税評価額をもとに計算
本来、土地の時価を知りたいと考える場合には、公示価格を調べるべきです。
しかし、公示価格が公表されている地点の数は決して多くないため、知りたいと思っている場所の公示価格を把握できないことも少なくありません。
そこで、路線価を利用して公示価格に相当する価格を逆算して求める場合があります。
路線価から相続税評価額の調べ方
路線価は、市街地のほぼすべての道路について設定され、簡単に調べられます。
そのため、土地ごとにそれぞれの相続税評価額を求めるという仕組みです。
また、土地の形などによって同じ広さの土地でも利用価値が変わりますが、一定の補正が可能です。
公示価格の把握が難しい場合に路線価から求めた相続税評価額を利用することは、とても有効なのです。
相続税評価額から実勢価格を求める計算方法
路線価から求めた相続税評価額は、公示価格の8割相当の金額になるとされています。
そのため、「相続税評価額÷0.8」とする計算を行えば、その土地の公示価格となる金額を求めることが可能です。
調べ方4:基準地価をもとに計算
土地の実勢価格は、基準地価から算出することも可能です。
基準地価とは、都道府県が年に1度発表する土地の価格を意味します。
都道府県ごとにまとめられた土地価格は、国土交通省が運営するWebサイトで公表されています。
毎年7月1日時点の全国2万カ所を超える土地の価格の最新データが毎年9月頃に更新されており、都市部以外の土地の基準地価を調べることも可能です。
基準地価の調べ方
基準地価は、各都道府県のホームページなどから調べることができます。
また、国土交通省地価公示・都道府県地価調査からも基準地価の確認が可能です。
具体的な調べ方は、以下のとおりです。
- 1.「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」を開き、全国地図から基準地価を調べたい都道府県を選ぶ
- 2.市区町村を選ぶ
- 3.検索対象や調査年、用途区分、地価などを指定して検索ボタンを押す
基準地価から実勢価格を求める計算方法
基準地価は、全国の都道府県が公表する土地の価格です。
毎年7月1日現在の土地の評価額を算出し、9月20日頃に公表されます。
国土交通省が毎年公表している公示価格は、毎年1月1日時点の土地の評価額となっています。
同じ地点が、公示価格と基準地価の両方の対象となっていることもあるため、半年ごとの価格の推移を比較することが可能となっています。
基準地価は、基本的に公示価格と同じ方法で評価額が算出されています。
そのため、以下の計算式を使えば、基準地価から土地の実勢価格を計算することができます。
基準地価の1.1倍から1.2倍の価格が、実勢価格になるといわれています。
そのため、基準地価から簡単に実勢価格を求めることができるのです。
調べ方5:公示価格をもとに計算
公示価格から土地の評価額を計算できます。
公示価格とは、国土交通省から公表される土地の売買の指標とするための土地の価格です。
毎年1月1日現在の土地の正常な価格を国土交通省の土地鑑定委員会が決定し、公示価格を公表しています。
正常な価格を公表することとされているのには理由があります。
土地の売買が行われる場合、どうしても早く購入したいと考えると、その取引価格は大きく跳ね上がるケースが多いです。
逆に、持っている土地を早く売却してしまいたい場合は、その価格が大きく下落します。
土地の売買は、店頭に並んでいる商品とは違ってそこに1つしかないため、買う側と売る側の思惑によって、その市場価格が大きく変動しやすい特徴があります。
ただし、特殊な要因によってその市場価格が大きく跳ね上がったり、逆に下落したりした場合には、その価格を後に行う取引の指標として用いることは適当ではありません。
そのため、公示価格は正常な価格を公表することとされています。
公示価格と基準地価との違い
公示地価 | 基準地価 | |
---|---|---|
概要 | 国土交通省が定めるもの | 都道府県が定めるもの |
調査の名前 | 国土交通省地価公示 | 都道府県地価調査 |
評価方法 | 1地点につき2名以上の不動産鑑定士によって評価されたもの | 1地点につき1名以上の不動産鑑定士によって評価されたもの |
評価時期 | 1月1日時点 | 7月1日時点 |
評価箇所 | 全国2万3,000カ所の標準地 | 全国2万カ所以上の基準地 |
基準地価とは都道府県が定めるもので、標準地とは別に都道府県が定める基準地について、標準地と同じ目的で地価を公表しています。
公示価格と基準地価の大きな違いは、調査時期が異なる点です。
基準地価の調査時期は毎年7月1日時点であるのに対し、公示価格は毎年1月1日時点に調査が行われます。
たとえば、8月に土地を売却するなら、基準地価の方が最新の価格を確認できます。
不動産を売却するタイミングに合わせて、最新の価格を選ぶと良いでしょう。
公示価格の調べ方
公示価格は、土地の実勢価格と同じく土地総合情報システムから調べられます。
トップページから「標準地や基準地の価格をご覧になりたい方へ」というリンクに入り、「地価公示、都道府県地価調査」を開きます。
すると、日本地図が表示されるので、都道府県→市区町村の順に調べたい土地の所在地を選びましょう。
そして、調査年や土地の用途区分などの検索条件を指定すると、その条件にあてはまる標準地や基準地の価格が表示されます。
地図で場所を指定したい場合には、検索結果から「地図で確認する」に進みましょう。
その地点周辺の標準地や基準地の場所が表示されるため、価格を比較しながら簡単に調べることが可能です。
公示価格から実勢価格を求める計算方法
公示価格は、国土交通省が毎年1月1日現在の土地の価格として、3月に公表しているものです。
土地取引の目安になる金額といわれ、実際に公示価格をもとに土地の売買価格を決定するのが一般的です。
ただし、公示価格は土地の実勢価格とイコールというわけではありません。
実際には、公示価格を1.1倍~1.2倍した価格が、土地の実勢価格になるといわれます。
そのため、公示価格から実勢価格を求める算式は以下のようになります。
実際に土地の売買が行われる時には、この実勢価格を基準として、その周囲の状況や今後の需給バランスなどを考慮して、実際の売買価格が決定されます。
公示価格を使う場面
公示価格は、土地の売買を行う際の標準的な価格と考えられています。
そのため、土地を売却したい場合は、まず近くの公示価格や基準地価を調べて、売却希望価格を算定します。
また、土地を購入しようと考えている人は、公示価格や基準地価を参考にして土地を探す場所を決めることもあるでしょう。
一方、特定の場所にしぼって土地を購入したいと考えるのであれば、公示価格などと比較してその価格が高すぎないか確認します。
ただ、公示価格は特殊な要因をできるだけ排除した価格となっています。
しかし、逆に早く売却した場合や早く購入したい場合には、公示価格どおりの価格では売買が成立しないと覚えておかなければなりません。
最終的には、売る側と買う側の力関係によってその価格は大きく影響を受けるため、他に買いたい人が大勢いるのであれば土地の価格は上昇します。
反対に購入希望者が現れない場合には土地の価格は下がっていくのです。
なお、公示価格は、路線価や固定資産税評価額の算出の基準となる価格としての役割もあります。
一般的に、路線価は公示価格の8割程度、固定資産税評価額は公示価格の7割程度の金額になると言われるのもこのためです。
また、公共事業用地として国などが土地を買い取る際の基準価格としても、公示価格は利用されます。
実際にこのような形でかかわることはほとんどありませんが、公示価格は客観的な指標として活用されます。
公示価格=実勢価格とならない理由
公示価格は、土地の取引を行う際の指標として用いられると説明しました。
しかし、実際には公示価格で土地の売買が行われないことも多くあります。
「土地総合情報システム」からは、公示価格や基準地価と過去の取引事例の双方を調べることができます。
それぞれを比較すると、公示価格とは明らかに異なる事例もありますし、複数の事例があるとその中でも土地の単価は様々であることが分かります。
どうして公示価格と実勢価格は一致しないのでしょうか。
実勢価格は取引当事者の事情や土地の条件で変わる
実勢価格は、取引ごとの特殊な事情を踏まえて決定された金額です。
売り急ぎや買い進みといった事情がある場合はもちろんですが、それ以外にも土地の形や大きさ、前面道路などの条件によって大きく変わります。
公示価格の金額で売買される方が、むしろ少ないといえるくらいです。
公示価格を参考にして実際の取引金額を決めたとしても、その金額は公示価格とは異なるのは普通なのです。
実勢価格は公示価格より先に変動する
地価の変動に大きな影響を与えるものに、土地の需要の高まりがあります。
例えば、新しく駅が開業したことでその周辺の地価が上昇したようなケースです。
しかし、その時点で公表されている公示価格が、需要がそれほど高くない時期に決定されたものであると、その後の実勢価格とは大きく差が出てしまうのです。
需要が高まれば実勢価格の方が高くなりますし、逆に人気が低下した地域では実勢価格の方が低くなります。
土地の購入や売却を検討する場合は、その地域の地価の動向にも注視しておかなければいけません。
まとめ
土地の実勢価格はさまざまな要因にもとづいて決定されるため、どのようになれば上昇し、どうなれば下落すると一口で説明できません。
また、実勢価格は毎日のように変動するものであるため、いつ売買を行っても同じ価格で売却・購入できるわけではないことを理解しておきましょう。
ただ、公示価格は土地取引の際の目安となる金額です。
公示価格の動きを知っておくことは、実勢価格の変動を予測することにつながります。
また、公示価格が近くにない個別の土地については、路線価の額を知ることも有効です。
さまざまな方法で、土地の価格の変動を調べてみましょう。